{{方法があるんでしょ? 兄さん}}
{ああ……彼女の風谷ミツコとしての人格と記憶を呼び戻せばいい……
そうすれば、バイアクヘーの一匹や二匹 簡単に始末出来るだろう……}
{そ……そんな それじゃ折角新しい家族と新しい生活を送っているのに、
辛い過去に無理やり引き戻す事になるんじゃ無いか!}
{おまえと彼女を救うには、それしか無いんだ……どうするかはおまえが決めろ……
彼女も傷つくのを承知でバイアクヘーと戦うか、風谷ミツコとしての人格を取り戻させる
か、二つに一つだ……}
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 16F
第16話【
呉越同車
(?)】Fパート
殆ど夢有病者のように突っ立っている風谷さんを見て、僕は決断を下した。
{{兄さん……三谷さん……いや 風谷さんを救ってあげて欲しい}}
{解った……今から彼女の記憶を取り戻させるまでの間、俺のサポートは無理だ……}
{{それまでバイアクヘーの攻撃を避けたらいいんだね……解ったよ!}}
少しして兄さんが語りかけて来る時の意識状態から僕は覚めた。
僕はバイアクヘーが断続的に繰り出してくる攻撃を避け続けていた。
「頭が……痛い」
まだ催眠状態にある筈の三谷さんは蓮田に捕われたままうめき声を上げた。
どうやら兄さんの三谷さんへのアクセスはうまくいったようだ……
三谷さんがうめき声を上げた時にバイアクヘーも一瞬 身体を震わせていた。
やはり、普通にバイアクヘーと戦っていたら大変な事になっていただろう……
{{まだなの?兄さん!}} 僕はバイアクヘーの攻撃を十数度も避けて来たので、
さすがに息が上がって来ていた。
{操られているせいか、なかなか思うようにいかん……}
少し焦っているのか、落ち着きの無い兄さんの思念が届いた。
「ええい ちょこまかと動きおって! この娘を殺されたく無ければ動きを止めろ!」
焦れたのか蓮田は片手に持った小刀を三谷さんの首につきつけて言った。
バイアクヘーは蓮田が小声で何かを呟くと上空に舞い上がっていった。
月を背にしたバイアクヘーはなんとか僕の眼で視認出来る高度にまで上昇していた。
罠だと言う事は解り切っていたが、僕は池の側に立ち止まった。
{何をしている シンイチ!}
「ふっ 愚かな……
縛!
」 蓮田は僕の眼を見詰めて叫んだ。
途端に足の筋肉が硬直し、逃げ出す事が出来なくなってしまっていた。
だが、時間さえあればこの呪縛から逃れる事は出来るだろう……時間さえあれば
その時、上空から風を切る音と共にバイアクヘーが僕に向かって急降下して来た。
{シンイチ!} 兄さんの悲痛な思念が飛んで来ていたが、何故か僕の心は背後の池の
水面のようにおだやかだった。
バイアクヘーの嘴が僕の心臓を抉る前に兄さんが何とかしてくれるとか
楽天的な事を考えてる訳では無かったが、僕は一片たりとも不安を抱いていなかった。
夜空に輝く月のほんの染みのような大きさだったバイアクヘーが、今は月を覆い被さん
ばかりに大きく見える程接近していた。
バイアクヘーが急降下して来た為に風圧で僕は軽く押されていた。
あと20秒程度で僕の胸を突き破るだろう……三谷さんが目覚めなければ……
バイアクヘーの紅く燃えるような眼が視認出来るようになっても僕は呪縛に囚われていた。
「
下がれ! バイアクヘー
」
視界の全てがバイアクヘーによって被われた時 三谷さん……いや風谷さんの叫びが夜の闇
を断ち切った。
次の瞬間にはバイアクヘーは軌道を変えて僕と擦れ違い、再び上空に舞い上がっていった
それと同時に僕の呪縛も解けていた。
「何っ」 蓮田は驚愕の為か目を見開いて僕の方を見ていた。
彼にとって不幸だったのは、風谷さんが記憶を取り戻したのと同時に催眠術からも解けた
事に気づかなかった事だ……
