「遅くなってすみません 本日付けで特殊部隊アタッカーの隊長に任命された葦田です」
「同副隊長の樹島です」
「あの……呼ばれた碇ミライです」

葦田はミライと樹島ミドリに左右から支えられたまま、会議室に入って来た。

「揃ったようだな……始めよう」
シンジは 全員を見渡して言った。


裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 22T

最終話【魂(こころ)の帰える場所】Tパート

「まず、この度の戰闘で殉死した同志に黙祷を捧げたいと思う 黙祷!

シンジの声に合わせて、その場に集っている全員が黙祷を始めた。

ここに集っている者の死んだ同僚……そして友人……恋人を亡くした者もいるだろう

だが、黙祷が終わり全員が顔を上げた時、

誰もが心で泣いてはいたがその顔は誰一人乱れてはいなかった。


「諸君がこれまで愛し護って来た日本……そして地球……

我々の先祖が綿々と築いて来た歴史……だが、それは旧支配者の腕の一振りで

消え去ってしまう程脆いものかも知れん

今から行う作戦は、

旧支配者の一柱 ヨグ・ソトースを太陽系から放逐する事が主目的である。」

シンジのその声に会場では僅かなどよめきが広がっていた。


「尚、この作戦が成功した暁には……我らNERVは正式な国の機関となる……

名称は特務機関NERV そう政府はこれまでひた隠しにしてきた、

旧支配者が自分達の住む大地の下で眠り、それを呼び覚まさんとする信奉者の存在

跳梁跋扈する倦属の存在を明らかにするのだ。」

シンジの言葉に、さすがのNERVの職員達もざわめいた。


「その為にはヨグ・ソトースを放逐する必要がある……ヨグ・ソトースさえ放逐

してしまえば、今の日本にはさしたる危険な存在は残ってはいない

無論信奉者や倦属は残ってはいるが、旧支配者と違い 我々でも対処出来る。

今、この中にいる誰かが言ったが……
今後は堂々と求人も出来るそう悪い事でもあるまい」

シンジの言葉に皆が苦笑した。

皆が冗談でリラックスしきった処でシンジは再び話し始めた。

「それでは、作戦の詳細な説明を開始する 尚、作戦の結構は約40分後だ。
現在初号機の装備の換装を行っている 換装が終わるまでには準備について貰う!」


その頃 地下ケイジでは……

初号機の兵器のコア部分の換装の為に、シンイチは初号機の操縦席に座っていた。

{{兄さん……銀の鍵ってそんなに凄いものなのかな……}}
{あの兵器が銀の鍵の技術を使っていると言うのなら、鍵の一部の能力だけで、
あれほど旧支配者や倦属に有効的な攻撃が出来たんだ……
鍵をセットすれば、旧支配者と言えども消滅するしか無い筈だ}


「おい 慎重に扱えよ……下手に触ろうごとなら、おまえが飛ばされるぞ」
「赤木博士も伊吹主任もいないし……この鍵の扱い方なんて知らないぞ」
下の方から整備士達の声が響いて来た。

「君たちではその銀の鍵を扱うのは無理だよ」
その時、整備士達の後ろから近づいて来た銀髪の老人が話しかけた。

「あなた誰ですか!」 若い整備士が銀髪の老人に誰何した。
「馬鹿 NERVのカードを胸に付けてるんだ 関係者だろう」
もう一人の整備士が若い整備士の肩を叩いて言った。

