{シンイチ……おまえの修行の最終段階だ……今夜……アヤかミライ……
どちらかを抱くんだ……クンダリニー シャクティ(性力)と言うぐらいだから、
タントラヨーガの修行から性交による行は切って離す事が出来ないんだ……
そうしないと、目覚めはじめたお前の中の二匹の蛇は……
行き場を無くしてお前の中で暴れるだけだ……それはおまえの死すら意味してるんだ。
……もう……充分選ぶ時間は与えてやった筈だ……}
僕は自分の耳を疑っていた……愛する人を守るが故に身に付けようとした力が……
その力を得る為には……二人の内どちらかを傷つける事になってしまうのだ……
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 13D
第13話【
碇家の休日
副題:アヤさんビキニでドカ〜ん】Dパート
{{に、兄さんどういう事だよ}}
{この世界に”力”を具現化するのにはおまえの身体を通す必要がある……
だから、その許容限界を上げるしか無いと言うのは説明した筈だ……}
{{そんな……だからって……}}
僕は持って来ていた寝間着に着替えて風呂場を出た。
晩ご飯を食べたけど、食事中の事はあまり覚えていない……
僕は部屋の中にこもって考え事をしていた。
{シンイチ……もう二人には俺がコンタクトを取ってるんだ……}
{{ど、どういう事?}}
{二人には個別に思念を送って、全て話してあるって事だ……
ドアの鍵がかかって無ければOKって事だ……}}
{{もしかして、風呂の時に思念を送ったの?}}
{そうだ……二人とも顔色を変えたからさすがに気づいたか……}
{{けど、アヤさんは兄さんの事を知らない筈じゃ……}}
{……アヤとミライ同時に語りかけたからな……ミライに説明して貰ったよ}
{{兄さん……本末転倒って言葉知ってる?二人を守る為にとは言え、
二人を傷つけるだなんて……}}
{二人同時に話して二人ともOKしたって事は向うは腹決めてるんだよ……
あの二人が望むんだからいいじゃ無いか……どうせ、どのみち……}
{{何か他に方法は無いの?兄さん}}
{早く言えば……人間のDNAとは僅かに違う者なら、同じDNA配列の相手でないと、
修行にはならん……アヤもミライもおまえも、碇家の血を引いている事は間違い無いんだ。
おまえの母親は碇シンジの従兄弟だ……そういう事だ……}
{{本当に死ぬの?}}
{いや、死ぬとは限らんが、発狂する事もあるし、身体に異変が起る事もある……}
{まだ迷ってるのか……}
{{だって……}}
{おまえがいつも寝る前に妄想してる事をするだけでいいんだ 簡単じゃ無いか}
{{に、兄さんっ……それとこれとは……}}
{どっちでもいいが……すでに背骨がチリチリしているじゃないか…… どちらにせよ、
おまえに残された時間はもう無いんだ……お前がこの場を逃げてアヤとミライを傷つけま
いとしても、おまえが死ぬ事により、 アヤとミライの今後の安全は保証されなくなるだ
ろう。 おまえの親父……先代が死んだら……三日と持たないだろうな……
いくらNERVに保護されようが、世界中の眷族がより強い力を求めてアヤとミライを
奪いに来るだろう。
碇の巫女たる二人をな……俺はもう口出ししない……おまえが決めろ!俺は意識を閉ざす}
兄さんの意識が完全に閉ざされたのを知って僕は立ち上がった。
「どうすれば……どうすればいいんだ……」
身体の感覚も普段とは違い、遥か彼方のいくつかの滝の流れ落ちる音を聞き分ける事が
出来るぐらいに研ぎ澄まされてきていた。
身体には虫が張っているかのようにもぞもぞとした何かを感じ初めて、
最悪、死に至ると言う兄の言葉を噛み締めた。
僕は部屋を出て、廊下に出た。
アヤさんのドアをノックする
ミライのドアをノックする
逃げ出す
「ダメだ……こんな事で二人を傷つける事なんか出来ないよ!
