裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 22N
最終話【
魂(こころ)の帰える場所
】Nパート
夢を見ていた……
それは彼女にとって悪夢でしか無かった。
「こっちだ 早く逃げろ」 ミライは葦田に手を引かれて、
ケイジ内を小走りに精神寄生体が操る響という人物から逃れようとしていた。
ミライと葦田が逃げ出すのを見て、精神寄生体は何かの言葉を詠唱した
「ぐあっ」 次の瞬間 葦田の左太ももに裂傷が走り、鮮血が吹き出した。
第二波を恐れてか、葦田はミライを庇うかのようにミライの身体に被いかぶさった。
「な、何? 何なの」 ミライは恐慌状態に陥り、葦田の身体の下でもがいた。
「貴様!その女を離さないと殺すぞ!」
精神寄生体は響の口を使って恫喝した。
「嫌だね!」 先程の一撃で今だ血を流しつつも葦田は不敵な笑みを浮かべた。
「何ぃっ」
精神寄生体は二度三度と呪文を詠唱し、ミライを庇っている為ミライには当らなかったが、
葦田の身体にまるでかまいたちで切られたかのような切り口が開いていた。
「な、何! どうなってるの?」
ようやく正気を取り戻したミライが葦田の腕の中で叫んだ
「騒ぐんじゃ無い!」 葦田はミライの背中に手を回し少しでも遮蔽物に隠れる為、
ミライを片手で抱えて鉄の階段の脇に引きずっていった。
「あなたは……確か」 ミライの脳裏には、かつて駅のホームで銃を向けあった時の
葦田の不敵な顔が蘇った。
「ぐあっ」
そうして話している間も二度三度と精神寄生体の攻撃は続いていた。
遮蔽物を使ってもミライに被害が及ばないようにするのが手一杯のようで、
葦田は出血多量で眩みながらもミライを守り抜こうとしていた。
「くっ特殊繊維のこのスーツでもダメなのか……シンイチはどうなったんだ……」
精神力だけでこれまでミライを守って来た葦田は力尽きたのか、
それでもミライを守る為にミライの盾となったまま意識を失った。
「ちょっと……どうしたの? ねぇ!」
気を失った途端に重みを増した葦田に抱きすくめられたミライは悲鳴を上げた。
そして、葦田の身体から流れる血がミライの頬に数滴滴り落ちた。
その時、ミライは着ていた淡い青の普段着が、葦田の血で紅く染まっている事に気づき絶叫した。
「はぁ……はぁ……はぁ」
ミライは手術室の前にあるベンチで跳ね起きるかのように悪夢から覚めて、息を整えていた。
葦田の手術の為に血が必要だと言う事で多量の血を採血されたせいか、
こうして何度もうたたねをしては悪夢を見てはミライは先程の夢が過去に起こった現実だと言う事を
未だ消えぬ赤い手術中を示す表示を見て 再認識した。
「ふぅ……」 ミライは今日何度目か数えもつかないため息を一つ吐いた。
途中で交替の為に出てきた看護婦が手術は順調で、峠は越したが傷口が多い為に時間がかかると
説明を受けてからすでに二時間あまりが過ぎていた。
「どうして私を助けたのかしら……」
ミライは葦田に守られていた時の事を思い出して呟いた。
その時、タイルの上を滑車が転がる音と、医師や看護婦の足音が聞こえ、ミライは手術室の方を見た。
先程まで赤いランプが点灯していた表示板は青い通常時のランプに切り替わっていた。
手術室の扉が内側から押し開かれ、移動用ベッドに載せられた葦田と医師や看護婦が通路に現れた。
医師の顔も看護婦の顔にも疲労が色濃く現れており、ミライは震えながら医師の言葉を待った。
「無事……手術は成功しました。 切り口が奇麗だったので傷痕も目立たなくなると思います。
ただ、頬についた傷が深いので僅かですが傷痕が残るでしょう。
まぁ、若いから回復も早いと思いますよ 峠は越しましたので、ご安心下さい」
医師はミライにゆっくりと言葉を選んで説明した。
「ありがとうございました!」
ミライは深々と頭を下げて言った。
「それで、病室なんですが 妹さんが入室している部屋に空きベッドがあるので、
そちらに移動します」 看護婦は葦田を載せた移動用ベッドを突きながら言った。
地上にある外見は普通の病院の病室に移動する為、
ミライ達は大きいエレベーターに乗っていた。
「シンイチは……まだ戦っているのかしら」
ミライはエレベーターの階数表示パネルを見て呟いた。
「地上での戦闘も終了したそうですし、大丈夫ですよ」
ミライが抱いていた不安に気づいてか、看護婦が声をかけて来た。
「そうですか……ありがとうございます」
「着いたわね じゃ、行きましょう」
ミライと看護婦は移動用ベッドを突いて一般病棟の通路を進んでいった。
「ところで妹さんは何の病気で入院してるんですか?」
ミライは先程の看護婦の言葉を思い出し、問いかけた。
