「眠っているミライを……そんな事……出来ません」
意識の無い……しかも幼い頃からお互いを意識しあって来た相手の心を踏みにじるような
そんな事の出来るシンイチで無い事を承知で言っているのか……アスカの顔は青ざめていた。
「放っておいたら……ミライは私たちが知ってるミライじゃ無くなるのよ
それでもいいとでも言うの?」 これまでの冷淡を装っていたアスカの声とは違い……
この叫びはアスカの心の叫びのようにも聞こえた。
「ちょっと待ちなさい! アスカ……あなた達 本当に知らないの?」

アスカの言葉に衝撃を受けたシンイチとアヤに……
追い打ちをかけるかのようなリツコの謎めいた言葉はまるで……
不吉な……そう まるで呪いの言葉のように聞こえた……



裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 21A

第21話【約束の日/紫の巨神再び】Aパート



「赤木博士……何の事を言ってらっしゃるの?」
その言葉に最も早く反応したのは母さんだった。

「その様子じゃ碇司令もご存じ無いようね……碇司令の病室で説明するわ」
赤木博士と母さんが呼んでいた女性は白衣のポケットから何かを取り出しながら言った。

「事は急を要してはいますが…… 一応司令の耳に入れてみましょう」
母さんはミライの病室の扉のノブに手をかけながら言った。

「機材を手配して来るので、先に行っていて下さい シンイチ君もアヤさんも」
そう言って赤木博士はどこかへと消えていった。

「何の事なのかしら……シンイチ君は知ってる?」
手は離したものの、アヤさんは僕の上着の裾を握って問いかけて来た。

「さぁ……あなた達ってさっきの赤木博士だったかな……あの人が言ってたから、
僕たちに関係があるんだと言う事しか……」
僕はアヤさんと共に母さんの後を付いて病室を出る時に小声で答えた。


数分後 父さんの寝ているベッドの横に大型液晶ディスプレイと
ノートタイプのコンピュータが赤木博士の手配により設置された。

「皆さん揃ってるようね……」
赤木博士は入って来るなり手の中のディスクを弄びながら話を始めた。

「以前、アヤさんとシンイチ君がこの医療施設を使用した事がありましたわね……
その時に検体等を採取していたようで、データが回って来てましたの……
その時ここに詰めていた医師には解らなかったようですが……
私はそのデータが示す何かを感じ取る事が出来ました」

赤木博士は言葉を止めて手にしていたディスクをコンピュータの脇にある装置に挿入した。

赤木博士がキーを二度程叩くと、液晶ディスプレイに二重螺旋が左右に二つ表示された。

「これは……DNA……」
母さんは身を乗り出し、食い入るように画面を見つめ 一言 言葉を漏らした。

「そう……左側がシンイチ君のDNA……右側がアヤさんのDNAよ
こうして見ただけでは解らないでしょうけど、ヒトゲノムのレベルで解析すると……」
赤木博士は続きを言っていいのか?と問いかけるかのように父さんを見た。

「……続けてくれ」 父さんはベッドの上で横たわったまま赤木博士の問いに答えた。

「ヒトゲノムレベルでの解析で、かなりの部位に相似が見られます
対象相手をミライさんや碇司令に変えても、ほぼ同じレベルの相似です。」

「君の言わんとする事は解る……だが、シンイチは私の従兄弟であるレイの息子だ……
それに碇の一族の血を引いているのだ……相似していてもおかしくは無いと思うのだが……
その点に関しては10年以上も前に結論が出た筈だが……」
父さんはまだ背中が痛いのか、ベッドの上で顔も上げずに言葉を発した。

「私はある方法を使って碇司令の言われる仮説を崩したのです。
それは……シンイチ君のDNA及びヒトゲノム解析で、渚カヲルと呼ばれる存在の
相似値を探すと言う方法です」

「いったいどうやってサンプルを手にいれたの? 彼が最後に姿を現したのは、
サードインパクトの時の筈よ」
母さんが血相を変えて赤木博士に問いかけた。

「サードインパクト前の決戦の折……彼が流した血液や僅かな肉片をサンプルにしました」
「そのような情報は私には上がって来なかったぞ! うっ……」
父さんは反射的に起き上がって反論しようとしたが、
背中が痛いのかすぐさまベッドに背中を預けた。

「渚カヲルのサンプルの採取と秘匿については、前総司令の命令において実行しました」
「父さんの? 君は父さんの行方を知っているんだな!」
父さんは血相を変えて赤木博士を弾劾するかのように問いかけた。

「その事についての返答は出来かねます」
赤木博士は眼鏡を手で押し上げながら答えた。

「私の命令が聞けないと言うのかね……私はただの飾りで、
いまだに父さんが司令を出しつづけているのか? じゃ私は何なんだ……」
僕は父さんの激昂する姿を初めて見たような気がした。

「前総司令の事は取り敢えずおいておいて、話の続きを聴きましょう」
いささかヒートアップしかけた二人の間を割ったのは母さんだった。

「たしかに外見上 渚カヲル氏と渚シンイチとの間には相似がありますが、
人間の値とはかけはなれている渚カヲル氏のヒトゲノムの解析値と、
ほぼ普通の人間並みの解析値の渚シンイチとの血縁関係は無いと言っていいでしょう」

