裏庭エヴァンゲリオン 第一話【体育祭】Dパート
僕たちは、父さん母さんの待つ、校庭に向かった
「アスカちゃん キョウコねぇ、もうすぐ来ると思うから!」
母さんはアスカに声を掛けた。
「さっきの200M走もVTRに収めてるから、来たら見せるからね!」
母さんは、微笑んだ。
「すみません おばさま!」アスカが答えた。
「レイちゃん そんな所に立ってないで、お座りなさい!」
母さんは綾波に手を振った。
「失礼します」綾波は言ってから、靴を脱いだ
「もうそんな他人行儀な事言わないの!」母さんが綾波に行った。
「さぁ そのお弁当だけじゃ足らないだろうから、どんどん食べてね!」
母さんが重箱を出してきた。
「いっただきま〜す ユイおばさまの作ったコレ好物なの!」
アスカは重箱の一番下の栗ゴハンを頬張った。
「僕にもくれよ」僕は弁当箱を差し出した。
アスカは栗ゴハンをよそってくれた。
「ほら あんたも食べなさいよ」
アスカが綾波の弁当箱に栗ゴハンを放り込んだ。
「栗はやっぱり天然物に限るわね〜 ユイおばさま こんないい栗高かったでしょ」
アスカは上機嫌だった。
「そうねぇ セカンドインパクト前は、栗なんて安かったのに、
今では、天然の栗なんて、なかなかねぇ」母さんがため息をついた。
「よくやったな シンジ 今VTRを見たぞ!」
父さんが酒臭い息を吐きながら寄ってきた。
「うん みんなが応援してくれたしね!」
僕は、こんなに上機嫌な父さんを見たのは、久しぶりだった。
「アスカちゃんも一位だったなぁ さすがだなぁ」父さんはアスカにも声をかけた。
「あら やだおじさま ありがとうございます」
アスカも僕の父さんから声をかけられたのは、久しぶりだったらしく驚いていた。
「レイ さすがは、運動が得意だった、ユウジの娘だ! 良くやった。」
父さんは綾波にも声をかけた。
「ありがとうございます!」綾波は、喜んでいた。
「シンジ 昼から騎馬戦でしょ! 怪我しないように気を付けるのよ!」
母さんが心配して声をかけてきた。
「うん トウジもケンスケも一緒だから 大丈夫だよ!」僕は母さんを安心させた。
騎馬戦は各学年毎に、A・B組で決着をつけるのである。
1クラス、4人で組んだ騎馬が5組 2クラスで合計40人が闘うのである。
終了時に、各組がはちまきを幾つ相手からうばったかが、勝負を決めるのだ。
コポコポコポ 母さんがお茶のポットを取り出し、紙コップに入れた。
「はいどうぞ」僕たちの前に母さんがお茶の入った紙コップを置いた。
「日向さん 今日は付き合わせて、すみませんねぇ」
母さんが、研究員の日向さんにも、お茶をついだ。
「いえいえ、とんでも無い! 私が好きでやってる事ですので!」
日向さんは優しくていい人だ。前に夏休みの宿題を手伝って貰った事もあるし。
僕たちは、楽しいひと時をすごした。
12時50分に校内放送が流れた
「生徒は、1時までに、校庭に集合して下さい。」
「じゃ行って来るよ!」僕たちは校庭に並ぶ為、シートを出た。
「みんな 頑張ってね! 怪我はしないでね!」母さんが僕たちに声をかけた。
そして、午後の第一部が始まった。
アスカと綾波は応援席に行った。
僕と、トウジとケンスケは、騎馬戦の為、待機場所に向かった。
「よう 揃ってるな!」僕たちと騎馬戦でペアを組む、山本君が寄って来た。
騎馬戦では、左がトウジ 右がケンスケ 後ろが山本君 で上が僕だ。
始め! ピーーー
一年生同士の闘いが始まったようだ。
「いけ〜 そこだ〜」トウジが熱を入れて応援している。
規定の5分間が過ぎた。
勝負は、A組が7本 B組が3本なので、A組の勝ちである。
「さーて、おれたちも行くぜ!」ケンスケが、燃えている。
「そうや シンジ 気張れよ!」トウジも張り切っているようだった。
僕は上になるのは厭だったが、一番体重が軽い僕に決められてしまったのだ。
「用意して!」
号令がかかったので、トウジ達が手を組んだので、
僕は上に乗った。
はちまきを目一杯きつく縛っているのは、言うまでも無い。
僕たちのクラスが立てた作戦は、ケンスケの意見を踏まえて、
