裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 06D
第6話【命の価値は・・】Dパート
とらるでぁいるふぁんだいぃりむ むふぁざなんでりゅ ふたぐん
いあいあ はすとぅーる
数十人が呪文を詠唱している、ホールの中央に、
風谷ミツコが、うつろな目をして座っていた。
風谷ミツコの四方に香が焚かれていた。
「彼女を離せ!」僕は銃を構えて叫んだ。
だが、風谷さんを囲んでいる、二十人の詠唱は止まなかった。
詠唱に加わっていない男が三人、僕に向かって来た。
「止まれ!これは脅しじゃ無いぞ!」僕は銃を三人の男に向けた。
その時、僕の頭の中に、誰かが語り掛けて来た。
{{{は、早く・・私を殺して・・そうすれば、召喚は中断されるわ!}}}
{{何言ってるんだ、風谷さん! そんな事出来る訳無いじゃないか!}}
{シンイチ・・彼女の言う通りだ・・撃つんだ!}
{{そんな、そんな事・・}}
{早くしろ・・そいつらは、俺が押えるから・・}
次の瞬間、目の前の三人の動きが凍り付いた。
{{{私は嫌・・母さんみたいに・・ハストゥールの精を注ぎ込まれて、自分を見失うのは嫌なの}}}
{そうか・・おまえはハストゥールの精を受けて産れたのか・・その子を媒体に直接、ハストゥールを降ろすつもりか}
{{でも・・そんな事・・出来ないよ・・兄さん}}
僕は銃を持つ手が震えているのがわかった。
{おまえが無理なら・・おまえの身体を操って、俺がやってもいいんだぞ・・}
{{他に方法は無いの?}}
{詠唱してる奴達全員を殺す事が出来るなら、今なら召喚は中断出来るだろう}
{{{やめて・・私の・・義父さんもいるの・・妹も・・詠唱に加わってるわ・・}}}
ミツコの悲痛な心の叫びが僕を襲った。
{{だけど駄目だよ・・彼等を放っておくと言う事は、第二第三の、風谷さんと同じ運命の人が現れるって事じゃないか!}}
「3分後に総攻撃をかける・・おまえは、下がれ」
その時、腕時計から父さんの声がした
残り 2:59
{{兄さん!}}
{わかった}
僕は、来る時に使ったのと同じ、身体の反応速度と、筋力をあげる力が僕の身体にみなぎった。
僕は、三人の男をかきわけて、詠唱をしている人々の中に突っ込んでいって、風谷さんに向かって走っていった。
残り 2:47
だが、風谷さんの横に控えていた、美しい金髪の20代前半の外人らしき男性が、奇妙な杖を振りかざし、僕を打ち据えようとした。
「くっ」僕は間一髪で直撃は避けたものの、ジャケットの肩の所が、裂けて鮮血が飛び散った。
声も出さずに、次の攻撃を繰り出してくる金髪の外人の前に、僕は高められた反応速度のおかげで、
避けるのが精いっぱいであった。
残り2:10
{その杖の直撃だけは食らうなよ・・少し待て}
数秒後、金髪の外人の動きが、緩慢になったので、僕は持っていた銃の握りを首に叩き込んだ。
残り 2:02
「風谷さん!」僕は力無く、座っている風谷さんを抱きかかえた。
残り 1:47
そして、風谷さんを抱きかかえたまま、走りだした。
だが、詠唱を中断された為、詠唱していた、ハストゥールに仕える者達が、僕達をはばんだ。
「くそっ」
僕は、なんとか、活路を開こうとしていた
残り 1:20
{{シンイチ・・これ以上だとおまえが・・}}
{兄さん・・・}
僕達は絶望に駆られはじめたその時、
風谷さんが、目をかっと見開いた。
そして、何を言っているか良く分からない発音で、何かを叫んだ。
「名状しがたきものよ!星間を渡るものよ!我、汝の名の元に命令する イアイア ハストゥール」
次の瞬間、風が背後から吹き、僕等をはばむ者が弾けとんだ。
普段の彼女なら、魔風を呼ぶ事など不可能であったであろうが、今日は星振が、半分ほど合致していたのであろう。
{今だ!}
僕は風谷さんを抱いたまま、出口に向かった。
残り0:58
僕は、ようやく建物の外に飛び出した。
{シンイチ!もっと離れろ!}
{{わかったよ 兄さん}}
僕はスピードを早めて、建物から離れていった
残り0:12
{いかん!身を伏せろ!}
僕は、風谷さんを地面に降ろして、上にかぶさった。
残り0:03
残り0:02
残り0:01
残り0:00
その瞬間、大地は揺れた。
僕は耳鳴りを感じて顔を上げた。
闇夜を切り裂いて、一条の光が建物に突き刺さるのが見えた。
僕は顔を伏せて、風谷さんをガードした。
次の瞬間、爆発音が聞こえた。
ドォーーン
僕の所にも破片が飛んで来たが、大半は兄さんが防いでくれていた。
バラバラバラバラ
僕はヘリの音に気付いて顔を上げた。
目の前に、紅い、銀杏とNERVのロゴが組み合わされたマークのついたヘリコプターが僕達の近くに降りて来るのが見えた。
建物の方を見ると、建物の方にも、同型のヘリコプターが三機降りていくのが見えた。
又、ヘリからロープを伝って、銃を持った特殊部隊らしい男達が降りて、今や残骸となった建物に向かっていった。
「シンイチ!大丈夫か」
僕は、背後から父さんの声を聞いて、振り向いた。
「父さん・・風谷さんは助け出したよ」僕は震える声で言った。
「シンイチ・・そこをどけ・・」父さんは僕の後ろに風谷さんが倒れているのを見て、胸から銃を取り出した。
「と、父さん・・銃なんか出してどうするの?」
「・・・その子を生かしておく事は、人類を危険に晒すのと同じなんだ・・」
「おまえさえ、生き残れば良かったんだ・・偽善者と思うかも知れんが・・偽らざる気持ちだ・・」
「それなら・・シンイチ・・おまえを傷つけなくて済む・・・」
父さんのかまえた拳銃は、風谷さんに向いたままだった。
第6話Dパート 終わり
次回予告!
シンイチは、風谷ミツコを失い、苦悩する。
そして、シンイチを取り巻く者達の思いは?
日本の危機を救った事すら、シンイチにとっては、
何の意味も持たぬ事であった・・
次回、第7話【夕暮れに一人】
シンイチの張るサ○ンシップは・・臭い(笑)
第7話Aパート に続く!
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