裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 12D

第12話【戦士の休息】Dパート

僕達は映画を放映した教室を出て、階段の広い踊り場で話していた。
「楽しかった?ローラちゃん」アヤさんはローラちゃんの顔を覗きこんで言った。
「ウン!」
「人形劇の方がマシだったような気がするけど……」
ミライがぶつぶつ言いながらも、ハンドメイドらしいパンフレットを大事そうに持っていた。

「喉渇いたでしょ 何か飲みに行く?」アヤさんは暑かったのか胸元に風を送り込みながら言った。
「アネキの教室の店なら行ってもいいわよ ミックスジュースをまた飲みたいし」
ミライも手にしたパンフレットをうちわ代わりに煽りながら答えた。
「あんなのなら家でも作れるから今度作ってみようか?」
「ホント?アヤお姉ちゃん」
「材料さえあれば作れるから今度、材料買っておくわね」
「それじゃ行きましょうか」僕はハンカチで額の汗を拭きながら言った。

僕達は階段を降りて二階のアヤさんの教室に向かった。

「凄い人だかりね……どうしたのかしら」
教室の前には入りきれなかった人達が座りこんでいた。

「あ、アヤ 手伝ってよ!」僕達の姿を見つけたミユキさんが声をかけて来た。

「どうかしたの?凄い人じゃ無い」アヤさんは手渡されたエプロンを身に付けながら言った。

「人ごとじゃ無いわよ!あんたのその姿を見たさに長時間ねばる人が多くて、次のお客さんが座れないのよ」

「え?」アヤさんが振り向くと、椅子に座っていたお客が数人嬌声を上げた。

「ほらほら、気が済んだら帰れ!一般のお客に迷惑をかけるんじゃ無い」
もう一方のドアからアヤさんの担任の木村先生が現れて、高等部の生徒らしい客に声をかけた。

「ちぇ〜」

「まぁいいか アヤさんのウエイトレス姿拝めたし」
ぶつぶつ言いながらもようやく立ち上がりレジの方に歩いていった。

「800円です」レジ係のゲンさんが無愛想な表情でお客からお金を受けとっていた。



「ごめん、シンイチ君! テーブルからグラスとか下げて来てくれない?」
「いいですよ」僕はミユキさんから丸いトレイを受けとって片づけて周った。

「洗い物、手伝いましょうか?」ミライが腕を捲りながら洗い物を始めたミユキさんの所に行った。
「あら、ありがとう ミライちゃん」
「私も手伝いたいぃ」
「ローラちゃんだっけ ローラちゃんにはテーブル拭いて貰おっかな」
ミユキさんはふきんを水で濡らして、ローラちゃんに手渡した。

テーブルを片づける間、木村先生はお客を片づけの済んだテーブルに誘導していった。


「ふぅ……」僕はようやく片づけを終えて、自分達の為に確保しておいた席に腰を下ろした。
「結構洗い物多かったから手がふやけちゃった」
「私はおもしろかったよ」
「お疲れ様」僕は戻って来たミライとローラちゃんに声をかけた。

