二股モード アスカ様らぶらぶモード 綾波らぶらぶモード

裏庭エヴァンゲリオン第6話【学園祭】



そして、学園祭の朝

「ほらシンジ起きなさいよ!」
誰かが僕の肩を揺すっている。

「んあ・・あ〜アスカか おはよう」僕はようやく目を覚ました。
「ほら、今日は学園祭だから、朝早いのよ!支度しなさい!」
アスカが僕の毛布を剥いで、僕を急かした。

「わかったよ・・」僕はあくびを噛み殺して、立ち上がった。

「もう朝御飯の準備は出来てるから早くきなさい!」
アスカはそういって、僕の部屋から出ていった。

「今日も朝から機嫌が悪いなぁ」僕は呟きながら、寝間着を脱ぎ、制服を着た。

「おはよ〜」僕はそう言って食卓に歩いていった。

「あ、碇君おはよう! もう出来るから、座ってて!」
綾波が料理の手を止めて言った。

「うん」僕は食卓の椅子に座った。

「いい匂いだなぁ」僕は鼻をひくつかせた。

「ほら シンジ!あんた顔洗った?」アスカが僕の顔を指差した。

「あ、そうだった・・」僕は洗面所に向かった。

バシャバシャ

僕は顔を洗い、髪に手櫛を入れて、再び食卓に戻った。

僕が席に着くと、味噌汁とごはんと海苔が置かれていた。
「早く食べないと遅れるわよ!」アスカが僕を急かした。
「わかったよ・・ いただきます!」
僕はそう言ってから味噌汁を啜った。
「おいしい 今日の味噌汁とてもおいしいよ!」僕は綾波に言った。
「本当?碇君」綾波が箸を置いて言った。
「うん!」僕はごはんの上に海苔を乗せて食べた。
「この焼いたシャケも御飯に合うなぁ」僕は食べながら言った。
「まだ残ってるから、明日の弁当にも入れとくから」アスカがお茶を飲み終えてから言った。

「ありがとう!アスカ!」僕はアスカに少し微笑んだ。
「・・別にあんたの好物だからって作った訳じゃ無いのよ・・」
アスカが小声で呟いた。
「無理しちゃって・・」綾波が微笑んだ。

「え?何?どうしたの」僕は訳が分からず混乱した。
「何でも無いのよ 碇君!」綾波が食事を再開した。

数分後

ピンポーン ピンポーン

ドアホンの音が鳴り響いた。

綾波がリモコンを押してドアのロックを外した。

ガーガシャン

「おまえら まだ飯食うとんのかい?」トウジが笑った。
「鈴原は朝食べて来なかったんでしょ!身体に悪いわよ!」
洞木さんがトウジに言った。

「一人で朝飯作るのは面倒なんじゃ」トウジが頬を手で掻いた。
「そうなの・・」洞木さんが俯いた。
「委員長が気にせんでもええって」トウジが洞木さんの肩に手を置いた。

「何か いや〜ん な感じだなぁ」ケンスケが独り言を言った。

「ちょっと待ってて! すぐ終わるから」僕はトウジ達に声を掛けて食事を再開した。

僕は二杯目の御飯の上にふりかけを振った。
「ねぇお茶まだあるよね!」僕はお茶の入ったきゅうすを手繰り寄せて、
御飯の上にお茶を掛けた。
僕はお茶漬けとたくあんで、お腹が張ってしまった。

「さ、学校に行きましょうか!」アスカが立ち上がった。
「うん! 待たせてごめんね!」僕は三人の方を向いた。

「あ・・・碇君! 御飯粒が」
綾波がそう言って僕のほっぺについてた御飯粒を取り除いた。
「あ、ありがとう」
「ほら 遅れるわよ! バカシンジ!」アスカが僕を急かした。

数分後

僕達は走りながら学校へ向かっていた。

「今日午前中のうちのクラスの公演が終わったら、後は遊びほうだいなのよね!」
アスカが走りながら洞木さんに言った。
「そうよ! だから白雪姫を成功させましょうね!」洞木さんが答えた。

「おいトウジお前何の役だったっけ?」ケンスケがトウジに聞いた。

「木だよ」トウジが答えた。
「え?何だって?」ケンスケが聞き返した。
「木の役なんだよ! だから立ってるだけでいいんだよ!
そういうお前は小人だったな!」トウジがケンスケに言った。