シンイチは下で何が起っているのか分からず、リフトに乗って下に降りていった。

「あなたは……もしかして冬月さんじゃ無いですか?」
シンイチは以前地下で見せられたビデオで前副司令冬月の顔を見た事を思い出した。

「多少整形はしたんだが、良く分かったね シンイチ君」
銀髪の老人……いや 前副司令冬月コウゾウは笑みを浮かべて言った。

「し、失礼しましたぁっ」 整備士二人は前副司令と聞いて直立した。

「おじいさんが生きてたんだから、同じように生きてるんじゃ無いかと思ってました」
シンジは冬月と握手をしながら言った。

「銀の鍵の事言ってらしたですけど、銀の鍵に詳しいんですか?」
シンイチは先程の冬月の言葉を思い出して言った。

「ああ もともと、この鍵は私のものだからね……いや、正確には母から引き継いだものだ」
冬月は置かれていた銀の鍵を取り上げて言った。

「じゃ、冬月さんのお母さんは外国人なんですか?」

「ああ……母方のカーター家が密かに伝承し続けたカーター家の家宝だよ

私がまだ10代の始めの頃……日本にて母と隠棲していた時、
銀の鍵が目的の倦属に襲われたんだ


母は私の首に銀の鎖で繋いだこの鍵をかけて……倦属に立ち向かい 私が逃げる時間を

作ってくれたんだよ……母の死を無駄にしない為にも一心不乱に逃げていた時……

六分儀ゲンドウの父親に出会い、その後NERVに所属したと言う訳さ……

なのに、ゲンドウと来たら私の家宝を私の手で初号機の兵器に取りつけて来いと

連絡して来たから、ここに現れたと言う訳さ」

冬月はいわば母の形見でもある銀の鍵を眺めながら言った。


「その鍵を使って……きっとヨグ・ソトースをこの地から放逐します!」
シンイチは冬月の前で誓った

「ありがとう……では取りつけるとしようか」
冬月は整備士達の方へ歩いて言った。


「銀の鍵はもう取りつけたの?」
会議が終わったのか、赤木博士が駆けつけながら言った。

「やぁ、赤木君……今終わった処だよ」
冬月は立ち上がりながら言った。

「冬月副司令……」
赤木リツコはまるで死人でも見たかのような表情で凍りついた。

「息災だったかね 赤木君……」

「は、はいっ!」
リツコは死んだと思っていた かつての上官と出会いショックを起していたが、
ようやく正気を取り戻して返事をした

「今、あの兵器を見せて貰ったよ よく銀の鍵の秘められた能力を解明出来たね」

「ありがとうございます……」
リツコは涙を流しながら言った。


「シンイチ君 いる?」
その時、副官である冬月ヨシオを引き連れてアヤが地下ケイジに現れた。

「あ、はい……」 シンイチは兄と会話していたのか、少しして振り向いた。

「私が初号機の直接指揮を取る事になったの で、打ち合わせの為に来たの」
アヤはシンイチを連れてリフトに乗り、コクピットへと上がって言った。

冬月ヨシオはアヤに置いていかれたので、なにげなく周りを見渡していた。

「冬月副司令……それでは失礼します」
「私はもう副司令じゃ無いよ 冬月でいい」
「それでは……」

「ん?」 冬月ヨシオは”冬月”と言う言葉を聞いて声のした方へと振り向いた。

「あれは……もしかして……」


「さて……直通エレベーターはどこだったかな」
冬月コウゾウはその場を離れようとしていた。

叔父さん!
その時、冬月コウゾウは背後から声をかけられた。

「顔は少し変わってるけど……叔父さんだろ!」
冬月ヨシオはコウゾウの元に駆けつけて言った。

「ヨシオか……最後に会ったのはおまえが小学生の時だったから、
おまえの事が分からなかったよ……」 

「母さんも叔父さんの事ずっと待ってるのに……」
男はつらいよ みたいだな
「いろいろ事情があってな……だが今回の事が終われば帰るつもりだ
おまえもまだ若い作戦本部長を支えてやれよ また会おう」
冬月はそう言い残してどこかに歩いて言った。

その頃 初号機の操縦室では……

通信機のコード設定と言う事で操縦席にシンイチと共に乗り込んだアヤが
シンイチを背後から抱きしめていた。

「シンイチ君……絶対無理しちゃ駄目よ」

「分かってます……」

「作戦本部長じゃ無かったら……一緒に初号機に乗りたかったけど……」

「アヤさん……」

「だからせめて……シンイチ君を危険な事をさせるのなら私が指揮したかったの」

「待ってるからね……無事に帰って来るのを二人で待ってるからね」

「二人? ミライですか?」

「ここに来る途中……あまりにも具合が悪かったから医務室寄ったの……」

「医務室?」
シンジはアヤの言わんとする事が分からなかった。

「私の事 何も知らないお医者さんが……おめでとうございますって言ってくれたの」

「ええ?」 シンイチは訳が分からず混乱していた。

「私たちは普通の人間とDNA構造が一部違うって説明されたけど……
こういう事だったみたい」

「私たちは姉弟だけど……産まれて来る子供には罪は無いわよね」
アヤはうっすらと涙を滲ませながらシンイチを抱きしめていた。




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どうもありがとうございました!

最終話Tパート 終わり

最終話Uパート に続く!



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