「綾波・・」涙で、視界が歪み、ノートに書かれた綾波の字が霞んでいた。
11日目にして、捜索は打ち切られた。
僕はヘリの中で、何度も何度も、綾波の手紙を読み返していた。
そして、10年の時が流れ、僕は大学を卒業して、母校で、教鞭をとっていた。
夕暮れの中
僕は家に向かって歩いていた。
「碇せんせー さよならぁ〜」
「早く帰るんだぞ!」
家には、妻のアスカと、大学時代に産れた、長女アヤ・・
そして、産れたばかりの、次女のミライが僕を待っている・・
僕は足取りを早め、家に向かって歩いていた。
家の前では、3才になる、長女のアヤが、車のおもちゃで遊んでいた。
「あ、パパ おかえりぃ!」
「ただいま アヤ!」
「あのね、おちゃくさまがきてるよ」
「アヤ! おきゃくさま だろ!」
「そうだった」アヤは恥ずかしそうに微笑んだ。
「誰だろ・・」僕は一戸建ての家に入っていった。
「あ、帰ってきたみたいね」
「ただいま」
僕は靴を脱いで、居間に向かった。
「アスカの大学時代の友達かな・・」
「あなた!早く早く!」アスカが呼ぶ声がしたので、僕は居間の扉を開けた。
「あ、綾波!」
そこには、10年前と殆ど変わらぬ姿の綾波レイがたっていた。
「・・・・・」綾波も言葉を無くして、立ちすくんでいた。
「あー感動の再会はそれぐらいにしときなさい!」アスカの声で僕は正気に帰った。
30分ほど、僕達は昔話に花を咲かせていた。
びえぇぇぇー
「あら、ミライが泣いてるのかな」
アスカはベビーベッドを覗き込んだ。
「シンイチのようね」
綾波はベビーベッドに寝かされていた幼児を取り出した。
「そ、その子は?」
「渚シンイチ君だそうよ ミライと同じで、六ヶ月だそうよ」
「お腹が減ってるみたいね・・」
「あ、あなた! 今日から、シンイチ君を預かる事になったから」
「えっ?」
「この子・・洞窟の中しか知らないで育つの・・かわいそうだから・・」
綾波が、お乳を飲ませながら言った。
「こら! しげしげと見るんじゃ無いわよ」
「ごめん・・」
「ママぁ〜 おなかへったぁ」アヤも居間に入って来た。
「名前聞いて無かったわね・・アヤちゃんて言うの?」綾波がアヤに微笑んだ。
「名前の由来・・言うまでも無いでしょ」
「えっ?」
「そうだったの・・」レイは目を潤ませていた。
「そういうレイも、その子の名前の由来・・・聞くまでもなさそうね」
ハハハハハ
居間は笑いに包まれた。
「パパぁ ママぁ お腹すいたよぉ」
その日から、14年の歳月が流れた。
「ほーら、早く起きてよ!シンイチ! 学校遅れるでしょ」
「ん〜 まだ眠いよ・・」
「もう時間無いのよ!パパはもう出ちゃったわよ」
「わかったよ・・起きるよ・・」
僕、渚シンイチはようやく、身体を起こした。
パッチーン
「痛っ 何するんだよミライ」僕は頬を押さえて呟いた。
「・・・・ばかっ」ミライは顔を真っ赤にして部屋を飛び出した。
「あ・・そうか・・仕方無いじゃないか・・朝なんだから・・」
僕は呟きながら、寝間着を脱ぎ、制服に着替えて下に降りていった。
「おはよう!シンイチ君!」
アヤさんが、トーストの乗った皿を、僕の指定席に置いてくれていた。
「おはようございます アヤさん」
「もうぅ〜シンイチ君はいつも、他人行儀なんだからぁ」
アヤさんが笑いながら言った。
「ほ〜ら、ミルク!」ミライが冷蔵庫から、牛乳を持って来てくれた。
「早く食べなさい!」
「ハイハイ」
「あ、ミライ! 父さんは今日、遅くなるって言ってたわよ」
「ママは、いつこっちに帰るんだっけ?」
「再来週よ ミライ!忘れ物ない?」
「うん」
「ごちそうさま!」僕は皿を流しの上に置いた。
「さっいきましょ!」
僕達は学校に向かって走っていった。
最終話【絆】Eパート 終
エンディング