シンジは手溜弾の安全ピンを抜き、レバーを外して伝声管の中に放り込んだ。
そしてすばやくエレベーターに乗り、扉を閉めた。
ガーーー
「念の為、しゃがんで!」シンジは言うなり、小銃をドアに向けて構えた。
ドーーーン
エレベーターがびりびりと震えた。だが、動きは止まらなかった。
ガシャン
エレベーターが開いた。
その向こうには、数人の兵士が血の海を作っていた。
シンジは念の為、小銃を乱射して、ドアを閉めた。
ガーーー
「これで下まで止まる事は無い・・」
わーーー
閉じ込められていた所員は喜びに沸いた。
「あ、碇さん・・これ」綾波通信士がシンジにカードを返した。
数分後・・
エレベーターは地下10Fに辿り着いた。
所員はばらばらとエレベータを出て行った。
「レイ! 何か扉を閉めなくする為の物を持って来てくれ!」
シンジはエレベーターの扉を押さえて言った。
「あ、ハイ!
すこしして、綾波通信士と青葉がスチール製の机を担いで持って来た。
「よし・・ここにおけば閉まる事は無いだろう・・」
シンジ達は巨大な空間に向かって歩いて行った。
「シンジ君!」葛城警備課長が飛んで来た。
「ありがとう・・あなたが皆を助けてくれたんだって?
私は警備課長失格だわ・・・皆にそんな思いさせて・・」
「ミサトさん・・そんなに自分を責めないで下さい・・
電源も落とされたんでしょう? レーダーが無ければ無理無いですよ
この山頂までヘリで来る命知らずはそうそういませんよ・」
「あ、碇さん・・その右腕どうかしたんですか?」
右腕の噛み傷を目ざとく見つけた綾波通信士が右手を覗き込んだ。
「怪我してるじゃ無いですか・・早く手当てしなきゃ・」
「それぐらい・・どうって事無いよ」
「薬とかどこにあります?」綾波通信士が葛城警備課長に聞いた。
「それなら、その通路を右よ」
嫌がるシンジを綾波通信士が無理矢理治療室に引きずって行った。
「どうしたんです?この傷」
「痛っ・・しみる・・」
「駄目ですよ・・こういう傷は良く消毒しないといけないんですからね」
「・・・」
「そう言えば、似たような事ありましたね」綾波通信士がクスッと笑った。
「これ・・もしかして噛み傷ですか?」
「・・そうだ・・アスカに噛まれたんだ・・」シンジは俯いて言った。
「え!碇さんを噛んだんですか? 飼いウサギに手を噛まれたんですね!
アスカを見つけたら叱っておかなきゃ・・」
「ここにいるよ・・」シンジは片手で懐に入れておいた、
野ウサギのクレインを取り出した。
アスカは珍しそうに周りを見ていた。
こんっ
綾波通信士が軽く指で頭を弾いた。
「もう噛んじゃ駄目だぞ・・」
「いや・・アスカが噛んでくれなかったら・・今ここに僕はいなかったよ・・」
「どういう事です?」
「・・・実は・・」
シンジは今日起こった出来事をかいつまんで説明した。
話は自殺未遂の所まで及んだ。
「・・・碇さん・・」綾波通信士は目に涙を一杯溜めて言った。
次の瞬間
パシッ
綾波通信士の右手が閃いて、シンジの左頬をひっぱたいた。
「!?」
「何故死のうだなんて思ったんですか!
そんな事して、天国のアスカさんが喜ぶとでも思うんですか?
私がアスカさんなら、あなたの事をこうしたと思いますよ!
「・・・」綾波通信士は、俯いたシンジの顔を指で上げさせて、
次の瞬間には口づけをしていた。
「!?」シンジの目の前には涙をぼろぼろ流したレイの顔があった。
やっと唇が離れた時には、シンジの目にも涙が溜まっていた。
「私は、アスカさんにはなれないけど・・・
ずっとずっと碇さんの事を・・」
「今度そんな事したら・・・許さないんだから・・」
「あなたにまで死なれたら、私再起不能になっちゃいますからね!
あなたが死んだら・・私も死にます・・」
「悪かった・・もう二度としないよ・・」
二つの影が少しづつ一つになろうとしていた時
赤木研究所長が飛び込んで来た。
二人は慌てて離れた。
「分かりました・・」
「アスカは私が預かっておきますから」綾波通信士は、
足元にいた野ウサギのクレイン(アスカ)を抱きしめた。
「第二所長室ですね」
「そうよ ついて来て」
シンジと赤木研究所長は治療室から出て行った。
「アスカ・・」綾波通信士は抱きしめているクレイン(アスカ)に語りかけた。
「碇さんを止めてくれて・・・ありがとう・・」
不審がるクレインの頭にレイの流す涙が一滴落ちた。
綾波通信士は目を閉じた。
するとクレインが綾波通信士の涙を舐めて取っていた。
「アスカ・・」
シンジと赤木研究所長は第二所長室の中にいた。
「よく来たな・・シンジ・・」
「父さん・・いや、碇所長!・・」
「最後通諜が来た・・」
「速やかに、この本部施設を明け渡せとな・・
でなければ・・・」
「でなければ?」シンジが聞き返した。
「日本へのN2爆雷の無差別空襲を決行するそうだ・・」
「そ、そんな!」
「こっち側の要求としては、所員に危害を加えたら、
この本部施設を破壊すると言ってある・・」
「それで、無事だったのか・・」
「で、どういう対応をするんです?」
「冬月が上がって来るそうだ・・引き渡しの為にな・・」
「では、その時に・・」
「そうだ・・それしかあるまい・・」
「返事は明日の朝6時と言う事になっている・・」
「昼食を取ったらミーティングだ・・」
「わかりました・・」
碇ゲンドウは赤木研究所長に目配せした。
「それでは失礼します。」赤木研究所長が退室した。
「何か言いたい事があるのだろう?」
「父さん・・」