アヤさん親衛隊開設記念
裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 10.5A

第10.5話【碇アヤの一日】Aパート

AM6:00 

私の朝は目覚まし時計代わりに使っている、枕の振動から始まる。
枕の下にタイマー付きの振動版が付いているのだ。

朝早いから、目覚ましの音で、みんなを起こしたくが無いので、考え付いた方法だ。

「んっ もう朝なの?昨夜は遅くまで試験勉強やってたし……眠いなぁ」

だけど、私が碇家の食事の世話を任されている以上、朝寝坊は出来ないので、
私は躊躇しながらも身体を起こした。

寝間着を脱いで、手早く服に着替える。

いつも家事をしてそのまま学校に行くので、セーラー服の上に小さいフリルの付いたエプロンを身に付けて、
皆を起こさないように、そっと階段を降りていった。

AM6:15
お米を洗いながら、ボリュームが絞られているもののTVから流れる早朝番組を見ていた。

「なるほど、昔の人はそうやってお漬物を作っていたのね メモメモ」私は台所に常備しているお料理メモに書き加えた。

TVでは、今では家庭で作るのも珍しくなった、糠漬けや一夜漬の作り方を流していた。

「そういえば、いつも買うパックのお漬物って、美味しくないし、黄色い色が付いてて嫌なのよねぇ」

殆ど専業主婦状態である  花の女子高生が呟く台詞では無い。

「沢庵作ってみようかな・・一度大量に作れば日も持つし……けど……糠味噌臭い手じゃシンイチ君に嫌われるかしら……」

私はお米を洗い終え、水を切って、炊飯器の中に入れた。

「夕方にでも鈴原の奥様に聞いてみようかしら」私はペットボトルに入った水を炊飯器の中に入れながら考えていた。

AM6:30

炊飯器のスイッチを入れ、朝御飯のおかず作りを始めようとして、私はふと思い立った。

「あ、そうだ!シンイチ君が教えてくれた、あれを作ってみようかなぁ」

「玉子はあるし、ニラも買い置きがあるわね」私は冷蔵庫を覗き込みながら呟いた。

「えーと玉子は何個使おうかな・・お父さんでしょ お母さんでしょ、シンイチ君に、ミライに、ミドリさんにローラで6人分かぁ
 けど、試験前で半日で戻って来るのよねぇ……多めに作っておこうかな」

私は玉子をボウルに入れて、流しまで歩いていった。

「教えてもらったの、そのまま作るのも何だし、アレンジしようかな」

「フライパンはこれにしようかな」焦げ付きにくいテフロン仕上げのフライパンを手に取った。

「碇アヤのお料理教室!なんてね」私は手早く料理を始めた。

まず、玉子を割って小さい入れ物の中で確認しながら、ボウルに放り込んでいき、
軽く攪拌して、ボウルを冷蔵庫に一度入れておく。

次に、ニラを包丁で刻んで小皿にのせておき、秘伝のタレの用意をする。

秘伝とは言っても、私が長年の経験から編み出した、ある人を喜ばせる為の味付けなの……
だって、シンイチ君は辛口が好きなのに、ピリピリするのは嫌だって言うんだもん……あっ言っちゃった。


「フライパンはこれにしようかな」焦げ付きにくいテフロン仕上げのフライパンを手に取った。

「さて、タレも出来たしっと」私は冷蔵庫から玉子の入ったボウルを取り出して、ニラを中に入れて、菜箸で混ぜ込んでいった。

「んーニラだけだと匂いが強いかな……葱もちょっと入れようかな」私は手早くネギを刻んでボウルの中に入れた。

「そして、本日のビックリドッキリな隠し味はっと これね」冷蔵庫から直送ものの山芋を取り出して軽く洗って、
目の細かいおろし金ですり始めた。当然かゆくなるので、ビニールの使い捨ての手袋を洗ったものを手に付けてるのよ 経済的でしょ
あ、消毒は勿論してるから大丈夫なの……私一人で何言ってるのかしら・・

