裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 03A
第3話【心の闇に潜むもの】Aパート
パーティーが始まってもう二時間が経ち、宴もたけなわであった。
「ま、ま先生どうぞ」ムサシが、父さんのコップに日本酒を注いでいる。
「いやぁすまんね」
「ねぇ・・ミライ・・あんたまだ出して無いの?」
鈴原さんが、ミライに小声で話していた。
「・・あなたの家に忘れて来たの・・」
「えー じゃぁ・・キッチンにあるかしら」
その時!
ガチャリ
玄関が開いた音がした
「お客様かな」と思う間もなく、家の中に二人程入って来た。
「よう シンジ! 遅なったなぁ」そこには、鈴原さんのお父さんが立っていた。
「ミライちゃん・・これ忘れて行ったでしょ」その背後から、鈴原の奥さんが顔を出した。
「あ、すみませーん」ミライは立ち上がって、何かを受け取っていた。
「一人だけ酒を飲むのもアレだったから、いい時に来たね」
「あ、どうぞこちらに」アヤさんが、鈴原の奥さんの為に席を開けていた。
「おい・・日本酒しか無いんか?」
「ビールがいいですか?それともウイスキー?」アヤさんが声をかけていた。
「ん〜じゃあビール貰おうか」
「ハイ」アヤさんが台所に走って行った。
「そや!おいシンイチ!」鈴原さんが僕に声をかけた。
「あ、はい」
「15才おめでとな・・これ、わしと女房からや」
鈴原さんはそう言ってバスケットボールを渡してくれた。
「ありがとうございます!」
授業で嫌々やっていた、バスケがようやく面白く感じるようになった直後だったので、嬉しかった。
「はい・・どうぞ」アヤさんがコップを鈴原さんの前に置いて、ビールを注いだ。
「アヤちゃんも大きくなったねぇ〜 胸の大きい所はアスカに似たんやな」
「もう・・鈴原の叔父さんったら」アヤさんは頬を赤くした。
「ミライちゃんも、シンイチの為に今朝なんか作ってたしな・・」
「もう・・叔父さんそれは秘密だったのに」ミライがふくれた。
「早よ渡さんかい 腐ってまうで」
「・・」ミライは、さっき鈴原の奥さんに手渡された包みを持って僕の前にやって来た。
「はい・・これ・・あげる」ミライは顔を真っ赤にして包みを僕に渡した。
「ありがとう・・何だろ」僕は袋を開けた
中には、手作りのシュークリームが入っていた。
「おいしそう!今、食べてもいい?」
「いいわよ・・」
「じゃ、頂きます」
僕はシュークリームにかぶりついた。
僕は一気に一個目のシュークリームを食べ終えた。
「おいしい!おいしいよミライ! これ、中のカスタードにチョコを混ぜてるんだね」
「そう?・・よかった」
「あら、ミライ・・あなたシュークリームの作り方覚えたの?」
「う、うん・・鈴原さんに手伝っては貰ったけどね」
このシュークリームの皮は多分・・鈴原さんが作ったものだろう・・
けど中のチョコ風カスタードクリームは、僕の好みに合わせていたので、
ミライの作ったものだとわかった。
僕は二個目も食べ終えて、飲物を探した。
「これ飲みなよ」ムサシが僕に缶ジュースを渡してくれた。
ごくっごくっ・・
「変わった味のジュースだね」
「私達にはくれないの?」ミライがムサシに言った。
「冷蔵庫の中に入れてる筈だけど」
「あ、じゃ来た時にくれた袋ね」
アヤさんがキッチンに行った。
「はい!ミライ」
「鈴原さんと、シズカちゃんも飲むでしょ」
「はーい」鈴原さんは受け取った。
「私はいいです」シズカちゃんはさっきからウーロン茶ばかり飲んでいる
プシッ
「うん・・おいしいわね」
アヤさんが缶の半分程飲み終えて言った。
「そうね・・この味・・どこかで味わった事あるわね」
30分後・・
僕は何故か酔っ払ったアヤさんとミライにからまれていた。
「ちょっ アヤさん・・ミライ・・離してよ」
