裏庭エヴァンゲリオン第7話【初陣】Eパート


「何やってんのよ!あんたのせいで負けたじゃないの!」
「そ、そんな!」
「何やらせても、ぐずなんだから・・」
「何だよ!さっきのはアスカが悪いんじゃないか!」
「何ですって!? それまでに何度ミスしたか覚えてるの!」
「それを言うなら、アスカだって!」
僕とアスカの口喧嘩は、続いていた・・・

その時!
「昼食の準備が出来ました!全員船尾にあるホールに集合すること!」
アナウンスが流れた。

「さーて めしやめしや! おい、碇!夫婦喧嘩は犬も食わんで!」
トウジがその一言を残して、娯楽室を出た。

「誰が夫婦なんだよ(なのよ)僕達は同時に叫んだ。

「まぁ、アスカも碇君もそんなに興奮しないの!」洞木さんが声をかけた。

「だって、シンジが・・」アスカは洞木さんにたしなめられたものの、まだ不満気だった。

「まだ、第一セットが終わっただけじゃない! 次の第二セットで雪辱を晴らせばいいのよ!」

「わかったわよ・・ヒカリ」

「あ、そうそう、第一セットの罰ゲームだけどね、今からの昼食で、
アスカと碇君が、お互いに食べさせあいをするの! 決定ね!」

洞木さんは、それだけ言って、トウジの後を追って部屋を出て行った。

「そ、そんなぁ・・」×2

僕達はとぼとぼと歩いて娯楽室を出た。

さっきは、ごめん・・僕は、今アスカと顔を合わせられなかったので、
それだけ言って駆け出した。

「ま、待ちなさいよ!シンジ!」アスカが後ろを追って来ていたが、
僕は船尾方向にあるホールに向かって走って行った。

僕がホールに着いた時には、テーブルに生徒の8割くらいが着席していた。

「おーい!碇!こっちや!」トウジが手を振っていた。
ケンスケも座っていた。

「僕・・隅の方の席がいいな・・」僕は中央部分の空席を見て言った。

「何いうとるんじゃ、罰ゲームなんやから、それぐらいはなぁ」
トウジは薄笑いを浮かべた。

「トウジ・・第二セットの罰ゲーム・・・楽しみだな・・」僕は少し壊れかかっていた。

「次もわしらの圧勝じゃい!」

トウジと話していると、アスカも追いついて来て、中央のあいてる席に座った。
「ほら座れよ」トウジが言った

僕はアスカの真向かいにほぼ、強制的に座らされてしまった。

僕は覚悟を決めて椅子に座った。

すると、アスカの隣の席にミサト先生が座ったのだ。
「ここあいてるでしょ! うぅ〜気分悪い・・」
ミサト先生は手に持っていたビールの空缶を足元に転がした。

「はぁ〜」僕は大きいため息をついた。

その時、唯一あいていた僕の隣の席に、誰かが腰を降ろした。

「?」僕は隣に視線をやった・・

「あやなみ・・・・・」僕は内心頭を抱えてしまった。

「碇君・・どうかしたの?」綾波は少し心配そうに、僕を見た。

「いや、何でもないんだよ・」僕は、頭が痛くなってしまった。

数分後

僕達の前に、カツカレーが並んだ。

引率の教頭先生の挨拶が終わり、僕達は食べはじめた・・・

僕は何気なく、カレーを乗せたスプーンを自分の口に持って行った。

「碇・・・」トウジの声がしたので、恐る恐る振り返ると、トウジが僕達を睨んでいた。

「わ・わかったよ・・」
僕はスプーンでカレーライスをすくって、アスカの口の前まで持って行った。

「あすか・・あーん」僕は顔を真っ赤に染めて言った。

その瞬間、僕たちの周りにいる、トウジ達以外の人間は全て凍り付いた。

「い、碇君! 惣流さん!」ミサト先生が瞬きもせずに、僕達を見ていた。

次の瞬間!

カターン

綾波は手にしていたスプーンを落としてしまった。

その音で、硬直していた皆はようやく元に戻った。

「うっ・・・」綾波は目の端から涙をこぼしながら、
口を手で押さえて席を立ち、飛び出して行った。

綾波ぃ! 違うんだ!

だが、綾波はホールから、すでに外に出てしまい、姿が見えなかった。

「碇君 ごめん!私のせいで・・・早く追いかけてあげて!」
責任を感じたのか、洞木さんが立ち上がって言った。

「行って来るよ!」僕は誰に聞かせるでもなく、言った。

僕も席を立って綾波の消えた方向に走って行った。

「お、おい見たかよ・・・」
「ああ・・」
「惣流に決まったかと思いきや・・・」
「いきなり、綾波が悪阻かよ・・」
「碇・・・あんな顔してとんでもない奴だな!」



僕が出ていった後、ホールの中はざわめいていた。

「綾波・・・どこへ行ったんだ・・・綾波・・」

僕は、綾波の姿を求めて船内を走り回った。

「それにしても、あの子どうかしたの」
「ミサト先生・・実は彼女 アレと船酔いがダブルできちゃってるんです」
「レイだって、シンジにそんな甲斐性無いの知ってるだろうしね」

葛城・洞木・惣流の三者会談は続いていた。


数分後、僕はいまだ、綾波を探して船内を走っていた。

階段を上がり、曲がり角を回って手すりのある側面の甲板に来た時、
僕はようやく綾波を発見した。

綾波は手摺にもたれて、ハンカチを口にあてて、海面を見ていた。

みゃう みゃう みゃう

海猫の泣き声が止んだ時

綾波は手摺を登ろうとしはじめた。

「綾波!」
僕は綾波の背後まで駆け寄った。

「何をするんだ!綾波!」僕は綾波を背中から必死に抱き止めた。

「碇君・・ちがうの・・」綾波がか細い声で言った。

「さっきのは・・・罰ゲームなんだ・・綾波・・ごめん・・綾波の気持ちを僕は・・」

「碇君・・ありがとう・・でも違うの」

「何が違うんだよ・・・僕の前からいなくならないでよ・」僕は更に強い力で抱きしめた。

「ハンカチ・・ハンカチが落ちたの」綾波が視線を下にずらした。

見てみると、手摺の向こうにハンカチが落ちていた。

僕は綾波の身体から手を放した。
「ご、ごめん・・僕が取って来るよ」僕はひょいと手摺を乗り越えた。

「碇君・・気をつけてね」

「うん!」



丁度その頃・・・・お世辞にも、広いとは言えない狭い部屋で、
大量の機器やディスプレイの明かりに6人の男女が照らされていた。

「司令! アメリカのネバダにいる、碇ユイ博士の消息が途絶えました」
女性オペレーターが、奥の端にいる、黒眼鏡と髭で表情を隠して、
手を組んでいる、司令と呼ばれる男に声をかけた。

「アメリカ第二支部は何をやっていたんだ・・」
司令と呼ばれる男の後ろに立っている、初老の男性が呟いた。

「適格者との保護を急げ!」司令と称される男が指示した。


僕は綾波の落としたハンカチを拾った。

そして、綾波の方に振り向いた時

「碇君・・ありがとう」微笑む綾波の向こうに、異常な程の高さの高波が見えた。

「碇君!」綾波もそれに気付いて僕に手を差し伸べた。

僕は差し出された手を必死に掴んだ。

次の瞬間

ざっぱーん

局地的な高波が甲板にいる僕たちにかぶさってきた。

僕は恐怖のあまり、目を瞑ってしまった。

だが、いつまでたっても波は僕たちに降り注がなかった。


裏庭エヴァンゲリオン第7話【初陣】Eパート 終


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