鶴翼の陣形で闘う事になった。
中心に3組の騎馬がシェプロンを組み、
左右に一騎ずつ、遊軍を作る予定である。
僕達の組は、左翼に位置する遊軍という位置付けになっている。
中心の三組が、敵の攻撃を押さえている間に、遊軍の僕らが、
敵の後方を襲い、敵の動きが乱れた時に、中心の三組も攻勢に転ずる予定だった。
こんな複雑な戦略を立てる事が出来たのは、ケンスケの蘊蓄のおかげである。
僕たちはいつでも飛び出せるように身構えた。
始め! ピーーー
号令がかかるやいなや、僕たちは前進した。
だが、敵の攻撃を受け止める筈の中央に敵は来ず、
何故か僕らのいる、左翼に向かい、敵の全軍が向かって来た。
「ケンスケ なんでじゃ! なんで皆してこっち来るんじゃ!」
トウジはケンスケに問いただした。
「・・・分からない・・だが、もしや・・
はっ それどころじゃ無い 三十六計逃げるに如かずだ! 逃げろ!」
僕たちは中央の本隊の後ろに逃げていった。
だが、敵は執拗に僕らだけを狙って来た。
「惣流と、綾波を一人占めしている、碇だけは許すな!」
敵がそんな事を言っているとは、僕たちは気づかなかった。
僕たちは本隊の後ろを通り過ぎ、右翼がいる方まで逃げて行った。
敵は、本隊を無視して、僕らに向かい、本隊を背にしたので、
急遽本隊の三組が敵の背後を襲ってくれた。
その攻撃により、敵の2つの組は応戦を余儀なくされ、
僕らを追跡するのは、3組だけとなっか。
僕らは更に逃げまくり、右翼と本隊の間をぬけ、前方に逃げていった。
僕らを追いかける3組は、右翼にいた一組を無視し、背中を向けたので、
3組の内、1組が、応戦の為脱落した。
その頃、本隊の三組と闘っていた、敵の2組は、
背後から三組に集中攻撃を受けた事もあり、
あっという間に敵2組のはちまきを奪った。
そして、右翼の一隊と闘っている、敵の一組に、
側面から三組が密集して襲い掛かり、あっという間に、敵のはちまきを奪った。
僕たちのクラスは、現在全部隊が生き残っていたが、
敵のBクラスは僕たちを執拗に追いかける2組しか残っていなかった。
右翼と合流した本隊は、一気に、僕たちを追いかける、2組を追いかけた。
「おまえ だけでも、あの碇を倒してくれ!」敵の1組が応戦の為脱落した。
その1組が、僕たちの本隊3組右翼1組 に四方を囲まれてしまった。
「シンジ 反転するんや! 」司令塔のケンスケの指示で、
僕たちはカーブを描き反転して、敵を迎え撃った。
敵はすごい勢いで突っ込んで来た。
始まってから、3分走り詰めなのに、すごいスタミナだ。
嫉妬というものは恐ろしい。
「い〜か〜り〜 全男子の怒りをぶつけてやる!」
敵の上になっている生徒が言い放った。
僕は少し驚き、言い返した
「何がだよ! 僕はそんな恨みを買うような事はしていない!」
「何を言うか! 学年一と言われる惣流アスカと、可愛い転校生との
二股は天が許しても おれたちが許さん!」
「やはりな・・ シンジ 何言っても無駄だ! とにかくはちまきを取るんだ」
ケンスケが指示した。
「やってみるよ!」僕は勇気を出した。
「いいか みんな! 出来るだけ、うまく回り込んで側面から闘うんだ!」
ケンスケの指示を聞き、僕たちは移動した。
「させるか〜」
敵が体当たりをかけてきた。
「うわっとっと」僕はバランスを崩してしまい、落ちそうになった。
「シンジ〜 負けるな〜」「碇君頑張れ〜」
アスカと綾波が声を振り絞って応援してくれていた。
「まだ まだぁ!」僕は体勢を立て直した。
「相打ち覚悟で突っ込め!」僕が叫ぶと、下の三人もそれに答えた。
思わぬ痛烈な反撃に、敵は驚き、右の担ぎ手が足を滑らせてしまった。
「うわぁ」
僕は、一気に身体を乗り出し、敵のはちまきに指を入れた。
敵は首を振って逃れようとしたが、首を振った時、はちまきが
すっぽり と抜けて、僕の指に残った。
ワーーーー
観衆が沸いた
ピーーー
丁度その時、時間終了の笛が鳴った。
僕たちは騎馬を解き、全員が一列に並んだ。
10本対 0本で、A組みの勝ち!