「そうなんだよなぁ 制作費が足らないのと、時間が無いせいで、
まるで前衛映画のように、人が木になったり、山になったり・・」
僕は思い出しながら呟いた。

「碇・・お前はいいよな!王子様役だからな」ケンスケが呟いた。
「恥ずかしいだけだよ」僕は呟いた。
「わしなんか、おじいが研究所休んで見に来るんやで!
来んでもえいって言うてんのに・・」トウジが呟いた。
「俺の所もさ、おやじが来るんだよ・・」
「はぁ〜 ×2」

「早くしないと遅れるわよ!」アスカが僕達に発破をかけた。

僕達は階段を走りあがって教室に走り込んだ。

「ぎりぎりセーフ!」僕は安堵した。
だが、教室には男子しかいなかった。

「遅くなっちゃったぁ」洞木さんも入って来た。
「あ、もう着替えに行ったのね・・」
洞木さんは、綾波とアスカを連れて、空き教室に向かった。

「着替えるとするか・・」僕は王子様の服を着た。
一部の着替えを要する者以外は、制服のままだった。

「おい! 碇が準備出来たってよ!」クラスの男子が、空き教室に声をかけた。

「ハイハイ」アスカが化粧箱を持って現われた。

「ほら座りなさい!」胸元が開いた薄紫色のドレスを着たアスカが、
僕を椅子に座らせた。
キョウコおばさんのドレスを借りて来たって言ってたけど・・
「え〜と まず白粉ね」パタパタ
アスカが僕の顔に白粉を薄く塗った。
「それから、眉毛を黒く塗ってと・・ あ、この色にしようかな」
アスカは僕の化粧に没頭していた。

「ア、アスカ・・その、谷間が見えてるよ・・」僕は震える声でアスカに言った。

「え?どうしたの?」アスカが化粧の手を休めずに答えた。
「うん・・何でもない・・」アスカが気付かなかったので、僕は知らないふりをした。

「おかしいわね・・まだピンクのファンデーションを
付けて無いつもりだったのに、顔が赤いわね・・」アスカが僕の顔を触った。
「ま、これでいいか! 」アスカが化粧箱をたたんだ。

ガラガラッ 教室の扉が開いて、ミサト先生が顔を出した。
「あと10分で公演開始だからね!」ミサト先生はそれだけ言って出て行った。

5分後
着替えの終わった女子達が教室に入って来た。

「さあ、白雪姫の到着ですよぉ」洞木さんが白雪姫の格好をした綾波を連れて来た。

「さぁ 時間ですよ!みなさん!」ミサト先生が教室に入って来た。

「さぁて 木になって来るかな・・」トウジが呟いた。

「ま、そう言わずに・・公演が終わったら、自由行動なんだから!」
ケンスケがトウジをなぐさめていた。
「自由行動ねぇ・・」だがトウジは元気が出なかった。
「ねぇトウジ! 高等部の2年A組の人達がタコ焼きするって言ってたよ」
僕はトウジに言ってあげた。

なにせ、クラスの数が少ないので、出し物も少ないのだ。
ま、新設校で生徒がまだ少ないから仕方無いんだけど・・
だから、一段上の区画にある 第三東京市立第一高校も
同時期に学園祭をして、自由に行き来出来るようにしているのである。
後、文科系の各クラスの出し物とかだけがこの校舎であるだけなのだ。
僕達は長い校名を言うのが面倒なので、高等部と呼んでいた。

僕達は体育館の狭い控え場所で、出番を待っていた。

わーーー パチパチパチ

僕達の前に公演した、1年B組の生徒達が、もう一方の出口から出て行った。

「それいけっ!」ミサト先生に先導された僕達は所定の場所に行った。

まず、木の役のトウジ達は、首から、”木”と書かれた札を下げて所定の場所についた。
さらに奥には、数人がピラミッドを作り、山を形どっていた。

−−scene1−−

7人の小人達が舞い踊る森の中に、綾波扮する白雪姫が登場した。

「わぁ!白雪姫だ!」
「美しいなぁ」
「僕らと踊ろうよ!」

ナレーション
「とある国の東にある森に住んでいる、少女は、その白い肌と美貌で、
白雪姫と呼ばれていたのです」

「ええ」
白雪姫と7人の小人はまるでミュージカルのように、歌って踊った。

「もう限界だぜ・・」
「俺もだよ 死ぬな!」
奥の方でピラミッドを作って山を表現している数人の顔は蒼かった。

−−scene2−−

アスカが扮する魔法使いは、鏡に向かっていた。

「鏡よ鏡よ鏡さん 世界で一番美しいのは誰?」

「アスカ様ぁ〜」その時、観客の中の、アスカのファンクラブ(非公認)の
メンバーが叫んだ。 彼らは自称”アスカ様の下僕”を名乗っているらしい。
本当のアスカを知れば・・・と僕は思う。

