裏庭エヴァンゲリオン第四話【前兆】Bパート
「夢で見たような事してみたい?」アスカが耳まで真っ赤に染めて言った。
「そ、そんな アスカは僕の見た夢を知らないからそんな事言うんだ!」
僕は慌てて言った。
「じゃ、どんな夢だったのよ! キリキリ白状しなさい!」アスカが詰め寄って来た。
「わかったよ 教えるよ・・」
僕はアスカに夢の内容を教えた。
勿論アスカの父さんの事は脚色したが、
「で、アスカのお父さんが振り向いたら、顔が綾波だったんだ!」
心が少し痛んだが、真実を言ってアスカを脅えさせる訳にもいかないので、
仕方無いのだと、心に言い聞かせた。
「で 逃げ出そうにも、アスカは離してくれないし、もがいてたんだ。」
アスカは興味しんしんという感じで僕の話を聞いてくれた。
「で、夢から覚めたら、アスカが乗ってたんで苦しかった事に気づいたんだ」
僕は汗をタオルで拭きながら言った。
「ねぇ シンジ 今こうして話しているのも、あなたの夢だったらどうする?」
アスカは静かに言った。
「え? そ、そんなぁ」僕は驚きを隠せなかった。
「けど、そうじゃ無いとは言い切れないかも・・」
「やっと気づいたの? そう これもあなたの夢なのよ
だからいいことしましょ」アスカはそう言ってしなだれかかってきた。
「夢? ホントにこれも夢なのか? 」
アスカに寝間着を脱がされながら、思った。
「・・・そうだよな、アスカがそんな事する訳無いし、これは夢だよな」
僕は呟いていた。
アスカが僕の下の寝間着に手をかけた。
「ちょっ いくら夢でもなんか恥ずかしいよ!」僕はアスカの手を掴んだ。
「シンジぃ」アスカはそう言って僕を押し倒した。
RRRRRRR
「夢でも電話鳴るのかな?」僕はアスカに押し倒されながら思った。
RRRRRRRRR
「電話? じゃこれ私の夢じゃ無いの?」アスカが飛び起きた。
僕は訳が分からず、アスカに聞いた。
「どういう事 これ僕の夢じゃ無かったの?」僕は驚いた。
RRRRRRRRRRR電話のコールが続いている。
カチャ
「はい碇です」綾波の声が聞こえた。
「惣流さ〜ん 」
「呼んでるよ!」僕は寝間着を再び着てアスカに言った。
アスカは顔を真っ赤にしたまま部屋を飛び出した。
「はい 惣流アスカです」アスカが綾波から受話器を受け取った。
「お父さん? 無事だったの?良かったぁ 私心配したんだから」
アスカは電話を続けていた。
コンコン
その時、僕の部屋ふすまを誰かが叩いた。
「はい どうぞ!」僕は緊張して言った。
ふすまが開くと、綾波が寝間着姿で立っていた。
綾波は部屋に入って来て、ひとこと言った。
「惣流さん ここで寝てたの?」
僕は動揺を隠しながら言った。
「うん 父さんの事が心配で恐いから眠れないって言うから、
そこで寝てたんだ。」僕は布団を指差した。
さっき少しなおしたものの布団は乱れていた。
「ぐっすり寝入っていて、電話の音に気づかなかったんだ(--;」僕は汗を拭いた
「その割には騒がしかったのね」綾波はそう言って出ていった。
ここで何を言っても、言い訳にしかならないと思って僕は何も言わなかった。
「嫌われちゃったかな・・」僕は少し寂しかった。
電話を終えたアスカが部屋に入って来た。
アスカはいまだに赤い顔をしていた。
「何が僕の夢だよ ウソツキ!」僕はアスカに言った。
「私だって自分がシンジの夢を見ていると思ってたのよ!」アスカが顔を背けて言った。
「いつも アスカはあんな夢見てるの?」僕は聞いてはいけない事を言ってしまった。
次の瞬間、アスカは再び顔を真っ赤にした。
「バカッ」アスカは枕を僕に投げつけて部屋を出ていった。
「痛いなぁ もう寝よっ」僕は布団をかぶり、もう一度寝ようと試みた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「あんな事の後じゃ眠れないよなぁ」僕は呟いた。
30分後
「アスカと綾波に謝っておかなきゃいけないよなぁ・・」僕はそう言って起きだした。
僕は部屋を出て、リビングに行ったが、アスカはいなかった。
トイレにも明かりはついて無いし、風呂場にもいない。
もしや・・ と思い僕は綾波の部屋に向かった。
トントン 「碇だけど、アスカ来てる?」僕は声をかけた。
返事が無いので、僕はそろっと、襖を開けた。
見ると、ベッドの中でアスカと綾波が話をしていた。
「でね、シンジったらひどいのよ」
「そうね ・・気持ちわかるわ!」
僕はそっと襖を閉めて、自分の部屋に向かった。
「ま、綾波の誤解も解けたようだし、まぁいいか。」僕は三度目の眠りに着いた。
zzzzzzzzzzzzzz
僕は肩を揺すぶられて目を覚ました。
「あ、アスカおはよう」僕はあくびを噛み殺して言った。
だが、アスカは無言のまま、部屋を出ていった。
「まだ 怒ってるのかなぁ・・」僕は寝間着を脱いて、ワイシャツを羽織った。
そして、ズボンをはいていると、アスカと綾波の声がした。
「それじゃ 行きましょ」
「ハイ 惣流さん」
げげっ 僕を置いていくつもりなのか!?
