裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 10.5E

第10.5話【碇アヤの一日】Eパート

PM1:30

私はいつまでもシンイチ君と、こうしていたかったけど……

父さんとミドリさんを連れて戻って来たミライの声を遠くに聞いて、私はシンイチ君から離れた。


「アネキ! シンイチは大丈夫なの?」
「シンイチ!大丈夫なのか?」
「アヤさん、これ救急箱です」

「うん、大丈夫だよ……心配かけて、ごめんね」

「そうか……じゃ家に帰ろう 試験も近いし……」

「それじゃ、救急箱返して来ますね」

「鞄を職員室に置いたままだから、私がやるよ」
お父さんは救急箱を手に、中学校に戻っていった。

「それじゃ、ローラちゃんを迎えにいってきます」ミドリさんもお父さんの後を追って坂を降りていった。

「あ、そうだ 買い物の途中だったのよ 二人とも付き合ってくれる?」

「重いものあるんじゃ無いですか?付き合いますよ」シンイチ君が即答してくれた。

「アネキの買い物は長いから……私は帰って お昼御飯の準備するから」

「それじゃ、交差点まで一緒に帰りましょ」

私達はおしゃべりしながら坂道を降りていった。

交差点で、ミライと別れて私はシンイチ君とNGマートに向かっていた。

「こうして……二人で歩くのって、久しぶりよね」私はそっと手を伸ばした。

「うん……」シンイチ君は私の差し伸べた手を握ってくれた……嬉しい

手を繋いだまま、私達はNGマートに入っていった。

シンイチ君の右手……暖かい  私はシンイチ君と繋いでいる左手に温もりを感じていた。

店内に入り、シンイチ君が左手に買い物籠を持って、手を繋いだまま私達は店内を周っていた。

「これも安いから買っておこうかな」私はシンイチ君が持っている籠に商品を入れていった。

「何か買わなきゃいけないもの無いの? シンイチ君」

「僕は特に……あ、そうだお醤油が切れかけてるんじゃないですか」

「刺身醤油でしょ あれは魚屋さんで売ってる物の方がいいから後で寄りましょ」

「あ、この100%のオレンジジュース……安いけど……だめね これは沈殿しすぎてる」

「ほんと、アヤさんって若奥さんって感じですね」

「あら、ありがと 私達……どう見えるのかな 姉弟?恋人?」

「ど……どうでしょうね」今更ながら手を繋いで買い物してるのがシンイチ君は恥ずかしくなったようだ。



PM2:00

買い物を終えた私達は帰途についていた。

「シンイチ君……私も持つわよ」
シンイチ君の左手が重い袋を三つも持っているので、少し紫色になりかけているようだったので、声をかけた。

「その為について来たんですから……」

「私と一緒にお買い物するのに、理由はいらないでしょ……シンちゃん」
「アヤさん……」
「いいから一つぐらい私に持たせてよ」私はシンイチ君から袋を一つもぎ取った。

「おなか空いたね……もうミライが焼いて ローラちゃんやお父さんに食べさせたかな」


「ただいまぁ」私は玄関を開けて、中に入った。

「さっき私達は食べたから」
食卓では、お昼御飯に使った皿を回収している所であった。

「あ、ミドリちゃん プリン買って来たから、冷蔵庫に入れておくわね」

「アヤお姉ちゃん だいすきっ」ローラちゃんが私に抱き着いてきた。

「ありがと 私も大好きよ」私はローラちゃんを抱えて言った。

「フライパンは、洗っておいたから」ミライが洗ったフライパンをコンロの上に置いていった。

「後片付けはやっておくから、ミライは試験勉強に専念してね」

「それじゃ、そうするかな」ミライは手を拭いて部屋を出ていった。
ローラちゃんを連れてミドリさんも上に上がっていった。

「私は書斎にいるから」お父さんは鞄を手に部屋を出ていった。


「さて……」私はコンロに火を付けて、フライパンを軽く暖めた。
テフロン仕上げなので、ほんの少ししてすぐに一端火を止めた。