そして鏡から、綾波扮する白雪姫の顔が浮かびだした。

「ををおぉ〜」ギャラリーは少し驚いているようだ。
実は、これは鏡では無く、鏡の枠にラップを張って、スポットの調整で
鏡に見せかけていたのだった。
そのラップに後ろに隠れていた綾波が顔を突っ込んだ、という訳なのだった。
「こやつは何者じゃ!」アスカ扮する魔法使いが叫んだ

すると従者が出てきて
「これは、東の森に7人の小人と共に住んでいる”白雪姫”です!」
と言って去って行った。
「クク 白雪姫だとぉ・・」アスカ扮する魔法使いは顔を真っ赤にして怒った。

−−scene3−−
「え〜リンゴぉ〜 リンゴぉ!」アスカ扮する魔法使いは、
リンゴの入った駕籠を手に、白雪姫の住む、森の街にいた。

そして、小人役の生徒が前を横切った。

「ちょいとお待ちよ小人さん!」アスカ扮する魔法使いが声をかけた。

「なんだい? オイラに用かい?」小人が立ち止まった。
「私はリンゴを売ってるんだけど、誰も買ってくれないんだよ・・
だから まけとくから、買ってくれないかい?」アスカ扮する魔法使いが言った。

「いくらだい?」小人役のケンスケが答えた。

「全部で銀貨一枚でいいんだよ・・売れないと、薬が買えないもんでねぇ ゴホゴホ」
アスカ扮する魔法使いが言った。

「わかったよ 買ってあげるよ! ほら!」ケンスケ扮する小人が銀貨を渡して、
リンゴの入った駕籠を手にして白雪姫のいる森に向かって行った。

「しめしめ・・これで、白雪姫は・・」アスカ扮する魔法使いはそういって退場した。

−−scene4−−

「白雪姫ぇ」ケンスケ扮する小人が綾波扮する白雪姫のいる森に着いた。

「あら、小人さん なあに?」綾波扮する白雪姫が声を返した。

「ほら おいしそうでしょ! リンゴ貰ったんだ! 白雪姫にあげるよ!」

「まぁ、ありがとう!」綾波扮する白雪姫は駕籠の中からリンゴを一つ取ってかじった。

「うっ!・・・・」綾波扮する白雪姫は倒れてしまった。

「ああっ 白雪姫! 白雪姫!」7人の小人が集まり、倒れた白雪姫の周りを回った。

「眠っているだけです!」小人の一人が、白雪姫の胸に耳を当てて言った。

ナレーション
だが、呼べど叫べど白雪姫は目を覚まさなかった。
それはともかく!踊っていないでなんとかしろ!と皆さんお思いでしょう。

ワハハハハ
ギャラリーは笑ってしまった。

−−scene5−−

途方に暮れる小人達の横に、馬に乗った(生徒3人で騎馬を作っている)
王子様役の僕が進んで行った。

「どうかなされたんですか?」僕は小人に声をかけた。

「白雪姫が、白雪姫が目を覚まさないのです!」
小人の一人が王子様役の僕の足元にひざまずいた。

(よいしょっと・・)僕は馬から降りた。

「をを これは美しい!」僕は棒読みながら、覚えさせられた台詞を言った。
そして、顔を綾波扮する白雪姫の顔に近づけて行った。
(ドキドキ 本当に綾波にははまり役だなぁ・・毎日見てる綾波とは違うみたいだ)

