そして、エレカが止まった時、前方の大型トレーラーのシャッターが空き、
銃を持った5人の男がエレカに向かって銃撃を開始した。
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 06A
第6話【命の価値は・・】Aパート
バババババババ キュイーンキュイーン
だが、防弾ガラスなのか、一発の弾もガラスを貫通する事は出来なかった。
だが、乗っている者達が恐慌を起すには、充分であった。
「きゃあ」
「なんだ?」
「銃を持ってるぅ」
「くそっ」エレカを動かそうとしたが、メインエンジンはかかるものの、
反重力エンジンは動かなかった。
「ちっ交通センターにクラックしたのか・・」父さんは何かボタンを押した。
すると、車体が持ち上がっていった。
「何かに掴まるんだ!」次の瞬間、エレカは発進し、トレーラーから逃れる為、ターンをした。
普段なら、揺れないのだが、今はタイヤを使って走っているだけに、揺れは激しかった。
元来た道は封鎖されていたので、脇道に入ったのだが・・
「あなた、あれは!」その道の向こうから、巨大なトレーラーが僕達の乗るエレカに向かって突進して来ていた。
「後ろからも来てます!」樹島さんが悲鳴を上げた。
「挟み潰すつもりか・・」
{{兄さん・・なんとかならないかな・・
{バカを言え、あの木を浮かばせるのが精いっぱいだったんだぞ・・
今、あのトレーラーを止めるだけの力を使ったら、おまえ・・死ぬぞ」
そう・・あくまでも力は僕の身体を通して発揮されるので、
負荷のかかりすぎる技は、僕の死を意味していた。
{{それでもいい・・皆を守りたいんだ・・}}
{シンイチ・・・}
その時、僕は背後から頭を殴られてしまい、昏倒してしまった。
{何故・・}僕は訳もわからず意識が飛びそうになっていた。
{{{これは私が招いた災いよ・・自分で決着を付けるわ・・あなたが命をかけてまで、する事は無いわ}}}
{{風谷さん?}}
{おまえも、この力を持っていたのか・・}
「車を止めて下さい!」
そこで僕は意識が途切れてしまった。
そして、僕が次に目が覚めた時は、見知らぬ天井が目に入った。
「ここ・・どこだろ・・」
「シンイチ・・」すぐ横にミライとアヤが座って僕を覗き込んでいた。
「みんな・・無事だったの?」
「ええ・・風谷さんが、車を飛び出していったら、トレーラーに乗ってた人が
風谷さんを連れていったの・・」
「そうだったのか・・」
「けど、どうしてシンイチを殴ったりしたのかしら・・」ミライが呟いた。
{それはな・・シンイチがあのトレーラーを止めるだけの力を出したらシンイチが死ぬ
って事をシンイチと話していた時、割り込んで来たんだ・・あいつも人間じゃぁ無い・・」
(えっこの声、誰?)
{俺だよ・・おまえの頭に語り掛けてるんだ・・・俺に返事がしたかったら頭で考えるんだ)
(びっくりしちゃった・・・・けど・・そうしなかったらシンイチ死んでたんだね)
{そういう事だ・・俺にはあいつの決心を止める事は出来なかった・・}
「風谷さん・・・」
「シンイチ・・目が覚めたのか・・」父さんとアスカさんと、シズカちゃんが入って来た。
「他の皆は?」僕は不審に想って言った。
「今、記憶操作中だ・・・」父さんが顔に苦渋を浮かべて言った。
「私・・碇先生に、渚先輩の事知ってるって言って、記憶操作されずに済んだの」シズカちゃんが言った。
「アヤ・・ミライ・・おまえたちも望むなら、今回の事を忘れさせる事が出来るんだが・・」
父さんがいつもは見せない表情で言った。
「お父さん・・そんな事しないで・・私だって、薄々は知ってるんだから・・」アヤさんが叫んだ。
「そうよ!私も・・シンイチの力で今日危ない所を助けて貰ったから、知ってるの・・」ミライは父さんに詰め寄った。
「ここ・・ここがNERVなの?父さん・・」
「知っていたのか・・」
「今日・・風谷さんに聞いたんだ・・風谷さんに命を狙われて、撃退した後に・・話してくれたんだ・・」
「そうか・・奴等が何故風谷君を攫っていったのか、わかったよ・・」