僕たちは、A組の他の生徒にもみくちゃにされた!
「勝って嬉しいけど、なんか腹が立つ〜」理不尽な事を言いながら
僕の頭をポコポコ叩く人もいた。
僕たちは応援席に戻った。
女子や、試合の終わった一年A組の生徒に迎えられた。
「キャー 圧勝したわ! これで、12点リードしたわ〜」
3年生の応援を担当している、女の先輩が喜んだ。
そして、三年男子の試合が始まる頃、
女子は次の玉入れの為に移動していった。
「アスカ 綾波 頑張れよ!」僕は二人に声をかけた。
僕は椅子に座って休息を取った。
三年男子の騎馬戦は、大接戦の末、6本対4本でA組の勝ちとなった。
結果、A組チーム61点 B組チーム45点となった。
そして、一年女子の玉入れが始まった。
黄色い声が飛び交い、両軍は必死で、駕籠にほうり込んだ。
結果、A組22対B組27個で、B組に5ポイントUP
そして、アスカや綾波の出場する、2年女子の試合が始まった。
ポイントゲッターのアスカは、投げる度、2個同時に投げていた。
命中率もすばらしく、80%以上の確立で、投げる度、入れていた。
綾波は最初自分で投げていたが、落ちた玉を拾い、アスカに渡す事にした。
そのおかげで、アスカは投げる事に集中する事が出来た。
洞木ヒカリもかなりの確立でほうり込んでいた。
ピーーー
いーち にーい さーん 両軍の入れた玉を一つづつ数えていった。
B組は25個で止まってしまったが、A組は34個までカウントされた。
これで、A組のポイントに9点上乗せされた。
現在 A組70点 B組50点になっている。
アスカ達が応援席に戻った頃、3年生の試合も始まった。
結果、A組24個 B組24個 と同点になり、加算ポイントは無かった。
そして、男子の借り物競争が始まった。
僕たちは誰も出なかったので、みんなで観戦していた。
借り物競争の借りる物のカードを書いたのは、
男子用が赤木先生。女子用は、ミサト先生だそうだ。
結局、男子の借り物競争では、一回1クラス5人 合計10人走り、
一位の人のチームに+3点 二位の人のチームに+2点
三位の人のチームに+1点という方式だ。
結果総ポイントで、B組が、5点UPした
そして、アスカと綾波も出場する、女子の借り物競争が始まった。
一年生の試合も終わり、2年生の出番が来た。
第一回目のレースには、綾波が。二回目のレースにはアスカが出る事になった。
全員スタートラインについて!
バーン
全員きれいなスタートを切った。
綾波は50M程走り、借り物が書いてあるカードの入った封筒を拾い、
中身を出した。
「御家族の方と、二人三脚でゴールに来る事!
紐は、中央の道具置き場にあります」
綾波はそれを見て一瞬暗い目をした。 「私に家族なんて・・ そうだ!」
綾波は中央に置いて有る道具置き場から紐を取り、
僕の父さんと母さんの方に走って行った。
「あら レイちゃん どうしたの?」母さんがたずねる。
「すみません 私と二人三脚してくれませんか?」綾波は少し俯きながら言った。
「いいわよ いそぎましょ!」母さんは、紐で綾波の足と自分の足を繋いだ。
「さぁ 行くわよ! いっち にぃ いっち にぃ!」二人は軽快な足取りでゴールに向かった。
二人は、ゴール手前で、白衣を着て、走っている子を追い抜いた。
ゴーーール
母さんと綾波は一位でゴールした。
続いて2位に、白衣を着た生徒がゴールした。
少し遅れて3位に靴下を持った生徒がゴールした。
そして、解説担当の先生がマイクを持って現れた。
「一位はA組の綾波さんです! えーカードはっと」
ミサト先生は、綾波からカードを受け取った。
「えー父兄の方と、二人三脚ですね!