その時、僕の頭の中に、黒い服を着た僕が現われた。
{そのままキスしちゃえよ! }僕はその考えに辿り着き、驚愕した。

更に、白い服を着た僕が頭の中に現われて、
{駄目よ! そんな事しちゃ!綾波さんに嫌われるよ}と言った。

「僕はどうしたらいいんだぁ〜」僕は内心そう思った。
だが、無情にもナレーションが始まってしまった。

ナレーション
王子様のキスで何と、白雪姫は目覚めたのです。

僕は綾波に手を貸して立ち上がらせた。

「あ、あなたは?」綾波扮する白雪姫が台詞を言った。
「やぁ目覚めたようだね 僕はこの国の王子なんだ!」
「王子様?」
「君・・僕と一緒にお城に来ないかい?」
「本当ですか? 」
僕はこの台詞のやり取りが苦手で、練習で何度も失敗したんだが、
なんとか無事間違える事無く言えた。

そして、出場者全員で ミュージカル風のダンスを踊って 幕が降りた。

アンコール! アンコール!
ギャラリーは熱狂して叫んでいた。
「あと1分あるから、並びなさい!」
ミサト先生が僕達を横に並ばせて、幕を上げ、
僕達は観客に頭を下げた。
そして再び幕は降りて行った。

「ハイ お疲れさん!」僕達は教室まで戻って来ていた。
「さ、メイクを落したら、後は自由行動よ!」ミサト先生がそれだけ言って、
教室を出ていった。

「さ、メイク落して来なきゃ」僕は洗面所に向かった。

バシャバシャ 丹念に顔を洗って白粉などのメイクを落す事が出来た。

「さて・・」僕は教室に帰った。

「よぉ碇お疲れさん」トウジが机の上に座っていた。
トウジはいつものジャージに”木”と書いたカードを首から下げるだけだったので
着替えの必要が無かったようだ。
「もう 足がぱんぱんや! おじいがうまいもん食わしたる言うんで、
行って来るわ!」トウジがそういって教室から出ていった。
ケンスケも首からカメラを下げてとっくの昔に教室を出たようだ。

数分後

僕が着替えを終わり、いつもの格好に戻った時、アスカと綾波も戻って来た。

「いやぁ疲れたけど、面白かったねぇ」僕は笑いながら二人に言った。
「しかし、よく台詞間違えなかったわね」アスカが笑いながら言った。
「うん・・稽古じゃ間違えてばっかりだったからね 不安だったよ」
僕はアスカに言った。
「さ、後はあちこち行って楽しみましょうね!」アスカが張り切っていた。
「じゃ行こうか!」
僕達は、まず各クラスの出し物を見に行った。

「まず一階の一年生の組にしましょう!」アスカが地図を広げながら言った。
僕達は階段を降りて、一階に行った。

「まずは一年A組の”射的”ね!」アスカがガイドの地図を見ながら言った。

「ここだな!」僕達は、1年A組に入って行った。

ぱーん ぱーん
室内は乾いた音が断続的に聞こえていた。

「当たったぁ!」射的をしていた男子がガッツポーズをした。
「景品くれよ!」その男子が係員に言った。
「ハイ 京浜」係員がそう言ってチケットを手渡した。
「なんだよこれ 高速道路のチケット?」
「京浜高速道路のチケットだよ 良かったね」

「どうやら、的は全部同じで、裏側に数字が書いてあるみたいだ。
壁には景品が並べられていた。

「ちえっ」男子がぶつぶつ言いながら教室を出た。

「どうする?」アスカが僕に聞いた。
僕は景品の中のある物に目が行っていた。
「欲しい・・あの写真・・」なんと、景品の中には、隠し取りらしい、
綾波や、アスカを含む、校内の美少女の写真も景品になっていたのだ。

「1週間前に、私達に、ケンスケの奴がおごってくれたのよねぇ・・」
アスカが呟いた。
そういえば、並んでいるエアガンも種類がまちまちだった。
銃もケンスケのコレクションのようだ。

「やります! やらせて下さい!」僕はそう言って500円玉を係員に渡した。
大体、100円で5発なのだが、500円買えば30発なのだ。

「よーし!」僕は意気込んで銃を構えた。
パーン
一発目はあえなく外れ

そして、6発目で、的が倒れて落ちた。
「え〜と 61番ね ハイ!」係員が僕に”輪投げセット”を渡してくれた。
「よぅし! 」僕は再び、銃を構えた。
”目標をセンターに入れてスイッチ!”と言ったかどうかは定かでは無いが、
僕は次々と的を落して言った。

「ハイおめでとう”るーみっくキューブ”だよ」
係員が、漫画の絵が入ったパズルゲームをくれた。
「ハイおめでとう 生写真だよ」
(えっ 生写真? わくわく)
だが、僕が渡された写真は、僕の体育祭の時の写真だった。
「何で僕の写真まで・・」

