裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 05A
第5話【人の形心のカタチ】Aパート
僕達はようやく半渇きになった服を身につけて、話していた。
「僕を殺したら、君はその運命から逃れられるのかい?」
「そうよ・・けど・・もう無理ね・・あなたにはかなわないし・・
あなたの事知らなければ、迷い無く殺す事が出来たのに・・・」
「僕を殺すのに、失敗して・・帰る所・・あるの?」
「失敗した者は、殺されるか、予定を早めてハスターに捧げられるかそのどちらかよ・・」
「じゃあ当分の間、偽の報告をして時間を稼ぐ事・・・出来るかな」
風谷さんはうなずいた。
「その間に、父さんに相談して君の身柄を匿って貰うように頼むよ」
「そうよね・・あなたのお父さんはNERVを受け継いでるんですから、
私を匿う事も可能かもしれないわね・・けど・・あなたを殺そうとした私を匿ってくれるかしら」
「NERVって何?」僕は初めて聞いた言葉に反応した。
「あなた・・知らないの?」
「うん・・」
「NERVは、日本に潜んでいる、旧支配者の眷族や、その一族を探し出して、
滅ぼす事を国から命じられた、秘密組織よ・・私達も、前のアジトを
潰された事あるもの・・・あの真っ赤な銀杏のマーク・・忘れられない」
「父さんが、そのNERVとやらを受け継いでる?」
「私達の情報では、前任の碇ゲンドウ氏の失踪直前に、引き継がれて、
碇シンジ氏が、NERVの後任の司令になってる筈よ」
「し、知らなかった・・」
「取りあえず、上にあがろうか・・遅くなったしね」
「そうね」
僕はウオータークーラーを手に持って、山道を登って行った。
20分程登った頃
「シンイチ君!」
「アヤさん、どうかしたんですか?」
「あんまり遅いから、心配しちゃって」
「あの・・私が川に落ちたのを、シンイチさんが助けてくれたんです」
「服を乾かしてたから、遅くなっちゃったんだ」
「それは災難だったわねぇ!みんな待ってるからいきましょ」
10分後
「おーシンイチ遅かったなぁ」ムサシが声をかけて来た。
「風谷さんが、川に落ちてたのを、シンイチ君が助けたんだって」
「まだ服が半乾きなんだ」僕は湿ったポロシャツをつまんだ。
「大丈夫!着替えは持って来てるから」アヤさんが微笑んだ。
「本当?アヤさん」
「昨日洗濯した、シンイチ君の服を持って来てるのよ!
風谷さんには、私の着替え用の服着て貰えばいいし」
僕と、風谷さんは、急遽着替える事となり、林の中で服を着替えた。
「シンイチ君!ご飯の準備出来たわよ!早くいらっしゃい」アヤさんの声が聞こえた。
数分後 僕達はみんなでお昼ご飯を食べていた。
「お茶あるわよ、シンイチ」
「ありがと」
「北の空が曇って来たから早目に下山した方がいいかもしれないね アスカ」
「そうねぇ 様子次第ね」
父さんとアスカさんも一緒に揃って外でこうして食事する事はまれなので、僕は嬉しかった。
「いやぁ、このサンドイッチ絶品だなぁ おいシンイチおまえいつもこんな美味いもん食べてるのか?」
ムサシが両手にサンドイッチを掴んで言った。
「この味は・・アヤさんかな?」僕もサンドイッチを一口食べて言った。
「正解よシンイチ君」アヤさんが微笑んだ。
「シンイチ君が羨ましいよ」ケイタも、サンドイッチを噛み締めながら言った。
「朝の5時から作ってただけに、気合入ってるわね アヤ」アスカさんも一口食べて言った。
「おいしいですぅアヤさん!私の家じゃ和食だけだから・・こういうの食べるの初めてです」
シズカちゃんも、かなりのペースでサンドイッチを食べていた。
「あっ このサンドイッチ!クルミがベースのペースト塗ってる これはシンイチの好物じゃない」
ミライがサンドイッチを一口食べて言った。
「シンイチにあげるわ それ」ミライは僕に食べかけのサンドイッチを手渡した。
「あ、あんたの持ってるの、イチゴジャム塗ったやつじゃないの!とりかえましょ」
「うん いいけど」僕達はサンドイッチを交換して、食べはじめた。
「あらミライとシンちゃん間接キスね」アスカさんが笑った。
僕は思わず咳き込みそうになってしまった。
だが、ミライは少し頬を染めたまま、あまり驚いてはいないようだった。
