「……最初の話の続きをするぜ……おまえはエヴァンゲリオンの操縦席にて、
麻痺銃を手にして響が乗り込んで来ようとしたら、発砲しろ
そして、響とやらから、精神寄生体が抜け出した所を、
樹島ミドリが精神寄生体に攻撃をしかけるそうだ……
もっともその時にはシンイチ……おまえも加わる予定だがな……」
「葦田さんはどうするんですか?」

「俺か……俺には残念ながら精神寄生体だなんてものは見えないから、
隙を付いてミライの救出をするのが任務だ……」

「ミライを……お願いします 葦田さん」

「解ってるさ……あの子が正気を取り戻したら……ちったぁ構ってやれよ……
それが出来ないんなら…………」
葦田さんが少し顔を背けた時、エレベーターは地下10Fに到着し、運命の扉は開かれた。



裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 21C

第21話【約束の日/紫の巨神再び】Cパート



「急げよ!あと数分で到着する筈だ!」
そう言いながら葦田さんはエレベーターを飛び出した。

「解りました!」 僕もエレベータから走り出しながら答えた。

そして、視線を葦田さんから進行方向に向けると
紫の巨大なロボットのようなものが目に入った。
エヴァンゲリオンの半身は妙な色をした液体の中に漬かっており、
少し歩くとその巨大なプールの縁があり、
エヴァンゲリオンの側には一基のタラップが用意されていた。


「大きい……これがジャイアントロボか……」NG
「大きい……これがエヴァンゲリオンか」
僕は胸から上しか見えていないエヴァンゲリオンを見て心底驚いていた。
「どうやって乗るんだろう……」
僕はエヴァンゲリオンの顔を見上げていると、通信機のコールサインが鳴り響いた。

「シンイチ君! 今、タラップを動かすから、タラップに乗るのよ」
赤木博士が指示してきたので、僕は左の方にあったタラップに乗り込んだ。

現在がエヴァンゲリオンの胸の位置なので、更に上がって行くって事は頭にでも
操縦席があるのだろうか……

「碇司令……あなたのお父さんがこれに乗ってた時は、エントリープラグと言われる
装置が操縦席だったけど、現在は改良されていて、首の下に操縦席があるのよ」
僕が不審そうに上を見ていたのを知っているのか、赤木博士が説明してくれた。

十数秒後、タラップは上がりきり、エヴァンゲリオンの首の前で停止した。

「今開けるから待ってね」 赤木博士の声とキーを叩く音が数度聞こえた。

数秒後、エヴァンゲリオンの首が後ろの方に傾斜し、首のつけ根と胸の間の所が
ハッチになっているのか、重そうな音を立てて開いていった。
替えのソックスは持ったのか(謎)

「銃を麻痺モードにして、そこに隠れるのよ 解るわね」
「ええ……」 僕はホルスターから銃を取り出しながら操縦席に入っていった。

「あと数分でエレベーターが開くわ ハッチは開けたままにしておくから、
出来るだけ隠れているのよ 10秒後に通信は封鎖します いいわね?」
「了解……」


「父さんも乗ったエヴァンゲリオンか……動かないって言ってたけど、どうしてかな……」
通信が切れたのを確認して、僕は操縦席の中を見回した。

{この機体には魂が無い……本来の魂は抜けだして碇シンジを殺そうとし、
ラピス……俺の母親と共に異次元空間へと飛ばされたのさ……}

{{兄さん!?}}

{もうそろそろ教えてもいい頃だろう……おまえは綾波レイの胎内に最初からいたんだが、
俺の母親……ラピスがそうと知らずに俺を綾波レイの胎内にて育てるべく
渚カヲルに送ったのさ……おまえがいなければ、俺はただの精神寄生体になっていたかも
知れないが、結局 一つの身体に二つの心が同居してしまったって事だ……
俺はほぼ全てを理解していて、おまえには兄だと偽っていたんだが、
綾波レイの胎内にいた綾波レイの息子の父親が碇シンジだと解った今となっては、
別に嘘って訳じゃ無くなったがな……母親は違えど父親は同じって事だ……}

{{ラピスって 父さんの作ったビデオに出てきた人?}}

{詳しくは語られていなかったがな……種を残す為に無理矢理碇シンジを拉致したんだよ}

{{だけど、僕の父親が父さん……碇シンジである筈が無いって母さん達が言ってたけど}}

{碇の血を引く者同士だと、代替策を妊娠の危険の無い日に行っても、妊娠するって事だと
俺は推測しているがな……だから、アヤだっておまえの子を孕む可能性だってあるんだ}
{{そんな……まさか}}

{ミライに代替策を行ったとしても同じ事だろうな……碇の血族ってのも罪作りなもんだ}
{それにおまえは、いわば純血種だからな……碇の血族と六分儀の血を両方引く両親から
産まれたんだ……おまえがテレパスなのもそのせいだろうよ……}

{ま、今さら悩んだって仕方無いだろ……おまえに今出来る事をやるんだな……}
{{兄さん……}}

「シンイチ! もう到着するぞ!」
下の方のどこかに隠れているらしい葦田さんの声が響いて来たので、
僕は安全装置を外して操縦席の中で銃を構えた。

少しして、僕たちが降りて来たのとは別のエレベーターが開いた。

{{兄さん 僕が顔を出す訳にはいかないから……}}
{ビジョンだな……解った}
僕は兄さんが見せてくれたビジョンでエレベーターから降りる響氏と
NERVの職員達を見守っていた。