「よーし 今度こそ!」僕は的にあてる事に集中した。

「何か気合入ってるわね」
「そうですね・・熱血も使ったのかしら?背中が燃えてるみたい・・」

そして、22発目
「はい おめでとう お兄さん良くあてるねぇ”
これはレア物の、海に沈んだ”足摺岬”のフラッグだよ 大事にしてね!」

「後8発! 当ててみせるっ 」僕は気を落ち着けて的に向かった。

「落ちろっ 落ちろっ 落ちろっ」
「いってしまえぇ〜」
「落ちろ カトンボ!」
僕はぶつぶついいながら銃を撃った。
そしてあと2発しか弾は残っていなかった。
「よし!」僕は裏技を使い、弾を二発同時に込めて、隅っこの的を狙った。

パーーン 発射された弾は二発とも、狙った的に当たった。
「落ちろ!」僕は思わず叫んでしまった。
的は少し前後にふら付いているようだ。
どうやら、セロテープで止めてあったようだ。
「ずるいわよ!」アスカも係員に言った。
「あちゃあ」係員は首をすぼめた。
ようやく下に落ちた的を係員が拾って言った。

「はい 生写真部門では特等の写真ですよ!」
係員がそう言って紙袋に入った写真を渡してくれた。

「何、何?見せなさいよ!」あっという間に写真はアスカにひったくられた。

「こ、こんな写真が残ってたなんて!!」アスカが叫んだ。
「・・・・ぽっ」
「え〜なにぃ どんな写真なの?」僕はそう言って写真を覗き込んだ。

その写真は体育祭の時、最後の三人4脚で僕達が走った時の写真だった。
それだけなら、アスカも声を出さなかっただろうが、
最後の方で、アスカと綾波の胸に手をかけて走っている時の写真だったのだ。

「ま、後がつかえてるから移動しようよ!」僕はすかさず景品を貰った袋に入れた。

「じゃ、次は隣の1年B組にしましょ」アスカがガイドブックを見ながら言った。

「喫茶店かぁ どうする?」僕は二人に聞いた。
「喉乾いたし、何か飲んでいきましょ」アスカが答えた。
「私もそれでいいです」綾波も答えた。
僕達は窓際の席に座った。
客の入りはまぁまぁと言ったところだ。

「僕はこのミックスジュース!」僕はオーダーを聞きに来た女の子に言った。
「私もそれでいいわ」アスカが言った。
「綾波は何にする?」僕は綾波に声をかけた。
メニューを見ていた綾波は最初訳がわからなそうだったが、
「ミックスジュースをお願いします」女の子に言った。

僕達はミックスジュースを飲みながら、先程の戦利品を分配していた。
「輪投げセットにシンジの写真に、パズルに、足摺岬に、・・・・か」

「・・・・」綾波が僕の写真の方を見ているような気がした・・まさかね・・

「じゃ、シンジには、足摺岬とこの写真をあげるわよ!」アスカが言った。
「レイ!あなたには、輪投げセットと、バカシンジの写真をあげる!」
アスカが綾波に言った。
「あ、ありがとう アスカちゃん しんちゃんのしゃしんくれるの?
じゅるじゅる(c)へぼレイ」と言ったかは定かでは無い。(爆)
が、綾波は嬉しそうに、景品を貰っていた。
「私はこのパズルよ!」アスカは早速パズルをやっていた。
「ほら 揃ったわよ!」アスカがパズルを見せてくれた。
六面体のパズルには、こたつに入った猫や、ひよこのマークの入ったエプロンを
着た女性や、虎縞のビキニの女の子の漫画が
出来上がっていた。

「次はどこにする?」僕は情報誌を見ているアスカに言った。
「二年B組の、お化け屋敷にしましょ!」アスカが言った。
「怖がりのくせに、好きなんだから・・」
僕はアスカに聞こえないように呟いた。
「さぁ行くわよ!」アスカが立ち上がった。
僕もレシートを持って立ち上がった。

「1050円になります」僕はお金を払って外に出た。

僕達は2Fに上がった。
「あちゃぁ〜混んでるわねぇ」アスカが目を手で覆った。

2年B組の出し物のお化け屋敷は、あまり出し物が無いこの中学にとっての
一大イベントだったのだ。
「また後で来ようよ!」僕はアスカに言った。
「次はどこにしようかしらね」アスカと綾波が情報誌を見ていた。

