「何か久しぶりに家に帰ったって気がしない?」
アヤは助手席にいるミライに声をかけた。
「そうね……」
「何よあれ……」
角を曲がり、碇家が見える場所に来た時、アヤは驚愕の声をあげた。
碇家の玄関の周りにはレポーターや記者 そしてビデオカメラを担いだ人達が
黒山のように玄関前にたかっていたのだ。
「一体何が起ってるの?」 ミライは声を震わせて言った。
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 22P
最終話【
魂(こころ)の帰る場所
】Pパート
「取り敢えず迂回するわよ」 アヤは碇家の少し手前の曲がり角を曲がった。
「何なの?あいつら」 ミライは未だNERVについてあまり知らないせいか、困惑していた。
「何だ? あの車」 レポーターが一人アヤ達の車に気づいて駆け出して来た。
「げっ アネキぃ 追いかけて来てるわよ どうすんのよ」
「中継車を出せ 車で追いかけるんだ 黒塗りの車が偶然こんな処に来る筈無い!」
「わいわいテレビさん 車どけて下さいよ」
「車じゃ間に合わん 取り敢えず走れぇ」
碇家の前で待機していた報道関係者の約半分がアヤ達を追いかけ始めようとしていた。
「早く出してよ お姉ちゃん」
ミライはドアロックをして不安そうに姉を見た。
「関係者なら降りて説明しろ〜」
長いマイクを持ったレポーターが走ってアヤ達の車に近づいて来ていた。
「こんな道じゃ飛ばせないわ 国道に出るまでは……」
アヤはちらちらと後ろを見ながらハンドルを握っていた。
その時、国道に出る為の唯一の道に、近くで待機していたのかテレビ局の巨大な中継車が
道を塞ごうとした。
「邪魔よ どきなさーい」 アヤアクセルを全開まで踏み込んで車を急加速させた。
「うわっ あぶねえ」 中継車の運転手がブレーキを踏んだおかげで、
車は追突する事無く、アヤ達の車は国道に躍り出た。
「ショッキングピンクの彗星と呼ばれた私に着いてこれるかしら!」
アヤは普段の自分のエレカよりニ回り以上大きいNERVの公用車を操り、
他の車を避け、縫うように国道を駆け抜けていった。
「おねぇーちゃん 安全運転!」
「あいつらに捕まったら学校いけなくなるわよ いいの?ミライ」
「それはヤだけどぉ……」 ミライは半分泣きが入っていたが、
後部座席ではローラが熟睡していた。
数分後……
「もうアネキの運転する車には……乗りたく無い」
ミライは少し酔ったのか青ざめた表情で呟いた。
「もう追いかけて来ないみたいね ミライ これでお父さんに連絡して! 短縮の1よ」
アヤは内ポケットから父に渡された携帯フォンを取り出してミライに手渡した。
「短縮の……1ね」 ミライは携帯フォンをぎごちなく操作しはじめた。
「ん? アヤか?」 少しして、シンジが電話に出た。
「ミライよ 家の周りにレポーターが取り巻いてるのよ どういう事? お父さん」
「今その報告を受けた……説明は後でする アヤはそこにいるのか?」
「アネキなら今エレカを運転してる」
「じゃアヤに、手縄山の有料パーキングに入るように伝えてくれ」
「手縄山パーキングね わかった」
「こっちから連絡をしておくから……話は後だ 切るぞ」
ミライは回線の切れた携帯フォンを不安気に見つめていた。
「アネキ……手縄山パーキングに入るようにパパに言われたわよ」
ミライは動悸を押さえる為か、数度深呼吸をしてからアヤに伝えた。
「手縄山パーキング……わかったわ」 アヤは進行方向の左手に見える手縄山を見て言った。
数分後 アヤ達は手縄山パーキングに車を進めていた。
「連絡しておくってパパが言ってたんだけど……」
閑散とした立体駐車場を眺めながらミライが呟いた。
「地下は二階までよね……」
アヤ達は立体駐車場のほぼ全てを回ったが、人影はどこにも無かった。
そして、最後に残された地下二階に降りた時、背後のシャッターがゆっくりと降りていった。
「罠?」 ミライは後ろを振り返って叫んだ。
「お出迎えみたいよ」 奥の方から誰かが歩いて来る足音を聞いてアヤは呟いた。
アヤとミライは息を詰めて、奥から歩いて来る人物に意識を集中させた。
照明の下に歩み出て来たのは70歳前後の銀髪の老人であった。
