「あまり使いたくは無いけれど……」アスカは銃の安全装置を解除し、
麻痺モードにセットしながら呟いた。
そして、曲がり角を曲がり、操作室の近くまで来た時、アスカは足を止めた。
「後遺症……残らないといいけど」
アスカは銃をミライに向けて、躊躇無く麻痺銃モードでトリガーを引いた。
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 20E
第20話【
苦悩の天秤
】Eパート
「あうっ」 麻痺銃で撃たれたミライは一声上げて通路に崩れ落ちた。
「ミライ!大丈夫?」 アスカは銃を手にしたまま、ミライの側に駆けつけた。
自分で撃っといて大丈夫も無いものだが
「う……シンイチ……っ」
ミライは瞼をひくひくさせつつも手を伸ばしてシンイチの名を呼び、そして失神した。
「ミライ ミライ!」 アスカはミライの身体を数度揺さぶったが反応が無いので、
ミライを担ごうとしたが、女手一つでは無理があるのか苦労していた。
「何事ですか!」
その時伊吹マヤがNERVのエージェントを2人引き連れて通路の向こうから駆けつけて来た。
「ミライが精神寄生体に操られてたから麻痺銃で撃ったの! 至急NERVの病院に!」
「はい!」
2人のエージェントがミライを担いで通路の向こうに消えて行くのを確認してから、
アスカは夫 シンジの身を案じた。
「すぐ近くで司令も倒れている筈です ついてきて!」
アスカは伊吹マヤを引き連れてシンジの元に急いだ。
「司令はどうなされたんですか?」
伊吹マヤは悲痛な顔をしてアスカに問いかけた。
「操られていたミライに壁に突き飛ばされたのよ……凄い力だったわ」
「医療班もじき来る筈ですが急ぎましょう」
「医療班ってもしかして、赤木博士?」
「ええ 今日は私も赤木博士も当番でしたから恐らく」
マヤはそう言ってから、アスカが抱いている感情の正体に気づいた。
「もしかして、シンイチ君を処理しようって提案した時の事……まだ恨んでるんですか?」
「そうよ……あの女には感情が無いのよ きっと……」
「シンイチ君が3歳の時の事だから、もう時効じゃ無いですか……」
「死んだ義父さん……前総司令の右腕だったそうだし……腕が立つのは認めるけど」
「シンイチ君はところで今 上にいるんですか?」
マヤは少し頬を染めてアスカに問いかけた。
「さ……さぁ……寝てるんじゃ無いかしら(マヤはショタだって噂は本当?)」
「あっ 司令!」
ようやく、壁に背中を預けて唸っているシンジの元に二人は辿りついた。
ここで、話を5分程 遡る事を読者にお許し頂きたい
まるで悪の秘密結社の研究室かのように怪しい薬品が立ち並び、
複数のサーバーマシンやクライアントマシンが散乱する研究室の中で、
淡く光るディスプレイを凝視している女性がいた……
そう……赤木リツコである。
すでに初老の粋に達していたが、その整った顔だちは若い頃とあまり変わらなかった。
NERV職員の中には、赤木博士は実は魔女で若返りのクスリを使っているに違いないという
噂が絶えた事が無かった。
・
SGでやっと登場 存在忘れてました(をい)
画面には中心に引かれた境界線の左右に、二重螺旋が描かれていた。
「間違い無いわね……渚シンイチは碇家から離しておいた方が良いかもね」
リツコはマウスを数度クリックすると、画面右側の二重螺旋が微妙にずれたが、
その模様は左側の二重螺旋とほぼ同一に見えた。
TRRRR その時電話の音が鳴り響いた。
「……はい……赤木ですが……なんだマヤなの…… どうかしたの?」
「司令の家の地下から異常な反応が検出されました! 今日は地下を使うと司令から
報告がありましたので、何かあったのかも知れません 先輩も医療班を率いて来て下さい」
言いたい事だけを言って電話を切られたので、リツコは眉をひそませたが、
慌てず騒がずキーボードを数度叩いて、光磁気記録装置からディスクを引き抜いて、
壁にかけていた白衣を羽織って研究室を出た。
「あ、赤木博士! 医療班集合しました 急ぎましょう!」
三人のNERVの白バージョンの制服を来た医療スタッフがリツコを待ち受けていた。
「装備は揃ってるわね 行きましょう」
リツコは三人の医療スタッフを連れて地下通路を急ぎ足で碇家の地下へと向かった。
数分後、ライトで薄く照らされた通路の向こうに二人のエージェントの姿が見受けられた。
「怪我人なの?」二人のエージェントが誰かを担いでいるのを見てリツコは誰何した。
「碇ミライさんです 精神寄生体に寄生されて操られてた所を麻痺銃で撃たれたそうです」
エージェントも口早にリツコの質問に答えた。
「担架に移しなさい! それと、誰か一人ついていって頂戴!」
リツコはてきぱきと指示していった。
「まだ怪我人がいるの?」
「碇司令も怪我をしているそうです 惣流……いえ碇副司令と伊吹主任が向かってます!」
「わかったわ じゃ、急ぎましょう」
リツコは駆け足で地下道を進んでいった。
「あなた……大丈夫?」
「司令! もうすぐ医療班が来ます」
アスカとマヤの声が聞こえて来たので、リツコ達は足を早めた。
「赤木先輩!」 マヤはリツコの姿を認めて叫んだ。
医療班が来るのを待ちかねていたのだろう。
「背中と右脇が壁に叩きつけられた時に強く当ったようです!」
「肋骨にヒビが入ってるかもしれないわね……折れてる可能性もあるわ……
動かさなかったのは正解ね」 リツコは医療スタッフが所持して来た鞄の中から
注射器と何かのアンプルを取り出しながら言った。
「モルヒネが効いて傷みが薄らいで来たら運びましょう」
リツコはモルヒネのアンプルの中に注射器の針を突っ込んで言った。
「赤木博士……私の事より、ミライの処置を急いでくれ……