「シ、シンイチ君・・君達はやはりそういう仲だったんだね!?」ケイタが僕とミライを睨んでいた。
「ホンマやで!学校では兄弟みたいな付き合いに見せかけて家帰ったらべたべたしてたんだろ」ムサシまで勘違いして指差した。
「ちっ違うよ」僕は動揺を隠せなかった。
「渚先輩・・」シズカちゃんまで僕を変な目で見てた。
「シンイチさんって、大人しくて優しい人だと思ってたのになぁ」ミドリさんが僕を冷ややかな目で見た。
ミツコさんだけは、何か考え事をしているようだった。
「しかし、アスカも古いな・・間接キスだなんて・・死語だよ」
父さんが苦笑した。今日の父さんは若返っているかのようだった。
「まぁまぁ、そんなにシンイチ君やミライを苛めちゃ可哀相よ」アヤさんが助け船を出してくれた。
「まっ そんな訳無いとは想ったけどね」ムサシが苦笑した。
「・・・よかった」ケイタは何か小声で呟いた。
「もう・・みんなったら」ミライはお茶を飲んでいた。
「間接キスぐらいで、驚かないって事は、直接キスでもしたのぉ?ミライ」アスカさんがまたもやちゃちゃを入れた。
ぶっ
ミライは慌てて首を反らしたものの、お茶を吹き出してしまった。
「もっ ママったら何言ってるの!」
「顔が赤いじゃ無い・・図星でしょ」アスカさんは更に追い討ちをかけた。
(そっそういえば・・)僕はこの一昨日の部屋での事を思い出した。
「あーらシンちゃんまで赤くなっちゃって!これは嘘から出た真だったかな」アスカさんが笑った。
「ちょっとママぁ!それじゃ酔った時の葛城教頭先生みたいよ」
「ミサトと一緒にしないでよ」
「そうか・・ミライが一歩リードかな?」父さんが微笑んでいた。
「何言ってるのよ・・お姉ちゃんなんかシンイチと寝てたじゃ無い・・」
ミライが何気なしに言った言葉が騒ぎを大きくした。
「そっそれホントか?」ムサシが立ち上がった。
「シッシッシンイチ君!君は、ミライさんだけじゃ無くてアヤさんまで!」
ケイタも血相変えて詰め寄った。
「渚先輩を見損ないました・・そんな事する人には・・」
シズカちゃんまでそんな事を言い出したが、目元は笑っていた。
「アスカ・・私そんな人の隣で寝るのは恐い・・」ミドリさんまで冗談を言いはじめた。
アヤさんは耳まで真っ赤にして、硬直していた。
僕はミライを睨んだが、ミライはしらんぷりを決め込んでいた。
「アヤったら・・お赤飯炊かなきゃ・・」アスカさんも止めようとはしなかった。
僕は助け船を求めたが、肝心のアヤさんは真っ赤になって硬直してるし、アスカさんはふざけてるし、
父さんもにこにこしてるだけで何も言ってくれないし・・・
「皆が言うような事してないよ!僕はそんな事言われてもいいけど、アヤさんが可哀相だよ」
僕は意を決して叫んだ。
「アホぉおまえにそんな甲斐性無い事知ってるよ」
「渚先輩がそんな事出来る訳無いですもんね」
「なぁ〜んだぁ〜やっと、跡継ぎが出来たと想ったのに・・シンジったら娘しか産まないし」
「産んだのはアスカだろ」
「仕込んだのはシンジじゃ無い!シンジが悪いのよ」
突如始まった夫婦喧嘩?に、皆引いてしまった。
「あーもうお父さんもお母さんもやめてよ!みんな呆れてるじゃ無い」アヤさんがようやく止めに入った。
「私だって・・好きで女に産れたんじゃ無いわよっ なによなによっ!いつもシンイチの事ばっかり可愛がって!」
ミライが突如立ち上がって言った。
「娘は二人もいらないんでしょっ!アネキとシンイチがいればいいんじゃないの!」ミライはそう言って駆け出した。
「ミライ!」僕は慌てて後を追った。
僕はミライの後を追って山の中に入っていった。
「ミライ!」ようやく走るミライの背中が見えて僕は叫んだ。
その時
ゴロゴロゴロゴロドーーン
雷鳴が鳴り響き、雷がミライの横の杉の木の上の方に落雷し、
折れた杉の木の先端がミライの上に落ちていくのが、
スローモーションのように見えた。
「兄さん!」次の瞬間僕は喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
第5話Aパート 終わり
第5話Bパート に続く!
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