僕は慌ててファスナーを上げた。
ドアを閉めて、僕は二人の後を追った。
家を出る時時計を見たが、時間的には余裕があった。
小走りで学校の方に走って行くと、アスカと綾波の姿がやっと見えた。
僕は二人の後ろ約50Mくらいの所を付かず離れずの距離で着いていった。
「でね・・」
「そうなんですか・・」
二人は楽しげに話しながら歩いている。
僕は急に胸が締め付けられるかのように思った。
いつもは”うっとうしい”とか”うるさい” とか思っていたアスカの事が、
自分の側にいなくなって初めて、アスカがいないと思うのが寂しいと思う、
自分の気持ちに気付いてしまったのだ。
「そうだよな・・アスカにも綾波にもどっちつかずで、愛想を振りまいていたんだよな。
二人に嫌われて当然だよな・・・・」僕は段々歩くスピードが落ちて行った。
「どうしてだろう 前がぼやけて良く見えないや・・」その時目に溜まっていた涙が、
一気に零れ落ちた。
僕は涙をワイシャツの裾で拭いて、また歩き始めた。
キーンコーンカーンコーーン
今日は全体朝礼で、僕達はグラウンドに歩いて行った。
だがアスカはおろか、綾波も僕の事を無視し続けていた。
校長先生の話もあまり頭には入らなかった。
だが、保健医の赤木先生が壇上に上がったので、僕はなんだろう?と思った。
「え〜この度、家庭の事情もあり、当校を退職する事に相成りました。
短い間ですが、みなさんには大変お世話になりました。」そう言って赤木先生は壇から降りた。
そっかぁ赤木先生辞めるのかぁ 結婚かな? それだったらそう言うか・・
僕はとりとめの無い事を思っていた。
全体朝礼も終わり、僕達は教室に歩いて行った。
「よぉ シンジどないしたんや」トウジが近づいて来て言った。
「そうだよ、惣流も綾波も様子が変だし・・何かあったのか?」ケンスケも心配してくれた。
「・・・・」僕は何も言えなかった。
「ま、言いとう無いんなら、しゃぁないわ ケンスケ行こう」トウジは僕をそっとしてくれた。
授業が始まるまでの数分で、教室内に「碇×惣流×綾波破局説」が流れたのは言うまでも無い。
一時間目の授業も始まったが、僕は綾波とアスカの態度が気になり、勉強どころでは無かった。
気が付くと、午前中の授業は終わっていた。
アスカと綾波と洞木さんと、トウジとケンスケが机を寄せて食事の準備を始めたので、
僕はいたたまれなくなって、教室を出た。
購買部で、人込みに揉まれながら、カレーパンとサンドウィッチを手に入れ、
僕は人気の無い第二校舎の屋上に上がった。
第一校舎の屋上は、アスカ達が食べおわってから来るかも知れないので、
第二校舎の屋上にしたのだった。
第一校舎のいつも、みんなで話す場所から死角になる場所を選んだのも言うまでも無い。
僕は端の方で、サンドウィッチの袋を開けた。
一人で食べる昼食は、いつものように、賑やかに食べるのとは違い、
味気なかった。
僕はもそもそと、サンドウィッチの袋の”ハムサンド”を食べおわり、
”玉子サンド”に手を伸ばした時、後ろから手が伸びて、
サンドイッチの袋を誰かがつまんで、取り上げてしまった。
僕は振り向いて、サンドウィッチを奪った犯人を見た。
「アスカ・・」そこには、アスカが玉子サンドウィッチを食べていた。
「どうして、ここが・・」僕がここにいるのは、気付かないだろうと思っていたのだ。
「モゴモゴ」アスカは何かを言った。
「食べおわってからでいいよ・・」僕は苦笑した。
「あんたの行動パターンなんて御見通しなのよ!」食べおわったアスカが言った。
「そう・・」僕は呟いた。
「それはともかく、玉子サンドは僕の一番の好物だと知ってたんだろ!」
僕はおいしい物は最後に食べる主義なのだ。 いつも残した物をアスカに取られたものだったが。
「ホラ! 出てきなさいよ!」アスカは振り向き、声をかけた。
すると、物陰から綾波が袋を下げて出てきた。
「碇君 今日はごめんね」そう言って綾波が弁当箱を差し出した。
「作ってくれてたの?」僕は少し驚いた。
