「碇さん・・ここいいですか?」

綾波通信士は返事も待たずに、シンジの横に腰かけた。


「あの研究所の下に、こんな設備があっただなんて・・すごい」

綾波通信士は食堂内部を見渡した。


「・・・・」シンジは第二所長室での父、ゲンドウとの会話を思い出していた。




「何か言いたい事があるのだろう?」

「父さん・・」

「父さんは、冬月部長が僕たちのロープウエイの、
メインロープを切る事を示唆した犯人だって知ってたのか?」

「ああ・・薄々とはな・」

「なら、何故それを言わなかったんだ・・わかっていたら・・」

「シンジ・・」

「アスカの事も知ってたのか?」


「ああ・・だが、どこから手を付けたら良いか分からなかったのだよ・・

人間のDNAは使われていない、ジャンク状態のDNAがある・・

アスカ君のDNAのどの部分なのか・・わからなかったのだよ

それに、冬月の手の者に、残っていたアスカ君のDNA情報を消されてしまったのだよ」


「その研究は?」

「赤木君に一任している・・彼女が後で話を聞きたいと言っていた。ミーティングの後で、会ってみたまえ・・」

「父さん・・最後にもう一つ聞いていいかい?」

「何が聞きたい・・」

「アスカの死体が上がっていない・・その事に理由があるんじゃないのか?」
「どういう事だ」
「まさか、アスカの死体を回収して、極秘裏にその研究を進めていたんじゃ・・」

「アスカ君が落ちたのは、谷間の雪渓だ・・見付けられなかったのだよ」

「・・」シンジはゲンドウに背を向けた。

「・・・・」


雪山に消ゆる面影を求めて

第3話【白髪の復讐鬼】Cパート


「碇さん・・」シンジは考え事をしていて、綾波通信士の呼びかけが耳に入っていなかった。

「どうかしたんですか?」

「いや、何でも無いよ・・」
シンジは答えてパンを引き千切り、口の中に放り込んだ。

「わたしには言ってくれないんですね・・」

「・・・」

「A級勤務者は、ミーティングルームに五分後にお集まり下さい」
館内放送が流れた。

「行って来るよ・・」シンジは席を立ってミーティングルームに向かった。

ミーティングルームの円卓に、 碇所長 赤木研究所長 葛城警備課長 
青葉通信班長 そしてシンジが座っていた。

「彼等の要求は、本部施設の明け渡しだ。応じなければ日本にN2爆雷の空襲を行うと宣言している
期限は明日の朝6時だ。」

「内部事情に詳しい訳よね・・冬月部長がネオナチに送り込まれた工作員だったとはね・・」

「実際、ネオナチの爆撃機は何機あるのかしら・・」

「ドイツ内でのコンセンサスは得ているようだ。70年前と同じだ。」
「確かに、前世紀の、性急な無理な統合・ドイツは荒れてるわね・・」

「国内での指揮は冬月がしているようだ・・・」

「明日冬月部長が上がって来るんでしょう?」

「冬月を狙撃する事は不可能では無い・・だが、一定期間連絡が無いと、
爆撃機を出撃させるぐらいの事はしているだろう。」

「冬月部長を人質にすると言うのはどうでしょう?」

「君たちの家族も、すでに押さえられているやも知れんのだ・・」

「そっそんな!家族は関係無いでしょう!」

「彼等は手段を選ばんよ・・」

「所長のお考えを聞かせて下さい」

「所長の命令に従います」


「わかった・・まず、明日、日の出と同時に、碇シンジは隠し通路から、山復に出て、

頂上まで登り、冬月がヘリを降りた直後に狙撃 その時刻に合わせて、

葛城警備課長率いる、実動部隊を編成し、上まで上がり、敵を一掃する!

冬月と敵の傭兵を始末している間に、青葉通信班長は、同盟国に働きかけて、

敵の通信衛星のジャミングを開始! 我々が自由を取り戻したら政府に連絡して、

敵爆撃機の迎撃を行わせる・・以上だな・・」




シンジは武器庫の中で、狙撃に使う銃を選んでいた。


シンジは短銃身の特殊狙撃銃”セレブSU12”を選び、

特殊スコープを取り付けた。弾丸は特殊鉄鋼弾をマガジン二つ

通常弾をマガジン二つ用意した。そして、足に特殊ホルスターを付け、

”コルトガバメント2012”を装備した。

「試射するか・・」

シンジは銃と弾を1マガジン持って、隣の試射室に向かった。


シンジはボタンを押し、目標の人型を100M先にセットした。

シンジは銃を構え、スコープを覗きこんだ。

バーンバーンバーン

3発の銃弾が人型の目標に吸い込まれて行った。


シンジはボタンを押して、人型を手前に寄せた。

その時、赤木研究所長が入って来て、人型の目標の特殊繊維を手に取った。

「頭と左胸 と中心部分に一発づつ、全部正確に急所を撃ち抜いているわね」

・・・・

「話があるの・・ちょっとお願い出来るかしら?
銃は部屋に運ばせて置くわ・・あなたの部屋は201号室よ」


シンジは銃を置いて、赤木研究所長の後を付いて行った。


リツコは広い研究室の中に入り、中央部分のコンソールに腰をかけた。
シンジは進められた椅子に腰掛けた。


「所長から、聞いていると思うけど、例の研究・・あまり進んでいないのよ

惣流博士の理論はわかったわ・・けどサンプルの無い、今・・・

そこで・・碇君・・あなた彼女の遺品とか持って無い?」


「遺品ですか?」

「何でもいいのよ・・へその尾とか・・とにかくDNA配列が分かればいいのよ
あなたも研究者だったから、わかるでしょ」


「アンビリカルコード・・血・髪の毛・爪・・・そうだ・・アスカのいた部屋の枕に髪の毛は?」

「証拠は隠滅されてしまったわ・・残って無いのよ」

「・・・・あ。そういえば・・」

「何かあるの?」

「オーストラリアの大学受験の時・・あ、アスカは推薦で無試験だったので、
僕だけが受験に行ったんですけど・その時、お守りを貰ったんです・・」

「それ・・今でもどこかにあるの?」

「ええ・・」シンジはパスケースを取り出して、中からお守り袋を取り出した。
「どうぞ・・」シンジはそのまま、リツコに手渡した。

「いいの?」

「お願いします・・」

リツコはピンセットを使って、お守りの紐を解き、
内容物を取り出した。

「これは写真ね・・アスカさんの」

「あ、これは高校の卒業式の時の写真の切り抜きですね・・」

「あ、まだ何かあったわよ・・」

リツコは白い紙の上に、内容物を取り出した。


「こ、これは・・」

「何ですか?」

「アスカちゃんも良くそんな古いおまじない知ってたわね・・」

「何の事です?」

「見れば分かるわよ」


シンジは顔を近づけた。

こ、これは・・

「これがあれば、研究が再開出来るわ・・」

「これがお役に立つのなら・・どうぞ」シンジはそう言って席を立った。

「碇君・・ありがとう」


シンジが研究室を出た後、リツコは呟いた。
「21世紀にもなって、こんな古いおまじない・・初めて見たわよ」
リツコは白い紙の上の、すこしちじれた、薄金色体毛を見つめた。


第3話Cパート 終わり

Dパート に続く!


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