おっとそちらの方は、お姉さんですか?そっくりですねぇ!
これは、美しい美人姉妹ですねぇ」
「はい よく言われます!」母さんが照れ笑いをしながら、
解説の先生に言った。
ズルズルッ
僕は椅子から滑り落ちた。
えー二位の方はと、「保健医の赤木先生の白衣ですねぇ
裏に刺繍があるから間違い無いですねぇ
そして、アスカの出る、第二組目の競争が始まった。
バーン
アスカは飛び出して、真っ先にカードの入った封筒を拾い、封を切った。
「!!!!」アスカは何故か顔を赤くして、僕の方に走って来た。
「バカシンジ出て来なさい!」アスカが大声で叫んだ。
「なんだよ〜 靴下でもいるの?」僕は応援席から降りて行った。
「早く! 私を肩車するのよ!」アスカは顔を少し赤らめながら言った。
「わかったよ!」僕はしゃがみ、アスカを乗せた。
「なんで僕なんだよ」僕は呟きながら、歩き出した。
「クラスで一番ぼけぼけっと した奴連れて来いってんだから仕方無いでしょ!]
アスカは上から怒鳴った。
「そんな事より急ぎなさいよ!」
「ちぇ わかったよ!」僕は少しずつスピードを上げていった。
「重いなぁ」心の中で僕は思ったが、口には出せなかった。
「あーー もう一人ゴールしちゃったじゃ無いの! 急ぎなさい!」
僕たちは、すいかを抱えた生徒を追い抜き、二位でゴールした。
その後、すいかを抱えた生徒が3位でゴールした。
1位から3位が決定し、解説の先生がマイクを持って出てきた。
えーと一位のあなたが持ってるのは何ですか?
解説の先生はカードを読んで吹き出した
「教頭先生のかつら??? ミサト先生は非情ですねぇ」
解説の先生は笑いをこらえるのに、必死だった。
勿論物陰から教頭先生が睨んでいたのは必然である。
「え〜と、二位のあなたのカードはと!」
解説の先生がまたもや吹き出した。
「クラスで一番好きな男の子に肩車してもらってゴールする事 ですってぇ
これ書いたミサト先生はホントきっついですねぇ」
ワハハハ ヒューヒュー
歓声と笑い声と冷やかす声が僕と、アスカを包んだ。
「ウソツキ!」僕はアスカに聞こえるように、呟いた。
アスカは顔を真っ赤にしたまま、立っていた。
えー三位のあなた! 何故すいか持ってるんです?
解説の先生がまた笑い出した。
「体育の加持先生が裏庭で栽培しているスイカ〜? ミサト先生ぃ
加持先生が、可哀相ですよぉ 同情するなぁ」
結局、総合で、A組が5点UPだった。
僕たちは、今応援席に帰る勇気が無く、母さん達のいるシートに向かった。
何気なく、シートに行くと、母さんが寄ってきて肩を突ついた。
僕は、母さんが僕たちを冷やかさなかったので、ほっとした。
アスカ あなた、シンちゃんの事 只の幼なじみだって言ってくせに〜
いつの間に、そ〜ゆ〜事になっちゃった訳?」
アスカのお母さんのキョウコさんが、アスカをからかった
「いつ来てたの? ママ!」アスカが顔を真っ赤にして言った。
「碇君もなかなかやるわね」綾波もつられて笑って冗談を言った。
綾波がこんなに素直に笑うのを僕は今日初めて見た。
「もう 疲れたよ〜 アスカは重いし。
まぁ出番の対抗リレーはまだ先だし、ちょっと寝るよ」僕はシートの上に寝転がった
「だ〜れ〜が〜重いですってぇ〜」
寝ている僕の腹にアスカがエルボーを突き込んだ
「ゲホッゲホッ!」
「何すんだよ アスカ!」僕は一瞬訳が分からず、驚いた。
「あんたが悪いんでしょ!」
「何がだよ!」
言い争いをしている僕たちを見て、僕の母さんとキョウコおばさんは笑っていた。
「あの ようすじゃ まだまだね!」と、二人が喋っていたのを知ったのは、
3年後、VTRを見た時だった。 勿論僕らの言い争いを日向さんが撮っていたのだ。
一年生の男子リレーを見ながら、僕はうとうとと、していた。
そして、完全に目が閉じた瞬間!