彼が気がついた時には、手にしていた小刀ごと自分の腕をねじ曲げられて自分の小刀が
自らの左胸に突き刺さって、身に纏ったローブに血の染みが吹き出そうとしていた。
「俺を殺しても……次の刺客が必ず裏切り者を……げふっ」
蓮田は口から血を流しながら呟いた。
「バイアクヘー 汝の主の元に送り届けてやれ!」
風谷さんが叫ぶとバイアクヘーが急降下してきて蓮田の首と足を鋭い爪のついた足で掴んで
空中に舞い上がろうとしていた。
「黄金の蜂蜜酒が無いと、宇宙空間で身体が弾けてしまう……」
蓮田は慌てて懐から黄金の蜂蜜酒の入った瓶を取り出そうとしたが、
バイアクヘーがより強く羽ばたいた時に足に力を入れた為、爪が深く刺さり
手にしていた瓶を取り落としてしまっていた。
僕が落ちてきた瓶を受けとった頃には、身に纏ったローブを血の色に染めながら
真っ青な顔になって蓮田はバイアクヘーに捕まえられて上昇していった。
{ヒアデス星団まで生身の人間を黄金の蜂蜜酒も無しに連れて行くだと?宇宙葬って訳か}
僕はふと風谷さんの方を見ると、風谷さんは気を失ったのか、
夜露に濡れた草むらの上に横たわっていた。
{オヤジが殺そうとしたのも無理無いな……トランス状態の時は俺でもぞっとするぜ}
兄さんは珍しく饒舌になっていたが、僕は風谷さんの元に走り寄ったのでその思念を全て
受け止める事が出来なかった。
「三谷さん……いや 風谷さん……大丈夫ですか?」
僕は彼女の肩に手を回して起こしてあげた。
「ん……渚君?」 風谷さんは眩しそうに目を少し開けて僕を見て呟いた。
今の彼女は 風谷ミツコなのだろうか……それとも三谷ヨシコなんだろうか……
「私 両方の記憶が残ってるの…風谷ミツコとして生きる事も三谷ヨシコとして生きる事
も出来るわ……だけど……今は風谷ミツコとしてあなたに会いたいの……明日からは三谷
ヨシコとして生きるわ……せっかく叔父様が私の為に新しい家族を与えてくれたんだもの。」
「ごめん……僕のせいで思い出したく無いような辛い過去を思い出させて……」
僕は言いおわった後も唇が震えていた……僕は唇の震えを止める為に唇を噛んだ。
「いいの……それより 謝らないといけないのは私の方なのよ……」
風谷さんはそっと僕に手を差し伸べて来た。
僕は彼女の手をおずおずと握った……その瞬間……
・
7話Aパート参照
・
「私 あなたの事を忘れてしまうだろうけど あなたを守れた事だけは忘れたく無い……」
「風谷さん……」
「いいの……何も言わないで……もし、私とどこかで出会ったら……
その時はよろしくね……きっと……あなたの事……わかると思うの……」
「ありがとう・・風谷さん・・」
・
決して行数を稼いでる訳では無い(笑)
・
風谷さんと別れた時の情景を僕は思い出す事が出来た。
「三谷さんとして再会した時……僕の事を覚えていてくれたじゃ無いか……
”渚君”って……前のように 呼んでくれたよね……あの時……名字は教えて無かったよ」
僕は起き上がって風谷さんに手をさしのべて言った。
「……渚君」 風谷さんは僕の手をしっかりと握って起き上がった。
それはきっと過去との決別と、過去に立ち向かう事を決意した事の現われだろう。
「誰かが起き出して来たらまずいから、帰ろう……みんなの所に」
{{{ うん…… )}}}
三谷さんは言葉に依らず思念を返して来た。
僕達は裸足だったので渡り廊下の近くの水道の蛇口がある場所で足を洗った。
渡り廊下の扉を開けて僕達は桔梗の間の前まで帰り着いて来た。
「ん?」 僕はドアノブを捻ったがロックされていた。
「しまった……オートロックだったんだ……」
「入れないの?」 風谷さんも少し不安そうな顔をしてドアノブを見た。
その時扉が内側から開かれ、電気が付いたのか眩しい光に僕達は包まれた。
ずっと闇で目が慣れていた為、人工の明かりで目が眩んでしまったのだ。
「
どこ行ってたのよ シンイチ!
