裏庭エヴァンゲリオン第四話【前兆】Cパート
僕たちは、買ってきた総菜と炊飯ジャーに残っていたご飯で、夕食にした。
用意したのは、もっぱら綾波だったが。
「ふぅ」アスカが髪をタオルで拭きながら食卓の椅子に腰掛けた。
隣に座ってい僕は、少し顔を赤らめた。
数分前に、ちらっと、と言えどもアスカの裸を見てしまったからだった。
「さ、食べようか!」僕は総菜に箸を延ばした。
「いただきます」綾波も食事を始めた。
髪を拭き終えたアスカも食べ始めた。
「シンジ! その鳥の照り焼きをよこしなさい!私の好物なのよ」
アスカが僕がごはん茶碗に乗せていた、鳥肉の照り焼きを奪っていった。
「そ、そんなぁ 僕だって好物なのに・・」僕は呟いた。
アスカは顔を赤らめて「さっきの見物料よ!安いもんでしょ!」と言った。
15分後
僕達は食事を終えて、リビングでくつろいでいた。
「けど、アスカ良かったね、お父さんが重傷じゃ無くて」僕はアスカに言った。
「そうね、同じ所にいた、赤木先生のお母様は亡くなったそうだし・・
命が助かっただけ、ラッキーかもね」アスカが頷いた。
「私の母も、7年前にアメリカで地震に合い、私を庇って・・」綾波が目を潤ませた。
しんみりとした空気が部屋を包んだ。
「さ、今日はもう寝よう!」僕はTVの電源を切って立ち上がった。
僕は玄関のロックを確認して、家の中の電気を消していった。
「ふぅ」僕は自室の襖を開けた。
「アスカ・・何故ここにいるんだよ?」僕は呟いた。
アスカが僕のベッドの横の布団に入っていた。
僕はアスカに近づいた。
「・・アスカ 寝たふりしてもダメだって・」僕は苦笑した。
「何よ いいじゃないの!私がベッドに寝たらまた落ちるから
布団でいいのよ」アスカが顔を布団で隠して言った。
「まだ寂しいの? じゃ綾波に言ってこようか?」僕は言った。
「あんたも相当なバカね 私がいいって言ってるんだからいいじゃないの!」
アスカがふくれた。
「だって、また綾波に誤解されそうだし・・」僕は呟いた。
「レイ!入ってらっしゃい」アスカは襖の向こうに声をかけた。
するするっと襖が開くと、綾波が枕と布団を担いで立っていた。
「綾波まで・・」僕は驚いた。
「あんたが電気消してる間に相談したのよ」アスカが笑った。
綾波は布団をアスカの横に敷いて枕を置き、掛け布団を置いた。
「私も、一人だと怖いの・・」綾波が呟いた。
「分かったよ・・」僕はベッドに入って上を向いた。
「何よ、何か文句あるの?」アスカがこっちを向いて言った。
「別に・・」僕は呟いた。
「あれ、コレなんだろ!」アスカがベッドと床の隙間に手をやった。
「な、何してるんだよ!」僕は慌ててアスカの手を押さえた。
「どうかしたの?」アスカが言った。
「・・」僕は、言葉を失った。
「もうちょい! 届いた!」
アスカが僕の手を逃れベッドの裏に隠していた本を、取り出した。
「あら〜?これは何かなぁ?」アスカがにんまりと笑った。
「か、返せよ!」僕は本を奪い返そうとした。
「はい レイ!」だが、アスカは綾波にパスを出した。
「何の本?」綾波は本の表紙を見て顔を赤らめた。
「見よう見よう」アスカも綾波の方を向き、二人で本を見始めた。
僕はすかさず部屋の照明を切った。
「シンジ何すんのよ」アスカが照明の電源を入れた。
僕は抵抗しても無駄だと悟り、布団をかぶって寝た。
「うわ〜この子すごいわね〜 この子も!