「急な事で準備ができて無かったもんで、驚かせてしまったようだね」
老人は柔和な表情で頬をかきながら言った。
「ここに来るように言われたんですが、これからどうすれば良いのでしょうか」
アヤは運転席側のウインドウを開けて老人に話しかけた。
「車は奥の端に駐車して下さい NERVの地下通路を通って自宅の地下にて待機するようにとの事です」
銀髪の老人は駐車場の奥を指差して言った。
アヤは指示に従い、車を指定された駐車スペースに停めた。
「ローラちゃん 起きて」
このような事態にもかかわらず、ローラは寝入り続けていた。
「もう着いたの?」 ローラは寝ぼけた顔でアヤとミライを見ていた。
「まだ眠いの?」 ミライはローラの頭を撫でながら言った。
「うん……」 「じゃおねえちゃんがおんぶしてあげようか ほら、つかまって」
「ミライ お尻を手で支えてあげた方がいいわよ」
アヤは後ろからミライを見つめていた。
「じゃ行きましょうか……」
アヤは先程の銀髪の老人の元に歩いていった。
「地下通路はどこにあるんですか?」
「こっちだ……ついて来たまえ」
銀髪の老人はエレベーターの方に歩いていった。
アヤとミライ そしてローラは銀髪の老人と共にエレベータに乗り込んだ。
「これを作動させるのも久しぶりだな……」
銀髪の老人はポケットから真紅のNERVのカードを取り出し、コンソールの脇に隠されていたスリットに通した。
地下二階の最深部でありながら、エレベーターは更に下へと進んでいった。
少ししてエレベーターが開き、薄い緑色の照明が点灯しているNERVの地下通路にアヤ達は降り立った。
「カードを貰っているだろう……各所にあるコンソールに通したら地図が出てくる……
私は後始末をしないといけないので、これで失礼するよ」 銀髪の老人はそう言って先程のエレベーターに乗った。
エレベーターが上昇を始めた頃彼は小声で呟いた。
「碇……おまえの孫達は立派に成長しているよ……」
10分後 ようやく自分達の家の地下に辿りついたアヤ達は適当な部屋を探してうろついていた。
「取り敢えずここで休みましょ」
アヤは碇家の地下のプロジェクターがある居間の扉を開けて言った。
「ローラちゃん ここで横になる?」
アヤはミライの背からローラを抱き取ってソファーに寝かせた。
「なんかうちって他の家と違うとは思ってたけど……いつの間にこんなシェルターなんか作ってたんだろう……」
ミライは碇家の地下施設を見て呟いた。
「お父さんが普通の中学教師じゃ無い事は確かね……」
アヤはプロジェクターの下部にある機器を操作していた。
「お父さんは説明してくれるって言ってたけど……どういう事なのよ これは」
ミライはアヤに詰め寄った。
「少し待ちなさい……すぐ再生するから」
アヤは再生ボタンに指をかけて言った。
そう、昨日アヤとシンイチが見たあのプログラムである。
十分後……
「大体分かったでしょ?」 アヤはミライの肩をぽんと叩いて言った。
「私が妙になってた時の事は……あんまり記憶無いんだけど……
その……シンイチと……して無かったから寄生されてたの?」
「シンイチ君と言うか……六分儀家の血を引いてる人ね……
今の処六分儀家の血を引いてる男性はお父さんとシンイチ君だけだそうだけど……」
「お姉ちゃんは?…………」
「私もね……あいつに寄生されてたの……だけどもう……大丈夫」
アヤは視線の隅でベッドを見て呟いた。
「そう……そうなんだ……」
「けど……誤解しないでね……今回の事は……いわば種痘みたいなものなの
だから、決まった訳じゃ無いのよ ミライ」
「六分儀家の血って私たちも受け継いでるんだよね……」
「そうよ……それがどうかしたの?ミライ」
「いや……何でも無い……何でも無いわよ」
ミライは左腕の血管に指を添えて言った。
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最終話Pパート 終わり
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に続く!
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