」
目が慣れて来た頃、僕達の前にミライが立ちはだかった
「え? あ……あの……」
僕は急な事だったのでうまい言い訳どころか、口ごもってしまった……
「昼間 あんな事があって恐かったから、トイレに一人で行くのが恐くて……」
風谷さんが慌ててフォローしてくれて、僕は内心 胸を撫でおろした。
「心配したんだから……」 ミライはプイと横を向いてしまった。 拗ねているようだ
アヤさんは深く寝入っているのか、明かりが煌々とついていても目を覚まさなかった。
コウジ君は寝た振りをしているのか、少し肩が動いていた。
結局 ミライがトイレに行く時も僕は付き合わされる羽目になったのは語るまでも無い。
すったもんだはあったものの、僕達は翌朝にこの宿を出発した……
ちなみに従業員達は”蓮田”などと言う従業員はいないと言っていた……
恐らく催眠術で紛れ込んだのだろう。
拾った黄金の蜂蜜酒は風谷さんが管理する事にした……
いろんな思い出を載せて、アヤさんの運転するショッキングピンクのエレカは疾走していた。
第16話 終
次回予告はおまけと感想フォームの後にあります
おまけ小説
シンジ・アスカの事情
第0話(逆だと恐いな……シンジ・アスカの
情事
……18禁か(笑))
キーンコーンカーンコーン
午後の授業が終わり、ホームルームまでの5分の休憩時間……
「やれやれ、やっと授業も終わりかいな」 鈴原トウジは背筋を伸ばしながら呟いた。
「スズハラ……午後の授業は殆ど寝てたじゃ無い……睡眠不足なの?」
洞木ヒカリは立ち上がって、トウジに向かって詰問した。
「しゃぁ無いやろ……昨夜は遅うまで日程表作っとったんやから 昼休みも一年生の指導
やっとったから、昼寝も出来んかったんや」 トウジは眠そうな目でヒカリを見た。
「ダメよ 今日は生徒会の執行部会でしょ 一時間ぐらいで終わるから我慢しなさい」
ヒカリは生徒会の書記長をしているせいか、仕切るのが得意であった……
「なぁ、シンジ達はどないしたんや?」 トウジは眠そうに目を擦りながら問いかけた。
「忘れたの?今日は金曜日だから、 シンジ君とアスカは放送部に行ってるわよ」
「そうか……今日は生徒会の報告の日か……じゃホームルームは無しなんやな……」
「だからって寝ちゃダメよ スズハラだって生徒会の執行部に所属してるんだから……」
鈴原トウジは、ヒカリの強い推薦を受けて、嫌々応援委員長として出馬したのだが、
選挙の前日の体育館での演説で、記録に残る程短くなおかつ男らしい演説をしたのだが、
その演説が受けたせいで、翌日の選挙では次点に200票差の大勝を収めたのだった。
本命はサッカー部の副部長であり、運動系クラブを束ねる応援委員長をサッカー部員がな
る事によって、予算獲得でリードしようとしたサッカー部の企みを他の運動部が牽制した
が為に、無印のトウジを推す事になったのであった。
ヒカリの生徒会書記長就任は、一年生の時からクラスの委員長をやっていたので、
一年生の委員長は自動的に副書記として生徒会の会議には出席していたので、
その手腕を買われたものであった。
三年生の、元執行部員が強く推薦したが故に選挙では楽勝であった。
スピーカーから、音楽が流れはじめた。
「今日は金曜日ですので、生徒会執行部からのお知らせです」
いつも留守がちな相田委員長の代わりに、放送委員会を一手に掌握している、
副委員長の美しい声が流れて来た。
留守がちなのも仕方無く、新聞部に出入りして生徒会新聞を作っている為なのだが……
取材と称してカメラを片手にうろちょろするからとも言う。
「みなさん こんにちわ 生徒会長の碇シンジです 夏休みまで後1週間となりましたね
ですが、夏休みは今後の進路に関る重要な期間です。 この期間を利用して勉強に励むも
良し、青春を謳歌するのも良いですが、節度ある行動をして下さい。」
「碇君を生徒会長に推して良かったねぇ……」
「うんうん……金曜日はいつも、この優しい声が聞けるしね」
教室の後ろの方で女子たちの一部が嬌声を上げているのを、ヒカリは複雑な顔で見ていた。