「あ、そうだ、3Aが何か上映会をやるって言ってなかったっけ?」
僕は誰かに聞いた事を思い出して、アスカに伝えた。
「どれどれ?3A・・・あほんとだ」アスカが情報誌の中の一点を指差した。
「それでいい?綾波」僕は綾波に声をかけた。
「それでいいわ」綾波が答えた。

僕達は階段を上がり、3Fに上がった。
「あ〜アレかな?」3年A組の前に、人が集まっていた。
「3分後に上映するぞぉ」三年生の男子が客を呼んでいた。
「始まるみたいだね 急ごう!」僕はアスカと綾波に声をかけた。

「はいいらっしゃい! さぁ前が空いてますよ どうぞ!」僕達は案内されて、
比較的前の方の席に三人並んで座った。
綾波とアスカに挟まれて座っているので何か落着かなかった。
「で、何の映画なんだっけ?」僕は素朴な疑問を口にした。
「さぁ」アスカが答えた。
「さ、さぁって言われても・・」僕は呟いた。
「あ、始まるみたいよ!」綾波が小さい声で言った。

そして、画面に、画像が映し出された。
【完結スパット!】(c)yusaku

スパット参上! スパット完結!
主題歌が始まった。

「何だこれは・・」僕は画面に見入っていた。
内容は、前世紀の特撮作品のパロディのようだ。
物語を途中のいいところで止める、”蛇の生殺し軍団”に立ち向かう戦士が、
スパッと、物語を完結させる物語だ。

約15分の放映が終わり、僕達は部屋を出た。

そして廊下で、次行く場所の選定をしていた。
「しかしさっきのスパットって面白かったわね」アスカが感慨にふけっていた。
「あぁアスカ戦隊物とか好きだったもんね」僕は子どもの頃を思い出した。

「3年B組は何をやるのかな?」僕は隣の教室を覗いた。
「え〜と3Bはねぇ占いですって」アスカが情報誌を見ながら言った。

「じゃ、覗いて見ようよ・・」僕はアスカと綾波を連れて、部屋に入った。

室内のテーブルの上に水晶球と、タロットカードが置かれていた。
他にも、ゲームセンターにあるような、占いの機械が並んでいた。
「あれ・・やってないのかなぁ」僕はテーブルの上を見た。
テーブルの上には”食事中!すぐ戻ります”と書いた札が置いてあった。

アスカは筐体に付属のキーボードに何か打ち込んでいるようだった。
綾波にも声をかけて、二人で楽しげにしていた。

「何ぃ?」僕が覗き込もうとしたが、アスカに止められた。
「ちょっと待ちなさいよシンジ 今から面白い事してあげるから」
アスカはそういって、キーボードを操作した。

1分後、アスカと綾波の入力が終わったようだった。
「さ、シンジ来なさい!」アスカが僕を機械の前の椅子に座らせた。
「ほらこれに手を置いてぇ 人差し指をそこにかけてぇ そうそう」
僕は左手を妙な機械の上に置いた。 さらに、口のあたりに、
マイクがそなえつけられていた。
「いい!シンジ! 質問にはすべて”NO”と答えるのよ」アスカが僕に説明した。

「わかったよ・・」僕は観念してアスカの言う通りにした。

「それじゃいくわよ」アスカがボタンを押した。

すると、画面に恐い顔をした閻魔大王のような絵が現われた。
「嘘はついてはいかんぞぉ 今からおまえを試してやるぅ〜」

その後に、”第一問 あなたは、
綾波レイのパンツをまた見てみたいと思いますか?”小悪魔のようなキャラクタが出て来た。

「そっ そんな問題!!」僕はあせってしまった。
”ドウシタ! ドウシタ”小悪魔が左右に踊っている。
画面には地震計のような物が映し出されていた。
「NOって言えばいいのよ」アスカが横から助言した。

「の NO」僕は掠れるような声で言った。

”第二問 あなたは、惣流アスカを見てむらむらした事がある!”
小悪魔が出てきて催促した。

「の、NO」僕は震える声で答えた。

”第三問 あなたにとって綾波レイは単なる従兄弟では無い”

