プシっ 僕はミライが持って来てくれたジンジャーエールの栓を開けた。
「あれ?ミライは飲まないの?」
「飲ませて・・」
「コップは?」
「そんなのいらないもん」ミライはほんのりと頬を染めて言った。
「えっ?」僕は訳がわからず首を傾げた。
「
く・ち・う・つ・し!
」
ミライが微笑んだ。
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 06C
BGM:Regend −そして伝説へ−
第6話【命の価値は・・】Cパート
「そっそんな・・」
「
嘘
・・冗談よ」
そう言ってミライは背後に隠し持っていたらしいコップを差し出した。
「もう・・驚かせ無いでよ」僕はミライのコップにジンジャーエールを注いだ。
僕はジンジャーエールを味わいながら飲んでいた。
「シンイチって本当に可愛いね・・三年の先輩達がシンイチに目を付けるのもわかるわ」
「あんまり・・男が可愛いと言われても・・」僕はジンジャーエールを飲み干してから、言った
「シンイチは可愛くて、優しくて・・強い心を持ってる・・私・・小さい時からシンイチの事好きだったんだよ」
「そのわりに、よく苛められてたような気がするんだけどね」
「子供だったのよ・・今でも同じね・・振り向いて欲しいからつい強い口調で話してしまったり・・」
「ミライ・・君と分かり合える事が出来て・・嬉しかったよ・・」
「シンイチ・・忘れないでね・・いつもシンイチの事を私達が見守っている事を・・」
「うん・・」
「もう11時か・・おやすみなさい・・シンイチ」
「うん・・おやすみ・・ミライ」
僕はベッドに横になって、部屋を出て行くミライの背中を見ていた。
いつしか僕は眠りの世界にいざなわれていた。
そして、翌朝
僕は7時前に目を覚ました。
「ん・・」僕はゆっくりと、瞼を開いた。
とらるでぁいるふぁんだいぃりむ むふぁざなんでりゅ ふたぐん
どこからか、呪文の詠唱のような声が頭の中に響いて来た。
{{
兄さん?
}}
{
恐らく、風谷ミツコを依り代にした召喚呪文だ
}
{{
何を召喚しているんだろう
}}
{
恐らくは、風の邪神ハストゥール
}
{{
召喚されたら・・
}}
{
フォースインパクトと言った所かな・・少なくとも日本は壊滅する
}
{{
何故・・そんなものを召喚しようとするんだ・・
}}
{
恐らく、既存の勢力や、眷族を受け入れないであろう、一般人類を一掃して・・
}
{{
そんな事・・許せない・・
}}
とらるでぁいるふぁんだいぃりむ むふぁざなんでりゅ ふたぐん
{
恐らく、呪文の詠唱が終わり、召喚されるのに、12時間はかかる筈だ
}
{{
じゃ、それまでに、風谷さんを助けだせれば・・
}}
{
ああ・・風の邪神ハストゥールは、召喚されない
}
{{
場所・・わかる?
}}
{
この念波は、恐らく無意識の内に、おまえに助けを求めて発していると見て間違いなさそうだ・・
だから、この念波を辿っていけば、恐らく
}
{{
わかった・・兄さん・・行こう
}}
{
オヤジに説明して、助力を請え・・
}
{{
わかった
}}
僕は寝間着を脱ぎ、いつもの、ワイシャツと黒ズボンを身につけた。
僕は階段を走り降りた。
「父さん!」
僕は父さんの姿を認めて声をかけた。
「どうした!?」父さんは新聞を畳んで僕の方を見た。
「実は・・」僕は父さんに事情を説明した。
「わかった・・少し待て」父さんは携帯フォンで、NERVに何か指示をしていた。
「シンイチ・・腕時計をしてるな・・」
「うん・・」
「これを持っていけ」父さんは鞄から、一丁の拳銃を取り出した。
「エネルギーパックの予備はズボンのポケットに入れておけ・・それと」
僕は父さんにショルダーホルスターをつけて貰った。
「これを羽織って行け!パックルには防弾処理もしてある」父さんがハンガーにかけていた、厚手のジャケットを渡してくれた。
「おまえの後を追っていくからな・・くれぐれも無理はするな・・」
「父さん・・」
僕は、父さんの目に視線を合わせた・・そして、玄関に向かって走っていった。
とらるでぁいるふぁんだいぃりむ むふぁざなんでりゅ ふたぐん
{{
兄さん・・
}}
{
わかった
}
次の瞬間、身体が軽くなったように感じた。
{
大体の場所は掴めた・・長野にある、通称”風の谷”だ・・
}
僕は兄さんの指示通りに、走っていった。
あまりの速さに、風景が歪んで見えた。
{
そんなに飛ばしたら、明日・・筋肉痛で苦しむぞ
}
{{
日本が壊滅するよりはいいよ
}}僕は少し笑みを浮かべた。
((
シンイチ・・この戦いが終われば・・おまえに話さないといけない事が・・
))
とらるでぁいるふぁんだいぃりむ むふぁざなんでりゅ ふたぐん
僕が走っている姿を視認出来る人はいないだろう・・
父さんから貰ったジャケットが無ければ、風圧で身体に傷が出来ていたかも知れなかった。
「
ミライ
・・君がいてくれる限り・・僕は自分を見失ったりはしないよ・・
アヤさん
・・あなたの注いでくれる慈愛の心はいつも僕を暖めてくれる・・
父さん
・・・いつも、見守ってくれている、その優しい目を僕は守りたい・・
アスカさん
・・あなたが僕を育ててくれなかったら・・帰って来たら・・
母さん
と呼ぶよ・・」
僕は、皆の笑顔を胸に浮かべて、希望の地ならぬ、死地となるかも知れぬ、
風の谷に向かって走っていった。
第1部 完
第6話Cパート 終わり
第6話Dパート
に続く!
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