裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 03C

第3話【心の闇に潜むもの】Cパート




「じゃ、シンイチ!いい子にしてるのよ」

「はいはい 行ってらっしゃい」

僕は苦笑しながら、ミライに声をかけた。

トントントン

「あ、シンちゃん!お昼ご飯は、鈴腹の奥さんが持って来てくれるからね

本当は、一緒にいて看病してあげたいんだけどね・・じゃ」

アヤさんも部屋を出て行った。

僕は昨日の疲れか、まだ体力が回復していなかったので、

今日は学校を休む事になっていたのだ。


世話をする為に学校を休むと言う、アヤさんとミライをなだめて、

僕は今一人でベッドで寝ていた。

「ふぅ・・」網戸からのそよ風が優しく僕を包んでいた。

僕は天井を見ながら、昨日の事を思い出していた・・

「あの髪の青い少女・・あの子も 僕と同じような力を持っているのかな・・

・・・・あの子なら・・僕の真実が分かっても僕を受け入れてくれるかもしれないな・・

アヤさんやミライに・・僕の真実を見せるのは、まだ無理だ・・二人に嫌われたく無い・・」

「結局・・父さんにも全て言って無いんだよな・・いつか話さないと・・いけないのに・・兄さんの事・・」

「そういえば・・名前も知らないな・・あの子・・」

いつしか、僕の脳裏の中では、アヤやミライの事より、あの青い髪の少女の事が多くを占めていた。

「今度会ったら・・名前だけでも・・聞きたいな・・」

僕はうとうとと、眠りにつこうとしていた。


僕を包むそよ風が、まるで母親のように、僕の顔を撫でていた・・

・・・・・・・・・・・母さん・・・・・・・・・・・・・

僕はびくっとして目を覚ました。

そこには、昨日会った青い髪の少女がベッドの横にたたずんで、僕の頬に手を当てていたのだ。

「目がさめたのね・・昨日はよく闘ったわね・・」青い長髪を背中に垂らした少女は僕の視界のほぼ全てになっていった・・

視野が狭窄して、その少女しか見えないのだ。


「君の名は?」

「・・・私の名前は・・」

ガチャリ

シンイチ君!お弁当持って来たわよ・・ってお客さん?

鈴原の叔母さんが弁当を持って入って来た。


「あ、あなた・・レイじゃ無いの?私よ!洞木よ!」

「洞木・・?」レイと呼ばれた青い髪の少女は、鈴原の奥さんの方を見た。

「そうよ・・今は鈴原だけど・・久しぶりね! 24年ぶりね レイちゃん」

「24年ぶり・・?」レイと呼ばれた少女は首を傾げていた。

「鈴原さん・・この人を知ってるんですか?」

僕は半身を起こした

「何言ってんのよ シンイチ君!あなたのお母さんじゃないの!」

「えっ?だって見た感じ、年もそんなに変わらないし・・」僕は突然の事に戸惑ってしまった。

「そっか・・久しぶりの親子水入らずなのね・・じゃ、またね!レイちゃん」

鈴原の奥さんは弁当を置いて、部屋を出て行った。


「い、今の話・・本当なの?」僕はレイ・・綾波レイに向かって叫んだ。

「さぁ・・」

「さぁって・・どういう意味だよ」

「私には、過去が無いの・・」

「過去?」

「記憶とも言うわね・・私は2年前からの記憶しか無いの」

「ただ、あなたを守るように命令されているだけ・・」

「僕の事を? 誰に言われたの?」

「私を作った人・・」

「き、君を作った人って?」

「名前は知らない・・」

「そ、そんな・・信じられる訳無いよ・・」

「ただ、あなたの顔を見てると涙が出たの・・

あなたは私の知ってる人だったのかしら・・」


この子は母さんじゃ無い・・・母さんじゃ無いんだ・・

そんな筈無いよな・・母さんは39才なんだから・・生きていたら・・


「顔・・もっと近くで見せて・・」レイと呼ばれた少女はベッドに僕を押し倒して、顔を近づけた。

「わからない・・なのに・・どうしてこんなにせつないの?」

僕の胸はどきどきしていた。

目の前に、潤んだ紅い瞳の美少女が顔を寄せているのだ。


「ねぇ・・・舐めてもいい?」

「舐める?」

「んっ」

紅い瞳の少女が、拙いしぐさで、僕の唇に、自分の唇を合わせた。

その瞬間、僕の脳裏に、少女の想いが溢れてきた。

(守りたい・・守らなければいけない・・渚・シンイチ・・守りたい・・守りたい・・守らなければいけない・・渚・シンイチ・・守りたい・・守りたい・・守らなければいけない・・渚・シンイチ・・守りたい・・守りたい・・守らなければいけない・・渚・シンイチ・・守りたい


僕はあまりの想いに、目の前がフラッシュしたかのように感じた。

僕はその少女を抱きしめていた。


もし・・母さんだってもいいんだ・・僕を14年もほったらかしにして・・


母さんは僕の事がいらないんだ・・


母さんなんかいらない・・


僕を愛してくれない母さんなんかいらない


・・僕を・・アイしてよ


気が付くと、僕は起き上がって、その少女をきつく抱きしめていた。


「私は何も知らない・・けど私は、あなたのお母さんじゃ無いと思うわ・・・」


僕はその言葉を聞いた瞬間、手を離してしまった。

「私はあなたを守る・・それが使命・・だけど・・私に甘えないで・・」


そういって、少女は僕の部屋を飛び出して行った。


僕は呆然としていた・・あの子は母さんじゃ無かったのかも知れない


誰か・・僕に・・・優しくしてよ・・」 僕はひざを抱えて呟いた。





第3話Cパート 終わり

第3話Dパート に続く!


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