「何かワケありみたいなんだけど……どういう事か私に説明してくれる?」
惣流さんは両手のげんこつで僕のこめかみをぐりぐりと押しつけながら言った。

「いたっ いたっ やめてよ惣流さん」

「んもう また惣流さんって呼んでる……さっきみたいにアスカって呼びなさいよ
あの時はちょっと格好いいかなって思ったのに……」

「惣流さんが想像してるような事とは違うと思うんだけど……後で話すから

「仲いいのね お二人さん」
いつの間にか教室の扉が開いており、洞木さんが嬉しそうに微笑んでいた。





窓に映るは明日の影


第13話「トライアングルハート





「ヒカリ……」 惣流さんは僕の頭に押しつけていた拳の力を緩めた。
「洞木さん……」 僕は見られたのが事情を知ってる洞木さんで良かったと思った。

数秒後 惣流さんは僕の頭にまだ拳を添えている事に気づき、慌てて離れた。


「いいのよ いいの…… 何も言わなくてもわかってるから……」
洞木さんは笑みを浮かべたまま近づいて来て惣流さんの肩を二度叩いて言った。

惣流さんは何と言い返そうか悩んでいたが、
教室内に生徒がどやどやと流れ込んで来たので不承不承自分の席についた。

「後で話聞かせてね」 洞木さんは席に着く時、小声で惣流さんに話しかけていた。
アスカは僅かに頬を染めながらも小さく承諾の意を示した。


「よう シンジ おはようさん」 と言いつつトウジは僕の背中を叩いた。

「シンジ あの事もう気にしてないんだな 晴れ晴れとした顔してるよ」
ケンスケは僕の肩をばんばんと叩いて言った。

僕はトウジとケンスケからの手荒いあいさつを受けたが、悪い気はしなかった。


HRが始まる2分程前に綾波さんは図書室から帰って自分の席についていた。
僕はトウジ達に気づかれないよう それとなく綾波さんを注視していた。


全部話してくれるんだろうか……そうすれば今のもやもやが消えるのだろうか……
僕は祈るような気持ちで昼休みまでの長い授業を過ごしていった。


昼休みの始まりを告げるベルの音が鳴り響いた
僕は惣流さんをちらっと見てから立ち上がった。

ざわざわしている教室を抜け出し、階段を上がり屋上へ向かっていた。
重い屋上の扉を開けると、気持ちのいい青空が広がっていた(推定85点)
えいえんはあるよ(謎)


以前惣流さんと二人で登った給水塔の影に綾波さんの姿を認めて僕は近づいて行った。
幸い今日は日差しが強すぎるせいか屋上で昼食を取る人はいないようだ。


「綾波さんも昼御飯まだだろ……今日の弁当はサンドイッチなんだ……一緒に食べない?」

僕は朝自分で作ったサンドイッチの入ったパックを差し出して言った。

話しおわってから食べるのでは時間が無いかも知れないとの危惧からだが、

少しでも真実に近づく時間を遅らせたいと言う意識が働いているのかも知れない。


「……そうね」 綾波さんは少し逡巡してから、差し出したサンドイッチに手を伸ばした。

卵のサンドイッチとレタスのサンドイッチの二種類を作っておいたのだが、

綾波さんはレタスのサンドイッチが気にいったのかもう3つも食べていた。


綾波さんが4つ目のサンドイッチを食べおえた時、
綾波さんの眼から涙が溢れて陽光に輝いた。


「ど、どうかしたの? マスタードが多すぎた?」
僕は綾波さんの急変に驚き慌てて声をかけた。

「あなたとピクニックに行った時 あの時もあなたはサンドイッチを作って来てくれたわ」
綾波さんは僕の眼を見つめて言った。

「えっ? ピクニック?」 僕は訳がわからず混乱していた
いつも混乱してると言う噂も有り

「私はあなたが好きだった……だけどあなたはその事に全然気づいてはくれなかった……」
綾波さんはぽつりぽつりと語りはじめた。

「えっ?」 僕は綾波さんの告白に驚いたが、綾波さんは話を続けた。


「全然気づいてくれないあなたに業を煮やした私は……

今あなたが住んでいる家のあの窓から現れたカヲルと言う名の悪魔と契約したの……

カヲルに願いを伝えた翌日に学校に行くと、あなたは私に近づいて来て挨拶をしてくれたの


あなたと一日数度だけでも話が出来てとても嬉しかった……

だけど、いつしかそれだけでは物足りなくなって来たの……

カヲルはそれを知っていたかのように、あなたが私をデートに誘うように仕向けたの……

去年の今ごろだったかしら…… あなたが誘ってくれて双子山にピクニックに行ったの」


「じゃ……今 僕が惣流さんと仲良くなれたのも……やっぱりカヲルのせいなんだね……」
僕はもっとも知りたく無かった真実を知ってしまい驚愕した。
SANチェック!(謎)

ここ数日で急激に惣流さんと接近した事も……これまでの僅かな思い出も……

全てはいつか消え去る運命にあるのだ。

僕はその事を受け入れる事が出来るだろうか……


「そうよ……カヲルがあなたを次の宿主に選んだのよ……だから警告したの……

カヲルの呪縛から逃れる事が出来た私は代償として影が薄くなったわ……

そこにいても誰からも認識されない存在……それが私よ……そして、宿主で無くなった

私の家の家業はあっと言う間に傾き、あの家を手放す事になったの……」


「綾波さん……話してくれて……ありがとう とても勇気のいる事だったと思うんだ……」
「碇君……」 綾波さんは背負った重荷をようやく降ろせたのか、
涙を流しながら僕にすがりついた。

昼休みの終わりを告げるベルの音が鳴り響いた時、ようやく綾波さんは僕から離れた。
僕たちはそっと屋上を離れ、教室に向かって階段を降りていった。


「勇気か……今の僕に……綾波さんと同じ事が出来るだろうか……」

僕は惣流さんが僕に笑顔を向けてくれる今の状況が作られたものである事を知りはした……

だけど、その泡沫の夢から目覚める事が出来るのだろうか……」




君が窓の向こうに見る風景……今日のものだと……言い切れる?




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どうもありがとうございました!


第13話 終わり

最終話 に続く!


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