裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER

第10話【ミドリ・心の狭間】Cパート

−CASE3−
碇アヤの異常な愛情

「さってっとっ お味はどうかな?」私は鍋の中から取り出した、おたまに、口を付けた。

「ん〜こんなものかな……」私はおたまを洗って、再び鍋に入れた。

「あら、いい匂いがすると思ったら、カレーなの?アヤ」お母さんが帰って来たのか、キッチンに顔を出した。

「味、見てみる?」私は小皿にルーをよそって、お母さんに手渡した。

「どれどれ?」お母さんは小皿に口を付けて味見を始めた。

「あら、また辛口ね……シンイチの好みに合わせたの?」

「もっお母さんったら……」

「図星でしょ?」

…………

「アヤはずるいわねぇ……餌付けしてるんだもん。」

「そっそんな、餌付けだなんて……」

「かなり、リードしてるんじゃないの?」

「お母さん……(学校では一緒にいられないんだから……)」

「あ、もう火加減を見るだけだから、お母さんお願いね……」

「どうかしたの?」

「洗濯物取り入れてくるから」そういって、私はそそくさとキッチンを出ていった。

「乾いてるわね、やっぱり仕上げは天日よね」私は洗濯物を取り入れていった。

「これ……一枚貰っても……解らないよね」私はトランクスを取り入れながら呟いた。

「やだ……私何考えてたんだろ」私はかぶりを振って、トランクスを籠に入れた。

洗濯物を取り入れ終わり、私は汗を拭った。

「お天気いいわね……そうだ、お布団干そうかな」私は洗濯物の入った籠を洗濯機の脇に置いて、二階に上がった。

「昨夜も暑かったし、ちょっと湿ってるわね……」私はシンイチ君の布団を持ち上げた。

シンイチ君は、いつもエアコンを付けないので、人一倍寝汗をかくんだけど……
このシンイチ君の汗の臭いも……

私はシーツにいつの間にか顔を押し付けていた。

「やだ、わたし……何してるんだろ……」

ベランダに、布団を干して、私は一息入れた。

「もう、そろそろシンイチ君……帰ってくるのかな」私はベランダから、青空を眺めながら呟いた。

「アヤぁ〜もう、これ、もういいんじゃない?」階下から、お母さんの呼ぶ声がした。

「あ、はーい」私は我に帰って、名残は尽きないが、シンイチ君の部屋を出て、階段を降りた。


「あ、ミドリさん、お帰りなさい」玄関を降りると、ミドリさんが帰って来た所だった。

「あれ、シンイチ君とミライはまだなの?」

「ミライさんは、転校生を連れて案内してたみたいだし、シンイチさんは図書委員会でしょうけど、もう帰って来ると思いますよ」

「もうすぐ、御飯だから、服を着替えてきたら?」

「そうします。 あれ?ローラちゃんはどうしました?」

「あなたの部屋で寝てるみたいよ」

「あ、いけない、料理の途中だった」私はミドリさんと別れて、キッチンに向かった。

「ちょっと弱火にしといたわよ」

「ありがと、お母さん」

「御飯も炊けたし、後は帰って来るのを待つだけね……」私は居間の椅子に腰掛けて、キッチンの方を見ていた。

その時、玄関のドアが開く音が聞こえた。

私は立ち上がって、小走りで玄関に向かった。

「ただいまぁ〜」

だが、ドアを開けて入って来たのは、待ち人ではなかった。

「なんだ、お父さんか」

「誰だと思ったんだい?アヤ」お父さんが苦笑しながら言った。

「あ、おかえりなさい、お父さん」

「いやぁ〜なんとか試験問題のチェックも終わったよ」

「そういえば、私もそろそろ試験だっけ……」

「シンイチ君にかまけて、勉強を怠っちゃいかんぞ、アヤ」

「はい……って何を言わせるのよ、お父さんっ

「はは、今日のお昼はカレーかな、いい匂いがしてるよ」お父さんは上着を脱ぎながら室内に入って来た。

「もう……お父さんったら」

「書斎にいるから、御飯になったら、呼んでくれるかい?」そう言って父さんは廊下の奥に消えていった。

「アヤお姉ちゃん、お昼はまだなの?」母親と共に背負っていたものを降ろして、
すっかり、普通の子供になってしまった、ローラちゃんが階段の上から声をかけてきた。

「もうすぐ出来るわよ、今日のお昼はカレーライスよ」

「ほんと?私カレーも好きなの」

「あ、そうだ……」私はキッチンに向かった。

「えーと、これがいいかな」私は小さ目の鍋を取り出して、カレールゥを一人前分取り分けた。

「牛乳、牛乳っと」冷蔵庫から、牛乳のパックを取り出して、コップに半分程注いだ。

「これで、食べやすくなるかな」私はコップに入った牛乳を少しずつ、カレールゥに混ぜていった。

「あ、そうだ……ちょっと辛いかも」私はハチミツを取り出して、作っておいたストックの残りをボウルに入れて、
ハチミツをよく混ぜて、ローラちゃん用の鍋に混ぜていった。

「これで、問題無いわねっ」私は味見を終えて、キッチンを出た。


その時、扉を叩く音が聞こえて来た。

「シンイチ君かしら……」私は小走りで玄関に向かった。

「毎度ぉ〜安芸屋です」

「なんだ、酒屋さんか……」

「は、なにか?」

「あら、普段の人はどうしたんですか?」

「あ、親父は腰を痛めて寝込んでるんですよ」

「息子さんなの?大変ねぇ」
「えーご注文の、ビール一箱と、ワヤリースオレンジ10本とジンジャーエール10缶をお持ちしました。」

「ここにサイン貰えますか?」

「あ、はい」

「しかし、奥さん若いですねぇ〜けど、主婦が板に付いてるって感じですし……」

「や、やだ奥さんだなんて……私、まだ高校生ですよ」

「え?そうだったんですか? 失礼しました」

「あ、そうだ、モモの缶詰4つと、ツナ缶4つと、お醤油を、月曜の夕方までに持ってきてもらえます?」

「あ、わっかりましたぁ〜」

「シンイチ君は、ツナサンドが大好きだもんね……試験休みでお昼には戻って来るだろうし……」
私は、シンイチ君がおいしそうに、食べている姿を夢想しながら、荷物を運んだ。

「手伝いましょうか?」背後から、ミドリさんの声がした。

「ローラも、手伝うんだよっ」

「そうねぇ、カレー皿を出しておいて、貰えます?」
「ローラちゃんは、テーブル拭いてくれるかな?」

「私は、ちょっと買い物にいって来るから」

私は財布を手に、家を出て近所の牛乳屋に向かった。

「ヨーグルトがあって良かった! シンイチ君、カレーの後にこれ食べるの、嬉しそうにしてたし」

袋の中の瓶入りのヨーグルトが、カチャカチャと軽快なリズムを奏でていた。

「後は、シンイチ君とミライが帰ってくるだけなのに、今日は遅いわねぇ……」私は曲がり角を曲がった。

「あっ……シンイチ君」私は声をかけようとしたが、思いとどまった……

何故なら……


手を繋いで、家路に向かう二人を見ながら
……私は……シンイチ君がいてくれるだけで……それだけでいいの……
私はビニール袋を下げた右手を堅く握り締めながら、そっと呟いた




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どうもありがとうございました!


第10話Cパート 終わり

第10話Dパート に続く!



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