「碇君!」
がばっ
「何だよ 寝てたのに!」僕は目を擦った。
見ると、洞木委員長が立っていた。
「探したわよ 碇君! 500Mリレーに出る筈だった人が、
ねんざしちゃったの! 碇君!替わりに出て!」言うなり、僕の手を引いて、
洞木さんが、待機所に連れて行こうとした。
「待ってよ 靴履いて無いんだから!」僕はしぶしぶ、靴を履いた。
「碇君 がんばって!」綾波が微笑んでいた。
「速くして、もうすぐ 一年生の試合終わるわよ」
洞木さんが急かしたので、僕は右手を上げて、綾波の声援に答えた。
「じゃ、がんばってね このリレーはポイント高いんだから!」
言うなり、洞木さんは、応援席に帰って行った。
僕は、ようやく待機所に着いた。
「碇! おまえアンカーだからな」
「ハイハイ」僕はズボンが汚れるのも気にせず、待機所に座り込んだ。
実際、さっきのアスカを肩車した事で、疲れていた。
「まぁ最後なら少しは休めるか・・」僕は呟いた。
「碇 出番だ!」
「んが?」僕は座り込んだまま寝入っていた。
僕は、アンカーなので、2周目のラスト100Mが勝負だ。
位置について、白いたすきを整えた。
一周回り終え、僕の待つ地点へと、4人目のランナーが走って来た。
今の所、トップを走っている。
僕はすぐ走れる体勢で、待ちかまえた。
4人目のランナーが、すぐ近くまで来た。
僕は手を開いて、バトンが渡されるのを待った。
パシッ
僕はバトンを握りしめ、ダッシュした。
だが、疲労のせいか、100%の力が出せなかった。
あと、20Mの所で、抜かれてしまった。
だが、ゴール地点の横で、綾波が手を振って応援しているのを見て、僕は燃えた。
「うをを〜〜 あやなみぃ〜」
ターボがかかった僕は、抜き返し、一位でゴールを駆け抜けた。
ゴールした僕は、一緒に走った4人に手荒く歓迎された。
「こいつ〜ひやひや させやがって!」
「そうだそうだ!」
「それに、さっきは惣流と〜」僕の頭を拳固で叩く奴もいた。
「碇君をいじめないで!」綾波が、勘違いして飛び込んで来た。
4人は一瞬あっけにとられてしまい、何も言えなくなってしまった。
「おい B組の奴らの気持ちが分かったぜ」
「おれもB組なら、碇の奴を・・」
4人は後ろ姿も寂しく、応援席に帰って行った。
綾波は僕の頭を撫でてくれていた。
「碇君 痛く無い?」
その時、僕は背中に痛い程の視線を感じた。
名前を出すまでも無い。 みんな分かってるから・・
「綾波 もう大丈夫だよ 痛くない!」僕は綾波に声を掛けた。
「ホント? 良かった」綾波は今自分がした行為を思いだし、頬を染めた。
「おいおい そういうのは、アスカのいない時にしてくれ〜」
僕は内心そう思ったが、そんな事言えなかった。
僕たちは応援席に帰った。
だが、僕たちが帰りついた頃には、「シンジX綾波 アツアツ説」が、
応援席にいる生徒全員に、まことしやかに流れていた。
女子500Mリレーは、B組の圧勝だったので、10点も加算されてしまった。
500Mリレーも終わり、15分の休憩と相成った。
「ふわぁ 対抗リレーまで寝て来るよ!」
僕は応援席を離れ、母さん達のいるシートに向かった
僕は眠くて気付かなかったが、アスカと綾波も後をついてきた。
僕はシートの端の方で、横になった。
だが、暑さと疲れで、汗をかいたまま寝入っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は額に冷たくて気持ちのいいものを感じた。
そして、深い眠りに落ちて行った。
途中回りが騒がしくなったが、僕はまた眠りの世界に戻って言った。
シンジの寝ている間何があったのか、私(作者)が解説しよう!
