裏庭エヴァンゲリオン 第壱話【体育祭】Bパート


そして、翌日の日曜日の昼下がり。

ピンポーン ピンポーン

「シンジ お友達よ!」母さんが、寝ている僕をたたき起こした。

「じゃ、待ってて貰うから、早くしなさい。」


僕は寝間着を脱ぎ、Tシャツにジーンズをはいて、上に薄地のジャンバーをはおった。

「ふわぁ 何だトウジとケンスケか どうしたの?」僕は寝ぼけ眼を擦りながら出ていった。

「あれ、綾波さんもいるの?」僕はリビングの椅子に座っている綾波を発見した。

「ほら、先週の金曜日に、みんなで新しく出来た遊園地に行こうと約束したじゃ無いか! 」
ケンスケが説明してくれた。

「あ、そうそう、思い出した。 けど、僕たち3人で行こうって言って無かったっけ?」

僕は疑問を口に出した。


「何ゆうとんのや、こういうのは大勢で行くから、おもろいんや!」トウジがうなづく。

「それも、そうだね それに綾波さんの歓迎会も何もしてないし、それもいいね!」
僕は納得した。

「じゃ、4人で行くの?」僕は素朴な疑問を口にした。

「惣流が洞木さんを呼びに行ってるよ! もうここに来る頃だろう。」ケンスケが言った。
ケンスケがそう言った瞬間

ピンポーン
「おじゃましま〜す ユイおばさま!」「失礼します」アスカと洞木さんの声がした。

「おう早かったやないか?」トウジが言った。

「それじゃぁ行きますか!」ケンスケが言った。

ケンスケはこんな時になるとすぐ仕切るんだもんなぁ。


玄関で靴をはいてると、母さんが寄って来た。

「はい、遊園地行くんでしょ」母さんがそう言って、5千円札を握らせてくれた。

「じゃ、行って来るよ!」僕は母さんに礼を言ってから、外に出た。


シンジ達が外に出てから、碇ユイは首を傾げていた。
「あの青い髪の子どっかで見た事あるような?」

僕たちは電車を乗り継ぎ、ようやく遊園地に辿り着いた。

「綾波さんはまず、何に乗りたい?」洞木さんが綾波に聞いている。

「うーん、そうだ、アレに乗りたい!」綾波が指さした方向には、

フリーフォールと言われる乗り物が見えた。

「え〜 あれストーンと落ちるやつでしょ! 勇気あるわね〜」洞木さんが笑っている。
「じゃ、今日は綾波さんの歓迎の意味を込めて、みんなで付き合うからね!」

「もぅ〜洞木さんまで仕切るもんなぁ 高い所苦手なのに」僕は呟いた。

「ホラ シンジぼけっとしてないで、早く来なさい!」アスカが手を振る。

「解ったよぉ」アスカもはしゃいじゃってさ!

二人乗りの座席が4つ付いてるタイプだったので、どう乗るかで一波乱あった。
「じゃ、委員長と鈴原! 綾波さんと、相田! 私とシンジで いいわね!」
アスカが強権を発動した。

