高波が僕たちに降り注ぐその瞬間の出来事を、
僕は一生忘れる事が出来ないと思う。
それが全ての始まりであり、終わりでもあった。


裏庭エヴァンゲリオン第7話【初陣】Fパート


「碇君っ!」
「綾波!」
覆い被さってきた高波は僕たちに触れる寸前に
まるで何かにぶつかったかのように、四散した。

「な、何が起こったんだ・・」
僕は綾波の手を握り締めたまま、立ちつくしていた

「碇君・・・・・」心なしか綾波の手が震えているように思えた。

次の瞬間!

「ようやくお覚醒めかい? 随分君には待たされたよ 綾波レイ・・」

忽然と姿を現した銀髪の少年が綾波に声をかけた。

「だ、誰だ!」僕は声が震えている事を自覚した。

「人に名前を尋ねる時は自分から名乗るものだと、
習わなかったかい? 碇シンジ君」銀髪の少年が僕の方をまっすぐ向いた。

「あ、赤い彗星の・・・じゃなくてい瞳だ・・・綾波と同じ・・」
僕は訳が分からず混乱していた。

「な、何故僕たちの名前を知っているんだ!君は誰なんだ!」
僕は気を取り直して銀髪の少年に向かって言った。

「そりゃ君達の事は、良く知ってるさ・・・・
僕を二十年も封印してくれた、碇ユイの一人息子に、
僕の妹を十年も封印してくれた・・綾波ハルカの一人娘・・
忘れたくとも忘れられないよ・・」

「綾波・・逃げよう」

僕は手摺を乗り越えて綾波の手を引いて甲板から逃げ出そうとした。

「あそこから中に入るんだ!」
「・・・・」
僕たちは船内へ逃げ込もうとした。
だが、背後にいる筈の銀髪の少年が目の前に出現した。

「話はまだ終わって無いんだよ・・・碇シンジ君・・」
銀髪の少年はそういって笑った。

「僕たちに何の用なんだ・・君は一体何者なんだ!」

「すまないね・・さっきの質問にまだ答えて無かったね・・

僕の名前は・・・カヲルとでも呼んでくれたまえ」

「僕は君達を迎えに来たんだ・・いや・・シンジ君・・・
君はまだ覚醒めて無いんだね・・覚醒めたら、また迎えに来るよ」

カヲルと名乗る少年は僕に微笑んだ。

「では、綾波レイ・・僕と一緒に来るんだ」
カヲルと名乗る少年は綾波に、にじり寄った。

そして綾波の腕をとった。
「いや・・」綾波は産毛を逆立たせて脅えた。

「やめろ!」僕は少年の腕を掴んだ。

「邪魔をしないでくれないか? 彼女は僕の元に来るべき必要があるのだ」

「どうしても嫌だと言うのなら、預かっている碇ユイの命は保証出来ない」
カヲルと名乗る銀髪紅瞳の少年が言い放った。

「か、母さんが!」
僕の手は力を失った。

「叔母様が・・・わかりました」

「綾波ぃ!」

僕はこのままでは、綾波ともう二度と会えなくなる事を本能的に感じとった。

「しっかり掴まるんだ・・」銀髪の少年は綾波を抱えて空に浮かんだ。

「綾波! きっと君を助けるから!」
「碇君・・・」

綾波と少年の姿は西に向かって行き、そして肉眼では捕らえられなくなった。

「綾波!」

僕は西の空に向かって叫んだ・・・己の無力さを実感しながら・・


カンカンカンカン

その時、誰かが走って階段を上がって来る音が聞こえた。

「だ、誰?」僕は階段の方を振り向いた。

「と、父さん!」

そこには、碇ゲンドウが息を切らして立っていた。

「シンジ! レイはどうした!」

「さっき、カヲルとか名乗った少年がさらって行ったんだ。
僕は綾波を助けられなかったんだ・・母さんも掴まってるって言ってた・・

どうして・・どうしてなんだよ・・・父さん!」
僕は堪えていた涙を流してしまった。

「遅かったか・・・シンジ・・ついて来い!」
父さんはそういってさっき上がって来た階段を降りはじめた」

「どこへ行くんだよ・・父さん!」僕も後をついて走り降りた。

「話は後だ・・事は一刻を争う」
「わかったよ・・父さん」

僕たちは階段を降りて行った。

そして階段の下の端から、横道に入った。
立ち入り禁止の看板を飛び越えて僕と父さんは艦底に向かっていた。

そして大きいドアの前で父さんは立ち止まった。

そして懐から赤いカードを取り出してスリットに通した

ピーー

ロックが外れてゆっくりとドアは開いて行った。

非常灯に照らされた通路を僕と父さんは走って行った。

いくつかのロックを外した後、僕の目の前には巨大な物体が横たわっていた。

父さんがスイッチを押すと照明が付き、その物体の姿が明らかになった

「巨大ロボット!?」

僕は、背中にリュックサックのような物を背負って横たわっている、
紫色のロボットを見つめた。


裏庭エヴァンゲリオン第7話【初陣】Fパート 終


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