僕はミライの後を追って山の中に入っていった。
「ミライ!」ようやく走るミライの背中が見えて僕は叫んだ。
その時
ゴロゴロゴロゴロドーーン
雷鳴が鳴り響き、雷がミライの横の杉の木の上の方に落雷し、
折れた杉の木の先端がミライの上に落ちていくのが、
スローモーションのように見えた。
「兄さん!」次の瞬間僕は喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 05B
第5話【人の形心のカタチ】Bパート
ミライは音と光に驚き、立ち止まってしまい、
頭上に木が折れて、その尖った先端が自分に向かって落ちてくるのが見えて硬直した。
逃げなければ串刺しになるのに、足は動かなかった。
ミライは目を閉じる事も出来なかった。
だが、いつまで経っても、折れた木の尖った先端はミライの上に落ちて来なかった。
「ミライ!早く!」シンイチの声で我に帰ったミライは、慌ててその場を離れた。
そして、空中にとどまっていた、木の破片が重力に引かれた途端、シンイチは崩れ落ちた。
ミライは、パニックになりかかっていたが、シンイチが倒れたので、慌てて木の破片をまたいで走り寄った。
「シンイチ!シンイチ!」ミライはシンイチの身体を揺すったたので、シンイチはミライに気付き、ミライの手を握り、再び昏倒した。
「どうしたのよぉシンイチ!」
ミライはシンイチの身体をゆすり続けた。
数分後
「そんなに揺するなよ・・」シンイチが目を覚ました。
「良かった!シンイチ!」ミライは目に涙を溜めていた。
「俺はシンイチじゃ無い 間違えるな」
「えっ?」ミライは訳がわからず、呆然としていた。
「まったくシンイチの奴、無理させやがって・・念動力は苦手なのに・・」
「ん?そうか・・シンイチの奴、約束を守って俺の事話してなかったのか・・」
いつものシンイチで無い事に気付いたミライが問い掛けた。
「あなた・・誰?シンイチをどうしたの?」
「誰?連れないなぁ我が妹よ」
「妹? どういう事!?」
「知らなかったのか?」
「だってシンイチは、渚カヲルって人と綾波レイって人の子供でしょう?」
「俺は奴の身体を借りてるだけさ・・俺が産れた時、母親が俺を腹の中から放り出して、
オヤジを助けたんだってさ・・それで俺はカヲルの元にいたんだけど、母親無しに産れる事は出来ないからな
で、カヲルが、綾波レイってあの女を連れて来てくれたんで、子宮の中に入ろうとしたんだが、
もう、子宮の中には、シンイチがいやがったんだ・・仕方無いから俺は身体を捨ててシンイチの身体の中に住む事になったんだよ」
「な、何言ってるの?」
「俺のオヤジは、碇シンジだ・・だからおまえは俺の腹違いの妹なんだよ」
「しっかし参ったぜ・・一つの身体に入ったもんだから、腹の中でうまく成長しなくてよ、
産れるのに14年もかかったんだぜ・・身体のパーツを作る命令がばらばらでよ・・
目ばかりが身体に10個も出来たり・・ひどいもんさ・・カヲルがいなけりゃ、
まともに産れる事出来なかったろうよ・・あのレイって女にも感謝してるよ 14年も妊婦してくれたしね
だから、レイの息子のシンイチを助けてやってるのさ・・ま義理みたいなもんだね」
「あなたが私の兄?」
「そうだよ・・ミライ・・おまえの事はシンイチの目から見たさ・・」
「シンイチの身体から出て行く事・・出来ないの?」
「シンイチの奴には便宜上双子の兄だと騙してるが、奴は信じてしまったんだ・・
だから魂の結びつきが強くてね・・無理矢理引き剥がしたら、シンイチは廃人になっちまう
俺とシンイチは二人で一人なのさ・・まぁ、約束の日がくれば、シンイチの身体から出るけどな」
「良く分からないけど・・今、助けてくれたのは・・兄さんなのね?」
「ああ・・だけどシンイチが強く願わないと力を発揮出来ないんだ・・
だから、シンイチの奴が願わなければおまえ・・死んでたぜ」
「シンイチ・・」
「まぁ、見ての通り俺達はまともな人間じゃねぇ・・だけどよ・・
特にシンイチは、おまえたち家族の事を大事に思ってるんだ・・
ま、おまえも、アヤもオヤジの子だから、純粋な人間じゃねぇけどよ・」
「に、人間じゃ無い?」
「・・・言い方が悪かったな・・人間とは、DNAって奴の構造が少し違うだけだとよ」
「ま、おまえにもいつか解る日が来るさ・・おっとシンイチの奴が目覚めそうだ・・
俺と会った事はシンイチには黙ってやれよ・・
それに、さっきの事もごまかすんだぞ・・気を失っててわからなかったとかな・・
あいつ気が小さいから、おまえたちに知られたら家を出るかも知れんぞ・・
じゃぁな 我が妹よ」
「兄さん!その・・助けてくれてありがとう」
「いいって事よ」そして、瞳が閉じられた。
少しして、シンイチが目を覚ました。
「シンイチ!心配したんだから・・」
「ミライ・・・」
「ミライは大丈夫だった?」
「うん・・」ミライの顔は少し冴えなかった。
「そうか・・見たんだったね・・・」僕は身体を起こした。
「バカ・・どうしてごまかさないのよ・・そうすれば・・知らないふりが出来たのに・・」
「そういえばそうだね・・けどもう僕・・ごまかすの嫌なんだ・・
ごまかし続ける事も出来るさ・・けどそんな偽りの生活を続けるのは・・イヤなんだ
嫌われてもいい・・家を追い出されてもいい・・僕の本当の姿を隠すのはもう嫌なんだ・・
隠すから今みたいに、辛い想いするんだ・・ミライには見られたくなかったよ・・」
「シンイチ・・私はあなたの本当の姿見たわ・・けどあなたの事嫌ったりしない・・
だって、シンイチの事・・好きなんだもん・・それは変わらないわ・・」
「ミライ・・ありがとう・・」
「シンイチ・・」
僕はミライの胸に抱かれて、一筋の涙を流した。
ここまで、自分の事を知られて受け入れて貰ったのは初めてだったからだ。
「さっきはごめんね・・あんな事言って」
「父さん達も本気で言った訳じゃ無いだろうし・・帰ろう」
「うん」
僕達は手を繋いで、皆のいる所に歩いて行った。
だが・・・
「おかしいなぁ・・私そんなに走ったかなぁ」
「僕は追いかけるので必死だったから・・」
{シンイチ・・よかったな・・受け入れてくれて}
{{兄さん・・ミライを助けてくれてありがとう}}
{{兄さん・・道・・わかるかな}}
{まったく世話の焼ける弟だぜ}
第5話Bパート 終わり
第5話Cパート に続く!
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