「そういう面白い事をするなら、次からは私も混ぜる事」
ちらばった紙切れを見てアスカさんが笑った。



裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 13C

第13話【碇家の休日副題:アヤさんビキニでドカ〜ん】Cパート




「もう2時だし、軽く泳いでから、名所を廻ろうって事になったのよ」
僕達はアスカさんの後についていった。

「この子達、椅子取りゲームしてたのよ……」 プールに付くやいなや、アスカさんは笑いを堪えていたのか、吹き出しそうになりながら父さんに話しかけた。

「椅子取りゲームって何? ミドリお姉ちゃん」
ローラちゃんは平泳ぎで泳いでいるミドリさんの背中に捕まりながら問いかけた。

「人数より少なくした椅子に、音楽が止まると同時に座るゲームよ」
ミドリさんは岸にローラちゃんを降ろしてから言った。

「えぇ〜いいなぁ」
「ローラちゃん お昼寝してたから……」ミドリさんが済まなさそうに言った。


「ふぅ……気持ちいい」ミライは冷たい水の中で水着の縁を手で持ってすかしていた。

「ミライ……はしたない事しないのっ」アヤさんが見るに見かねて声をかけた。

「いいじゃ無いの……どうせ私たちしかいないんだから……」

「そういう問題じゃ無くて……まぁいいか」
アヤさんは説得を諦めて泳ぐ事に専念する事にしたらしい


30分程泳いでから、僕達は整備された遊歩道を通って、滝の名所周りをしていた。

さすがに暑いので、時折滝の水をかぶっては、次に進むと言った感じであった。

「いくら年中夏って言っても、もう少しメリハリが付けばいいのに……」
ミライがあまりの暑さに愚痴っているのを、僕は横目で見ていた。

「まぁまぁ、この滝で最後だから、後は空調の効いた室内でゆっくりすればいいさ」
父さんが、ちょっと先の方に見える滝を指差して言った。

「奇麗……」

「ほんと……虹がかかってるなんて……」

{シンイチ……この場所を覚えておけ……この滝で修行をする事にする……}

{{って、やっぱり滝に打たれるの?}}

{普通、人生の大半を捧げないと修行出来ない事を、一日や二日でやろうって言うんだ……
多少の無理は仕方無いだろう……}

{{それはそうだけど……}}

{本来タントラには滝に打たれるなんて修行は無いんだが……まぁ任せておけ}

{{わかったよ……兄さん}}

僕は何故兄がいろいろ詳しいのか解らないのだが、兄が言うには宇宙の果てに
”アカシックレコード”と言うものがあって、そこから情報を読み取るって言ってたけど
……僕には理解出来ない事だ……
今回する修行についても、図書館で調べてみたものの、いまいちピンと来なかったのだ。
尾てい骨にからまりあっている二頭の蛇……性の力の象徴……クンダリニーと言う名の
二頭の蛇を呼び覚まして、背骨を上らせて、頭上まで上らせるのが目的だと言ってた……
過去、それに挑んで死んでいった人がいるとも書かれていた……でも、その行をする事に
よって……僕の潜在能力が上がり、より強い力を発する事が出来るのなら……その力で…
…みんなを守れるのなら……僕は……
(*注 危険です 導師(グル)無しでやったら死ぬかも 絶対に真似しないでね)


晩ご飯まで自由時間と言う事になったので、僕はみんなには寝ると言っておいて、
扉の鍵を締めて、ベッドを踏み台にして窓から外に出る事にした。
窓の鍵は閉めようが無いので、取り敢えず窓を元どおりにして、僕は滝に向かっていた。

