裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 04B
第4話【湖畔に響くシンフォニー】Cパート
そして、翌日
2年A組
「おはよう」僕はムサシに声をかけた。
一緒に登校したミライは、ミドリさんを職員室に案内しに行っていた。
「今日は早いなぁシンイチ」
「ケイタは?」
「図書室に本戻しに行ってるよ」
「明後日の日曜なんだけど、山に行かないか?ケイタも誘うけど」
「アヤさんは行くのか?」
「そりゃアヤさんも行くと思うけど」
「よっし!ケイタも引きずって行くよ!あいつ最近運動不足みたいだし」
「とりあえず、学校の裏手のガソリンスタンドの前で朝7:30集合だから」
「了解!」
「おっそーいや、シンイチ知ってるか?転校生が来るって噂」
「うん・・(まさか自分の家で寝泊まりしてるとは言えないし)」
「おっもうホームルームの時間だ それじゃ」
僕は自分の席に向かって行った。
起立 礼 着席
父さん・・いや、碇先生が入って来た。
「えー今日は転校生を紹介する。風谷ミツコさんと、樹島ミドリさんだ」
そして、昨日アスカさんと日本に来た、ミドリさんと、
黒い長髪をなびかせた、痩身で背の少し高い少女が教室に入って来た。
「それじゃ、自己紹介を」碇先生が声をかけた。
「風谷ミツコです。長野から転校して来ました。 宜しくお願いします」
風谷ミツコと名乗った少女は頭を下げた。
「えと、樹島ミドリです。日本語まだへたですが、よろしくお願いします。」
「ミドリさんは、海外からの帰国子女なので、まだ日本語も完全じゃ無いようですが、
皆で協力してあげて下さい。」
「えーと、風谷さんの席は、後ろから二番目の、碇さんの後ろに座って貰って、
樹島さんは、渚君の、右の席が開いてる筈だ」
先生は僕とミライに指を差して、席を教えていた。
「よろしくね」ミドリさんが横に座って微笑んだ。
「えーと、二人の分の端末の登録作業は今日中に終わるから、後で職員室に取りに来て下さい。
今日は、隣の席の者と使って下さい。 それでは、ホームルームを終わります」
起立 礼 着席
「これ、使い方わかる?」僕は樹島さんに声をかけた。
「えと、同じようなのアメリカにもあったけど、日本語はどうやって打つの?」
「ローマ字だから、ほら簡単だよ」
「それなら出来るよ!ありがとうシンイチ君」
「ま、席も隣だし、何かあったら声かけたらいいよ」
「うん ありがと(シンイチ君って優しい・・)」彼女はこれまで見せた事の無い笑顔を見せた。
授業中、ミライの差すような視線が気にはなったが、仕方の無い事だった。
授業も半日で終わり、僕達は自由の身となった。
「おうシンイチ!ケイタも行くってよ」
「あ、シンイチ!鈴原さんも行くそうよ、それと・・」
「それと?」
「鈴原さんが、樹島さんと風谷さんを誘わないかって言うのよ」
「樹島さんを連れて行って、風谷さんだけ連れていかない訳にもいかないかもね。
彼女に言って見て、彼女に決めて貰えばいいんじゃない?」
「そうね じゃ、そうして見るね」
「これから、図書委員会だから、先帰っててよ」
「・・うん・・それじゃ」
僕は、鞄を持って教室を出た。
階段を降りて一階に向かっている時・・
「あっ渚先輩っ」後ろから、誰かに呼び止められた。
「こないだは、CDありがとう!早速聞いてみたよ」
「本当ですか?よかったぁ(渚先輩喜んでくれたのね)」
「今から行く所かい?」
「ええ そうです」
「じゃ、行こうか」
「ハイ!」
僕達は図書室に歩いて行った。
1時間後
図書委員会も終わり、僕と山岸シズカちゃんは校庭を歩いていた。
「こないだ・・ありがとうございました・・」
「早く・・・忘れた方がいいよ・・シズカちゃん・・」
「先輩・・」
「私・・忘れられません(先輩に助けて貰った事・・忘れる事なんか・・)」
その時!
ヒュンッ
一筋の矢が、シンジの首筋をかすめて、校門の側の木に突き刺さった。
次の瞬間には、シズカを押し倒して、地面に這わせた。
「渚先輩っ」
「顔を上げるな・・その木の影に、這って逃げるんだ。」
「先輩は?」
「君が隠れるまではおとりになるから、早く!」
「ハイ!」シズカちゃんは両手両足を使って、這って行った。
「どこだ? どこからなんだ?」
次の瞬間!
