「改札はあっちよ!」ミライはローラと一緒に改札口を目指した。
その時銃声が鳴り響いたかと思うと、ミライの少し前の天井の広告灯が割れて飛び散った。
「危ないっ」ミライは、破片で怪我しないようにローラを突き飛ばした。
ミライに広告灯のガラス片がキラキラ光りながら降り注いだ。
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 11E
第11話【
別離
】Eパート
近くにいた一般客は悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすかのように逃げていった。
「お姉ちゃん!」ローラは膝を少し擦りむいていたが、殆ど怪我が無かったのか、すっくと立ち上がった。
「ローラちゃん!私が引きとめるからここを出なさい!ホテルに向かうのよ そうしたらNERVの誰かが迎えに来てる筈だから」
プラスチック製だったので、破片が直撃した肩口だけにしか傷を追わなかったようだが、血を滲ませながらミライは拳銃を構えた。
「ミライおねえちゃん……血が出てる……駄目よ おねえちゃんをおいてけないよ」
「いいから、助けを呼んで来てっ 私は大丈夫だから」
「うん!」ローラは後ろをときどき振り返りながら駅を駆け抜けていった。
「出て来なさいよ!」ミライは銃を両手に握り締めたまま、撃ってきたと思われる車内の方を見ていた。
「お嬢ちゃん……銃なんか持って……あんた、ほんまにそれで人を殺せるんか?
俺は殺せるで……ガキの方は生かしとかないかんかったけど、おまえの生死は問わんそうやからの……」
(この上ローラちゃんまで攫われたら……シンイチがますます手出し出来なくなる……だからここを通す訳には行かないのよ)
「ほんまに撃てるんか?」黒服を身につけた男は大胆にも電車の中から一歩、また一歩とミライに近づいていた。
「あんたには用は無いんや……そこ通してくれたら、あんたの命は取らんがな……なぁ悪い話やないやろ」
「あの子を売るような真似、出来る訳無いじゃ無い!」ミライは二度、三度と引き金を引き絞った。
最初の二射は命中しなかったが、三射目が男の右肩に命中した。
「な、なんやこれ……実弾や無いんか……あかん……麻痺銃かいな……まだ実用化されとらん筈やのに」
男は慌てて痺れた右手から銃を離し、左手で銃を取ろうとしていたが……
「今度はパラライザーじゃ無いわよ……あんたの脳味噌をここにぶちまける事が出来るのよ!」
ミライは男の目の前で赤い所までスライドさせた。
「解った……わしは降参や……けどな……」男はそういって口元を歪めた。
「ミライお姉ちゃんっ」ローラの悲痛な声にミライが振り向くと・・
長身の黒服の男に眉間に銃を突きつけられたローラの姿があった。
「ま……あんた よう頑張ったわ……けど、最後の最後ではこっちの勝ちやったな……銃を捨てて貰おか」
「……(ゴメン……シンイチ)」ミライは銃を握り締めていた右手を静かに下げていった。
「ミライ!銃を捨てるな!」
その時、どこからともなくシンイチの声が響いた。
「えっ?」
長身の男の背後にシンイチの姿がゆらりと現れ、長身の男の首筋に淡く光る軌跡を残して手刀が振り下ろされた。
「うぐっ」長身の黒服の男はまるでスローモーションで再生していたかのように、前につんのめって気絶した。
「シンイチ!」ミライは慌てて銃口を先程の広島弁の男の方に向けた。
「かぁ〜まいったなぁ……そうきたか……ホンマにまいったわ」広島弁の男は肩を落とした。
「シンイチお兄ちゃん!」ローラはシンイチの足元にじゃれついた。
「ミライ……よく頑張ったね」シンイチはローラをだっこして、ミライの元に歩いていった。
「その顔、見覚えあるわね……確か表向きは探偵だけど、裏では殺人以外ならどんな依頼でも請け負うって言うフリーのエージェントじゃないの」
葛城ミサトが銃を向けたまま、近づいて来た。
「NERVにまで顔が割れてるとは思わなんだな……」
「広島弁ってのを聞いてさっそく調査したのよ……今ごろエージェントが、あなたの妹さんを確保してる筈よ」
「車のトランクに、攫ったアヤって女載せとる……そこの助手ともども、見逃してくれるんなら、開放するで」
「あら、正直ね それ言ったら駆け引きにならないじゃない……」
「あほいいな いくらなんでもパスワードぐらい設定してる」
「解ったわ 表向きはあんた達は逮捕で刑務所送りだけど、じゃNERVのエージェントになってもらいましょうか……」
「しゃーないな……まぁNERVやったら食いっぱぐれも無いやろ」
「当然、妹さんはNERVの病院にタダで入院させてあげるから」ミサトは微笑んだ。
「そうか……そこまで気を遣うてもろうたら、しゃぁないな」男は立ち上がり、銃口を持って銃把を向けて差し出した。