「え〜A組の父兄の方〜 誰かいらっしゃいませんか?」
連絡委員がシートに寄ってきた。
「どうか致しました?」ユイさんが答えた。
「いや、この後の父兄の餅食い競争なんですけど、
A組の父兄が足りないので、男性に一人出て欲しいんです」
連絡委員が告げた。
「あなた! お願いしますね!」ユイさんは、夫ゲンドウに声を掛けた。
「私がか?」ゲンドウは少し不機嫌な顔をした。
が
「お願いしますね!!」ユイさんに念を押され、
哀れゲンドウは、餅食い競争に参加する羽目になったとさ
餅食い競争とは、知っての通り、コースの途中に、小麦粉の中に隠された餅を
くわえて、ゴールに走る競技である。
バーン
10人の父兄が一斉にスタートして、餅食い場に向かった。
ゲンドウもすかさず、顔を突っ込んで餅を探した。
やっと、餅を探り当て、ゴールに走るゲンドウであった。
途中シンジが寝ているシートの前を走ったので、アスカが、
「きゃはは碇おじさんたら、髭といいメガネといい粉だらけだわ!」
と言ったので、シートの中では爆笑の渦だった。
後に、シンジがVTRを見た時のコメント
「・・・父さんってそういう人だったんだ 母さんの尻に敷かれてたのか」
そして、観客の子供向けのパン食い競争が始まったが、シンジは寝たままだ。
おおっ レイがタオルでシンジの汗を拭いている!
あまつさえ、冷えたタオルで冷やしてあげるなんて、
シンジの奴め ウラヤマシイ ←それが本音か!
さて、ここで、視点を元のシンジ君に戻すとしますか。(VRシリーズかい!)
僕は、何故かとても気持ちよくなったので、目が覚めた
目の前には綾波の顔があって驚いた。
「あ、あやなみ」
見ると、綾波はタオルで僕の汗を拭いてくれていたようだ。
(うう!ホントにうらやましい シンジなんかにゃ勿体無い!)
↑引っ込んでなさい
「あ、ありがと」僕は綾波にお礼を言った。
綾波は100万点の微笑みを僕に見せた。
アスカは体育座りしたまま、こちらに鋭い視線を送っていた。
「もうすぐ 対抗リレーよ! バカシンジ!」アスカが立ち上がって言った。
「ああ 行って来るよ!」僕は立ち上がり、靴を履いて待機所に向かった
対抗リレーは、クラス男子1名女子1名が一年・二年・3年で一チームを作る。
1チーム6人で200M毎にバトンタッチして、B組の1、2、3年と争うのだ。
出走する、6人が集まって、相談を始めた。
チームのリーダー格の三年男子が、「女子・男子・女子・男子・女子・男子 という
順番で回る事にする。 最初は3年が走り、次は1年が走り、最後に2年が走る
碇君だったね 君がアンカーだ!」と言った。
「え〜僕がですか?」僕は少し驚いた。
「さっきの500Mリレーを見させてもらったよ! 200M走もね!
期待しているよ!」リーダー格の三年男子が僕の肩を叩いた。
この対抗リレーは勝った方のチームに10点加算されるので、
今Aチームが70点Bチームが追い上げて来て65点だ。
だから、この競技での勝ち負けが全体の勝ち負けに影響するのは、必然だった。
あと、ポイントがあるのは、二人三脚だけだからだ。
それに、二人三脚は全員で行う競技なので、10レース勝ってやっと1点なのだ。
僕は、所定の位置について、発走をまっていた。
そして、屈伸運動をして、関節を馴らしておいた。
バーン
ついに、対抗リレーは始まった。
僕は、同じクラスの陸上部所属の女の子からバトンを受けるという事を
頭の中で再認識して、首から背中にかけた、たすきを見つめた。
「重いな なんか」
始まって数分後、ようやく、先頭集団が見えて来た。
我らのA組チームは、トラブルでもあったのか、
B組チームに20Mの差を付けられていた。
僕はバトンを待ちかまえた。
横をB組の選手が駆け抜けて行った。
「速く来い速く来い!」僕は心の中で念じた。
「おねがい!」僕はようやく、バトンを受け取り、
B組の選手を追いかけた。
だが、あと残された距離は200Mしか無いのだ。
すでに、B組には20Mも離されている。
シンジはこれまでに無い程、自分に視線が集中しているのを感じた。
今や、A組が勝つかどうかは、比喩では無く自分にかかっているのだ。
チャー チャチャチャー チャー チャー チャー チャー
BGMの音楽”シスコスポスト”が大音量で流されている
僕は最初のカーブを回った。
応援席や、観客席の生徒や、観客が総立ちで応援しているのだ。
僕は何としても、それに答えたかった。
見ると、アスカが大きい、A組のカラーである 赤い旗を振り回していた。
ちなみに、B組は、俗に白組と言われていた。(小学校の運動会かいっ)
ゴールの向こうには、綾波の姿も見えた。
「うおおおお」僕は必死の形相で、B組の選手に食らいついていった。
だが、距離を10Mまで縮めたものの、あとひと押しが足りなかった。
あと残された距離は、50M!