「え〜 私碇君と乗ってみたいな〜」綾波が笑いながら言った。
「惣流さん! 今日は綾波さんの歓迎なんだから!」 洞木さんもそういった。

結局 僕と綾波 アスカとケンスケ トウジと委員長 に決定した。

アスカはぶつぶつ言っていたが、乗り物が上に上がって行くにつれ、無口になった。

そして、頂上まで上がりきって乗り物は一旦停止した。

僕は高所恐怖症なので、上を向いて、目を閉じていた。

すると、綾波が肩を叩いて来た。

「碇君 下、下!」綾波が指を下に向けた。

僕は何か落ちたかと思って下を見たら、鉄格子の下に地面が見えて硬直してしまった。

次の瞬間にはストーーンと乗り物は下に落ちて行った。

「うわぁぁぁぁぁあ」だが、叫んだ時には下まで降りきっていた。

「ふぅ」僕はため息をついて、ふと横を見た。

「あ、綾波さん!」僕は驚いた。

「え、なーに?」綾波がこちらを振り向いた。

「下、下」僕は顔を赤くして指さした。

「え? きゃっ」風圧で綾波のスカートがめくれてはだけていて、
白いパンツが覗いていたのだ。

「もう 碇君のエッチ!」綾波は照れ笑いをした。

「僕のせいじゃ無いのにぃ ・・そんな」僕は慌てた。

「冗談よ!」綾波がそう言った次の瞬間、上半身を固定していたバーが上がった。


その後、ジェットコースターとメリーゴーランドに乗った僕たちは、

ジュースを飲みながら休憩していた。


「ふぅ 疲れた」僕はため息をもらした。

「もう なに年寄り臭い事言ってるの?」綾波が僕の背中を叩いた。

僕は、それよりも、アスカの刺すような視線が気になった。

「さって お次は何にしよ〜かな? 碇君何乗りたい?」綾波が笑いながら言った。

「うーん 明日は体育祭だし、あまり疲れない乗り物がいいな!」

僕はジュースを一口飲んでから、言った。

「じゃ、あれにしましょうよ!」綾波が指差したのは、お化け屋敷だった。

そのお化け屋敷は、ホログラフの最新技術をを有効的に使ったアトラクションで、

この遊園地が出来て以来、腰を抜かしたり、出口にあるパンツの自動販売機のお世話に

なる人が続出していると、新聞に書かれていたのを、僕は思い出した。

「僕、恐いのも、苦手なんだ ・・」僕は綾波に言った。

「じゃ、かよわい女の子に一人で入れっていうの? 冷た〜い!」
綾波は芝居掛かった事をさらりと言った。

「私も手伝うわよ!」アスカが後ろから綾波に声をかけた。
アスカと綾波は笑みを浮かべた




「わー 僕はいやだってのに〜」僕はアスカと綾波に左右から腕を組まれ、

お化け屋敷の中に連行された。

その後ろに、トウジと委員長 最後方にケンスケが続いた。



「わー暗いねぇ」「明るかったらお化け屋敷にはならないわよ!」
綾波とアスカが僕を挿んで話している。

僕は、恐かったが、右肘と左肘の感触に酔いしれていた。

少し進むと、墓場のような作りの部屋に通路が続いていた。

「・・・・」僕たちは無言のままそろそろと歩いた。

「キャーーー」右側の綾波が大声を上げた。

勇気を出して見てみると、墓標の横にリアルな幽霊のホログラフが現れていた。

「キャー」アスカも気づいたらしく悲鳴を上げた。

「そんなに恐いなら入らなきゃいいのに」僕は呟いた。

そしてそろそろと通り過ぎたら、

「キャーーー」後ろから悲鳴が聞こえた。洞木さんの声だった。

その後も悲鳴の連続だったが、だいぶ進んで来て少し先の曲がり角から光が
見えたので、出口も近いと気づき、僕たちは自然と足取りが早くなった。

そして曲がり角を曲がった瞬間!

上から投影された幽霊が間近に見えて、アスカと綾波は驚いた。

そして、綾波が後ろに逃げようとした。

腕を組んでいたので、僕とアスカも引きずられ、綾波は足を滑らせてしまった。

「きゃっ」

僕もつられて足を滑らせた。

・・・・・・・・・・・・・・・

真っ暗だ! どうしたんだろう? 僕は慌てた。さらに背中にも重い物を感じる!