早くしないと……手遅れに」
リツコがシンジの左腕を取り注射器を構えた時、シンジは苦痛に呻きながら囁いた。
「医療スタッフを同行させてますから、大丈夫です」
リツコは事務的な口調でシンジを安心させてからシンジの腕に注射をした。
「うっ…………ふぅ」 即効性の強いタイプなのか、打って数十秒後には、
シンジの眉間に出来ていた皺が取れていった。
「どうですか?」 リツコはわき腹を指でそっと押しながら問いかけた。
「大丈夫だ……運んでくれ……それよりシンイチとアヤは無事なのか?」
医療スタッフが担架をシンジの脇に置いた時、シンジはアスカの顔を見て言った。
「大丈夫よ……あなた」
アスカは担架の上のシンジの手を握って言った。
「用意はいい?」
「はい!」
二人の医療スタッフが担架の前と後ろを持ち、持ち上げた。
「即効性と非依存性を重視してるタイプだから30分もすれば、
沈痛効果が無くなるから、急ぎましょう!」
リツコも片手でシンジが載っている担架を持ちながら言った
「赤木博士……司令を……いや主人を頼みます
私はシンイチとアヤの様子を見てきます」
急いで運ぶのには横にアスカがいると邪魔になると思ったのか、
アスカは赤木博士にそう言って、その場を離れた。
「精神寄生体とはいえ、結界外部からの侵入なんてありえない筈……
寄代か宿主でもいない限り……」
アスカは操作室に向かって歩きながら考え事をしていた。
「……今はそっとしておいてあげたいけど……そうもいかないわね」
アスカは操作室の入り口のカードスロットにカードを通した。
アスカが操作室に入ると同時に操作室のコンソールや天井に明かりが灯った。
「あの部屋のモニター……これね……」 アスカは少し躊躇して後にスイッチを入れた。
羽音のような音を立ててモニターに明かりが灯り、部屋の様子が写された。
・
焦れてカーソルの下を連打してここまで来た人……後で職員室に来るように(爆)
「そう……アヤを選んだのね……」
ベッドの上でお互いを抱きしめたまま余韻にひたっている二人を見て、
アスカの胸はチクリと痛んだ。
「シンイチ……アヤ……ミライとお父さんが大変なの……上がってらっしゃい」
アスカは咳払いを一つしてからマイクのスイッチを入れて囁いた。
そして、NERV内部のミライの病室……
シンイチとアヤはアスカから説明を受け、青くなっていた。
アスカは説明を終えるとシンジの病室に移動して今この部屋にはいなかった……
「まさか……そんな事になってるなんて……」
「ミライ……」
シンイチとアヤは無意識の内にお互いの手を握り締めあっていた。
「麻痺はもうすぐ解けると思うけど……解けた時にまだ精神寄生体に寄生されたまま
だったら……だから睡眠薬を投与して、様子を見ようかと私は思っています。
リツコはカルテから眼を離してシンイチとアヤを見て言った。
「精神寄生体に今も寄生されてるのか、調べる方法は無いんですか?」
シンイチはすがるような目つきでリツコに問いかけた。
「脳波の普段のパターンとの違いを比べる事で、多少の憶測は付くかも知れないけど、
麻痺している状態や寝ている状態じゃ……比較にならないわね」
「精神寄生体は……人間の心の弱い部分を確実に突いて来るのよ……
彼女のその心の中のなにかを埋めてあげないと……追い出す事は難しいわ」
「もう一つ方法があるわ……」
その時、ドアが開きアスカが入って来た。
「お母さん……」 アヤはシンイチと繋いだ手に力を込めた。
「お父さん……いえ、碇司令の許可は取ったわ……」
「まさか……」 シンイチの手は無意識の内に震えていた……
繋いだアヤの手もまた震えていた……だが、シンイチの手の震えのみなのか……
それは余人に解る筈も無い事であった。
「もう解ってるわよね……そうすれば、もうこんな事は起こりえないのよ……
少し時期が早まっただけって事ね」 アスカは意識して冷淡に言葉を紡いだ。
「眠っているミライを……そんな事……出来ません」
意識の無い……しかも幼い頃からお互いを意識しあって来た相手の心を踏みにじるような
そんな事の出来るシンイチで無い事を承知で言っているのか……アスカの顔は青ざめていた。
「
放っておいたら……ミライは私たちが知ってるミライじゃ無くなるのよ
それでもいいとでも言うの?
」
これまでの冷淡を装っていたアスカの声とは違い……
この叫びはアスカの心の叫びのようにも聞こえた。
「
ちょっと待ちなさい! アスカ……あなた達 本当に知らないの?
」
アスカの言葉に衝撃を受けたシンイチとアヤに……
追い打ちをかけるかのようなリツコの謎めいた言葉はまるで……
不吉な……そう まるで
呪い
の言葉のように聞こえた……
・
某来栖川先輩は関係ありません(爆)
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鬼引きジェットコースター(謎)って感じ
散々またせといて、描写無しで二行だけかい
よくやったな・・シンジ
職員室コーナー(謎)
おまえには失望した
ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
内容確認画面を出さないで送信する
どうもありがとうございました!
次回予告!
ついに明らかになった事実……
衝撃が走る碇家に、更なる危機が押し寄せようとしていた
・
お約束だわな
次回裏庭セカンドジェネレーション第21話「
約束の日/紫の巨神再び
」
を首を長くして待っていやがれい!
<何故偉そうなんだよ
第20話Eパート 終わり
第21話Aパート
に続く!
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