裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 01D

第1話【愛と哀しみのカノン:2039】Dパート


「でね、今日は弁当を屋上で三人で食べたんだよ!アネキ」

「それはよかったわねぇ」

「アネキも昼は高等部抜け出して、食べに来ない?」

「私だって、毎日屋上には行けんぞ」

僕は家族の団欒を目を細めて見ていた。

ピンポーン

「あら、お客様かしら」

「見て来ます」僕は立ち上がって、玄関に向かった。

「はい!碇です どちらさまでしょうか?」僕は外に声をかけた。

「ユイです」細い声が外から聞こえた。

「ユイおばあちゃん?」僕はドアのロックを外した。

ガチャリ

「シンイチ・・久しぶりね」ユイおばあちゃんが、優しい目つきで微笑んだ。

「うん・・あ、みんな居間にいるよ」

僕はユイおばあちゃんに手を貸してあげた。

「シンイチは優しいねぇ・・昔のシンジを見ているみたいね・・」

「ねぇ ユイおばあちゃん・・そんなに似てるの?」

「ん〜顔つきが似てると言うより、雰囲気が似てるのよねぇ

まぁ、シンジの元で、育ったからかもしれないけどねぇ」

ガチャリ

僕が居間のドアを開けると、皆の視線が僕とユイおばあちゃんに向いた。

「母さん・・」

「ユイおばあちゃーん!」

「おばあさま お久しぶりです」

「はは、皆元気のようね」

僕は椅子を引いてあげた。

そして、ユイおばあちゃんも含めた、家族団欒のひとときが訪れた。

「あ、そうだ・・母さん・今日、父さんから電話があったよ」

「・・・・生きてたんだね・・」

「父さんも母さんの所に戻ってあげたらいいのに・・」

「私の身を案じての事だろうから・・それに離れていても、通じる想いもあるんだよ」


「あ、そうそう!今日はシンイチに見せるものがあったんだ」ユイおばあちゃんが、鞄の中から、

こぶりのアルバムを取り出した。


「これは・・ユイおばあちゃんの若い頃?隣にいるのは誰ですか?」

僕は写真をテーブルの上に置いて見た。


「左がユイおばあちゃんで、右が、ユイおばあちゃんの姉の ハルカさんだよ」

「ハルカ?」

「そう・・おまえの祖母じゃよ・・地震で亡くなったんですよ」

「似てるなぁ 二人とも美人だったんですね」僕は率直な感想を述べた。

「年寄りをからかうもんじゃありませんよ」そう言いながらも、ユイおばあちゃんは嬉しそうだった。

「で、ハルカのたった一人の子供・・それが レイ ・・つまりシンイチの母親だよ」

「写真は無いんですか?」

「残ってはおらんのだよ・・」

「だから、シンイチとシンジが似てても、何らおかしくないんじゃよ」

「そうだったのかぁ・・」僕はようやく納得した。

「ほんとにそっくりじゃよ 優柔不断な所がねぇ」

「か、母さん」

「どういう風に優柔不断だったの? おばあちゃん」


「おまえたちのお母さんのアスカさんと、永い間付き合っていたのに、

自分では、結婚の事が言い出せず、アスカさんにプロポーズの言葉を言わせたそうじゃないか!」


「か、母さん 指輪は準備してたんだ・・言う予定だったんだよ・・」

「ホントかねぇ 見ててイライラしたよ」


「まぁ、シンジとしては、行方不明だったレイの事もあって、

自分だけが幸福になるのが、辛かったんだろう?

気持ちは分かるが、アスカさんも辛かったんだから・・」

ユイおばあちゃんが、碇先生にこんこんと説教していた。


「そうだったんですか?」僕は碇先生に言った。

「うん・・そうなんだよ・・・・それで、アスカには未だに頭が上がらないんだよ」
碇先生が頭をかいた。

「パパの若かった頃見てみたいなぁ〜」ミライが呟いた。

「そうだ! アルバムがあるだろう?引越しの時に渡したアルバムが!」

「そういえば、預かったような気が・・」

「私も見たいなぁ〜」アヤさんも笑っていた。

「わかった・・取って来るよ・・確か書斎にあったからね・・」


碇シンジは書斎の中から、一冊のアルバムを取り出した。


その時、一枚の写真がアルバムから、はがれて、書類の中に埋まった事が、

後の悲劇を産む一因となったのである。

運命は時として、あまりにも非情な定めを人に課すものである。



「あったあった」

碇先生が埃を払ったアルバムをテーブルの上に置いた。

「どれどれ」ミライが代表して、ページをめくっていった。


「キャー 可愛い これお父さん?」

「そう 産れてすぐの時の写真だよ」

「これも可愛いわねぇ お父さん」

「あまり可愛い可愛いと言われるのも恥かしいなぁ」

「これ、もしかして、お母さん?」

その写真は、幼いシンジとアスカが並んで公園で写真を撮ってもらったものだった。

「こっちがお父さんで、こっちはまさか・・」

「そう アスカさんじゃよ」

「うっそぉー 可愛いぃ」

「これは?」

「二人が14才・・の時の写真だね」

「わっかーい!」

「あ、ホントだ・・シンイチに似てるわねぇ」

ワイシャツと黒いズボンを履いたシンジの写真を取り出した。

小一時間程、アルバムを見て騒いでいたが、
時計が9時を知らせた。

「さ、今日はもう遅いから寝なさい!」

「はーい」

「おばあちゃん ゆっくりしていってね」

「おやすみなさい ユイおばあちゃん」

「母さん・・泊まって行くだろ」

「そうだね・・話もあるし」

僕は二階に上がって寝間着に着替えていた。

その時、居間で、碇シンジと碇ユイは小さい声で話をしていた。


「そう・・約束の日は・・近いんだね・・・」

「結界はどれぐらい持つかな・・」

「彼もいつまでもは持たないわよ・・」

「そうだね・・」


1話Dパート 終わり


次回予告!


シンイチの誕生日・・それは、シンイチとアヤとミライに、
新たな、何かをもたらせた。

ようやく、自分の気持ちを伝える術を見付けた二人・・

だが、運命は三人をも巻き込み、急速に加速する。


旧神の末裔の目覚めの日は近い

時に西暦2039年 4月9日・・


二人の乙女がシンイチの心を求めて織り成すコンチェルト

演奏が終わった時、シンイチの選ぶ人とは・・


第2話【二人の乙女のコンチェルト】Aパート に続く!


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