しかしこの本ショートカットヘアーの子ばっかりね」
綾波は本の表紙を見た。
「なになに?責任発行者 本田透 世界ショートカット教広報誌1月号!?」
「碇君こんな本読んでるんだ・・」綾波の声もする。
僕は恥ずかしさで顔から火をふくかと思った。
「あら、こんな所にしおりが挟まってるわね」アスカがページをめくった。
「!!」
「何よこれ、レイにどことなく似て無い?髪の色は違うけど・・・」アスカの声がする。
「ホントだ・・」綾波が小さい声で言った。
僕は精神崩壊一歩手前状態だった。
「シ〜ン〜ジ〜 これどういう事?」アスカが糾弾した。
「いや似てるなぁ〜と思って・・」僕はいいわけを言った。
「・・・・・」アスカと綾波は沈黙した。
「ねぇシンジ 髪の長い子と短い子どっちが好みなの?」アスカが小さい声で言った。
「その、どっちと言われても・・」
もはやこれは、髪の長さにかこつけた、代理戦争のような物だった。
短い子=綾波 長い子=アスカ である。
「いったい僕はどう答えればいいんだ!?」シンジは内心そう思った。
数秒の沈黙の後、
「・・・・グー」僕は寝たふりをした。
「寝たふりしてもダメよ!」アスカが言った。
「そうか、そうよねこんな本買うくらいなんだから、
短い子の方がいいのね・・」アスカが小さい声で言った。
「そんな事無いよ!アスカには長い髪が似合ってるし、逆に綾波には
短い髪が似合ってる! だから、そんな事言わないでよ!」僕はアスカに言った。
「もう寝ましょ」
数十秒の沈黙の後、アスカが部屋の電気を消して言った。
僕は数分後に眠りに落ちた。
そして翌朝
「碇君! 起きて!」僕は綾波に起こされて目覚めた。
「あ、おはよう 綾波」僕はあくびをしてから言った。
すでに綾波とアスカの布団はたたまれていた。
「もう朝御飯出来ますから」綾波が僕の布団を軽くたたんで部屋を出た。
「わかったよ」僕は言ってから寝間着を脱いだ 。
「おはよう アスカ」僕は着替えて食卓に座った。
「シンジ!飲み物用意してよ」アスカが料理しながら言った。
「うん」僕はコップを3つ用意して、牛乳を入れた。
綾波も何か作っているようだ。
「ホラ出来たわよ!」アスカがフライパンから3人分のフレンチトーストを
皿に移した。
「御弁当も出来ました」綾波が三人分の容器にごはんとおかずを詰めて
一つの袋に入れた。
「さ、食べましょ」アスカがフレンチトーストに噛り付いた。
「いただきます」僕と綾波も食べはじめた。
「うん おいしいよ!アスカ!」僕はフレンチトーストを頬張った。
朝食を食べ終えた僕達は、急ぎ足で学校に向かった。
「シンジ! 1時限目は何だったっけ?」アスカが僕に聞いた。
「国語だったと思うよ」僕はアスカに言った。
「国語かぁ」アスカが呟いた。
アスカは、こと理数系の科目はパーペキ(死語)なのだが、
国語とか、音楽とかがあまり得意では無いのだ。
「あら早いわね!」横の道から洞木さんが現れた。
「あ、ヒカリ おはよう!」アスカが声をかけた。
「おはよう!洞木さん」僕と綾波も声をかけた。
「みんなお揃いね」洞木さんが笑った。
僕達は雑談しながら学校に向かった。
「そういえば、再来週ねぇ 学園祭」洞木さんが言った。
「そうね 本来、体育祭やった年はやらないらしいけど、
今年は開校5周年の記念の意味を込めてやるみたいねぇ」
「で、学園祭の後で、私達2年生は修学旅行よねぇ
きついスケジュールよねぇ今年は・・」洞木さんが言った。
「そうそう 去年の学園祭はうちのクラスが喫茶店をやったのよねぇ」
洞木さんが感慨にふけっている。
そして、洞木さんが、僕の方をチラチラ見ては笑いを堪えているかのようだった。
そして、堪えきれずに笑い出してしまった。
「そうそう 碇君が女装してウエイトレスしたのよねぇ」洞木さんが腹を抱えて笑った。
「そうそう! 私がお化粧してあげたんだった」アスカも相づちを打った。
「へぇ〜 碇君の女装・・ ミテミタカッタ」綾波も呟いた。
「今年は何をやるのかなぁうちのクラス」僕は話の流れを変えようとして言った。
そんな事を話している内に、僕達は教室まで着いてしまった。
「もう、ホームルームが始まるわね」洞木さんが時計を見て言った。
「でも今朝は楽しかったわね」洞木さんがアスカに声をかけた。
「そうねぇ、シンジが早く起きたらゆっくり話が出来るのよねぇ」アスカが答えた。
「バカシンジこれからは毎朝早く起きるのよ!」アスカが僕に言った。
「起きられたらね・・」僕は呟いた。
「碇君! 朝御飯はちゃんと食べないと身体に毒ですよ!
だから、毎朝早く起きて食べましょうね!」綾波までそんな事を言った。
二人に集中攻撃を受けた僕は沈黙した。
今日の授業も無事何も無く終わり、
綾波の服を買う為に、僕達は街に向けて歩いていた。
「レイ! どんな服がいいの?」アスカが綾波に聞いた。
「・・普通の服なら何でも」綾波が俯いたまま言った。
僕達は、商店街から少し離れた路地にある、服屋に入って行った。
ここは、母さんがよく服を買う所なので、僕がここに連れて来たのだ。
「これなんかどうかな? 綾波!」僕は白いワンピースを手に取って
綾波に見せた。
「ダメよ そんなの!」後ろからアスカの声がした。
アスカがオレンジ色の洋服を持って立っていた。
「あんた色が白いからこういうの、似合うわよ」アスカが綾波に言った。
「ちょっと、派手じゃ無い?普段着なんだよ!」僕が異論を唱えた。
「・・わかったわよ もっかい探しましょ」アスカが珍しく折れた。
「そこにいる女の子に服を買いたいんだけど、何かいいのない?」
僕は顔見知りの店主に声をかけた。
「ん〜そうだねぇ サイズはわかるかい?」店主が僕に聞いてきた。
「あ、わからないや・・ おーい綾波ぃ ちょっとこっち来て!」
僕は綾波に声をかけた。
綾波が寄ってきたので、店主に採寸をして貰った。
「ん〜 ・・そうだ!」店主のおじさんが、倉庫に走って行った。
数分後、店主が3着の服を持ってきた。
店主が箱の埃を払った。
「これは全部御薦めだよ! 碇の坊っちゃんだから、売ってあげるよ」店主が言った。
「可愛い彼女へのプレゼントなんだろ」店主のおじさんが僕の耳元でささやいた。
「そ、そんな・・」僕は真っ赤になってしまった。
「これサイズ同じなの?」僕は箱から服を取り出した。
「ああそうだよ! それに、全部メーカー品じゃ無いよ!