「早く、アヤさんを助け出さないと!」
「心配無い 眠らせとるだけや 何も手出ししとらへん」
「あ、それと学費の方も払ってあげるわね……高校の授業料二ヶ月も滞納してるでしょ」
「こーこーせい?」ミライは驚いていた。
「アヤちゃんの同級生なのよ これがまた ふふっ」ミサトは笑みを浮かべた。
「それもばれてるんですか……せっかくヤクザ映画見て覚えた広島弁で喋ってたのに」
「あ、そろそろ麻酔が切れる頃かな じゃ、行きましょう」
「あの……」今ごろになって鉄道公安官が来たが、ミサトが手帳を見せるや否や引っ込んでいった。
その頃……黒塗りの車の後部トランクでは……
「開けてぇ!おトイレ行かせてよぉ お願いぃぃ」アヤがトランクを叩いていた。
「もぉぉ〜知らないからねっ」アヤは顔を真っ赤にして強くトランクを叩こうとした。
その時……
トランクが開き、腕を振り上げようとしていた縛られたアヤの両手は、
後部トランクを開けた、黒服を着た長身の男の顎にクリティカルヒットした。
「またかよ……」男は昏倒して道端に倒れてしまった。
「アヤさん!」シンイチはアヤの元に駆け寄った。
「シンイチ君……助けてくれたのね……ありがとう」
「いや、違うよ……ミライが頑張ってくれたから、助ける事が出来たんだよ」
「お姉ちゃん……無事で良かったね」
「ありがと……取り敢えず縄……ほどいてくれない?」
一行は二台の車に乗りミドリのいるホテルOccidentに急いだ。
二台の車はホテルoccidentの駐車場の片隅に止まった。
「僕とローラちゃんで行って来るから、ここで待ってて下さい」シンイチはローラを連れてホテルに入っていった。
「どうしたの? 血が出てるわよ ミライ」
「あ、ガラスの破片が当たったから……けどたいした事は無いわよ」
「葛城教頭先生 救急箱とか無いですか?」
「ちょっと待ってね NERVの医療用パックがあるから」ミサトは後部トランクから医療用パックを取り出した。
「ほら、ミライ 手当てしてあげるから、その服脱いで頂戴」アヤはミライの手当てを始めようとしていた。
「あの二人と、今後の条件面で決めておかないと行けない事があるから、あの二人の車にいるから」
ミサトは黒塗りの車の方に歩いていった。
「一応鍵かけておくからね」アヤは念のためドアをロックして、ミライの治療を始めた。
「ちょっとしみるけど我慢してね」
「うん……ありがと」
「傷も残りそうに無いし、後で病院行けば大丈夫みたいね」
二人は久しぶりに姉妹二人きりで話をしていた。
「えーと405号室だったよね」
「うん」
二人はエレベーターに乗り込んだ。
「ねぇ……ミドリお姉ちゃんはどうして、お父さんとお母さんと暮らせないの?」ローラがシンイチを見上げて言った。
「うん ミドリさんも僕達のように力を持って産まれて来たんだけど……その力を持っているのが、両親は恐かったと思うんだ。
ローラちゃんのママや、僕を育ててくれた碇……父さんと母さんのように、恐れない人は珍しいんだ……」
「じゃ、私ももしかしたら、同じような事になってたかも知れないの?」
「うん……そうだね」
「ミドリお姉ちゃん……可哀想……けど……」
「どうかしたの?」
「なんでも無い」
エレベーターは4階に着き、二人は405号室に向かって駆け出した。
コンコン ミドリは、ドアのノックの音で目を覚ました。
「おじいちゃん 忘れ物でもしたのかしら」ミドリは立ち上がり、ドアに向かった。
「シンイチさん!?」覗き窓を見たミドリはロックに手をかけたが思いとどまった。
「どうして、ここが……私には話す事はありません……帰って下さい。」
「ミドリさん……大変な事が起こってるんだ……ローラちゃんも一緒に来てるんだけど」
「ローラちゃん?」ミドリはロックを外してドアを開けた。
「ミドリお姉ちゃん」ローラはミドリに飛びついていった。
「会いたかった……会いたかったよ お姉ちゃん」
「ごめんね……黙っていなくなって……」
「ミドリさん……ローラちゃんのお母さんと、君のご両親が乗った飛行機がハイジャックされたんだ」
「えっ?」
「あなたの力が必要なんです あなたを連れて僕がテレポートしますから、
コクピットにいる眷族を倒さないと……」
「そんな……無理よ……私に力があると言っても、自由にいつでも出せる訳じゃ無いの……
出なかった時は、私も、シンイチさんも、乗ってる皆を危険に晒す事に……」
「そんな……どうすればいいんだ……あと30分しか無いのに……」
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第11話Eパート 終わり
第11話Fパート
に続く!
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