「今朝おばさまがいなかったから、惣流さんに手伝って貰ったの」綾波は微笑んだ。
「アスカ 綾波 ありがとう 」僕は弁当を開けて、弁当を食べはじめた。
「アスカ達は?」僕はアスカに聞いた。
「さっき ぱっと食べたのよ」アスカが言った。
「本当においしいよ! このコロッケ作ったのアスカだろ! ドイツ風だもんな
この玉子焼きは綾波だね おいしいよ」僕の好物ばかり入ってたので嬉しかった。
食べおわった時、アスカが「ハイ」水筒に入れてたお茶を紙コップに入れて渡してくれた。
「ふぅ ごちそうさま」僕は食べおわった。
気付くと、残っていたカレーパンが消えていた。
「あれ、カレーパンどこいったかな」僕は探した。
すると綾波が真っ赤な顔をして立っていた。
「碇君ごめんなさい 私カレーパンが大好物なので、つい」
てへっ と言う感じに、綾波が笑った。
僕達は教室に戻った。
「アスカ 綾波さん お昼御飯も食べずにどこ行ってたの?」
洞木さんが寄って来て、言った。
「えっ 二人とも食べたんじゃ無かったの?」僕は驚いた。
二人はもじもじして何も言わなかったが、少しして綾波が口を開いた。
「冷蔵庫の材料じゃ一人分しか作れなかったの・・」
「それならそうと 言ってくれたら、一緒にあの弁当食べたら良かったのに・・」
僕は不思議に思った。
「馬鹿ね! 私もレイも、あんたがその弁当を食べる所が見たかったからよ・・」
アスカが照れながら言った。
「碇君 おいしそうに食べてくれたから、それでいいの」綾波も言った。
「そうか、それでサンドウィッチやカレーパンを食べたのか・・」僕は納得した。
「昨日あんな事を言ったりした、僕の為に・・」僕は涙が出そうになるのを堪えた。
「いいのよ私も悪かったんだし・・」アスカが肩を叩いた。
その時、昼休みも終わりを告げ、生徒が大勢教室に戻って来たので、
僕達は席に着いた。
午後の授業は午前中とはうってちがい、元気が出た僕だった。
学校も終わり、僕達が下校していた。
「さすがに、玉子サンドだけじゃ辛いものがあるわね・・」アスカがお腹に手をやった。
「そうですね・・」綾波もさすがにお腹を空かせているようだ。
「じゃ、今日は僕がおごるから、ハンバーガーでも食べに行こうよ!」僕は二人を誘った。
「アスカぁそんなに食べなくてもいいじゃないかぁ」僕はすっかり薄くなった財布をしまった。
僕達は食べおわり とは言えアスカ大量に注文したので、僕はオレンジジュースだけだった。
少し暗くなった道を僕達は歩いていた。
「あ、赤木先生!」アスカが、反対側の道を歩く赤木先生を見つけた。
左右を見てから、赤木先生はこっちに渡って来た。赤木先生は黒い服を着ていた。
「こんな時間まで何してたの?」赤木先生が笑いながら言った。
「あ、私はもう辞めたんだった・・」赤木先生は笑った。
「家庭の事情で辞められるんですよね・・」僕は赤木先生に言った。
「・・そうなの、母が昨夜の地震でね・・」赤木先生は下を向いた。
「私の父も、片足骨折したんです その地震で・・」アスカも言った。
「そうね惣流博士も同じ研究室にいたのよね・・」赤木先生が小さい声で言った。
「父を知ってるんですか?」アスカは少し驚いたようだ。
「そりゃ知ってるわよ碇君のご両親もあなたのご両親も、有名人ですからね・・」
赤木先生は笑いながら言った。
「そうだったんですか・・ぜんぜん知らなかったなぁ」僕は呟いた。
「それで、母さんの代わりに、私が後任の研究者に抜擢されちゃったのよ・・」
赤木先生は寂しげに言った。
「それじゃね! 」赤木先生は反対方向に歩いて行った。
「そうか・・」
僕達は家の前まで辿り着いた。
家の前には小きいトラックが止まっており、母さんとキョウコおばさんが荷造りをしていた。
「どうしたの? 母さん」僕は母さんに尋ねた。
「シンジよく聞くのよ! 私達は一ヶ月アメリカに行かなきゃいけなくなったの!」
母さんはキョウコおばさんを指差した
「え〜 どういう事なの?母さん」アスカも驚いている。
「お父さんが怪我で入院したでしょ! 私はその世話よ!
