裏庭エヴァンゲリオン第8話【決戦は水曜日】Dパート

「アスカぁ止めましょうよ」
「何よヒカリ」
「素直になったのはイイ事だけど、こんな事しなくても・・」
「言い出したのはヒカリでしょ?」
「そりゃそうだけどさ・・」

二人はシンジとレイを探して船内をうろついていた。

「やっぱり碇君の事が気になるのねぇ・・」
「別に気になる訳じゃ無いのよ・・(バカシンジ・・もしレイと・・)」
アスカは首を振って否定した。
「あのバカにそんな甲斐性があったらとっくに・・」

「アスカ」
ヒカリが呼んでいるものの、アスカの耳には入ってはいなかった。
「けど・・・うーん」

アスカ!」

何よ
アスカはヒカリの方に振り向いた。

ゴイーーーーン

いったーーーい
アスカは頭を押さえてうずくまった。

「気を付けなさいよ!」アスカは涙目のまま立ち上がった。

「すまないね・・けど前を見て歩いて無かった君も悪いんだよ」
その声の主にアスカは対面した。
無精髭を生やし、背広を手に持った加持教諭その人であった。

「あ、ご、ごめんなさい」アスカは珍しく非を認めて頭を下げた。

「ホントにさっきから呼んでるのに、この子ったら恋人の事ばっかり考えて・・」
洞木さんが笑いながらアスカが被っていた帽子をアスカの頭にかぶせた。
「なっ!何言ってるのよヒカリ!」
「怒んないでよ ホントの事じゃ無い」

「ヒカリぃ待てぇーー」
「ごっめーん」

「ところで何してたんだい?」二人を見ていた加持が口を開いた。

その声にアスカは振り向いた。

「実は・・・・」


「友達が二人ともいなくなったんです・・それで探してたんですけど・・」
「この子素直じゃ無いから、探しはじめるの遅くなっちゃったんです。」
「ヒィーカーリィー」
「ホントの事でしょ」
「そうかぁ・・・なるほどね・・葛城も探しに行ったきりか・・」
三人は甲板にある椅子に座って紙コップに入ったジュースを飲んでいた。

「まぁ・・君たちがこれ以上探してどうなる物でも無し・・
後は大人に任せるんだな・・俺も、シンジ君達を探して見るよ」

「あ、あの・・」アスカが不審がった

「なんだい?」

「なぜ、シンジの名前知ってるんですか? 名字も言って無かったんですけど・・」
アスカが加持リョウジの目を見据えた。

「ミサト先生と言い、加持先生と言い、何か隠してませんか?」
アスカが不審そうな目で加持リョウジを見た。

「俺は男子の体育教えてるんだよ・・碇シンジ君なら知ってるよ・・」

「・・・・」

二人は釈然とはしないものの、加持と別れて船室に降りて行った。

「アスカぁ気を落とさないでよ・・」
「わ・・私は別に・・」

二人は303号室に歩いて行った。

「よう・・惣流・・いいんちょ」鈴原トウジと相田ケンスケが、
313号室の前に座り込んでいた。

「どうしたの?そんなところで」ヒカリが尋ねた。

「シンジがな・・鍵持って出てるんや・・まだ戻ってきいへんし・・」

「そっかぁ・・・大変ね・・私たちの部屋で待たない?
そんなとこに座り込んでないで・・」ヒカリが二人に声をかけた。

「そうやな・・お言葉に甘えさせて貰おうか」

「お茶でも飲む?」

4人は303号室の中で、紅茶を飲みながら話していた。

「しっかし・・シンジの奴どないしたんや?」
「そうだよ・・もう一時間だぜ」
「綾波さんまで一緒だし・・」
「な、何だってんのよ・・・」
「声が震えてるよ・・アスカ・・」
「うっさいわね・・・」

「惣流・・」トウジがアスカに声をかけた。

「なによ」

「前からいっぺん聞いて見たかったんやけどな?」

「・・・」アスカは唾を飲み込んだ。

「シンジのワイシャツ洗濯してたんは誰や?」


ズルッ

「惣流何やっとんのや・・」
トウジは、緊張の糸が切れて崩れ落ちたアスカを見た。

「せ、洗濯?ああ・・洗濯ね・・」
ようやく平静さを取り戻したアスカが口篭もった。

「レイが洗濯して、私がアイロンしてたのよ・・」
アスカは冷や汗を拭いながら答えた。

「僕も聞いて見たかったんだ・・碇のどこがいいんだ?
・・・やっぱりアレか?」

ブーー
アスカは口に含んでいた紅茶を吹き出した

「あっぶないなぁ・・」紙一重でトウジは避ける事が出来た。・・・だが・・

ケンスケは避ける事が出来ずに、紅茶を胸一杯に吹き付けられていた。

「な、何吹き出してんだよ・・」

「あ、あ、あんたが変な事言うからでしょ」顔を真っ赤に染めたアスカが叫んだ。

「はぁ?」

「僕は、アレってのは俺は”幼なじみ”って言う意味で言ったんだけど・・
その先言わせずに、吹き出すんだもんなぁ・・」

「知らないっ!」
アスカは耳まで真っ赤にして部屋を飛び出した。

「ア、アスカ・・・何を想像してたのかしら・・」
部屋を出くアスカをヒカリが呆然と見ていた。

ポーーー

汽笛が鳴り響く甲板の最後尾でアスカは船が海に描き出す軌跡を見つめていた。

「そういえば、アイツのどこが好きなんだろう・・」

「頼れる所? 違うわね・・アイツはそんな柄じゃ無いもの・・」

「見てて気になる・・・それもあるけど・・」

「優しい所? けどそれだけじゃ・・・」

「幼なじみだから? それだけで好きになんか・・」

「どうしてなんだろ・・いつからアイツが、
隣のシンちゃんと言うだけの存在でなくなったんだろ・・」

アスカは海面を見ながら、うなだれていた

その時・・

ミャァミャァ

アスカは顔を上げた。

二羽の海鳥が横に並んで、アスカの頭上を横切り、南に向かって飛んで行った。

「そっか・・人を好きになるのに理由なんかいらないのよね・・
アタシはシンジが好き・・それだけでいいのよ・・・」

アスカは踵をかえして、甲板から離れた。

優しい潮風に包まれたアスカは、心に何かを秘めて階段を降りて行った。

だが、その頃シンジは己の運命と向き合っていた。

裏庭エヴァンゲリオン第8話Eパートに、つ・づ・く!


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