アヤさんもようやくお客に運び終えてミユキさんに開放されて椅子に座り込んだ。

「みんなありがとね」ミユキさんがトレイを持って、ミックスジュースを置いていった。

「もうすぐ閉店だし、これ余っちゃったから食べてくれる?」ミユキさんはチョコレートムースのケーキを4つ置いて行った。

「わぁい ありがと!」ローラちゃんは喜びいさんで小さいフォークを手にケーキに挑んでいった。

「疲れてると甘いものが美味しいのよね」アヤさんも美味しそうに口に頬張った。

「今日はいろんな事がありましたからねぇ……」僕もしみじみとケーキを食べていた。

「しかし、こう暑いと気が滅入るわね 昨夜も熱帯夜だったし……」ミライがげんなりとした顔で言った。

「どこか泳ぎにでも行きたいわね……」アヤさんも遠い目をして言った。

「僕はあのプールってのがどうも好きになれないんだけど……この熱さじゃプールでもいいから水に漬かりたいなぁ」

「あ、そうだ 来週は土曜と日曜が休みだから泳ぎに行きましょうか」

「私もいきたーい」ローラちゃんはケーキを食べおえて頭を上げた。

「ローラちゃん 口元にチョコクリームが付いてるよ」
僕はテーブルに置いてあった紙ナプキンでローラちゃんの口元を拭いてあげた。

「ありがと!シンイチお兄ちゃん」

「いいな いいな」アヤさんが目を輝かせて言った。

「もう、恥ずかしいからやめてよアネキ」ミライが呆れた口調で呟いた。

「さて、そろそろ帰らないと、ローラちゃんのお母さんの面会時間が終わっちゃうね」僕は立ち上がって言った。

「ママにあったらね、今日の事、いっぱいお話したいの」

「今日は家に泊まって行くんでしょ?ローラちゃん」

「ウン!」

「いくらでしょうか」僕はレジの前に立って言った。

「100万円……」ゲンさんは小声で何かを呟いた。

「え?何か言いました?」僕は聞き取れなかったのでもう一度聞き直した。

「あ、1000円でいいそうだ」
「じゃ、これ」
「この前は……悪かったな」ゲンさんに背を向けて出ようとした時、僕はゲンさんの声を聞いた。


「私は片づけてから帰るから、ローラちゃんをお願いね」

「何時頃になるんですか?アヤさん」

「8時前には終わると思うけど」

「そんな時間に一人で夜道帰らせる訳にはいきませんよ ミライ、ローラちゃんをお願い出来るかな?」

「別にいいけど……」

「頼むよ(あの話……アヤさんにもしておきたいんだ)」僕はミライにだけ伝わるように思念を飛ばした。

「じゃ、ローラちゃん帰りましょうか」

「晩御飯までには帰って来てね」そう言ってローラちゃんはミライに手を引かれて出て行った。

「じゃ、何から手伝いましょうか」僕は袖をめくりながら言った。


「まったく……どいつもこいつもとっとと帰りやがって」木村先生はブツブツ言いながら窓を拭いていた。

残っているのは、ミユキさんとゲンさんとアヤさんと木村先生とアヤさんの友人のエミさんとミツコさんと僕だけであった。

「けど、お客さん一杯来て良かったじゃ無いですか ミルク先生」

「あ、水そろそろ変えましょうか?」僕はモップを絞っているアヤさんに声をかけた。

「そうね、じゃお願いしようかな」アヤさんはモップを絞りおえて、再び床を拭きはじめた。


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「なんか、その格好でモップ使ってると メイドロボみたいだね……」
一所懸命床を磨いているアヤさんの横顔を見て僕は呟いた。

「何を言うのよ……私は○チじゃ無いわ」アヤさんは頬を染めて言った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 裏庭SG -if- 終(爆)☆☆


(注)はっぱネタの解る方へ……範囲指定したら読めます……



「お待たせぇ〜」買い物に行っていたエミさんとミツコさんが教室に入って来た。

「はい、ミルク先生 お釣りね」
「ん?結構高かったんだな……」

「一段落した事だし、打ち上げにするか」
木村先生は椅子に座り込んで、エミさん達が買って来たカンジュースを喉を鳴らせて飲み始めた。

「いただきまーす」僕達も座りこんでジュースを飲みはじめた。

「ところで、その格好で家に帰るんですか? アヤさん」

「嫌?」アヤさんは少し頬を染めて言った。

「嫌って事は無いですよ……その格好も素敵ですし」

「わーい シンちゃんに誉めて貰っちゃった」
嬌声を上げて僕の腕を身体全体で包み込もうとするアヤさんを見て僕は少し驚いた。

「こら、アヤ! シンイチ君を独り占めしちゃ駄目でしょ」
「そうよ!私達にも紹介する約束だったじゃ無い」
エミさんとミツコさんがアヤさんの両手を持って言った。

「こらこら 何してるおまえら」木村先生が苦笑しながら言った。

「……羨ましい」
「何か言った?ゲン!」
「いや……」

「ん?これサワーって書いてるじゃ無いか をい 澤田・山下!」木村先生はエミさんとミツコさんを呼んだ。

「えぇ、だって先生打ち上げって言ったじゃ無い 打ち上げって言ったらお酒が付き物よね」
「ねー」X2

「もう酔ってるのか……教室で生徒と酒盛りしただなんてばれたら訓告じゃ済まないかも知れんな」
木村先生は呟きながらカンの底に残っていた酒を飲み干した。

「私達にももっとお話しさせてよ」
「そうよ 取らないから ほら」

「ダメ!シンちゃんは私のなの」酔うと思考が幼児に対抗するのか、アヤさんは僕にしがみついていた。

「こいつら聞いちゃいないな……」そう言いながらも木村先生は二本目を飲みはじめた。


「気持ち悪い……」
「お酒だと解ったのに、二本目なんか飲むからですよ」
「そんな冷たい事言わないでよ シンちゃん……私泣いちゃうよ」
「参ったなぁ……」僕はアヤさんを背中におぶって坂道を降りていた。

