裏庭エヴァンゲリオン第四話【前兆】Aパート
レストランで食事した後、僕達は歩いて家まで歩いた。
「綾波ぃ ところで名字は何を名乗る事にするか、考えた?」
僕は綾波に、話し掛けた。
「今、迷ってるの・・」綾波が俯きながら、言った。
「ま、綾波の好きな名前を選んだらいいよ!」僕はさりげなく言った。
「好きな名前・・碇君」綾波は俯いたまま歩いた。
きゃっ
綾波が悲鳴を上げた。
何事か?と思って綾波を見たら、服の袖が電柱の突起物に引っかかって、
やぶれたのに、驚いたようだった。
「綾波大丈夫? 前を見て歩かなきゃ危ないよ!」僕は綾波に言った。
「見せてちょうだい?」母さんが服の破れた場所を手で触った。
「あ〜裂けてるわねぇ、ひきつってるから、縫っても駄目だし・・・」
そう言って母さんは僕の方を見た。
「綾波 明日の夕方 服を買いに行こうよ!」
僕は破れた服を悲しげに見ている綾波に言った。
「そうね、明日買ってらっしゃい!」
「ありがとう けど・・私この母さんが縫ってくれたこの服を
手放したく無いから・・」綾波が言った。
母さんがそれを聞いて、悲しい目をした。
「じゃ明日、修繕屋に持って行こうよ!」僕は綾波に優しく言った。
「それで、なおりそうなら、なおして貰ったらいいし、
なおるまで、着る服もいるだろ! だから、修繕屋に出してから、
一着買えばいいんだよ!」僕は綾波に言った。
だが、綾波はいまだ逡巡していた。
その時、アスカが
「あんたねぇ、叔母様やシンジが言ってくれてるんだから、
そういう時は素直に甘えたらいいのよ!」じれったそうに言った。
「ありがとう・・ございます」綾波は小さい声で言った。
「綾波!そんな水臭い事言わないでよ!僕達家族だろ!?」
僕は綾波の肩にそっと手を置いて言った。
母さんも目元を潤ませながらうなずいた。
「あ、そうだアスカぁ ジェネQ録画してるんだろ!
今日見れなかったから、貸してよ!」僕はアスカに頼んだ。
「私だって、今晩見たいから厭よ!」アスカがぷいっと横を向いて言った。
「じゃ、みんなで今晩見ようよ!」僕は提案した。
「それなら、いいわよ!」アスカが笑った。
僕達は家に帰り着いた。
「じゃ、テープ取ってくるから」アスカは自分の家のドアを開け、
中に入って行った。
僕はリビングのTVとVTRの電源を入れた。
「え〜日本時間23時30分にアメリカ北西部に震度5以上の直下型の
地震が発生しました。 現在、救出作業が続行されております
震源地は、え〜ネバダの日本企業が有する研究所のあるあたりですねぇ」
TVが地震の報道を伝えている。
「シンジ どこが地震なの?」母さんがキッチンから声をかけた。
「何でもアメリカのネバダって所の研究所付近で直下型で震度5だってさ!」
僕は要約して、母さんに伝えた。
「何ですって? そこには、アスカちゃんのお父さんがいるのよ!?」
母さんが手を拭いて、TVの前まで来た。
綾波もTVの画面を見つめていた。
「え〜大変だ! アスカ知ってるかな! 教えてあげなきゃ!」僕が言った次の瞬間
「失礼しま〜す」アスカがテープを持って家に入って来た。
「アスカちゃん 落ち着いて聞くのよ!」母さんがアスカの肩に手を置いて言った。
「あなたのお父さんがいる、アメリカの研究所で地震があったの」母さんは静かに言った
「えっ どういう事?」アスカは訳が分からず、うろたえていた。
「ほら TV!」僕はアスカに言って、TVを指差した。
「え〜現在の所、死者二十数名 この中に、日本人研究員もふくまれるそうです。
また重軽傷者は数知れないようです。 現在日本大使館に、問い合わせが殺到しているそうです!」
TVはどのチャンネルも地震の報道をしていた。