買う筈だった人のサイズに合わせて作ったんだけどね
私がサイズ間違えて小さく作ってしまったんだ。
もっとも、取りにも来なかったけどねぇ! なにせ10年位前の事だからねぇ
まぁ料金は前払いで貰ってたからねぇ」
「ホラ、ここに、注文表が残ってる」店主のおじさんがタグを見た。
「綾波ハルカさんの注文だな もう時効だし、いいだろう」店主が言った。
「今何とおっしゃいました?」綾波が店主に詰め寄った。
「綾波ハルカとか言いませんでした?」綾波が店主に言った。
「ああそうだよ」店主がもう一度手元のタグを見て言った。
「母さんの・・」綾波が涙ぐんだ。
「彼女僕の死んだ叔母の綾波ハルカさんの娘で、僕の従兄弟にあたるんだ。」
事情を察した僕が店主に言った。
「そりゃ本当かい?」店主も驚いていた。
「そういえば、碇ユイさんも一緒に来てたような!」店主が何かを思い出そうとしている。
「綾波!学生証あるだろ!」僕は綾波に言った。
「・・ウン・・」綾波がポケットから学生証を取り出した。
店主はそれを受け取ってうなずいた。「本当だ」
「これも、母さんの形見なのね・・」綾波が服を手にして涙を落とした。
「綾波ハルカおばさんはアメリカに渡って死んだそうなんだ」僕は店主に言った。
「そうだったのかい・・」店主ももらい泣きをしていた。
僕はやけに静かだと思い振り向くと、アスカもハンカチを目に当てて、
店の片隅で泣いていた。
「そうだ!お嬢ちゃん 取りあえず着てみなよ!」店主が涙を拭きながら言った。
「そうだよ 綾波!」僕は一番上にあった服を綾波に手渡した。
「そこだよ」店主が着替える場所を指差した。
綾波は服を手にして着替えに行った。
数分後
着替えた綾波が現われた。
「綾波! すごく似合ってるよ!」僕は綾波に声をかけた。
「碇君 本当?」綾波が頬を染めて言った。
「後の二着は色違いだよ デザインも同じだ。」店主が言った
「じゃ、これを買わせてもらうよ!」僕は店主にカードを差し出した。
「駄目だよ」だが、店主のおじさんは首を振って言った。
「売ってくれないの? どうして!」僕は店主に言った。
「さっきも言ったように、それはもうお金を受け取っているんだ
だから、お金はいいんだよ! 」店主が笑いながら言った。
「お嬢ちゃん 着て帰るかい?」店主が綾波に言った。
綾波は無言で首を縦に振った。
「そうかい」店主はもう2着分の箱と、綾波が着ていた制服を
紙袋に入れて僕に渡してくれた。
僕達は店を出て家路に向かった。
「レイ良かったわね」アスカが綾波の肩に手を置いて、言った。
「碇君 惣流さん 今日はありがとう!」綾波が僕達にお礼を言った。
「綾波! そんな水臭い事言わないでって、言ってるだろ!」
僕は頬を手でかきながら言った。
「けど、本当に似合ってるよ! その服」僕はまじまじと綾波の服を見た。
綾波は何故か赤い顔をしていた。
「シンジ! レディの服をそんなにしげしげと見るもんじゃ無いわよ!」
アスカが僕の襟を掴んで言った。
「クスクス・・」見ると綾波が笑っていた。
僕もつい、つられて笑い出してしまった。
「何よ何よどうしたのよ!」アスカが訳がわからなくなって混乱した。
10分後
僕達は、家に帰り着いた。
綾波とアスカの作った晩御飯を僕達は、ワイワイ話しながら食べた。
食べおわってくつろいでいると、居間の電話が鳴ったので、僕は電話を取った。
「あ、シンジ?御飯はもう食べた?」母さんからの電話だった。
「うん 今食べたよ あ、そうそう綾波の服なんだけど・・」
僕は今日あった事を母さんに伝えた。
「そう 良かったわね」母さんが鼻をグシュグシュいわせながら言った
「もう・・母さんも涙もろいんだから」僕は呟いた。
こうして、僕達三人の共同生活は二日目を終えた。
碇ユイの帰還まで、あと二十八日!
第5話 【徴兵】Aパートに つ・づ・く
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