なんとか 家との中間の辺りまで歩いて来たが、僕もさすがに疲れたので、
公園のベンチにアヤさんを降ろして休息する事にした。

「もう9時半か……晩ご飯食べそびれちゃいましたね」
「風が気持ちいい……」アヤさんは僕の太股に頭を載せてベンチに上むきに寝ていた。

「けど、今日は楽しかったです。高等部の雰囲気とか……知る事が出来たし……いい経験になりました」
「なに いってるのよ シンちゃんも再来年には高校生でひょ」
少しろれつがまわっていないがアヤさんが不審そうに僕の瞳を覗きこみながら言った。

「僕……高校には行きません……就職しようと思ってるんです。」
「どうして?シンちゃんが本気で勉強したら大概の高校は合格出来るじゃ無い」
「話に聞くと、孤児院とかでも中学校卒業したら退園だって言うし……」
「どうしてそんな事言うの?」少し酔いが覚めたのか、アヤさんは真っ直ぐに僕の瞳を見ていた。
「もう、これ以上迷惑かけたく無いんですよ」
「高校卒業するのと中卒だと生涯収入が三千万も違うのよ」
「それはミライにも言われたよ……」さすが中学校の教師の娘だ……
「就職なんかいつでも出来るから、勉強出来る時に勉強しないとダメよ」
「勉強はしますよ……大検取るつもりだし……ただ迷惑かけたく無いから働いて一人暮らししようかと……」

「シンちゃんは私の事が嫌いなのね」アヤさんの目尻から涙が二筋ベンチに流れていった。
「ど、どうして、そうなるんですか」僕は久しぶりにアヤさんの涙を見て動揺してしまっていた。
「私の事嫌いだから家を出るなんて言ってるんでしょ」
「そ、そんな事無いですよ」
「じゃ、証拠見せてよ……」
「証拠?」
「ねぇ……シンちゃん……私 喉が乾いたの」
「は? 水ですか……ちょっと待って下さいね」僕はアヤさんの頭の下に手をすけてそっとアヤさんの頭を降ろした。

公園の隅の水飲み場で僕は両手を洗い、両手一杯に水を組んでアヤさんの元にそっと歩いていった。

「起きれますか?」
「ダメ……起きれない」
「けど、水飲めないでしょ」
「シンちゃん……私の事嫌いじゃ無いのなら……口移しで飲ませて……そうしてくれたら信じてあげるから……」
僕は呆然としながらも、アヤさんの瞳を見ている内に、アヤさんの瞳に吸い寄せられるかのように、
手の中の水で口を少しゆすいで、水を吐き アヤさんに飲ませる為に残りの水を口に含んだ。

「シンちゃん……」アヤさんは瞳を潤ませて微笑みながら、その小さい唇を少し開いた。
僕はベンチの上のアヤさんに覆い被さって、アヤさんの唇に自分の唇を合わせようとした

「コラー」 僕は誰かの叫び声に驚いて口の中の水が鼻から吹き出そうになってしまい、

アヤさんの顔にかからないように顔を背けた。

「何やってるのよ!遅いから着替えが無くて困ってるかと思って、迎えに行こうとしてたのに!」

「あの……アヤさんがお酒に酔っちゃって水が飲みたいって言ったから……」

「聞いてたわよ……アネキ!いい加減にしなさいよ」

「ゴメンゴメン 調子に乗りすぎてたかも」アヤさんは酔ってるとは思えない足取りですっくとベンチから立ち上がった。
「早く帰りましょ まだみんな御飯も食べずに待ってるんだから」
「ハイハイ」

「女の人は……僕には解りません……」僕は呆然として、足取りも軽く歩くアヤさんを見ていた。





CMの後に次回予告です。


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”アヤです 普段着そめないビキニはやっぱり恥ずかしいですね”【アヤさんビキニでドカーン】
”シンイチです 修行の為に眉毛を片方剃って山に登ります”【シンイチの苦難】の二本をお送りします
尚、予告と内容が異なる場合も御座いますがご了承下さい。 ンガング




第12話Dパート 終わり

第13話Aパート に続く!



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