だが、この地震は始まりでしか無かった事を僕は後で知った。
「駄目よ 電話は断線していて、救出された人たちのいる病院に
連絡がつかないわ!」母さんが受話器を置いて言った。
アスカはTVの前で震えていた。
「母さんはどうしたのかしら?」アスカが母さんに聞いた。
「今研究所で、あちこちに連絡を取っているそうよ!」母さんが答えた。
「もう今日は遅いから あなたたちは寝なさい!」母さんが言った。
「アスカちゃんも、今日は一人じゃ不安だろうから、
ここに泊まって行ったら、いいわ!」母さんがTVの前に座っているアスカに言った。
「シンジ あなたの部屋の押し入れに布団があるから、取ってきて!」母さんが言った。
「わかったよ」僕はTVを消して、自分の部屋に歩いて行った。
「気遣って下さってありがとうございます じゃ、寝間着に着替えて来ますので」
アスカは気丈にもそう言って出ていった。
僕は押し入れから布団一式を担いで、リビングに向かった。
おっとっと! 枕を落としそうになったが、綾波が取ってくれた。
リビングのTVの前に僕は布団を敷いた。
その時、寝間着に着替えたアスカが入って来た。
「アスカ! ここでいいよね」僕はアスカに言った。
「ありがとう」アスカはそう言って布団に入った。
「それじゃアスカ・綾波、お休み!」僕は部屋に向かった。
「何かわかったらTELするから、安心して待つのよ!」母さんはアスカに言った
「それじゃ、お願いね! 研究室に行って来るから!」母さんは家を出て行った。
綾波も自分の部屋に入ったようだ。
僕は寝間着に着替えて、布団をかぶった。
「今日はいろんな事があったなぁ」僕は呟いて、手を伸ばして照明を切った。
・・・・・・・・・・・・・・・・
僕はいつしか、眠りに落ちていった。
僕は、夜中にトイレに行きたくなって、目が覚めた。
僕は布団から起きだして、ドアを開けて、トイレに向かって歩き出した。
「アスカ・・ まだ起きてたんだ?」僕はTVの前に座り込んでいるアスカに声をかけた。
「・・・・」アスカは何も返事しなかった。
画面に映し出されている、被害現場に見入っているからだ。
地球の反対側のアメリカは今昼なんだと、僕は実感した。
僕はリビングを横切り、トイレに入った。
そして、部屋に帰る為、またリビングを通っていたら、
アスカが肩を震わせながら、まだ画面を見続けていた。
僕はそっとアスカの横に座った。
「気持ちはわかるけど、明日の事もあるしもう寝たら?」僕はそっと言った。
「厭よ 父さんが苦しんでいるかも知れないのに、寝る事なんか出来ないわよ!」
アスカの頬には、涙の後の筋がくっきりと残っていた。
「きっと大丈夫だよ! だから、アスカも身体を壊さないようにしなきゃ」
僕はアスカの耳元で言った。
「連絡が無いのは、きっと電話線も断線してるんだからだよ!」僕はアスカに言い聞かせた。
アスカは肯いた。
「それじゃ、おやすみ」僕は立ち上がった。
だが、アスカが僕の寝間着の裾を握っていた。
「アスカ・・どうしたの?」僕はアスカにたずねた。
「一人だと、厭な想像ばかりしちゃって恐いの!・・」
アスカは普段とはうって違い、不安と恐怖に肩を震わせていた。
「じゃ、僕の部屋に来る?」僕はアスカに言った。
アスカはこくん と肯いた。
僕はアスカの為に用意した布団を担いで、綾波を起こさないように気を付けて
部屋に歩いて行った。
僕のベッドの横の床に布団をしいて、僕はその布団の中に入った。
「アスカはベッドを使えばいいよ」僕はアスカに言って、電気を消した。
アスカは素直に僕のいう通りに、ベッドに上がり布団をかぶった。
「じゃ、お休み」僕はアスカに声をかけた。
僕は再び、眠りに落ちた。
「シンジ!私と結婚してくれる?」アスカが恥じらいながら言った。
