僕は夢を見ていた。
それは明らかに夢だと実感する事が出来た。
だが、その夢は・・俗に言う悪夢というモノだった。

宇宙の深淵で、巨大な異形の怪物がその姿、形を変えながら、
奏者の鳴らす笛に合わせて踊る姿。

暗転して次は、深海を漂っていた。
周りを三つ矛を持った異形の水棲動物に囲まれて、
海底の遺跡に連行される・・

だが、僕はそれらの悪夢を恐いとは思わなかった・・あるイメージを見るまでは・・
何故か黒い肌をしたカヲルに無理矢理犯されそうになっている綾波・・
僕は止めようとして何かを叫ぼうとするが、声にならない・・
走っても走っても綾波の元に辿り着けない・・
そして綾波の腹を破り異形の怪物が這い出してくる・・
僕は力の限り叫んだ。

「あやなみ!」

裏庭エヴァンゲリオン第9話【死に至る病・・そして】Aパート


僕は自分が発した声でようやく目を覚ました。

「何だ夢か・・・」僕の目はようやく焦点があって来ていた。

「知らない壁だ・・」僕はひびの入った白い壁を見ていた。

そしてうつ伏せになった身体を起こそうとすると、激痛が走った。

「痛たたた」背中にまるで焼け付くような痛みを覚えた。

「碇君・・起きちゃだめ」綾波の声が後ろの方から聞こえた。

綾波が手に何か持って僕の横に歩いて来た。

「綾波・・僕は一体どうしたんだい?ここはどこ?」

「ここは病院よ・・碇君は私を熱い水蒸気から庇ってくれて・・
で碇君は今背中に火傷をしてるの・・着ていたあの服のせいで、
外傷は無いそうなんだけど、熱は背中に通ったそうなの」

綾波が何故か涙に潤んだ目で僕を見ていた。

「そうか・・そのまま・・」僕は納得して手の力を抜いた。

「まだ痛いのね・・薬塗るから・・」そういって綾波は背中にかけてあるシーツをはいだ。

そして首から肩にかけて塗り薬を塗ってくれていた。

「碇君・・ゴメンね・・私なんかの為に・・」綾波のか細い声の後、背中に一滴の涙が落ちた。

「綾波・・ごめんねだなんて謝らないでよ・私なんかだなんて悲しい事言うなよ・・
僕はその・・綾波だからこそ、助けたかったんだよ・・」


「碇君!」

感極まったのか綾波は僕の背中に抱き着いて来た。・・・が

「痛タタタタタタ」


「ごっごめんなさい・・」

とてつも無く、気まずい空気が病室を満たした。


そして綾波は薬を塗るのを再開した。

数分後・・・

「綾波・・そこはいいよ・・」
「だめ・・ここも赤くなってる・・」
僕はうつ伏せになったまま動けないので綾波の思うがままになっていた。

「あ、そうだ・・母さんは見つかったのかな?」
「ええ・・アメリカの病院に収容されているそうよ」
「怪我でもしてるの!?」
「廃虚になった研究所の地下に閉じ込められてたんですって・・
ちょっと衰弱してるだけだから1週間も入院したら大丈夫だっておじさまが言ってたわ」

「そういえばアスカやトウジ達どうしてるかな・・」
「明日の朝には第二高知港に着くそうよ・・」

「父さんは?」
「おじさまなら、アメリカに行きました」

「ミサト先生は?」
「ヘリコプターをチャーターして船に戻られました」

「そっか・・ところでここは?」

「最初大きい病院で処置を受けたんですけど、満床で・・
ここは今使われて無い病院なんです・・
看護婦さんもお医者さんもいないけど・・私が治るまで世話します・・」

(ちょ、ちょっと待ってよ・・ まさか二人っきりなの?・・
ど、どうしよう・・そういえばトイレに行きたくなって来たし・・)


数分後

「碇君・・どうかしたの?さっきからもじもじして」
綾波が僕の顔を覗き込んだ。

「い、いや何でも無いよ・・」僕は冷や汗を拭った。

「ホントに?」綾波が心配そうな顔をした。

「そうよねぇ・・ここ使われて無かったから・・TVも無いし・・
退屈かな?」

「う、うん・・まぁね」

「この辺り(旧高知市のはずれ)にはお店無いし・・
第二高知港まで行けば本とか売ってるかもしれないけど」

「ここ高知なの?」
「ええ おじさまが、修学旅行に復帰させるからって」

「あんな事になったのに・・まだ修学旅行やるのか・・」

「だから早く治してくださいね! もう一度薬塗るから」
そういって綾波は再びシーツを剥いで薬を塗りはじめた。

「あ、ありがと・・」

「お医者さんは、薬をずっと塗り続けたら明日には退院出来るかもって
言ってたの・・だから・・」

「あやなみ・・・」

「何?碇君」

「ト、トイレ行って来るよ」
僕は腕に力を込めて立ち上がろうとした・・・

「痛テテテテテテテ」だが、背中の激痛のせいで、起きる事は出来なかった。

「碇君・・まだ無理よ」綾波が背中をさすってくれた。

「トイレ・・ってどっちがしたいの?」綾波が恥ずかしそうに言った。
「おっきいほう?ちいさいほう?」答えぬ僕に綾波が問い掛けた。

「ち、ちいさいほう・・」

「なんだ・・それなら、いいものがありますよ」綾波がそう言って
ベットの下を探った。

(なんかヤな予感が・・・)

「ありました・・おじさまが買ってくれてたんです・・」
ピカピカポーン
と言って綾波は尿瓶を取り出した。

(と、父さん・・わざとこんな病院にしたんじゃ・・)
説明しよう! 2015年の現在、尿瓶を使う病院は無く、
殆ど無痛 カテーテルを使って処理しているのである・・

「じゃ横向きましょうね」と言って綾波が僕を横にする為に引っ張ってくれた。

「じゃこのままの体勢でいてね」と言って綾波は手を放した

「わわわ」僕は手を使って身体を安定させた。

「碇君・・いい?」綾波がシーツに手をかけて言った。

「いいって・・そんな・・」

「一人じゃ出来ないでしょ」

「そ、そんな恥ずかしいよ・・」

「碇君・・私も碇君に恥ずかしい姿見られてるのよ・・」綾波が顔を真っ赤にして言った。

「さ、それじゃ」

わーー待って・・もうちょっとだけ待ってよ・・」
「どうして?」
「いいから・・(綾波の裸を思い出したから・・だなんて言えないよ・・」

「もういい?」
「・・・はい・・(TT)」



だが、その様子を描写するにはあまりに残り行数が少ない!(その割にゃ空行3つ・・)
よって非常に残念ながら断腸の思いで、割愛させて頂きます。


「ハイ・・よく振ってと・・終わりね」
「ああ・・もうお婿に行けない・・(TT)」
と彼等が言ったかどうかは定かでは無いが、
旧高知市街の夜は更けていった。

第9話Aパート 終わり

第9話Bパート に続く!
 


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