「第三芦ノ湖には伝説があってね…昔、天使が居たんだ。人々に幸せをもたらす天使がね。

 天使はある少年を好きになってしまった。でも天使は人間を好きになってはいけなかった。

 だから天使はその少年に話しかける事もなく、ただその瞳で少年を見つめているだけだった。

 …ある時「光の大蛇」が現れ、次々と人々を襲い始め、ついには少年にまで襲いかかった。

 …そして天使はその命と引き替えにその大蛇を滅ぼしたんだ。少年への一筋の涙と共に…。

 それをみた神様は心を打たれ、その天使の涙をもとに、澄んだ湖を産みだした。

 …って言う伝説が第三芦ノ湖には在るんだ。第三芦ノ湖はその天使の、少年に対する

 愛の印ってところかな?」

 

「ねぇねぇ!ホントホント!?」

「へ〜ぇ、ロマンチックぅ〜(はぁと)」

「碇先生、こう云う事にお詳しいんですね。」

「ねぇ、あそこで結ばれたカップルは永遠に幸せになれるんだって!」

「ハハハ…じゃあ今度みんなで第三芦ノ湖に行ってみようか?」

「「「「「「「「ぅわ〜いっ!!」」」」」」」」

「じゃあ今日はこれまで。」

「起立!礼!」

 

 西暦2025年初夏、青葉が眩しい。そんな事を思いつつ僕―碇シンジ―は教室の

窓の外に視線をやる。するとトビが悠然と空を舞っているのが見える。

 僕は今、小学校で教鞭を振るっている。予備パイロットとしてネルフにも籍はあるが。

僕は授業の時に子供達に色々な話をする。愉しい話、悲しい話、自分の話、仲間の話を…。

 

 子供の反応は至って素直だ。僕がした話の中で、特に第三芦ノ湖の伝説は子供の反応が

良い。小学生とはいえ、僕の受け持ちの5年生は多感な年頃だからなのだろうか?

 

 …伝説…か。みんながそう信じているならそれでいい。この湖の真実は語るべきではない。

そう、語ってはいけない…。それが僕に出来る、最大の償いなのだから。

 

 

「碇先生…泣いてるの?」

 

 

 

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注:これは投稿内容の最初の部分です。

参愚者の意向で、予告編として公開する事にしました。

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