「樹島さん……」 NERVの職員の中に紛れて樹島さんがいるのを見て、
その事は解っていながらも多少の驚きを禁じ得なかった。

「おまえら いつまでついて来るつもりだ!」
響洸氏……いや恐らく彼に憑いている精神寄生体はNERVの職員の方に振り向いて威嚇した。

「人質を解放するまでだ!」

「そう簡単に開放する訳にはいかんな」

響洸はミライの首に回した手を縮めるのが見えた。
出来うる事なら今から飛び出してでもミライを救いたかったが、
せっかくの計画を台なしにする訳にもいかないので、歯噛みしながら見守っていた。

「この結界の中でおまえに逃げ場は無い筈だ! 人質を離すんだ!」
ミライが意識を失ったままうめき声を上げているのを見て、
NERVの職員の代表者が叫んだ。

「結界? 外からなら突破出来なくても中からならもろいもんだぜ」
響洸はエヴァンゲリオンを見上げながら言った。

{どうやら、このエヴァンゲリオンを破壊するのが目的で無く、
エヴァンゲリオンを奪って施設ごとぶち破って地上に逃げるつもりのようだな}

{{じゃ、ここで食い止められなかったら……}}

{……方法は無いでも無い……あまり入れ込むなよ シンイチ}
{{わかったよ……兄さん}}

僕は黒光りする銃を握り締めている掌に汗が滲むのを感じた。

響洸はタラップを見つけ意識の無いミライを引きずりながらタラップに乗り移った。

「とっととタラップを上げやがれ!」
響洸が怒鳴った数秒後にタラップが僕が乗った時よりゆっくりと上がり始めた。

{出来るだけ身体を隠しておくんだ}
僕は兄さんの指示道理に操縦席の背もたれの後ろに隠れる事にした。

タラップが上がって来る機械音を聴きながら僕は胸の動悸を押さえようと必死だった。

自分の心臓の鼓動を数えながら僕はその時を待ち続けた。
永劫の長さのように感じたひとときは、タラップが上がりきる音で中断された。

僕は兄さんからのビジョンで、響洸がタラップにミライを残したまま操縦席に入ろうと
しているのを知り、安全装置はすでに外してある銃の引き金に指を添えた。

「紫の巨神エヴァンゲリオンを……ついに手に入れたんだ」
おまえはジュドーアーシタか

操縦席に腰を下ろそうとしたので、僕は銃を持っている右腕だけを出して、
兄さんのビジョンを使って照準を一瞬で合わせて引き金を引いた。

「ぐっ!」 一声あげて響洸は意識を失った。 だが本当の戦いはこれからだ。

僕は操縦席に座ろうとして失神している響洸を操縦席から引きずり出した。
これは精神寄生体が肉体から抜け出そうとする瞬間を樹島さんに攻撃して貰う為だ。

僕はタラップで横たわっていたミライを両手で持ち上げ、
安全だと思われる操縦席に押し込んだ。

「まだ、精神寄生体は抜け出して無いわ! またミライさんにとりつこうとするかも
知れないから、ミライさんを守ってあげて!」

いつの間にか整備用のタラップで同じ高さにまで上がって来ていた樹島さんが叫んだ。

「皆さん!危険ですからここから離れて下さい 精神寄生体に取り憑かれるやも知れません」
樹島さんは大声で下で見守っているNERV職員に声をかけていた。

その間に僕はミライを抱きしめたまま、操縦席に座っていた。

ミライまでもを上に連れて来ていたので、あてが外れたのか、
兄さんのビジョンでは葦田さんの姿は見当たらなかった。


「もうすぐよ! 気を付けてね!」 
樹島さんの警告の声を聴きおわった直後、兄さんのビジョン経由で響洸の身体から
何かが抜け出そうとしているのを僕は目撃した。

{{{貴様! よくもやりおったな!}}}
その声は直接僕の頭の中に響いて来た。

{{{波動が会う人間は……他にいないのか……貴様!そやつを離せ!}}}
不定形でいつも形を変えながら漂う精神寄生体は少しづつ僕とミライに近づいて来た。

次の瞬間 ビジョンにミドリさんのいる方角から緑色の光が発せられたのを感じた。

{{{こしゃくな!わたしを縛るつもりか! くっ動けん}}}
{{兄さん! 精神寄生体を直接攻撃する方法は?}}
{あるにはあるが、それをするとおまえとミライを守るフィールドが維持出来なくなる}
{{フィールドが無いと……ミライにまたとりつくんだね……兄さん}}

{{{くっ……その娘とおまえには手を出さん だからとっとと降りろ!}}}
{{何っどういう事だ!}}

{{{私の目的はあくまで紫の巨神だ その女などただの道具よ……}}
{シンイチ……取り敢えずミライの救出が先決だ……条件を飲め!}
{{本当にそれで大丈夫なの?兄さん}}
{ああ……考えがある}
{{{それと俺の宿主を操縦席に放り込んで置くんだ!}}}

{{解った……言う通りにする……}}
僕は意識をまだ取り戻して無いミライを担いでタラップに戻り、
タラップで失神している響洸の身体を操縦席に押し込んだ。

{いいかシンイチ……良く聞け……奴はまだ当分は動けない筈だ……
と言う事は奴の目的であるこのエヴァンゲリオンのコアに入り込むまでには時間がある
と言う事だ……}
{{コア? それが奴の目的だったの?}}
{奴がコアに潜り込み、恐らく暗示をかけてある宿主の響洸に操縦をさせるつもりのようだ
コアにいるだけではエヴァンゲリオンを動かす事は出来ん……あくまでエヴァンゲリオンを
動かすのに必要なパーツのようなものだからだ……}

{それで、どうするの?}

{{俺が奴の代わりにエヴァンゲリオンのコアに入り込むんだよ}}
兄さんの意思を聴き、僕はミライを抱きしめたまま身体が震えた。




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どうもありがとうございました!


第21話Cパート 終わり

第21話Dパート に続く!



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