「使徒は予想通り、最深度施設へのゲートに向かっているそうです! ゲート前まであと
10分も持ちません!」
一人のオペレーターが準備室に走り込んで来た。
「最深度施設?」
シンジが不審そうに問いかけた。
「そこに使徒が到達したら私達の負けよ……説明はそれで充分だわ……」
リツコはパレットガンをシンジに渡しながら宣告した。
7周年記念作品
【明日を覗けば闇の中】〜続・窓に映るは明日の影〜
作:尾崎貞夫
第21話「絶対無敵領域」
「使徒は強力なATフィールドを展開しているそうよ……中和する前にいくら撃っても多
分効き目はないわ……」
「今、足止めとかはしてるんですか?」
アスカはパレットガンを受け取り、弾倉を装填しながら問いかけた。
「いえ……隔壁を下ろしたりする程度の事しか出来ていないわ……最初の迎撃で戦力の8
割を喪失したから……」
「そうですか……吉田君はまだ戦闘に参加出来そうにないし、僕達だけで何とかするしか
ないですね……そうだ、煙幕が出る手榴弾とか用意できますか?」
シンジは隙の無い相手に肉薄する為の手段を考えていた。
「それは準備出来るけど、何か手があるの?」
「確実な手なんてのは無いですよ……だけど、このままじゃ荷電粒子砲の餌食じゃないで
すか……少なくとも僕達を直接視認出来ないようにしないと近づけないから……そうです
ね……侵攻ルートで十字路になっている場所はありますか?」
「すぐ調べるわ……コースで十字路を直進する場所が三ヶ所あるわ」
リツコはコンソールに飛びついて、施設情報を検索し始めた。
「使徒ラミエルはどうやって最深度施設への道を迷わずに進んでるのかしら……」
アスカはリツコが操作するコンソールを見ながらふとつぶやいた。
「生存者の目撃情報では、使徒の左右に二人のテロリストが付いているそうよ……きっと
誘導しているのね」
「ミサトさん!」
「ミサト先生……どうしてここに……」
二人にとっては中学時代の恩師だったミサトが、深紅の服を身に付けて現れたのを見て
驚きを隠せないシンジとアスカであった。
「あら、来てくれたのね……断られるかと思ってたんだけど」
リツコは椅子ごと振り向いてミサトにほほえみかけた。
「手続きしている最中に使徒の襲撃だって言うじゃない……慌てて駆けつけて来た訳よ……
暑い暑い」
ミサトはハンカチで汗を拭いながら答えた。
「なら、作戦部部長として、二人のサポートをお願いね……」
「あ、そうだ……十字路の正面で煙幕の手榴弾を誰かに投げて貰うつもりだったんですけ
ど……」
「OK。なら、それは私に任せといて!」
ミサトはシンジの肩を叩いて快諾した。
数分後……ラミエルは最深度領域に向かう為、通路を浮遊しながら進んでいた。
NERV本部内は一直線に突破されたりしないよう、複雑に構成されているので、分岐
の度にテロリスト二人とラミエルは立ち止まっていた。
「どっちだ?」
MP5SDを手にしたテロリストの一人がラミエルに問いかけた。
「コッチ……」
ラミエルは左側の道を選び前進し始めた。
「おい、もっと慎重に進め! 油断するな」
NERV隊員から奪ったグレネード付きM4カービンを手にして、後方を警戒していた
もう一人のテロリストが注意した。
「しかし、何だな……あまりにも抵抗が薄すぎるとは思わんか……」
MP5SDを手にしているテロリストが左右に視線を這わせながら独白した。
「作戦がうまくいった証拠だろう……あのホールだけで何十人無力化したと思う? わざ
ととどめを刺したりはしなかったし、今頃は人命救助でおおわらわだろうよ……」
「それは、そうかも知れないが、前回送り込まれた使徒は倒されてるって噂だぜ? っと、
今度は十字路か……どっちだ?」
MP5SDを手にしているテロリストがラミエルの方を向いて問いかけた次の瞬間、十字路の
彼方からテープで束ねられた数本の各種グレネードが的確に放り込まれた。
まず、凄まじい音と光を発するスタングレネードが炸裂し、次の瞬間、足下からシュウ
シュウと煙が巻き起こり、視界を狭めた。
「ぐっ……」
MP5SDを手にしていたテロリストはスタングレネードの閃光を直視してしまい、そのまま
崩れ落ちた。
「糞っ! 待ち伏せか」
もう一人のテロリストは後方を向いていたので、スタングレネードの影響は少なく、即
座に振り返って十字路の彼方に向けてグレネードを発射した。
「うわっ! あっぶなー」
葛城ミサトはスタングレネードとスモークグレネードを投げた後、即座にその場を離れ
たので、テロリストのグレネードの直撃を受ける事は無かったが、爆風により破片が防弾
チョッキに突き刺さったのを見て、軽口を叩いた。
「おいっ! しっかりしろ……ぐあっ!」
煙に巻かれながらも仲間を助けようとしていたテロリストは後頭部に衝撃を受けて崩れ
落ちた。
「アスカ 今だ!」
マスクを身に付けたシンジがパレットガンの銃底でテロリストを無力化した後、ラミエ
ルのATフィールドを中和させる為、アスカに指示を下した。
「うん!」
アスカは安全の為、足元でスモークを焚いて自らの姿を隠しながらATフィールドの中
和を試みた。
シンジも素早くラミエルの前から離れ、アスカがいるのとは反対側の通路に身を躱して
パレットガンを構えた。
「駄目……私だけじゃ中和できない!」
アスカのマスク越しのインカムの声を聞き、シンジはじわじわと接近し、ATフィール
ドを展開した。
「くっ……圧力が凄い……」
今のところ、ギリギリでラミエルの死角に位置どっており、スモークの煙のせいもあり、
ラミエルからの攻撃は止んでいる状態であった。だが、スモークが晴れてラミエルがシン
ジとアスカを捕捉するのが早いか、ラミエルのATフィールドを中和して、パレットガン
を打ち込むのが早いかと言う、ギリギリの状態であった。
「もう少し……えっ!?」
シンジは額に汗しながらATフィールドを展開していたが、スモークグレネードの煙が
天井にわだかまった次の瞬間、換気システムが作動し、みるみる内にスモークの煙が薄れ
ていった。
「そんな……」
だが、まだATフィールドの中和には至っておらず、今パレットガンを撃っても効果が
無いのでシンジは焦っていた。
「コレハ……ナニ……アナタ……ダレ?」
煙が晴れ、ラミエルが前進しながらアスカの方の通路に向かおうとしているのを見て、
シンジは顔色を変えた。
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第21話 終わり
第22話
に続く!
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