シンジはこの女子達に生徒会長への出馬を推薦されてしまい、
面白がったアスカやトウジやケンスケの応援もあり、見事当選してしまったのだ。
得票の大部分は女生徒の票だと言うから恐ろしい……三年生のおねえさまから、一年生の
女生徒まで、かなりの支持を集めているのだ。
校長の息子で、中性的な顔立ちと、柔らかい物腰のシンジは、”愛玩するには丁度”
と言う所であった。 一年生の女子からは廊下を通る度に”碇センパイ”と呼ばれていた。
放送が終了し、生徒達は帰り支度を始めた頃、碇シンジと惣流アスカは教室に戻って来た。
「惣流さん 副会長だからって用も無いのに碇君と放送室に行くのは職権乱用じゃ無い?」
先程、後ろの方で話していた女生徒が一人立ち上がって、惣流アスカを指差した。
「うっさいわねぇ……副会長の職務よ!」アスカはそれだけ言って荷物を片づけはじめた。
「超ムカツクわねぇ……」
「あんた……それ死語よ……」
「ほら、シンジ 今日は執行部会でしょ 生徒会室行きましょ」
「うん……」 碇シンジは柔らかな笑みを浮かべて言った。
その笑みを見る度に惣流アスカはかすかに頬を染めるのだが、
その僅かな変化に気づく者は少なかった。
一見、成績も良くいかにも優等生で生徒会長の激務にも耐えうる実務能力を持った碇シンジ
には、大勢のファンがいたが、彼の本当の姿を知る者は希であった。
生徒会の執行部会等で各委員達の意見が合ず、口論になっただけで泣き出す程の弱虫……
しかも余人が彼を慰めても泣きやまず、彼を泣きやませる事の出来るのは惣流アスカだけ……
そう、彼は……泣き王だったのだ
だが、結果的にはシンジの泣きが入る事によって議論がそれ以上白熱する事も無く、
なぁなぁな所で落ち着くのだから、彼の能力は役に立っているのかも知れない……
さすがにこの年になって人前で泣く事は恥ずかしい事だと言うのを耳にタコが出来るほど
アスカにいつも言われているので、今では隠れて泣くと言う技を使っている。
また、惣流アスカは、高慢な女だと大勢の人に認識されているが、
実はシンジに対しては世話焼き魔であり、シンジにかける情熱は、
ストーカー寸前の所までいっているのだが、なにしろ家は隣同士
しかも夕食を一緒に食べる程の家族ぐるみの付き合いの為、
違法行為をしなくても充分シンジの全てを知る事が出来ると言う
彼女にとっては素晴らしい条件の為に、彼女のストーカーぶりが
ばれる心配は無かった。
こんな二人ではあったが、まだお互いの気持ちには気づいてはいなかった。
現在確定している登場人物とその役職……
生徒会長 碇シンジ
生徒会副会長(男) 渚カヲル
生徒会副会長(女) 惣流アスカ
生徒会書記長 洞木ヒカリ
生徒会会計 綾波レイ
応援委員会 委員長 鈴原トウジ
文化委員会 委員長 霧島マナ
放送委員会 委員長 相田ケンスケ
図書委員会 委員長 山岸マユミ
ちなみに続きを書く予定はありません(笑)
御名前
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ご感想
今のご気分は?(選んで下さい)
アヤの出番が無いでは無いか!切腹せよ
こんなおまけ書く時間あるなら別のを書け
よくやったな・・シンジ
問題無い・・・
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
内容確認画面を出さないで送信する
どうもありがとうございました!
次回予告!
中間試験が近づいて来て、勉強に専念しようとしているシンイチ達に
今 魔の手が迫る……
次回 第17話【
ビ○トマ○アの価値は?
】
……
嘘
です ごめんなさい まだ全然タイトルも内容も決まってません
某
BM98
にはまってるんですぅ(笑)
下手くそな癖に(^^;
暇さえあればサルのように……次回落ちたら やねうらお氏を恨もう(をい)
(
注 欲しい人は自分で探しましょう 現在公式配布されてません
)
第17話Aパート
に続く!
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