「駄目ぇぇ〜シンイチ君が言わないと離してあげないもん」
「そうよ!乙女二人の唇を奪っておきながら、何故言えないのよ」
「そんな・・あれは・・」
「シンイチ!おまえはそんな奴だったのか? 羨ましい・・」
「シンイチ君・・僕は君の事を誤解してたよ・・そんな事する人じゃ無いと・・」
「誤解だぁ 誤解なんだよぉ」
「さぁ・・シンイチ君は誰が好きなの?とっとと白状しなさいよ」
「そうよ・・私はちゃんと言ったでしょ!けど、シンイチからは何も聞いて無いのよ」
「あら、ミライ・・あなたも言ったの?私もよ」
「女の敵ね!シンイチ!」
「だ、誰か助けて」
僕は二人にもみくちゃにされていた。
「あ、私・・そろそろ失礼します・・」シズカちゃんが、そっと立ち上がった。
「もう遅いし、送って行こうか?」僕はシズカちゃんに声をかけた。
だが、アヤさんとミライに上半身と胴体を固定されているので、身動きは取れなかった。
「山際さん・・外は暗いし、シンイチにでも家まで送らせるよ」
父さんも声をかけてくれた。
「・・・いえ・・いいです・・」シズカちゃんは玄関に向かって行った。
「じゃ、私達は帰りますね」鈴原一家も立ち上がった。
「じゃ、またな!シンジ」
「ああ・・今度はケンスケも都合がつけばいいけど」
「じゃ、おれたちも帰ります」ムサシとケイタが帰って行った。
「こら・アヤ!ミライ! そろそろシンイチ君を離してやりなさい」
父さんが、お客がいなくなったので、声をかけてくれた。
「駄目よ・・シンイチ君の言葉を聞くまで離さないから・・」頬を染めて、酩酊しているアヤさんが答えた。
「そうよ・・うぷっ・・」ミライも何か言おうとしていたが、吐き気をもよおしたようだ。
「ぼ、僕は二人とも好きだよ・・アヤさん・・ミライ・・・それだけは確かだよ・・」
「私達以外の女に浮気しちゃ駄目よ アネキならまだ我慢出来るけど・・他の女とくっついた日には追い出すからね」
ミライがすごい形相で僕に言った。
「その点では、私も一致ね・・他の女性には目もくれないようにする事! いいわね!シンちゃん」
アヤさんも視点の定まらないまま、僕の顔に近づいて来た。
「わかったから離してよ!」僕は哀願した。
二人は僕から離れると、そのまま床に寝転がってしまった。
「山際さんが気になるから、追いかけて、送って行ってあげたまえ・・
この酔っ払い二人は寝かせて置くよ」
父さんがそう言って、パーティの後始末をしてくれていた。
「じゃ、そうします」
僕は少しふらつきながらも、玄関に向かった。
「確かこっちだったよなぁ」僕は駆け足で、シズカちゃんの家への道のりを進んでいた。
「もう帰り着いたのかなぁ・・」僕は神社への石段を上がっていた。
この、手縄山には、途中に公園があり、その上に、シズカちゃんの住む神社があるのだ。
「早く逃げなさい!」
「はいぃ!」
公園の方から、シズカちゃんと、聞き覚えのある声が聞こえた。
僕は一気に階段を駆け上って行った。
すると、公園の奥の方から、こっちにシズカちゃんが走って逃げて来ていた。
「シズカちゃん!大丈夫?どうしたの?」僕はシズカちゃんの肩に手をあてて言った
(コワイ コワイ コワイ イカリセンパイ タスケテ コワイ コワイ)
僕の中に、強烈なイメージが流れ込んで来た。
公園の奥の方で、襟長のコートを来た、男らしい人と、昨日会った青い長髪を背中に垂らした女性が対峙していた。
「シズカちゃんは、早く、家まで逃げるんだ!」僕はシズカちゃんに言い聞かせた
「碇先輩は?」
「僕は大丈夫だから・・ね」
「わかりました!」
シズカちゃんは、家への石段を駆け上がって行った
僕は、ゆっくりと二人に近づいて行った。
第3話Aパート 終わり
第3話Bパート に続く!
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