「小さい頃から入退院を繰り返してたらしいの……生まれつき心臓に欠陥があって、
そのせいで腎臓にも負担がかかって、腎臓が炎症を起こした時や腎不全が起きた時には
数週間から数ヶ月に渡る入院を繰り返してたそうなのよ
まだ中学二年生なのに学校にも殆ど行けて無いみたい……
それに特殊な注射を定期的に打たないと心臓に負担がかかるんだけど、
この注射が高いのよねぇ……両親をサードインパクトで亡くし、
兄妹で叔父さんの所にいたそうなんだけど……何か問題があったみたいで
叔父さんの所から飛び出したそうなのよ……それ以来お兄さんが働いてたそうよ」
「そうなんですか……でも、どうしてそんなに詳しいんですか?」
「葦田加奈子ちゃん……彼の妹さんのいるフロアーの担当なの NERVにも属してるけどね」
・
某DOのゲームとは関係無いっす 多分(笑)
・
「あ、ここよ」
ミライと看護婦は移動用ベッドを定員二名の病室の中に入れた。
その時 病室内には葦田加奈子の存在は無かった。
二人で移動用ベッドからベッドに移そうとしたが、無理があったので
二人はベッドに移すのを中断した。
「ちょっと待ってね ベッドに彼を移すのに男手借りて来るから」
そういって看護婦は去っていった。
「ふう……」
ミライは汗ばんだ胸元をハンカチで拭いていた。
「おにいちゃん……」
その時病室にか細い身体の少女が入って来て、
移動用ベッドの上に横たわったまま、まだ麻酔が覚めていない葦田の顔を見て呟いた。
「あの……あなたが加奈子ちゃん?」
ミライには加奈子が小学校高学年にしか見えず一瞬焦ったが、慌てて問いかけた。
「ええ……あなたは……兄の知り合いですか?」
加奈子は不審そうな目でミライを見て言った。
「あの……まぁ……そうかな……」
ミライは自分と葦田との関係をどう説明していいか分からず困惑した。
「まさか……兄の……恋人ですか? 私……全然知らなくて済みません……
兄もあまりそういった事を話さないもので……」
完璧に誤解した加奈子は恥ずかしそうにミライに語った。
「ち、違うの……私……あなたのお兄さんに守って貰ったの……
詳しい事は言えないんだけど……この疵は……私を庇って……」
ミライは葦田の身体が切り裂かれた時の事を思い出し、震える声で呟いた。
「そうですか……」
「私の事……責めないの? 私を庇ったりしなかったら……こんなに怪我なんか……」
ミライは手を震わせながら言った。
「兄が……その 非合法な仕事に手を染めていた時は……
兄は絶対そのような行動をしなかったと思います……
ですが、あなた達の組織に兄が入ってから……兄は変わりました。
その兄が下した決断ですから、私は兄の意思を尊重します……」
加奈子はミライの目を見て、言い放った。
ベージュ色の入院者用の服を着た加奈子のまっすぐな眼が
これまでの14年間を強く生きてきた事をミライに感じさせた。
「おまたせ! 男手連れて来たわよ」
先程の看護婦と看護士二人が病室に入って来たので、ミライと加奈子は我に帰った。
4人がかりで葦田をベッドに移し終えた後、加奈子を交えて談笑していた。
「なんや騒がしいなぁ」
その時葦田が目を覚まし、眩しそうに病室を見た。
「お兄ちゃん!」 加奈子が葦田の元にかけよった。
「何で加奈子がここにおるんや?」
エージェント時代は身元を隠す為に、やくざ映画で覚えた怪しい広島弁を多用していた
葦田は無意識に広島弁で呟いた。
「私の病室にお兄ちゃんが入って来たのよ お兄ちゃん」
加奈子は兄の手を握って言い聞かせた。
「あの……ありがとうございました」
兄妹の会話が終わるや否や、ミライは葦田の元に歩いていって頭を下げた。
看護婦は看護士達は邪魔にならないように静かに外に出ていった。
「その……怪我は無いんか? 守りきれたか心配で……その……」
葦田はミライの存在を認めるや急に口ごもった。
「ええ……おかげさまで……」
「お兄ちゃんが口ごもるだなんて……もしかして本当は恋人なんじゃ無いの?」
加奈子は未だ疑惑を捨て去って無かったのか、兄の顔とミライの顔を交互に見て言った。
「こ……こら加奈子!」
「お兄ちゃんは図星を突かれると怒るのよね」
加奈子はすかさず兄の手の及ばぬ自分のベッドに腰かけて言った。
ミライは反応に困り、突っ立っていた。
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久々のミライ萌え〜
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どうもありがとうございました!
最終話Nパート 終わり
最終話Oパート
に続く!
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