「ああ勿論だよ!」僕はアスカの肩に手を置いた。
「嬉しい!」アスカが抱き着いて来た。
「じゃ、私の両親に合ってくれる?」アスカが俯きながら言った。
「解ったよ!」
僕はアスカの家にアスカに連れられ入って行った。
「母です」キョウコおばさんが、かしこまって言った。
「君かね! 私の大事な一人娘が欲しいなどと言うのは?」
背中を向けて話しているのが、アスカのお父さんだ。
かなり前に会ったっきり、顔も見ていない。
「お願いします。 アスカさんを私に下さい! 私がかならずアスカさんを幸せにします」
僕は土下座をして、アスカの父さんに言った。
「そこまで、言うのなら・・」アスカの父さんがこっちに振り向きかけた。
「許していただけるのですか?」僕は喜んだ。
そして、アスカの父さんが振り向いた時、僕は絶叫した。
「わぁぁーーーーー」
アスカのお父さんは眼窩がくぼみ、蛆が沸き髪の毛は抜けて、恐ろしい形相だった。
僕は思わず逃げ出したが、アスカに後ろから押さえられていた。
「私の事キライなの? 私を捨てるの?」僕は後ずさって逃げようとしたが、
アスカは離してくれない
「誰か助けてくれ〜」僕は叫んだ
すると、目の前に綾波が現れた。
「綾波 助けてくれ お願いだ!」僕は綾波に懇願した。
「私じゃ無く惣流さんを選んだでしょ だから助けてあげない!」綾波が冷たく言った。
「そ、そんなぁ」
「重い 離してくれ!」
「誰か助けてよぉ」
がばっ
僕は目を覚ました。
アスカがベッドから転げ落ちたのか、僕の布団の上に、アスカが乗っていた。
「何だ夢か!」僕は胸を撫で下ろした。
「アスカ・アスカってば!」僕はアスカに声をかけた。
このままでは寝られないからである。
「ん〜 どうしたのよ!」アスカが目を擦りながら目を覚ました。
「??シンジ あんたまさか!」アスカが勘違いして顔を赤くした。
間に布団があるとは言え、僕の上にアスカが完全に乗ってるのだから。
「違うよ アスカが寝相悪いからだろ ベッドから落ちたんだろ?
重かったよ! おかげで恐い夢も見ちゃったし」僕は言ってから布団と
アスカから抜け出した。
僕は寝間着の上を脱いだ。
「うわぁ汗でびっちょりしてる・・」僕はシャツを脱いで、
引き出しから新しいシャツとタオルを出した。
タオルで汗を拭いてから、僕は新しいシャツを着た。
そして寝間着のボタンを下から止めていたのだが、
寝ぼけ眼でやっていたので、ボタンを掛け違ってしまった。
「もう・・」アスカがそう言って立ち上がり、僕の寝間着のボタンを
ちゃんと所定の穴に入れていった。
「ありがとう」僕は照れながら言った。
「もう ホント手がかかるんだから」アスカが笑いながら言った。
時計の針は6時をさしていた。
「もうひと寝入りする?」僕はアスカに聞いた。
「いいわ 目が覚めちゃったし・・」
僕はベッドに腰掛けた。
アスカも隣に来てそっと座った。
「どんな夢見たの?」アスカがそっと聞いた。
「・・・・言えない」僕は言った。
「ホホウ この私に言えないような夢を見たのね アンタ!」アスカが詰め寄った。
「いやらしい夢だったの?」アスカが頬を染めて言った。
「そ、そんな・・」僕は答えに困った。
「私が出て来たの?レイが出て来たの? どっち?」アスカが真剣な顔つきで言った。
「アスカだよ・・」僕はさりげなく言った。
「ホント?」アスカが顔を真っ赤にして言った。
「うん・・・」その先の事は言うまいと僕は思った。
「夢で見たような事してみたい?」アスカが耳まで真っ赤に染めて言った。
第4話 【前兆】Bパートに つ・づ・く
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