焼けた遊歩道が、裸足の足にひりついたが、僕は構わずに目的の場所まで走っていった。

{足元には気を付けろよ……滝壷に落ちたくなかったらな……}

{{わかったよ……}}僕は滝を背中に受けるように後ろずさった

水しぶきが上がり、僕の背中……特に背骨を滝の瀑布が叩いていた。

もっとも、一番規模の大きい滝でやったら二秒も持たずに流されてしまうだろう……
一番奥の、あまり水量の多く無い滝だからこそ、僕みたいな素人でも出来たのだが。

二時間程、滝に打たれていたであろうか……身体の感覚は薄れかけているのに、
背骨が脈打つかのように熱く感じはじめていた。

{おい……もういいぞ……気を付けて離れるんだ}

僕は兄さんの声に従って、よろよろと水しぶきを受けながら、
水がかからないところまで移動した。
海水パンツはすでにずれかけていたので、紐を括りなおしながら、
兄さんの指示する場所に歩いていった。

兄さんの指示通り歩いて行くと、観光の時に見た、かなりの巨岩に辿りついていた。

{これに登るんだ……}
僕はなんとかひっかかりを探して、丸い巨岩に登る事が出来た。

{もう少し前……そこだ そこで目を閉じてリラックスするんだ……}
{{なんだか……気持ちのいい所だね……}}
{元々気場のいい土地柄だし、龍脈の通り道のこの巨岩だ……相当の力を秘めている筈だ。
おまえはただ、リラックスしていればいいんだよ……}

僕は足を痛くならない程度に組んで、瞑想と言うには甚だ稚拙だが、
精神をリラックスさせていった。

時間の感覚を忘れ、風が山の木々を揺らす音や、滝の水の流れ落ちる音を聴いている内に、
僕は、俗に言う”無我”の境地に近づいて来たのか、
水に叩きつづけられて、少しひりついていた背中の背骨の中を何かが下から上に向けて、
上がって行くのを感じていた。
図書館で見た本にあった、”氣”の感覚と言うものだろうか……

段々と身体のあちこちがムズ痒い感覚が出はじめ、何か見えない虫でも張っているのかなど
と、心配をし始めていたが、この感覚が以外に心地よいものだと知った僕は心を解放した。

{もう……いいだろう……}
僕は少し感覚の違う身体を引きずって、なんとか無事に巨岩から降りる事が出来た。

{取り敢えずはこれで終わりだ……帰って風呂でも入ってから一休みするんだな}
すでに日が西の空に沈みかけていたので、僕は遊歩道を駆け降りた。

なんとか気づかれずに窓から部屋に入りこんで、僕は一息ついた。

一時間程、巨石の上で座ってたであろうか……僕は充実感を感じたまま、
夕食まで仮眠する事にした。

「シンイチ君!お風呂入りましょう」ドアを叩くアヤさんの声で僕は目を覚ました。
すでに、周りは暗くなりかけていた。

「あ、はい」僕はドアを開けて廊下に出ると、アヤさんとミライが水着のまま立っていた。

「露天風呂は水着着用って書いてたから いきましょっシンイチ」

「お風呂に入って、着替えてから晩ご飯って父さんが言ってたから」

「なるほど……」僕は着替えの入った袋を手にして後をついていった。

「他のみんなは?」
「隣のコテージにいたみんなは、もう風呂に行ったのよ」
「今日ははしゃぎすぎて疲れちゃったわね……」
「アネキがあんな罰ゲーム作るからムキになったんじゃないの……」
「トランプじゃ無くて、まさか椅子取りゲームだなんて解らないんだから仕方無いでしょ」


僕は風呂に入ると、父さんがジャグジーに漬かったまま、疲れた顔つきで目を閉じていた。

「疲れてるんだな……父さん」 他に客がいなかった為、僕だけになった男湯で僕は水着を
脱いで身体を洗いはじめた。 身体を洗い、風呂に漬かり、頭を洗っていると、かなり湯が
熱めのせいか、少しのぼせかけたので、僕は水着を履いて、露天風呂に向かう外へのドアを
開けた。 「奇麗な星空だな……都会じゃ絶対見られないよな……」僕は誘導路に従って、
露天風呂に向かっていった。