誰の目にも、逆転は無理だと見えたその時、
奇跡は起こった。
その時、B組の選手は、ペースを元に戻し、後ろをちらっと振り向いた。
彼の目は驚愕で覆われていた。 B組の選手は、シンジと200M走った、
2年B組の生徒だったのだ。
その生徒は、いつの間にかシンジが近づいていたので、
また今回も抜かれるのかと思い、集中力を失ってしまったのだ。
いきなり、B組の選手のペースが落ちたので、シンジは驚いたものの、
更にスピードを上げて走ったので、ラスト7Mで順位は逆転し、シンジは
テープを切った。
彼が、余裕を見せて振り向かなかったら、シンジは2着のままだったろう。
陸上競技もメンタルな部分に大いに左右されるという、見本だろう
(いつの間に現れて解説しやがった? 引っ込め作者! げしげし
さて退散しますか。 (TT))
僕は抜き返したのがまるで夢では無いかと思った。
綾波やアスカや同級生にもみくちゃにされて、
嫌が応でも現実として認識せざるをえなかった。
僕は応援席に戻った。
「よく やった 碇君! これで15点差になったから、優勝は近いわよ!」
応援を担当している、三年の女生徒が僕に言ってくれた。
僕は席に座り込んだ。
「シンジ それどころじゃ 無いわよ! これから二人三脚なんだから!」
アスカが僕の腕を引っ張った。
僕たちが待機場所に行くと、一年生が、二人三脚を初めていた。
「私たちは、2年で最後に走るんだから、それまで休んでね碇君」
綾波がぱんぱん に張った太股の筋肉をほぐしてくれた。
「しょうが無いわね!」アスカもそう言いながら、僕の肩を揉んでくれた。
「気持ちいい?」綾波が僕に聞いた。
「うん ありがとう 綾波 アスカ!」僕は起きあがり、
右足を綾波の左足・左足をアスカの右足に縛り、練習走行をしてみた。
見る見る間に、出走して行って、僕らの前には2組しか残っていなかった
そして、その2組も終わって僕たちの最終レースが始まってしまった。
丁度、その時、放送部の解説が入った。
「え〜 2年生のレースは各組とも奇数でしたので、
最後のレースでは、3人4脚で走って貰います。
「それでは、1枠 A組 碇・惣流・綾波 選手です」
「どうですか?解説の山岡先生!」
「いやぁ、注目された、惣流選手と綾波選手、
そして、先程の対抗リレーで見事にアンカーを勤めた、
碇選手 この3人のペアですからねぇ
これはすごいレースになるでしょう!」
「それでは、2枠 B組 山下 久保田 西崎 選手です」
「いやぁ、この三人は、全員陸上部員ですからねぇ
いいレースをしてくれると思いますよ!」
放送部員と解説の山岡先生の掛け合いに場内は沸いた。
「さぁそれでは 出走です」
バーン
「さぁ、両チーム共いいスタートだ!おおっと、Bチームは転倒してしまいました。」
僕たちは走るのに夢中で放送はもう耳に入らなかった。
「アスカ 速すぎるよ スピード落として!」僕は完全に二人に振り回されていた。
「うっさいわね 私のスピードにあわせなさいよ!」アスカが叫ぶ。
今の所、僕たちが転倒しなかったのは、僥倖だった。
左に曲がるコーナーが近づいたので、僕はアスカにペースダウンを指示した。
だが、アスカは完全に入れ込んでいて、スピードを落とさなかった。
左側を走るアスカに僕は叫び続けた。
「スピード落とさないと危ないのに〜」
案の定、カーブを曲がりきれずに、僕達は転倒した。
「痛っ シンジ あんた どこさわってんのよ!」
「ゴ、ゴメン!」
「追い抜かれたわ! 急ぎましょう!
