「じゃ・・おやすみ・・シンイチ・・」

ミライはそっと立ち上がった。

僕は無意識の内に、ミライの右手を掴んでいた。

「シンイチ?」

「ミライ・・君にいて欲しいんだ・・」



裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 06B
BGM:こんな夜は
第6話【命の価値は・・】Bパート



「シンイチ・・」

「うん・・いいよ・・(シンイチが望むなら・・)」ミライは少し頬を染めて言った。

「いや・・そういう意味じゃ無いんだけど・・」僕は少しうろたえてしまった。

「もう・・シンイチ・・ずるいわよ・・私には、シンイチの気持ちは分からないのに・・」
その時、ミライは、シンイチの兄との会話を思い出していた。

(私でもやってやれない事無いんじゃ無いかな・・)

ミライの少し微笑んでいる顔が、僕の顔に近づいて来た。

「んっ」

僕は予測出来ていたが、ミライの唇を受け入れた。

(ミライ・・君が好きだ・・僕の全てを知っても・・僕の事を・・)
僕はミライの柔らかい唇の感触を味わいながら想った。

(シンイチ・・・それ本当?)
ミライの思念が流れ込んで来た。

(何故・・)

(こうしてたら・・シンイチの想いが伝わって来たの・・)

(ミライ・・)僕はミライの背中に手を回した。

(こうしてたら・・シンイチの想いが・・よくわかる気がするの・・)

(・・・・)

数分後

(ずっとこうしていたいけど・・足がしびれちゃった・・)

(僕も・・)僕はミライを抱きしめたまま、ベッドにまねき寄せた。

さほど広いとは言えないベッドで僕達は唇を合わせたまま、お互いを抱きしめていた。

(今・・見られたら、弁解の余地も無いね・・)

(・・・そうね・・私に出来たって事は、アネキでも出来るのかな・・)

(兄さんと、話をしたから、その何と言うか、チャンネルを
合わせる事が出来るようになったのかも知れないね)


(シンイチ・・)ミライはより強く、僕を抱きしめた。

僕は胸に膨らみを感じて、頬を紅くした。

(昼間の事・・思い出しちゃった?)

(ミライのいじわる・・)

(こうしてたら、シンイチの想いだけじゃ無く、シンイチの感覚まで共有しているように思うの・・)

(ミライもそう思う?)

(・・・・・・)ミライは意識の深い所で何かを考えていた。

(ミライ・・何考えてるんだよ・・)

(え・・わかったの?考えてる事・・)

(うん・・)

(だめ?)ミライの少し潤んだ目に僕の紅い瞳が写っていた。

(歯止めが効かなくなるかもしれないから・・)

(ファーストキス・・シンイチにあげたんだから・・大人のキスも・・シンイチとしたい・・)
ミライの想いが吹き出して来た。

(ミライ・・)

僕も愛しさが込み上げて来て、制動が効かなくなって来た頃

コンコン

部屋の扉がノックされた・・

(誰か来たみたいだから・・)僕は身体を離した。

(どうしてこんな時に・・)ミライの強い想いが感じられたが、僕はある意味ほっとしていた。

僕達は着衣の乱れを直した。

「はい」僕は扉に向かって声をかけた。

「端末の設定が良く分からないの・・」ミドリさんの声がした。

「どうぞ」

ガチャリ

端末を手にしたミドリさんが入って来た。

「じゃ、何か飲物取ってくるね」ミライは部屋を出ていった。

「練習問題してたんだけど・・ローマ字に戻らなくなったの」

「それなら・・えーと・・これかな」僕はキーを押した。

カタカタ

「これで直ったよ」

「ありがとう・・」

「何か、分からない事があれば、遠慮せずにね・・」

「シンイチさん・・」樹島さんは僕の顔を見据えて言った。

「何?」

「口紅付いてるわよ」

「えっ?」僕は慌てて手で拭った・・だが手には何もついていなかった。

「冗談なのに」ミドリさんは、してやったりと言う顔をした。

だが、その微笑みは慈愛に満ちていた。


「それじゃ」ミドリさんは部屋を出た。

「わかり合える人がいると言う事は・・幸せに繋がると思うの・・」

ミドリさんが部屋を出る直前に、足を止めて、小さく呟いたその言葉が、僕の胸に染みていった。


入れ違いに、ミライが入って来た時、僕は少しぼーっとしていた。

「どうかした?」

「いや、何でも無いよ」

プシっ 僕はミライが持って来てくれたジンジャーエールの栓を開けた。

「あれ?ミライは飲まないの?」

「飲ませて・・」

「コップは?」


「そんなのいらないもん」ミライはほんのりと頬を染めて言った。


「えっ?」僕は訳がわからず首を傾げた。



く・ち・う・つ・し!ミライが微笑んだ。



第6話Bパート 終わり

第6話Cパート に続く!


[もどる]

「TOP」