ユイさんは、研究所を再建する為の調査だし」キョウコおばさんが説明した。
「家にはあまり帰れないかも知れないけど、父さんが研究所にいるから、
大丈夫よ! シンジ」母さんが僕の肩を叩いた。
「あ、これが、当座の生活費よ!」母さんは赤いカードを僕に差し出した。
「え〜 この家に私一人なの〜」アスカがごねている。
「あら、言ってなかったっけ! 碇さん家にあなたは住むのよ!」キョウコおばさんが言った。
「ええ〜〜×2+α」
そして、その日の夜から、僕達の共同生活が始まったのだった。
「あ〜疲れたぁ」僕達は母さん達の荷造りの準備をしたのもあって疲れ果てた。
「ねぇシンジお風呂はいれる?」アスカが言った。
「うん 24時間風呂だから大丈夫だよ!」僕はアスカに答えた。
「じゃ、入ってくるね」アスカは風呂場に向かった。
「じゃ、夕食を買ってきます。」綾波が買い物駕籠を持って立っていた。
「夜道に一人で行くのは危ないよ 僕も行くよ!」僕も靴を履いて綾波と外に出た。
「アスカぁ ちょっと買い物に行くから!」僕はアスカに声をかけてドアを閉めた。
僕達は歩いて3分くらいのコンビニに歩いて行った。
綾波は私服にエプロンを付けて、買い物駕籠を持っている。
「綾波 なんかその格好似合うよ なんかその新妻ってかんじで
綾波は主婦も似合うんじゃ無いかとも思うよ」僕は照れながら言った。
「ホント?」綾波が頬を染めて言った。
「ウン・・」
僕と綾波はコンビニに入った。
「取りあえず必要な物は何かな?」僕は綾波に聞いた。
「今夜の御飯と明日の御弁当の材料でいいんじゃ無い?」綾波が言った。
僕はオレンジ色の駕籠を持った。
「じゃ、まず今夜は料理する時間無いから、惣菜ね」僕は綾波の後をついていった。
「これと、これと そうだ 碇君はお魚好き?」綾波が振り向いて言った。
「え? あぁ好きだよ!」僕は言った。
綾波の後ろ姿に見入っていて口篭もったとは言えなかった。
「ねぇ ねぇあの二人可愛いカップルねぇ」
「そうねぇ微笑ましいわねぇ」
若い女性の店員が、僕達の事を話しているのに気付いた。
それを聞いた僕達は耳まで真っ赤になってしまった。
「それじゃ次は、お弁当のおかずね」綾波は冷凍食品コーナーに歩いて行った。
僕も駕籠を持って後に続いた。
「もう一品って時に重宝するのよねぇ」綾波が主婦みたいな事を言ったので、
僕は妄想の世界に入る所だった。(注 斎藤さんのHPの意味ではありません)
「碇君! シュウマイはエビがいい?カニがいい?」
綾波が両方のシュウマイを手に取って言った
「う〜ん カニかな?」僕は照れながら言った。
僕は綾波に手渡されたカニシューマイを駕籠に入れた。
ふと綾波を見ると、服の破れた所に何か当てて縫っているのが見えた
「あ、そうだ今日は綾波の服を見に行く予定だったんだよな
綾波!明日は服を買いに行こうね」僕は綾波に言った。
綾波は少し嬉しそうに肯いた。
僕達は買い物を終え、家路についた。
買い物袋に買った物を入れて僕が持って歩いていた。
僕はカードキーをスロットに入れて、ドアを開けた。
「キャァッ」玄関の向こうをアスカが裸で通り過ぎようとしていた。
「ア、アスカなんでそんな格好でいるんだよ!」僕は動転してしまった。
「タオルどこに置いてるのよ〜」アスカが言った。
「綾波 お願い」僕は外に出た。
「ふぅ これが一ヶ月も続くのか・・」僕はため息をついた。
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