裏庭エヴァンゲリオン第9話【死に至る病・・そして】Cパート

「・・・・」「・・・・」

「うう針のムシロだ・・」
僕は二人の視線を背中に感じていた。

「えぇ〜左に見えますのが、高知城でございます」

「うう・・」

「えぇ〜右に見えますのが、五台山でございます・・」

「アスカ・・勘弁してよ・・」

「それでは今から昼食の時間ですので、1時にはこのバスに戻って下さいね」

「ふぅ・・」僕はバスを降りた。
「シンジ・・」アスカの声が後ろから聞こえた。
「何?」僕は恐る恐る振り向いた。
「後で話があるから・・」

「うん・・わかったよ」

僕たちは昼食場所のレストランに歩いて行った。

僕は黙々と昼食を食べて、バスに戻った。
他のみんなは、お土産屋に群がっている・・アスカだけがついて来ていた。

「こっちに来なさい」僕はアスカの横の綾波が座っていた席に座らされた。

「話って何?」
「まさか、ミサトのあんな説明で私を欺けるとは思って無いわよね・・シンジ」
「え、欺くって?」
「あれが本当だって言うの? 信じらんないわよ」
「ごめん・・」
「何謝ってるのよ・・やっぱり嘘だったんじゃ無いの・・」
僕はうな垂れた
「私が・・・どれだけ心配したと思ってるのよ・・」
「アスカ・・」
「何があったの・・・シンジ・・話してよ」
「けど、話しても信じてくれないだろうな・・」
「何よ!あんた私の事そういう風に思ってた訳?」
「ち、違うよ・・ただ、突拍子も無い事なんだ・・
到底信じてもらえそうに無いんだ・・」僕は右手を震わせた。
「いいから話しなさいよ・・ほら」
「僕もまだ心の整理がついてないって言うか・・何が何なんだかわからないんだ・
もう少しして落ち着いたら、きっとアスカに説明するから・・信じてよ」
「・・・・わかったわ・・だけど、これだけは確認しておくわね」
「な、何?」
「レイと何かあった訳じゃ無いのね」
「何かって?」
「・・何かよ」アスカは顔を真っ赤にした。
「・・・・」僕は返答に詰まってしまった。

その時!