僕たちはようやく身体を起こし、体勢を立て直した。
そして、再びアスカが暴走して、僕は振り回された。
真ん中の僕が一番辛いのに、アスカは分かってくれない!
もう股関節がガクガクいってるよぅ
僕は心の中で弱音を吐いた。
だが、前を走る、B組チームも似たり寄ったりの状態で、
差を広げられる事は無かった。
アスカはそれでも焦れて来て、僕に言った。
「バカシンジ あんたの左足は私との右足一つになったとイメージしなさい!
「あんたの右足は、レイと一つになるのよ!」
アスカの言う意味は大体分かったので、僕はそう心がけた。
そして、振り落とされないように、アスカと綾波の身体に手を回し、固定した。
「シンジ 脇を持ったらくすぐったいわよ! そこはダメよ!」
僕は、左手と右手に柔らかい感触があったが、すぐには気付かなかった。
右を走っている、綾波も、何故か赤い顔をしている。 何故だろう!
(おまえが無意識の内に触ってるからだろ!)
しっかりと、アスカと綾波に手を回して固定したおかげで、
僕は、だんだんと、二人の足の動きに合わせる事が出来た。
ゴールまで、10Mの所で、一体化したかのような動きの僕たちは、
B組を追い抜いて、一位でゴールした。
そして、三年生の二人三脚が始まり、僕たちは応援席に戻った。
「おかえり〜 アラ あなた達まだ、してたの?」応援担当の三年の生徒が言った。
「ああっ X3」
「そうよ、シンジいつまで私の胸に触ってるのよ!」アスカが言った。
「えっ 何の事?」僕はアスカと綾波を見た。
「ひええっ」
僕は二人の胸をしっかりにぎったままだった。
パチン シンジの顔に紅葉型の跡が出来た。
綾波は顔を真っ赤にしていた。
「ご、ゴメン」僕はひたすら謝った。
その後、全生徒が校庭の中心に集まり、フォークダンスが始まったが、
これまでの競技で時間が押してた為、僅か5分で終わりとなった。
「まだ、綾波と踊ってないのに・・」僕は心の中で呟いた。
そして、お待ちかねの得点発表が始まった。
「A組 80点」 ワーーーー 歓声が沸いた。
「B組 71点」
「よって、2015年度体育祭は、A組の優勝です!」
A組の生徒や、観客から、ひときわ大きい歓声が沸いた。
勝ったA組は、後片づけ30分 負けたB組は1時間である。
この罰ゲームの存在が、熾烈な優勝争いの原動力の一つである事は言うまでも無い。
僕達は、片づけが終わり、教室に集合した。
「ようし いない者は手を上げろ 全員いるわね!
みんな よくがんばったわね! それでは解散!
それと、家に帰るまでが、体育祭ですからね!」
ミサト先生が、セカンドインパクト前にはやったらしい歌を引用した。
僕とアスカと綾波は、着替えて校庭に出た。
父さんや、母さん達も、シート等の片づけが終わった所だった。
「それじゃ 帰りましょう」母さんの号令で、僕たちは家に向かった。
「ねぇ アスカ日向さんが撮ってくれたVTR見ようよ
綾波も来ない?」僕は二人に言った。
「ま、どうしてもと言うなら、見てやらない事も無いわよ」アスカが言った。
僕は半分無視して、「綾波は?」綾波に聞いた。
綾波はコクリと首を振った。
僕たちの家のあるマンションにやっと帰り着いた。
4Fへ3回に渡ってエレベータを往復させ、ようやく、
家の前に着いた。
「あれ、ドアが開いてる もしかして、どろぼう?」
僕は疑問を口にした。
すると、中から、研究員の青葉さんが現れた。
「あ、取り合えず終わりましたんで!」青葉さんが言った 何の意味だろう!
僕たちは室内に入った。あまり、使わなくて、資料置き場になってた3畳の部屋に
青葉さんは、導いた。
部屋の中には可愛い壁紙が張られ、小さい見覚えの無い家具とベッドが置かれていた。
「ど、どうしたの?コレ」僕は驚いた。
すると、母さんが、「あら シンジ あなたには言って無かったかしら?
今日からレイちゃんもここに住むのよ!」と、何気なく言った。
「え〜初耳だし、寝耳にウオーターだよ!」
僕は混乱して訳の分からない事を言ってしまった
第壱話 【体育祭】終
第二話【嘘】Aパートに続く。
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