その頃、シンジとアスカは引き返す事の出来ない道へと踏み出そうとしていた。
この実験の責任者でもあるアスカの母に連れられ、蒼い髪の女性とシンジとアスカは巨
大なボトルのような物が斜めに設置された部屋に案内されていた。
「エントリープラグにそっくりね……妙な所でシンクロしてるんだわ……これなら大丈夫
かしら……私の想定していたアーキテクチャに似ているし……」
蒼い髪の女性は持って来ていたノート型端末を接続して準備を始めていた。
「悪いけど、時間無いの。取りあえず服を脱いで頂戴。全部ね……」
蒼い髪の女性はシンジとアスカに背を向けたまま、指示を伝えた。
7周年記念作品
【明日を覗けば闇の中】〜続・窓に映るは明日の影〜
作:尾崎貞夫
第12話「出撃準備」
「全部って……下着も?」
アスカは少し目を丸くして問いかけた。
「本来、身体の洗浄もしたい所だけど……全裸になる必要があるのよ……アスカ」
アスカの母親も蒼い髪の女性の言葉を後押しした。
「わかりました……」
見渡しても仕切一つ無い事に気付いたシンジは既に上衣を脱ぎ始めていた。
「ちょっとシンジ……」
アスカも戸惑いながらも服を脱ぎ始めた。
* * *
「貴方達、婚約者なんでしょ? 堂々としてなさい」
アスカの母親が、裸体になりお互いを意識している二人を見て苦笑して言った。
「じゃ、プラグに入って頂戴……」
蒼い髪の女性は端末から目を上げずに、何か打ち込みながら二人に指示した。
「電力が足りなくなるかも知れないので、他地区の電源消費を抑えて貰います」
アスカの母親は蒼い髪の女性と諮りながら準備を進めていた。
「あう……何よこれ……水?」
プラグに身を投じたアスカは足下から沸き上がって来るLCLの感触に怯えていた。
「頭部まで完全に浸食されるけど呼吸は心配ないから……口の辺りまで来たら肺の空気を
吐き出してから、LCLを吸引してみて……それとアスカ……貴方は身体の内部までLC
Lで浸してね……具体的に言うと…………」
アスカの母親は小声でアスカに何かを告げていった。
「え〜そんな事言われても……」
アスカは顔を真っ赤にして反応していた。
「シンジ君……少し目を閉じていてあげてね」
アスカの母親は二人にそう告げてから、透明なプラグの蓋を完全に閉めた。
アスカは隣のプラグにいるシンジが目を瞑ったのを確認して、恥ずかしそうに股間に手
を差し伸べた。
「LCL充填率98% 呼吸問題無し……完全充填まで、後二分」
肺の中だけで無く、胃の中なども含め、およそ水のような状態のLCLが入り込める所
の全てをLCLで浸す必要がある為、少し圧力をかけると水泡が各所から漏れていった。
「LCL充填率99.7%……碇シンジは問題無いレベルね……」
蒼い髪の女性は進行状態を見て溜息を漏らした。
「アスカ……恥ずかしがらないの……水泡が出るまで開き続けるのよ……」
「雑菌の浄化能力、一定をキープ……もう少し水圧をかけたらどうかしら……肺にはもう
水泡が残って無いようだし、問題無い筈では?」
「そうね……もう少しだけ上げてみるわ……」
「LCL充填率99.8%……99.9……100! 圧力を通常値に戻した方がいいわ」
蒼い髪の女性はシンジとアスカが入っているプラグをちらりと覗いて言った。
シンジとアスカはかけられた圧力の為か、少しぐったりとしていた。
「それでは、作業手順を展開するわ……確認して頂戴……」
「了解……」
アスカの母親と蒼い髪の女性は、まるで元からの同僚かのように滞り無く作業を進めて
いた。
* * *
「これがパレットガンか……ほぼ想像通りの形だな……この弾倉で24発か……大口径だ
から、こんなものか……」
吉田はリツコが持って来たパレットガンを、時間が無い為ガイドブックを見ながら弾倉
を装填していた。
「安全装置はこれか……三点バーストにと……大丈夫だ……使ってみせるさ」
吉田はパレットガンを担ぎ、予備弾倉をジャージのポケットに突っ込もうとしていた。
「待って……そんな格好で出す訳にはいかないわ……今、貴方のサイズに合うボディスー
ツを持って来て貰う所よ……」
「硬化ベークライトの方は持つのか? どうせ時間稼ぎなんだから、ジャージでも……」
俺は嫌な予感を感じた為、逃げを打とうとしていた。
「あ、間に合ったみたいね……」
「やはり、プラグスーツか……」
リツコの部下が持ち出して来た、耐刃・耐熱・耐冷・防弾効果もあると言うボディスー
ツを持ち出して来たのを見て、吉田は溜息を漏らした。
「知ってるの? なら話が早いわね……全部脱ぐのよ……」
リツコはこれまでに感じたストレスを全て発散させるかのような笑みで言い渡した。
「う……しかも局部のサポーター無しか……しかも薄いし……」
前の世界だと女性用のプラグスーツ同然の股間の仕様を見て吉田は呻いた。
「ほら、早くしなさい!」
リツコは吉田の苦悩を知ってか知らずか、吉田を急かして奥の部屋に歩いていった。
* * *
「無様ね……」
リツコは、プラグスーツの上にジャージの上下を身に付けた吉田を見て呟いた。
「って、開発部に男いないだろ……試着すらさせた事無いんじゃ無いか? これ……それ
に予備弾倉を運べないし」
モロに形が出てしまう為と、予備弾倉運搬の為も兼ねて吉田はジャージを身に付けたの
であった。
「局部にサポーターがついた男性用は今開発中よ……予備弾倉の件は検討中……人手が足
りないのよ……わかったから、ジャージの下は脱ぎなさい。純粋に運動性の為にね……」
「…………わかったよ……ところで、ジャージのポケットもう一つ開いてるから予備弾倉
をもう一個持って行きたいんだが……」
吉田はジャージのズボンを脱ぎながらリツコに問いかけた。
「無駄弾を撃たなければ足りる筈よ……特殊弾頭だから一発二万円かかるのよ……弾倉二
つで約百万円……大事に撃ちなさい」
「わかったよ……じゃ、使徒の足止めに行くぜ……まだ、硬化ベークライトは持ってるか
な?」
「急いで……動きが出たらしいわ」
リツコが見つめているモニターに赤い警告メッセージが点滅していた。
「了解っ……と、道が分からないな……誘導用にインカムとかは無いのか?」
「その頭部のヘアバンドに付いてるぽっちが骨伝導スピーカーとマイクを兼ねてるわ」
「了解……しかし、頭撃たれたら終わりだな……」
「大丈夫よ……その、頭部のぽっちからATフィールドを常時展開出来るの……意識しな
くても弾を弾くぐらい出来るわ……」
「なるほど……じゃ、誘導よろしく」
「それと、このナイフを持って行きなさい。腰の所に装着出来るわ」
吉田はケース入りのプログレッシブナイフを受け取り、パレットガンを手に部屋を出た。
御名前
Home Page
E-MAIL
作品名
ご感想
今のご気分は?(選んで下さい)
コメントに困りますな……
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
内容確認画面を出さないで送信する
どうもありがとうございました!
第12話 終わり
第13話
に続く!
[第13話]へ
[もどる]