「碇君は私を助けてくれただけ・・ただそれだけよ・・
あなたの心配するような事は無かったわ」綾波がバスに乗ってきて言った。

「なんか怪しいのよね・・あんたら・・何隠してるのよ」

「碇君が言った通りよ・・私は碇君の意志に従うわ」

「わかったわよ・・どうせ私は・・」アスカは下を向いてしまった。

「アスカ・・ごめん・・」

「謝らないでよっ!同情なんかいらないわよっ」アスカの声がバス内に響いた。

その後、お土産を手に生徒が多数入って来たので、話はそれで終わりになった。
だが、気まずい空気だけはどうにもならなかった


そして、その夜

僕は風呂から出て、僕とトウジとケンスケが割り当てられた部屋に向かっていた。
トウジは卓球を洞木さんとしていた。ケンスケの姿は見えなかった。

ガチャリ

僕は部屋の鍵を開けて、中に入った。
「ふぅ・・」僕はため息をついて、窓際の椅子に腰をかけた。

キィ 小さい音が扉から聞こえた。

僕は扉の方を見ると、扉の隙間からアスカが覗き込んでいた。

「いるよ・・アスカ」

ガチャリ

アスカは扉を開けて中に入って来た。

ガチャリ カチッ
扉の閉まる音が聞こえた。

「何?アスカ」

「用が無いと入っちゃだめなの?」
「そんな事ないけど」

「シンジ・・」
僕はアスカの様子がおかしいので、椅子から立ち上がって、アスカと対峙した。
アスカは旅館の備え付けの浴衣を着ていた。

「シンジ・・わたし・・不安なの・・」
「何が?」
「シンジがわたしを置いて・・あの子と遠いどこかに行きそうで・・」
「アスカ・・」
「不安なの・・わたしはシンジが好き・・でもシンジはレイが好き・・レイもシンジが好き・・」
「アスカ・・」
「わたしは只の幼なじみ・・あの子は只の従兄弟?そんな事無いわ・・
シンジの目はいつもレイを追ってるもの・・レイが来てから・・」
「・・・・」
「レイに比べたら、わたしなんて・・只のうるさい隣の幼なじみよね・・」
「そんな事無いよ・・アスカ・・」
「嘘よ・・レイが来てから、わたしの事見てくれた事あった?」
「・・・・」
「あなたがレイに惹かれているのは、事実よ・・」
「アスカ・・」
「あなたがレイの事・・好きでもいい・・わたしの事も好きでいて欲しいの・」
「アスカ・・・・僕は」
「嘘でいいの・・好きって言ってよ」アスカは僕に抱き着いて来た。
「アスカ好きだよ・・けど・・」
「けど?」
「これは嘘じゃ無いよ・・僕はアスカが好きだ・・」
「本当に?」
「うん・・」
「けどレイの方がもっと好きなんでしょ・・」
アスカは目に涙を溜めて、零れる寸前であった。
僕はいつも強気のアスカがこんなにまで自分をさらけ出しているのを見るのは初めてだった。
「わたしは・・それでもいい・・だってシンジの事好きなんだもん」

僕はおもわず、アスカを強く抱きしめて口付けをした。

永遠のような一瞬の出来事であった。

「シンジ・・ありがとう・・」アスカは涙を零して僕から離れて扉に向かった。

一人取り残された僕はぼーっとしていた。
「アスカがあんなに思いつめてたなんて・・そんな事もわからなかったなんて・・」
僕は右手を握り締めた。

「ふぅ・・委員長もムキになって卓球するから、汗かいてもうて、もう一回風呂に入っとったんや」
トウジが汗を拭きながら室内に入って来た。

「どないしたんや?」
放心状態になって立っていた僕に気づき声をかけてきた。

「あ、いや、何でも無いよ・・」僕は窓際の椅子に腰掛けた。

「ケンスケはどないしたんや?」

「まだ帰って来て無いんだよ」

「おおかた、カメラ持って、うろうろしとんのやろ」

「・・寝るよ・・おやすみ・」僕は布団の中に入った。

「そうか・・ま、明日も早いし、わしも寝るか・・」
「シンジ・・鍵どうする?」
「ケンスケが締めるだろうから、そのままでいいんじゃない?」
「そうやな・・ほなおやすみ・・」
トウジは奥の端の布団で寝息をたてていた。

シンジは扉側の布団に横になって寝ていた。
(眠れないや・・寝たら、またあの悪夢見るかもしれないし・・)

約3時間後の深夜11時

ガチャリ

静かに扉が開かれた。

「ケンスケ・・遅いよ・・」寝入れなかった僕は薄目をあけた。

「綾波・・」
そこには浴衣を着たレイが立っていた。

「碇君・・・眠れなかったの?」綾波は僕の横でひざまずいた。

「うん・・・いろいろあったからね・・」

「薬・・塗るから・・」綾波が塗り薬の入った瓶を置いた。

「うん・・ありがとう・」僕は布団をどけて、浴衣の上をはだけた

綾波は僕の背中に塗り薬を塗っていった。

「碇君・・アスカさん何か言ってた?」
「うん・・」
「そう・・」

「僕がはっきりしないから、綾波にもアスカにも迷惑かけてるね・・」
「そんな事無いわ・・」
「綾波は優しいね・・」
「・・・・」

「じゃ、おやすみなさい」綾波は塗り薬の瓶を持って部屋を出た。
僕は浴衣を着直して、布団に入った。
心なしか、心が少し軽くなったように感じて、眠りに落ちた。

裏庭エヴァンゲリオン第9話【死に至る病・・そして】Cパート終


次回予告

修学旅行から帰ったシンジ達を待ち受けていたのは、
果たして何なのか?! 運命か・・それとも定めか・・
血の盟約・・それは絆・・だが、犠牲を強いる絆とは?
シンジは、レイは、そしてアスカは何を見るのか?
それは一瞬の輝きであったかもしれない

シンジは刻の涙を見る

次回裏庭エヴァンゲリオン最終話【絆】Aパートに続く!


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