「日本国内の旧支配者の眷族や、その一族を滅ぼすのが仕事なんでしょう?」
「ああ・・そうだ」
「だったら、風谷さんの行方・・分からないの?父さん・・」
「どの旧支配者の眷族かわかったら、調べられない事も無いが・・」
「ハスターに捧げられるとか言ってたよ・・父さん」
「そうか・・風の邪神ハストゥールの眷族か・・なるほどな」
「すぐは無理だが、調べさせておこう・・」
「邪神って・・何?旧支配者って何なの?お父さん」アヤさんが恐慌をおこしかけていた。
「それは、おいおい説明する・・今日の所はこれまでにしておこう・・」
「碇所長」その時、長髪の初老の男性が入って来た。
「何かね」
「全員の記憶操作、終わりました。現在、眠らせています。エレカの準備も出来ました。」
「わかった・・」
「シンイチ・・起きられるか?」父さんは僕に優しく手を差し伸べてくれた。
「うん・・」僕は身体を起した。
「それでは今から説明する通りに、口裏を合わせてもらう・・」父さんは僕達に話しはじめた。
「おーい、通行規制終わったから、車を出すぞ」父さんは車の運転席から、後ろの席で眠っている、
ムサシ、ケイタ、鈴原さん、樹島さんに声をかけた。
僕も今起きたかのように演技した。
「通れるようになったから、もう着くからな 遅くなってしまったが、家には連絡してるから」父さんは全員に説明した。
「あれ?風谷さんは?」樹島さんが不審そうな顔をした。
「風谷さんは、親御さんがエレカで迎えに来たから一足先に帰ったんだ」
父さんが樹島さんに説明をしていた。
30分後 エレカは第三新東京市に到着した。
その後、夜も遅いので、それぞれの家までエレカで送っていき、
エレカの中には、父さん・アスカさん・アヤさん・ミライ・樹島さん・そして僕が乗っていた。
口数はかなり少なく、沈黙のまま車は碇家に到着した。
荷物を車から降ろし終わった頃、エレカのレンタル業者の回収班がエレカを引き取っていった。
僕は自室に戻り、寝間着に着替えた。
「風谷さん・・償いなんて、要求する気無かったのに・・」
僕は天井を見ながら、今日の昼間の出来事を思い出していた。
「僕がいなければ・・風谷さんがあんな事にならなかったんじゃ無いのかな・・
僕が、この世の中で生きていくって事は、いつも誰かを傷つけて行くって事なのかな・・
人を傷つける度、自分も傷ついて・・いつかは自分も擦り切れるんじゃ無いのかな・・」
僕は天井を見ながら思考の迷路に陥っていた。
「シンイチ・・入ってもいい?」控えめなミライの声が聞こえた。
「うん・・」
扉を開けてミライが入って来た。
「何?」僕は素っ気無く答えた。
「風谷さんの事・・気にしないでとは、私は言えない・・でも・・風谷さんが自分から出ていったのは、
シンイチに死んで欲しくなかったからだと思うの・・お兄さんに少し聞いたからわかったんだけど・・」
「何故だよ・・僕にはそんな価値なんて無いのに・・残された者がどんなに思うか・わかるの?ミライ」
「わかるわよ・・シンイチが力を使いすぎて死んでしまったら、私やアネキはどうすればいいのよ・・
シンイチの命を燃やしてまで、私達は助けられる価値なんて無いのよ・・
それでも、風谷さんが自分の価値を投げ出してまで私達を助けてくれたのは・・シンイチの事好きになったからだと思う・・」
「ミライ・・」
「シンイチ・・あなたは価値の無い人間じゃない・・価値の無い人間なんて、
この世に一人もいないもの・・その自分の価値をなげうってでも相手を助けたいと
私達の事を想ってくれたのは嬉しかった・・でも・・もう無理しないで・・・」
ミライの言葉の一言一言が僕の心の穴を少しづつ塞いで行くのが感じられた。
「じゃ・・おやすみ・・シンイチ・・」
ミライはそっと立ち上がった。
僕は無意識の内に、ミライの右手を掴んでいた。
「シンイチ?」
「ミライ・・君にいて欲しいんだ・・」
「シンイチ・・」
第6話Aパート 終わり
第6話Bパート に続く!
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