屋上から第二射が放たれた。
{{兄さん!}}
{わかった}
僕の手の中に、エーテルナイフが現れた
授業の終わった1時間後で無ければ、パニックになっていただろう。
シンイチは自分の胴体目指して飛んで来た矢を叩き切った。
そして、屋上を見上げた。
逆光で顔は分からないが、すらっとした少し長身の姿が屋上に認められた。
再び、矢をつがえているようであった。
「させるか!」僕は手にしていた、エーテルナイフを投げつけた
エーテルナイフは、まるで自分の意志を持つがごとく、目標に向かって飛んで行った。
重力と慣性を無視した動きであった。
屋上の人影は、躱そうとはしたようだが、右肩に刺さったようだった。
右利きの人間が、右肩を刺し貫かれて弓の引ける筈も無く、次の瞬間には屋上から消えていた。
「ふぅ」
僕は、校庭の側の木の影で震えている、シズカちゃんに近づいて行った。
だが、脅えているようなので、木の反対側に腰を降ろして声をかけた。
「もう・・大丈夫だよ」
「渚・・先輩・・」
「見てしまったの?」
「ご・・ごめんなさい・・」
「そう・・だけど・・この秘密を人に漏らしたら・・僕は君の前から消えるだろう・・
君の近くにこんな人間・・がいるのが恐ろしかったら・・誰かに言えばいいさ・・」
無理も無い事だろう。地上から三階建ての建物の屋上にいる者にナイフを投げつけ、
更に軌道変更や追尾までして、ナイフが飛んで行ったのだから・・
「その時は・・ミライや、アヤさん・・父さんともお別れかな・・じゃ・・」僕は立ち上がって、落ちていた、鞄を掴んだ。
「待って!待って下さい」シズカちゃんが立ち上がった。
「・・・・」
「首から、血が・・」
「えっ?」僕は右手で矢がかすめた左側を撫でた。
手には真っ赤な血が付いていた。
「今、手当てしないと、傷が残ります!ここに来て下さい」
僕はシズカちゃんにひきずられて、木の影に座らされた。
「目・・閉じて下さいね」
「?・・うん」
「一二三四五六七八九十 ふるべゆらゆらとふるべ!」シズカちゃんの凛とした声が響いた。
数分間、シズカちゃんが何か呟きながら、首筋に触った。
「もう・・大丈夫ですわ・・」僕はポケットティッシュで首筋の血を拭った。
「大丈夫!血も止まったし、跡も残りませんわ!渚先輩の身体に傷を残す訳には・・ポッ(私ったら・・)」
「ありがとう・・シズカちゃん・・」
「私がこの間・・狙われたのは・・多分この力のせいなんだと思います・・」
「じゃ、あの化け物に襲われた人たちは多少なりとも、力のある人だったのか・・」
「そうみたいですね」
「ありがとう・・そうだ、明日皆で山に行くんだけど、一緒に行かないかい?」
「ホントですか?」シズカちゃんが目を輝かせた。
「うん 明日の朝7時半に、動き易い格好で学校の裏のガソリンスタンドで集合だから」
「ハイ」
「じゃ、帰ろうか・・」
僕達は家路についていた。
「けど、渚先輩を襲ったのは・・誰なんでしょう・・」
「分からないけど、傷が癒えるまでは襲って来ないだろう」
「渚先輩・・私・・先輩の事・・誰にも言いませんから・・」
「ありがとう・・」僕はシズカちゃんに向かって、少し微笑んだ。
僕はシズカちゃんと途中で別れて、家の近くまで来ていた。
{シンイチ・・もし秘密を漏らすような奴に見つかったら・・殺すんだ・・いいな}
{{兄さん・・そんな事・・出来ないよ・・}}
{おまえが苦しむだけだぞ・・}
{{それでも・・いいよ}}
{そのせいで、おやじや、アスカ・・アヤ・・ミライまで、迫害されてもか?}
{{・・・・}}
{腹を決めておけ・・約束の日は近い・・}
{{約束の日?}}
{・・そのうちわかるさ・・}
{{兄さん・・}}
第4話Cパート 終わり
第4話Dパート に続く!
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