裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 03D
第3話【心の闇に潜むもの】Dパート
「いただきまーす!」
「いただきます!」
「・・いただきます」
「シンイチ君・・元気が無いなぁ・・まだ疲れが残ってるなら、明日も休んだ方がいいかもしれんな・・」
「明日・・高等部は開校記念日よ・・私が付いていてあげたらどうかしら お父さん」アヤさんが父さんに言った。
「そうだな・・じゃ、そうしてもらうか・・」
「・・・・」ミライがスプーンを口にくわえたまま、複雑そうな顔をした。
「どうせ、片づけないといけない場所もあるしね まぁ普段出来ない事をするわ」
「すまんなぁいつも・・」
「お母さん 来週だよね帰って来るの」
食事が済んでも・・僕は部屋でぼーっとしていた。
「風呂にでも入るか・・」
僕は着替えとタオルを持って、下に降りていった。
・・・・気が重い・・・風呂にでも入ってさっさと寝るか・・
僕は風呂場の引き戸を引いた。
キャっ
中では、アヤさんがシャワーを浴びていた・・
す、すみません
僕は引き戸を戻して、風呂場を離れた。
「シンイチ・・大丈夫かなぁ・ふらふらしてるけど・・」
ミライが居間から僕の姿を見付けた。
僕は、自分の部屋に戻って座り込んだ・・
僕の脳裏には、さっき見た、アヤの白い肌が目について離れなかった。
「・・・どうしたんだ・・僕は・・僕は一体・・」
数分後・・
コンコン
「どうぞ」
扉を開けて入って来たのは、アヤであった。
「お風呂開いたわよ」
「さ、さっきはすみません・・」僕は顔を合わせる事が出来なかった。
「謝らないでよ・・鍵かけてなかったの、私なんだから・・ね」
「はい・・」
「さ、行ってらっしゃい」
僕はアヤさんに頭を下げて着替えを持って下に降りて行った。
「ふぅ・・」僕は風呂の中で座っていた。
「僕は一体どうしてしまったんだ・・」
その夜はなかなか寝付けなかった・・・・・
そして翌朝
「シンイチ君・・掃除するから起きて」
僕はアヤさんに起こされた。
「ん〜」僕はまだ完全に目覚めていなかった。
「ミライも父さんもとっくに学校行ったわよ・・さ、」
僕はアヤさんにベッドから追い出され、たんすに背中をもたせかけて、作業するアヤさんを見ていた。
「ふふふーん 今日はいい天気ね」アヤさんは僕のベッドの上の布団を窓にかけた。
「もう〜飲みかけのジュースこんな所においちゃ駄目よ」
「はぁ〜い」
「枕カバーも、そろそろ洗わないとね」
「あらあら、またちらばってる・・もう〜」
アヤさんはベッドの下に無造作に置いている本を引っ張り出して、整理していた。
「どれ・・シンちゃんはどんなのがお好みなのかな?」アヤさんはしゃがみこんで、僕の本を見ていた。
「ちょっと! アヤさん! 僕ここにいるんですよ」
「あら、ごめん・・」アヤさんは少し頬を染めていた。
「いいじゃないの・・私にも見せてよ・ケチ」
「そ、そんな問題じゃ・・」
「それとも何かな?私に見せられないような内容なのかな?」アヤさんが微笑んだ。
どうやら、掃除の度に検閲しているようだ・・
「そっそんな・・」
「ミライには黙っててあげるから、読ませてよ・・シンちゃんの好みが知りたいの」
「アヤさん・・僕の好み・・教えてあげましょうか?」
「教えて教えて」アヤさんが本を置いて、僕の方を見た。
「僕の好きな女性のタイプは・・家事と料理が好きで、世話好きで、
いつも明るく笑顔が可愛くて、すこし赤っぽい髪で、
肌が白くて、この家に住んでいる僕より少し年上の女性ですよ」
僕は一気に言った。
「シンイチ君・・それって・・」
「そう・・僕はアヤさんの事・・好きです・・だけど・・」
「だけど?」
「僕はアヤさんに、見た事の無い・・母を重ねているのかも知れません・・
これが本当の愛とは言えないかも知れない・・けど僕はアヤさんを慕っています・・
これだけは・・本当の事です・・」
「シンイチ君・・」
「最近・・いろいろな事がありすぎて・・混乱しているのかも知れません・・」
僕は思わず頭を抱えた。
「私はあなたの母親にはなれないけど・・あなたの事・・大切にしたいと想ってるのよ・・」
「アヤさん・・」
僕は堪えきれずに、アヤさんにしがみついて、その胸で泣いていた。
「シンちゃん・・泣きたい時には泣いてもいいのよ・・」
アヤさんは優しく手を回して僕を抱きしめてくれていた。
この時流した涙の一滴一滴が、僕の心を洗ったように想う・・・
だが・・それだけで、僕の魂が救われる訳では無かった。
だが、ひとときでも、甘い夢に酔いたかったのかもしれない・・
それ以来、アヤさんとの距離が縮まったのも確かであった。
第3話Dパート 終わり
次回予告!
アスカが帰国した、次の日・・学校には二人の転校生が現れた。
その名も風谷ミツコ と、中南米から転校して来た、樹島ミドリ
ミライとアヤの苦労の種は尽きない・・
次回第4話【湖畔に響くシンフォニー】
第4話Aパート に続く!
[もどる]
「TOP」