「・・・NO」僕は答えた。

そして、アスカと綾波の作った問題 計20問に僕は苦しめられた。

”さぁ 閻魔大王の裁判だ!”小悪魔が現われて言った。

ダダーーン 画面が裂けて閻魔大王が現われた。

”くぉの 大嘘つきめがぁぁ〜 舌を引っこ抜いてくれるぅ!”
大音量で声が聞こえた為、僕は驚いて、椅子ごと転倒する所だった。

そして、印刷の音の後、恐怖にひきつる僕の顔がプリントされたシールが出て来た。

「きゃはは!面白〜い」アスカが僕の顔写真を綾波に見せて喜んでいる。

「もういいだろ・・次行こうよ」僕は動揺を隠して言った。

「しかし、あんた さっきの試験 大嘘つきだったわね!
じゃ、あの質問はすべてYESだったのかしらね」
アスカが悪魔のような微笑みをして言った。

「あ、続きが出てきた・・」綾波がプリントされた表を手に取った。

”第一問 あなたは、綾波レイのパンツをまた見てみたいと思いますか?”
心拍数=120%_手の震え=大_声の震え=中 診断の結果【嘘】と判明しました。

”第二問 あなたは、惣流アスカを見てむらむらした事がある!”
心拍数=124%_手の震え=大_声の震え=大 診断の結果【嘘】と判明しました。

「うわぁぁぁぁ!」僕は綾波の手から、プリントアウトされた用紙を奪おうとしたが、
一瞬早く、アスカの手がそれを奪っていた。
「返してよう・・・」僕はアスカに哀願した。
「・・・・わかったわよ これは捨ててあげるわよ・・」
アスカがそう言ってごみ箱に診断結果表を捨てた。

「さ、次行きましょ!」アスカが再び、情報誌を広げた。
「そろそろお昼御飯にしないかい?」僕はアスカに言った。

「どこにする?」僕達はその部屋を出ていった。

が、入れ違いに、もう一つのドアから誰かが部屋に入って行ったのを、
僕達は知らなかった。

「いただきまーす」僕達は少し空いてきた学食でカレーライスを食べていた。
僕達は食べ終えて、午前中の事など話していた。
「昼からどこに行く?」僕はアスカに何気なく言った。

「そうねぇ クラブの出展も見逃せないし、高等部も行きたいわねぇ」
アスカが水の入ったコップを机に置いて言った。
「そういや、アスカも綾波も一応クラブ入ってたよね」僕は二人に聞いた。
「明日はそっちに行くのよ・・私もレイもね」アスカが答えた。
「そう言えば、僕も明日は吹奏部に行かなきゃ」僕も呟いた。
「ま、普段顔出して無いんだから、こんな時くらいはね・・」アスカが言った。
僕達の中学は、全員が何かのクラブに入る事になっているのだ。
だから、必然的に、幽霊部員が多い訳なんだ。
綾波は図書部 アスカは放送部 だったかな?

「じゃ、昼からは、まずクラブの出展を見ましょう!」アスカが提案した。
「綾波もそれでいい?」僕は綾波に声をかけた。
綾波は無言で肯いた。

僕達は、クラブの出展が固まっている、使われていない4Fの開き教室に移動した。

「まずは、美術部にしましょうか」アスカの後を僕達は着いて行った。

1時間後・・・・
僕は、疲れて階段の踊り場で休んでいた。
「一気にあんだけのクラブ見て回るんだもんなぁ」僕は思わず呟いてしまった。

僕が休んでいると、綾波とアスカが最後のクラブから出てきた。
「さぁ少し休んでから、高等部行こうよ!」僕は二人に提案した。
「そうだ! 高等部行けば、食べ物の出店もあるじゃない!
買って、そこの公園で食べましょうよ」アスカが提案した。

僕達は校舎を出て、坂の上にある高等部に上がって行った。
「いい匂いがする・・・」綾波が呟いた。
「あ、ホントだソースの焦げる独特の匂いだね」僕も鼻をひくつかせた。

「え〜と、ヤキソバに、たこ焼きに、クレープに、ホットドッグかぁ」
僕達はどれにしようかと迷い、売り場を覗きながら移動していた。

ホットドッグコーナーを通り過ぎようとした時、

「おい! 惣流君じゃ無いか!」誰かが、アスカを呼ぶ声がした。

「あ、山本先輩じゃないですか? お久しぶりです」
アスカが声をかけてきた高等部の人に挨拶した。
「どうだい?惣流君!まじめに部活に出てるかい?」山本と呼ばれた人が言った。