3分程歩くと、前方に岩をくり貫いて作ったかのような風呂があったので、足に湯をかけて
から、中に漬かった。

パイプからちょろちょろと少しぬるいお湯が流れ込んで来ていて、
湯かげんも中に比べるとぬるかったので、僕は石の湯船に背を預けた。
どうやら、他にもこのような小さな湯船があるようで、ばらけて配置されてはいるが、
ちょっとしたジャングル風呂のようであった。
この湯船も二人が定員だな などと考えていると、女性の話し声がして少し驚いたが、
水着着用なので、少し安心した。

「あら、シンイチ君じゃ無い」 「水着着用の訳よねぇ……混浴なら」
「けど、ここはぬるめだから、長時間漬かるにはいいみたいよ 入りましょ」
「少し狭いみたいだけど、まぁ他人じゃ無し……いいか」
二人は笑いながら狭い、岩をくり貫いて作った湯船に入って来た。

「ちょっと狭いかも知れませんよ……僕 出ましょうか?」
腰を上げようとした僕をアヤさんが手で制した。

「さすがにきついかな……ミライ……もうちょっとそっちに寄れる?」

座る位置を調整していくと、どうやら三人が入る事が出来た。

上半身はそれほど密着していないのだが、足は、すでにどれが誰の足だか良く解らない
ような状況になっていた。

「けど、気持ちいいお湯ね……」ミライが顔をぱしゃぱしゃと湯で洗った後、言った。

「そうね……外の気持ちいい風に包まれて、星空を見ながらこうしてみんなでお風呂に
入れるなんて、夢みたい」「アネキ……主にシンイチとでしょ」
「解る?」 「あぁ私がいなければなんて思ってるでしょ」
「そ、そんな事無いわよ」
「どもってるじゃ無い……それに……あっ流れ星」ミライは星空を見上げて言った。

僕は流れ星が西の空に消えて行くのを見守りながら、
自分の愛する人を守れるようにと、流れ星に願いをかけていた。

「何か、お願いごとした?シンイチ君……」

「ええ……」
「私は……いつまでも……家族皆で仲良く暮したいってお願いしたの」
アヤさんは僕がこの間家を出る事をほのめかした事に対する返事のような言葉を呟いた。

「さっき何を言おうとしたの?ミライ」アヤさんは普段の表情に戻ってミライに話しかけた

「そうよ 思い出したわ 父さんから説明聴くの忘れてたけど……
オイル塗る時に何があったの?」

「私のビキニの紐が椅子にひっかかったから、シンイチ君に取って貰っただけよ……
ただ、恥ずかしがってたら……シンイチ君がかばってくれたの……

「意識しちゃって……私たちが小学生の時は、お風呂の中で平気で私達を洗ってたくせに……」

「あの頃とは違うわよ……ねぇ」

「あの……そろそろ出たいんですけど」
僕はか細い声で主張したが、聞き入れられはしなかった。

風が吹く事で、なんとか数分程、我慢したものの、もう出たくなったので、
僕は腰を上げようとしたが、何故かミライとアヤさんが深刻な顔をしていたので、
二人の顔を覗きこんだ。

「あ……シンイチ君……出るの? じゃ私たちも出ましょうか……ミライ」

「そうね……」

僕は訳が解らないまま、屋内の施設に戻っていった。

僕は途中で、アヤさんとミライと別れて、来た路を戻っていった。

その時、兄さんの思念を感じて、僕は立ち止まった。

{シンイチ……おまえの修行の最終段階だ……今夜……アヤかミライ……
どちらかを抱くんだ……クンダリニー シャクティ(性力)と言うぐらいだから、
タントラヨーガの修行から性交による行は切って離す事が出来ないんだ……
そうしないと、目覚めはじめたお前の中の二匹の蛇は……
行き場を無くしてお前の中で暴れるだけだ……それはおまえの死すら意味してるんだ。
……もう……充分選ぶ時間は与えてやった筈だ……}

僕は自分の耳を疑っていた……愛する人を守るが故に身に付けようとした力が……
その力を得る為には……二人の内どちらかを傷つける事になってしまうなんて……




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どうもありがとうございました!


第13話Cパート 終わり

第13話Dパート に続く!



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