「さってっと、これもボウルの中に入れてっと」山芋を慎重に少しずつ混ぜ込んでいった

「次は小麦粉ね えーとこっちね」私は小麦粉の袋を取り出し、計量カップで計りながらボウルに入れていった。

「あくまでも、本体は甘く、タレを辛目にするのがみそなのよね」私は時計を見た

AM7:00

「そろそろ焼こうかな」私はフライパンに熱を加え始めた。

「アネキ、おはよう」ミライがキッチンに顔を出した。

「おはよう、ミライ そろそろシンイチ君起こして来てね」

「うん、いいけど」

「本当は起こしに行くの楽しみなんでしょ?」私はいたづら心を出して、背中を向けてフライパンの柄を握りながら囁いた。

「な、何言ってるのよ、アネキ!そんな訳……」

「ほら、早くしないとせっかくの朝御飯食べられなくなっちゃうわよ!今日は自信作になりそうなのよ」

「もう……アネキったら」


私はフライパンに薄く油を引いて、ボウルの中身をおたまですくってフライパンに載せた。

よく熱しているので、すぐ火が通り、ひっくりかえして、片面に火を通していると、お母さんが顔を出した。

「おはよう、アヤ」

「お母さん、おはよう」

「何か手伝う事無い?」

「じゃ、平皿を6枚出して、そこに並べて貰おうかな」

「平皿ね」

「おはよう、アヤ」父さんが髭の剃り跡にクリームを塗りながらキッチンに入って来た。

「あ、お父さん、おはよう 口元どうかしたの?」

「ん?かみそりで切っちゃったんだよ」

「それ、お薬?」

「いや、普通のクリームだが」

「だめよ、お父さん!ちゃんと薬用のクリーム塗らなきゃ」

「わかったよ……で、どこにおいてあったっけ」お父さんは苦笑した。

「あ、お母さん、これもう少ししたらひっくり返してね」私はキッチンを出て、居間に向かった。

「これがいいかな……」私は薬用クリームを持ってキッチンに戻った。

「あ、アヤさんおはようございます」「おはようアヤお姉ちゃん」ミドリさんとローラがキッチンに立っていた。

「あ、おはよう ミドリさんにローラちゃん」

「手伝える事無いですか?」ミドリさんが問い掛けて来た。

「じゃ、もうすぐ全部焼けるから、そこの小さいボウルに入ってるタレを、ハケで万遍なく塗って貰えます?
 あ、一枚は塗らないでおいといて下さい」私はてきぱきと、ミドリさんに指示して手伝ってもらうことにした。
 
「私も手伝うわよ ドイツじゃ、いつもしてたもん」

「それじゃ、そこの青い粉と茶色い粉を、ミドリさんがソース塗った後に振り掛けてくれる?」

「うん!」

AM7:20

ようやく食事の準備が出来て、父さんや母さんも運ぶのを手伝ってくれたので、
食卓に料理が並んでいた。
後は、ローラちゃん用に甘口のタレを作るだけだ

「ハチミツと三温糖でいいかな」私は小さいボウルに先程のタレの中に追加の調味料を入れてかきまぜた。


「おはようございます」ようやく、シンイチ君が目を覚まして降りて来た。

「もう、ほんとにシンイチは朝に弱いんだから……」ミライがいつものようにブツブツ言っている。

「わっ、これなんですか?お好み焼き?」

「アヤ流玉子焼き風お好み焼きよ お好みでマヨネーズをかけて食べてね」


ようやく全員が揃い、朝食が始まった。

「アヤさん、これ美味しいですよ 僕の好みです こういうの」シンイチ君が微笑んでくれた……嬉しい

「そりゃそうよねぇ、アヤの味付けの基本はシンイチ君の好みに合わせてるもの」お母さんがまたもや私を冷やかす。

「もう……何言ってるのよ、お母さん」真実の事なので、あまり反論出来なかった……

「この御飯も美味しいですよねぇ 炊き立てですか?」

「夜の内にセットしとけば楽なんだけど、水が染み過ぎて……だから毎朝炊いてるのよ、知らなかった?」

「何時に起きてるんですか?アヤさん」シンイチ君が箸を置いて質問してきた。

「6時よ けど、パンの時には7時だけどね」

「そんなに早く起きるんですか? 僕は毎日パンでもいいですよ」
シンイチ君が驚きながらも、私を気遣ってくれた……それだけで涙が出るぐらい嬉しかった。

「駄目よ、成長期に朝の食事がパンばかりじゃ栄養のバランスも悪いしね、やっぱり御飯食べなきゃね」

「アネキって、シンイチのお母さんみたい」ミライが下を向いて言った。

「ごめんねぇ、アヤ……いつも私が家にいないし……いても役に立ってないし」

「もう、お母さん、それは言わない約束でしょ」

「それ、昨日TVでやってたドラマでしょ」ローラが口の周りにマヨネーズを付けたまま口を開いた。

アハハハハ

家族の暖かい声に、私は安らぎを感じるの……その為なら、早起きなんか、メじゃ無いの……

主に、シンイチの声にだろ




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どうもありがとうございました!


第10.5話Aパート 終わり

10.5話Bパート に続く!



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