僕は首を振ってみた。 むにゅ 「むにゅ?」

その時、視界が開けてきた。何故なら誰かが、僕を起こしてくれたのだった。

僕の目の前には、綾波の胸があった。

どうやら、転んだ時に顔から突っ込んでしまったようだ。


「ホラ バカシンジ大丈夫?」アスカが後ろから声を掛けた。

「んんっ?」綾波もようやく起きだして来た。

「綾波、ゴメン 大丈夫?」僕は綾波に声を掛けた。

「あぁ、 私こそゴメンねぇ 一人で逃げ出しちゃって!」綾波は笑った。

さっき何があったか綾波は知らなさそうなので、僕は安心した。

すると、後ろから、洞木さんにしがみつかれたトウジが現れた。

「おまえら 何やっとんねん こんな所で!」トウジが恥ずかしさを隠すかのように言った。

「ここ曲がった所に恐いのがいたの! もう出口だと思ってたから油断したのよ!」

アスカがトウジに言い返した。


僕たちは無事 お化け屋敷から出てきた。

「ふぅ 外の光がまぶしい!」僕は目を覆った。

秋晴れの空に、うっすらと沈みかけた夕日が見えた。

「明日もいい天気だといいわね!」アスカも空を見ながら言った。

「そうそう、あなたたち3人で出場したら?」洞木さんが言った。

「え、何?」僕は振り向いた。

「明日の、二人三脚だけど、あなた達3人で3人4脚すればいいわ

ミサト先生にもそう言っとくわね! 大丈夫ハンデは貰ってあげるから!」


「な、何を言い出す {言ってん} (言う) んだ (のよ) {の!}

僕とアスカと綾波は同時に言った。



僕たちは帰路に着いた。もう夕闇が第三新東京市を包みかけていた。

「そんじゃぁな!」 「おやすみ〜」洞木さんとトウジは、途中で別れた。

ケンスケはいつの間にかいなくなっていたが、誰も気に留めなかった。

「それじゃー また明日〜」綾波も分かれ道で去って行った。

「今日は面白かったね!」僕はアスカに言った。

「んー まあねぇ」アスカは何か考え事をしているらしく、上の空だった。

その時、後ろからパタパタと足音がしたので、振り返ると、綾波が走ってきた。

「どうしたの?」アスカが綾波に聞いた。

「あの〜 もしかしたら、碇君の家に、スカーフを忘れたんじゃ無いかと思って!」

綾波が少し恥ずかしそうに言った。

「そういえば、あんた 遊園地ではスカーフしてなかったわね!」アスカもうなずいた。

「じゃぁ 有るかも知れないね! なくしたら大変だもんね!」僕は言った。

「うん 母さんの形見なの!」綾波は小さい声で言った。


それを聞いた僕たちは、家に向かった。

「ただいま〜」僕はドアを開けた。

「おかえり〜」母さんの声が聞こえた

「おじゃましま〜す」「失礼しま〜す」アスカと綾波も入って来た。

「母さん スカーフ見なかった?」僕はキッチンにいるらしい、母に声をかけた。

母さんは手をふきながら出てきた。

「あらあら、アスカちゃんに、昼間いたコじゃないの! どうしたの?」母さんが聞いた。

「綾波が、スカーフ落としたって言うんだ!」

「シンジ 今何て言ったの? なんか綾波さんとか聞こえたけど!」母さんが聞き返した。

「あの、私 綾波レイと申します」綾波が言った一言を聞いた 母さんは動きを止めていた。

「どうしたの? 母さん」僕は母さんに聞いた。

「シンジ! あなたレイちゃんの事覚えて無いの? あなたの従兄弟じゃ無いの!」

母は衝撃的な発言をした。

「お父さんの弟で、綾波姓を名乗っているあなたのおじさんがいたでしょ!
そのおじさんと、私の姉である、ハルカとの子どもなのよ! レイちゃんは!

5才位の頃、アスカちゃんと三人で遊んだじゃ無い! 忘れたの!」


「そーそー どっかで見た事があると思ったわよ! 思い出した!

私からシンジを取り上げようとして、喧嘩したレイちゃんじゃ無いの!」

アスカも何か思い出したのか、そんな事を言い出した。

僕は思考を巡らした。

「思い出した思い出した 二人で僕の洋服の裾を引っ張って、

服が破れて母さんに縫って貰ったのを覚えてるぞ!」

僕はその事が心のどこかにひっかかっていたが、これまで出て来なかったんだ。

「え? え? どういう事! もしかして、幼稚園の頃泣き虫だった男の子を

二人掛かりで、苛めたあの子なの? シンジ君」

「ハルカはどうしたの? ユウジさんは?」母さんは綾波に近づき聞いた。

「母さんは、4年前に、死にました。 父さんは、居場所が分かりません」

綾波は俯いて言った。

「あ、これじゃないの スカーフって!」アスカが椅子の下に落ちていたスカーフを
拾い上げた。

「ありがとう」綾波はアスカの手から、スカーフを受け取った。

「それ、ハルカのスカーフよね!」母さんは綾波に優しく言った。

「ハイ」綾波は涙をこらえているのが、見て取れた。

あっけにとられている僕に母さんは言った。

「レイちゃん達一家はレイちゃんが5才の時、アメリカに渡ったのよ!

まだ、セカンドインパクトの混乱が世界を覆っていた頃なの。

これまで連絡が無かったから、私たちは絶望してたのよ!」

「じゃ、今はどこにいるの?」母さんは綾波にそっと聞いた。

「前は第二東京市のおじいちゃんの家にいたんですけど、
おじいちゃんが死んだので、ここの施設に移されたんです。」

「そうなの、ゼンドウさんも連絡つかなかったけど、生きてたのね」

「もう大丈夫よ、あなたの母さんの妹の私と、あなたのお父さんのお兄さんの、

夫もいるし、従兄弟のシンジだっているわ! もう大丈夫よ!

よく生きていてくれたわね あなたは姉さんがたった一つ残した宝だもんね」

「私、私寂しかったんです けど、どこかに私を知ってる人がいるんじゃ無いかと
思っていたから、耐えられたんです!」

感極まったレイは、母さんの胸で泣きじゃくった。

「もう大丈夫よ!」母さんは何度も繰り返しながら、綾波を抱きしめていた。

僕とアスカは何も言えずに立ち尽くしていた。


数分後

やっと綾波が泣き止んだので、母さんは立ち上がった。

「晩御飯まだでしょ、食べて行くでしょ レイちゃん 」

「ハイ」綾波は喜んでいた。

「あ、アスカちゃん キョウコねぇ今夜も遅くなるって

言ってたわよ だから、食べていってね!」母さんはアスカにも声をかけた。

「ハイ!」アスカは母さんの手伝いを始めた。

「座りなよ」僕は椅子を引き、綾波を座らせた。

僕は綾波の反対側の椅子に腰掛けた。

「道理で、なんとなく母さんに顔が似てると思ったよ」僕は綾波の緊張をほぐそうとした。

「そっかぁあの時の僕を苛めた女の子がこんなに可愛くなっただなんて、

思わなかったから、気づかなかったよ」僕は笑いながら言った。

「ホント?」綾波は微笑んだ。

「ほらほら、シンジもご飯ぐらいよそいなさい!」アスカの声がしたので、

僕は肩をすくめて、キッチンに行った。




今日の晩御飯は、大勢で食べたので、何だか楽しかった。

碇シンジの日記より抜粋



Cパートに続く。

[もどる]

「TOP」