私は冷蔵庫を覗いて、ボウルに入った卵焼き風お好み焼きの材料を取り出した。

「三人前ぐらいあるけど、シンちゃんなら二人前食べられる?」

「今朝の倍ですか?大丈夫だと思いますけど」

「そう 良かったっ じゃちょっとTVでも見て待っててね」

私はシンイチ君に背を向けて料理を始めた。

「朝よりはこってりした方がいいから……このチーズを入れてみようかな」
私はパックに入ったチーズを取り出して、包装を剥ぎ3枚ほど重ねて、包丁で均等な幅で切って、ボウルに入れてかきまぜた。

「この、”パピプピピペポ印の池田ベーコン”も入れてみようかな」私はベーコンを刻んで、ボウルに入れてかきまぜた。

シャケの切り身があるから、シャケ入りのおむすびにしようかな……
これならあまっても試験勉強中に食べれるし

私はお好み焼きを焼きながらシャケ入りおにぎりを作った。

「秘伝のタレはまだあるけど……ちょっと味付け変えてみようかな……いくらシンイチ君好みの味でも飽きらたくないし……」
私は秘伝のタレに、濃口のウスターソースを混ぜる事にした。

その時、椅子が鳴る音に気付いて私ははっとした。

まさか……シンイチ君……ずっとここにいたの?

私はおそるおそる振り向いた。

「アヤさん……」シンイチ君が私を見つめていた。

料理に夢中になってて、後ろにシンイチ君がいる事に気付かなかったのだ
TV見ててって言ったのに……恥ずかしい

「今の……聞いちゃった?」私は耳が熱く感じていた……多分顔は上気しているんだろうな……

「え?いや……その……聞いてないです」シンイチ君は少し頬を染めて答えた。

その態度で独り言を聞かれた事はすぐわかったが、私に恥をかかせない為のシンイチ君のちょっとした嘘が嬉しかった。


その後の料理は、ミスこそしなかったものの、恥ずかしさのあまり集中出来なかった。
そのせいか、ベーコンが焼きすぎで少し黒くなりすぎていた。
私は軽く包丁で焦げた部分を削り取った。

皿に載せて、秘伝のタレを塗り、青海苔とかつお節と、マヨネーズを塗って、テーブルに持っていった。

「シンイチ君は何を飲む? ジンジャーエールとオレンジジュースとウーロン茶があるけど」

「じゃ、ジンジャーエールにします」
「私も同じのにしようかな……」
私はジンジャーエールの缶を二つ持って、シンイチ君の横の席に座った。

か、勘違いしないでね……他の席はまだ片付けが終わってないからなのよ……

誰に説明してるんだ? 二秒で片づけられるレベルだという事は秘密にしてあげやう(笑)

「それじゃ、いただきます」

「うん、シャケのおにぎりも美味しいですね」

「ほんと? 嬉しい(ハァト)」

「このチーズのちょっとこってりしたのも美味しいですね」

「ほんと? 嬉しい(ハァト)」

「ベーコンもカリカリしてて美味しいですよ」

「ほんと? 嬉しい(ハァト)」

・・・・いいかげんにしとけよ てめえら

「あっそれ……焦げてるから、その切れは食べないで シンイチ君」

「大丈夫ですよ……アヤさんの作ったものなら……」

「シンイチ君……」私の胸にシンイチ君の暖かい思いが広がっていた。


「ふぅ 美味しかった」シンイチ君はまるまる二枚のお好み焼きとおむすびを4つ 全部たいらげてくれた……嬉しい(ハァト)

「あ、シンイチ君……ほっぺにソースが付いてるわよ」

「取ってくれます?」シンイチ君は私の向こうにあるティッシュの箱を見ていたが……

「取ってあげる」私は腰を浮かして、シンイチ君のほっぺに付いたソースを舐めとった。

「美味しい……」

「アヤさん……」


つまづく・・・・もとい・・続く  <それは作品が違う




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どうもありがとうございました!


第10.5話Eパート 終わり

第10.5話Fパート に続く!



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