「ん〜 すみません あまり・・」アスカが珍しくしおらしい事を言っていた。

「僕はまだ諦めて無いからね・・・」山本先輩は笑いながら言った。
「すみません 山本先輩・・」アスカが俯いた。

「いや、何気にする事無いんだよ・・ そうだ、このホットドッグなんだが、
全然売れないんだ・・ヤキソバや、たこ焼きのように匂いが出ないから、
お客が寄り付かないんだ・・ だからあげるよ」
山本先輩がそう言って袋に三人前のホットドッグを入れてアスカに渡した。

「それじゃ元気でね! 今度高等部の放送部にも遊びに来なよ!」
山本先輩が最後にそう言っていたのを僕は聞き逃さなかった。

「それじゃ ありがとうございました!」僕達は、飲み物を買って、
中等部と高等部との坂の途中にある公園に入って行った。

僕達はベンチに開いて 貰ったホットドッグを食べはじめた。

何故か気まずい雰囲気の中、僕達は食べる事に集中した。
そして、ホットドッグを食べ終えて、ジュースを飲んでいる時・・・
僕は話を切り出した。

「山本先輩って確か、僕達が一年だった時に、3年A組だった人だよね」
僕はさりげなくアスカに聞いた。

「・・・・そうよ シンジも知ってるでしょ」アスカが無表情のまま答えた。
「そう 一年前の学園祭の時、アスカがその声を見込まれていきなり、
放送部にスカウトされたんだったね・・・」僕は少し思い出す事が出来た。
「それが何なのよ 関係無いでしょ」アスカはぶっきらぼうにそう言って
紙コップを握り潰した。
「いや、あの・・山本先輩に合ってから、元気無いからどうしたのかと思って」
僕はアスカの方を向いて言った。
「どうって事無いわよ! 昔ちょっと憧れてただけの事よ!」
アスカは俯きながら言った。
「その割りには、相手も吹っ切れて無かったみたいだけど・・」
綾波がジュースを飲み終えてから言った。
「デートに誘われた事あったのよ・・」アスカが小さい声で話し始めた。
「で、デートに行ったの?」僕は疑問を口にした。
「行って無いわよ・・」アスカが答えた。

「何故? 向こうもアスカを好きで、アスカも憧れてたんだろ?」
僕はつい言ってはいけない事を言ってしまった・・だがその事に気づきもしなかった。

「行く気だったのよ・・一番いい服に着替えて 軽くお化粧もして・・
だけど、その時・・・シンジあんたが、風邪を引いてしまって・・
40度の熱を出して寝込んだのよ・・ユイおばさまがいなかったから、
私は・・・私は・・」アスカが言い終えてから涙を一粒落した。

「そ、そうだったのか・・・・ゴメン」僕はアスカに謝った。

「先輩に弁解したかったんだけど、卒業してしまったし・・・
だから山本先輩は未だに私に振られたと思っているのよ・・
それが言い出せ無くて・・・・・」アスカが手で顔を覆った。

「そう・・・そうだったの それで今でもその人が好きなの?」
綾波がハンカチをアスカに渡しながら言った。

「私はもう割り切ってるし・・今は・・・」アスカが綾波に小さい声で言った。

「なら、その山本先輩に今からでも遅く無いから、事情を話したら?
そしたら、もう思い悩まなくても済むでしょ」綾波がアスカを諭していた。

「碇君はここで待ってて」綾波が僕に言って、アスカを立ち上がらせた。

「レイ・・ありがと おかげで振っきれそうよ」アスカが素直に綾波に礼を言った。

「シンジ そこで待ってるのよ!」アスカは僕に向かって言った。
「わかった・・待ってるよ ずっと・・」僕はアスカに答えた。

「・・・・ばか・・・」アスカはそう言い残して綾波と一緒に坂を上がって行った。

僕はベンチの上で横になって寝た。
押さえた手の隙間から、まぶしい光は容赦なく僕の瞼に降り注いだ。
だが、僕はそれを心地よいと思った。

そして、平穏な日々は終わりを告げようとしていた・・・・

裏庭エヴァンゲリオン第6話 終

裏庭エヴァンゲリオン第7話【徴兵】Aパートに、つ・づ・く