危険から守る代わりにだなんて、許されないよ!」
僕は早足でコテージの外に出た。
僕は昼間滝に打たれた場所に歩いていった。
僅かな灯の中だったが、僕はなんとか迷わずに昼間の滝に辿りつく事が出来た。
僕は水しぶきのかからない所に服を脱ぎ捨てて、素裸のまま滝に打たれた。
身体の奥底から燃え上がって来る何かを、滝の水で押さえる事が出来るのでは無いか
と思ったのだが……
30分程滝の水を受けていたであろうか……
さすがに年中夏とは言え、僕は水の冷たさに身体の感覚が薄れて行くのを感じた。
だが、今この滝の水の中から離れるのは死を意味しているようで、
僕は出るに出られなかったのだ。
人間の根本的な生命力……いわば性の力までもが吹き上げて来ている訳だから、
滝に打たれながらも、僕自身は屹立していた。
滝に打たれてはいても、段々と尾てい骨から熱いものが吹き上げて来ているのを感じた。
「時間を少し伸ばす事しか出来なかったのか……」
あまりの性の力(シャクティ)の奔流により、このまま引き返して、
二人を陵辱する事まで頭に浮かびはじめたので、僕は頭を振ってその思いを振り払った。
「シンイチさん……」背後から声をかけられ、僕は驚きながらも後ろを覗きこんだ。
「ミドリさん……どうしたんですか……」
「シンイチさん……今 あなたを死なせる訳には……だって……」
「何故知ってるんです?」
「悪いとは思ったんですが……あの時近くで別のお風呂にローラちゃんといたので……
思念をキャッチする事が出来たんです……」
「シンイチさん……私 奇麗な身体じゃ無いんです……放浪してた……4年ぐらい前……
通りがかりの二人の旅行者に無理やり……だから……気にしないで下さい……
私……あなたの事が好きなんです……だからって後でどうこう言いません……」
「ミドリさん……そんな事無いよ……ミドリさんの心の美しさはみんなが知ってるんだ
身体を汚す事は出来ても魂までは汚す事なんか出来ない!」
「シンイチさん……優しいのね……」
ミドリさんはそう言って服を脱ぎはじめた。
「み、ミドリさん……」
「今、あなたが死んで誰が喜ぶんですか! 眷族とか言う奴等だけでしょう!
碇の叔父様が言ってたけど……あなたは唯一の希望なんです……だから」
ミドリさんは身に何も纏わぬ姿で、僕に手を差し出した。
「汚された私の身体……だけどシンイチさんに抱かれたら浄化出来ると思うんです……」
そう言って、ミドリさんは滝の中に飛び込んで来た。
「ミドリさん……」
「さぁ……あなたはここで死ぬべきじゃ無いんです」ミドリさんは力強く僕の腕を引き、
滝から外に連れ出された。
「あの大きな石に登りましょう……あそこからエネルギーが吹き出してるから……
あそこじゃないと、目覚めてしまった力を制御する事は私には出来ません。」
僕達は巨石の上に上っていった。
昼間座っていた平坦な所で、僕達は言葉を交わした。
「ミドリさん……」
「私の事……忘れないでいて下さい……時々……思い出して下さるだけで結構です」
「ミドリさん……」
僕はこれまで身体の中で暴れていたモノが自分の意思でコントロール出来るように
なった事に気がついた。
さっきまで雲に隠れていた月がその姿を現し、
薄闇に閉ざされていたこの巨石の上に明かりが差し込んで来た。
「こ、これは……」岩の窪みに血が溜まっているのを見て僕は驚いた。
「ミ、ミドリさん……嘘だったんですか……」
「襲われかけたのは本当……けど……精霊の力を借りて……撃退したわ」
ミドリさんは身体を起こして呟いた。
ミドリさんの太股に血がついているのを見て、僕は確信した。
「そんな……そんな……僕なんかの為に……」
「シンイチさん……みんなを……守ってあげて下さいね……それが日本の……いえ
世界の平和を守る事だと思うから……」
月を背に受けた裸体のミドリさんは、まるで月の女神のようだった。
僕達は谷川で身体を洗って、シャツで身体を拭いて服を身につけた。
僕達は夜道を歩いて、コテージが見える丘まで戻って来た。
「シンイチさん……最後に……お願いがあります……」
「お願い?」
「……キス……して下さい」
「……ミドリさん……」僕はミドリさんを抱きしめて唇を重ねた。
「今日の事は……誰にも言いません……」そう言ってミドリさんは僕に背を向けた。
嘘をついてまで僕の命を救ってくれたミドリさんに、
僕は何と答えていいのか解らなかった……
僕は……ミドリさんの為にも、眷族の手から日本を守り抜く事を決意した。
その後
さすがに音が筒抜けの為、お互いの部屋で何も起きなかった事を知り、
心配したアヤさんとミライが二人して僕の部屋を訪れて来たが、
滝に打たれたおかげで助かったと嘘を付く事になった……
翌日は昨日の疲れもあり、半日以上コテージの中で休んでいた。
ミドリさんに会って……どういう顔をしたらいいか解らなかったせいもあるかも知れない
夕方、ミドリさんの家の前で、ミドリさんと別れる時も……結局気のきいた台詞の一つも
言えなかった僕を、帰る途中で兄さんが責めたてた。
だが、最後に兄さんが呟いた言葉が頭の中で反響していた。
{シンイチ……今は逃れても……いつかは選ばないといけないんだぞ……それに………}
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騙したな!父さんと同じに騙したんだ!
いつの間にゲームになったんじゃい
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
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どうもありがとうございました!
次回予告
今 万感の思いを込めて警笛が鳴る
今 万感の思いを込めてエレカが行く
……ひとつの旅は終わり、また新しい旅立ちが始まる…
…さらばミドリ
…さらばオーベルジュ米子大瀑布
…さらば少年の日よ……
あれから10ヶ月が経ち、シンイチは己の進路の事で迷っていた……
進学か……就職か……それとも……
少年は大人への階段を登り初めていた……それが苦難の道であろうとも……
次回 第二部、最終回 【
巣立ち
】
サンマにかけて食う柑橘類の……
<それはスダチ
第13話Dパート 終わり
第14話Aパート
に続く!
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