赤木博士が僕の名を呼ぶ時……まるで何かのサンプルの名を読んでるかのように、
思えて、僕は背筋にうっすらと寒気を感じた。

だが、何故か 父と言う存在の筈の渚カヲルが僕の父では無いと言われても、
何の違和感も無く、逆にその事を知っていたかのように、僕の心は乱れなかった。

「じゃ……僕の父親は誰なんですか」
僕はその問いをまだ発していなかった事を思い出して、口を開いた。


「私の仮説を裏づける為に……私は碇司令と渚シンイチのDNA及びヒトゲノム解析
による親子鑑定を行いました。 今日その事が確認出来たのですが……
渚シンイチの父親は、間違い無く碇司令……あなたです」

「……!」
その可能性は考えられた筈なのに何故か僕の選択肢に無かった答えが帰って来て、
僕は心臓を掴まれたかのように声を失った。

「シンイチ君の父親がお父さん? じゃ……私たち……」

僕とアヤさんはその言葉にただ驚き 振り回されていた。


「シンイチが……でも……何故」
「あなた……まさかレイに手を出してたんじゃ……」
母さんは父さんのベッドの側に駆け寄って言った。
「な、何を言い出すんだ! アスカだって知ってるだろう……
 僕が戻って来たのと入れ違いにレイがいなくなった事を」
「それもそうね……じゃどうして……」

「代替策が裏目に出たようね……
もっとも代替策で無くても結果は同じだったでしょうけどね」
その時、扉が空き 入って来た人物が父さんの問いに答えた。

「母さん!」
「義母様!」
「碇博士……御足労恐れ入ります」

中に入って来たのはユイおばあちゃんだったのだ

「この約束の日とも言える時に、あなた達の約束の日の事を忘れたの?」
ユイおばあちゃんは父さんと母さんの顔を見回しながら言った。

「けど……あの時 綾波のチェックをして無かったんですか? 母さん」
父さんは汗を拭いながらユイおばあちゃんに問いかけた。

「あ……代替策……そういう訳ね……」
母さんは少し考えていたが、ふと顔を上げて言った。

だが、僕とアヤさんにとっては訳が解る筈も無かった。

「ユイおばあさま……お父さん お母さん 赤木博士……
解るように……説明して下さい!」
悲鳴のようなアヤさんの声に、三人は振り返った。


碇ミライさんが覚醒したようです 病室から姿を消しました!$」
その時、壁に埋めこまれているスピーカーから、看護婦らしき女性の声が響いた。
「そんなバカな! 医療スタッフに付き添いをさせていた筈よ」
母さんは血相を変えてスピーカーの下の方にあるマイクに向かって言い返した。
「ええ、私がいざと言う時の為の無針注射器に睡眠薬をセットして看護していました」
「なら、何故!」
「目を覚まし始めたので、無針注射器を用意して首筋にあてがおうとしたのですが、
目は開いていないのに、手が伸びて来て私の手の無針注射器を跳ねとばされたのです」

「それで、ミライ……いや精神寄生体に逃げられたと言う訳か……」
父さん……いや、碇司令は顔に苦渋を浮かべて呟いた。

「今、NERV中の手の空いた職員 及び非番の者を招集しています。」
その時、別の人の声がスピーカーから流れた。
この声には覚えがあった……NERVのもう一人の副司令 日向さんだ。

「済まないが、指示等は君に任せる 宜しくお願いします……」
最後の一言は、ミライの父親としての言葉だと思われた。

「父さん! 僕も探して来ます!」
僕はいてもたってもいられなくなり、父さんに宣言した。

「シンイチ…… ミライの心を救ってやれるのはおまえだけだ……頼む」
父さんは背中が痛いだろうに、ベッドから起き上がり、僕に頭を下げた。


「……にも言ったじゃ無いですか……
親が子供に頼み事をするのに、頭を下げる親はいませんよ 父さん

「シンイチ……」 父さんは涙を堪えようともせず、ただ流れるがままにしていた。
「シンイチ 無理しちゃダメよ……あなたは私たち……そしてレイの息子なんですから」
母さんは僕の手を両手で握り締めて僕の目を見ながら、言い聞かせるように囁いた。
「母さん……」
「シンイチ……試練が続くでしょうけど、負けちゃだめよ……」
「ユイおばあちゃん……」
ユイおばあちゃんも僕の手を取って励ましてくれた。


「アヤさん……ミライを連れてすぐ帰って来ます……だからここにいて下さい
 たとえ……姉弟だったとしても……あの時の気持ちは変わりません……」
僕はアヤさんにそう言い残して、背を向けた。

「シンイチ……」 ・毛利蘭かいや(爆) いかん今週のサンデーのせいだ(爆)
アヤさんは複雑な表情をしていたが、僕が扉を出る時振り向くと、笑顔で送ってくれた。


「ミライを探さなきゃ……」
僕はNERV本部内を職員と共にミライを探し続けていた……

十数分後

「シンイチ! こんな所におったんかい! 碇ミライは発見されたそうだぞ!」
ただ、闇雲にミライを探していた時、僕は広島弁の若い男に呼び止められた。
って言うか某コナンの平吉だな
「あなたは、あの時の! 確か葦田(あした)さんでしたっけ」
僕は一瞬訳が解らなかったがNERVのエージェントになったと言う事を思い出して納得した。

「こっちや!」
葦田さんは一階層下へと続くらしい階段を指差して言った。

「で、どこにいたんです?」
「響とかいう人物を軟禁していた場所やそうやけんど……」
「で、ミライは無事なんですか!」
「詳しい事は解らんが、その響とやらに人質にされているらしいんや」
走りながら葦田さんと話していたので、僕は驚いて足を止めてしまった。




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どうもありがとうございました!


第21話Aパート 終わり

第21話Bパート に続く!



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