雪山に消ゆる面影を求めて

最終話【死闘の果てに見ゆるもの】Bパート


「いくぞっ!」


シンジは通信機を放り投げた。


だが、通信機は西側の斜面に向かって飛んで行った。


「ちくしょう!!」


20M程下では、立ち上がった、雪まみれの綾波通信士がシンジの投げた通信機を拾っていた。


「てめぇ!」捕虜は自らも、斜面を降りようとした。


バーン


シンジは胸に隠し持っていたデリンジャーの引き金を絞った。


「貴様」捕虜は身体を反らして、銃弾を避けていた。

「手を上げろ!」

シンジはデリンジャーを捕虜の胸に向けた。

次の瞬間!

捕虜が持っていた刃物がシンジに向かって飛んで来た。

「チッ」シンジはその刃物を叩き落としたが、

その隙に、捕虜は目にも止まらぬ速さでシンジに肉薄していた。

シンジは、捕虜の突出した手刀を寸前で躱す為、斜面にダイブして、転がり落ちた。


シンジは雪に塗れながら、斜面を転がり落ちていた。

バーン バーン

捕虜はシンジのデリンジャーで、シンジに撃って来た。

だが、転がっているシンジに命中させる事はたやすく無かった。

シンジは20Mほど下に転がり落ちて、立ち上がった。

「碇さん!」
綾波通信士がシンジの元に駆けつけて来た。

「さぁ・・逃げるぞ!」

「えっ?」

シンジはレイの手を引いて、走った。

「その通信機が奴には必要なんだ・・それさえあれば、ここを離れて別の通信衛星に
暗号通信で、本国の爆撃機を出撃させれるんだろう」

「どこに逃げるんですか?」

「この先に使われていない、モノレールがある!」

シンジとレイは山頂の南側に向けて走っていた。


「もう・・研究所の皆も気づいているだろう・・」


シンジ達の前に、モノレールが見えた。


シンジとレイはモノレールに乗り込んだ。

「このモノレールはどこまで降りられるんですか?」

「モノレールは2箇所にあるんだ・・この山頂から、向こうに見える丘へのモノレール・・
そして・・・・・その丘から、深い谷を超えて、山腹の中継地点に向かうモノレールだ。
だが、谷を超えるモノレールは使用出来ない・・・2年前・・」

「碇さん・・」

動き出したモノレールの中で、シンジはレイに説明をしていた。



「山小屋まで行けたら、通信施設もある・・研究所に連絡も出来る・・」

「けどモノレールは壊れているんでしょう?・・」

「メインのワイヤーが一本だけ残っているんだ・・」


シンジとレイの乗るモノレールは彼方に見える雪に包まれた丘陵に向かっていた。

「あの捕虜の人どうしてるかしら」

「多分・・ヘリで追って来るだろう・・だが、この天候だ・・すぐには追いつけないだろう」

「碇さん・・」

20分後

シンジとレイの乗るモノレールは、無事、丘陵に辿り着いた。


その頃・・山頂では、異変に気付いた葛城警備課長率いる部隊と捕虜が、
ヘリの争奪戦をしていた。が、シンジとレイが知る由も無かった。


シンジは雪に包まれた丘陵の上を、レイを連れて歩いていった。

シンジとレイはモノレール跡まで来ていた。
そして、モノレールの設備後の鉄で出来たチェストを開けた

これを付けるんだ!

シンジは中から二つ、ストラップを取り出し、レイにも手渡した。

シンジは、レイが寒そうにしているのを見て、着ていた上着を手渡した。
「碇さん・・」
「大丈夫だ・・このスーツは耐寒機能もあるんだ・・」

シンジとレイはストラップを付け、金具を付けていた。

「これにひっかけて、ネジを回すんだ・」

シンジとレイは金具をワイヤーにかけていた。

「斜面になってるから、自然に下まで降りる事が出来る筈だ」

「じゃ・いくぞ!」
シンジがまず、大地を蹴ってワイヤーに身を任せた。

シャァーー

金具の先の滑車がワイヤーと摩擦する音がしていた。

レイも無事、後を付いて来ていた。

15分後・・


「助かった・・」

シンジの眼前には、中継地点の建物が見えて来ていた。


その時!


バババババ

シンジとレイの間に、機銃が打ち込まれた


「キャァ!」


そして、ヘリは少しして、旋回し、再びシンジ達に機首を向けた。

バババ

今度はレイを狙っていた。

「きゃっ」
だが、滑空しているレイに直撃はしなかった。

だが・・・


「キャァーーー」

「レイ!」

シンジは振り向いた。

レイのストラップにつけられている金具に当たったのか、
滑車が壊れて、ワイヤーに金具の残っている部分がようやく引っかかっていた。


「レイ!」

シンジは手でワイヤーを握り締めた。


シューーーー

スーツに覆われてはいるものの、摩擦熱で、スーツは溶ける寸前であったが、
シンジは速度を落とす事が出来た。

そして、レイに手を伸ばした。


「さぁ掴まるんだ! 早く!」

「碇さん・・・」

「さぁ!」

少しづつ、シンジとレイの手が近づいて来た時!


ババババ


ヘリの機銃がシンジ達のすぐ側をかすめていった。


だが、その衝撃波で、ワイヤーは大きく揺れた。


そのショックで、レイをようやく支えていた金具が外れ、
レイは重力に身を任せてしまっていた。


「レイ!」



がしっ

シンジは思いっきり手を伸ばし、落ちてゆく、レイの手首を掴む事が出来た。
レイに着せていた服から通信機が、ポケットからはみ出て、千尋の谷底に落ちていった。


「碇さん!」

「もっとしっかり掴まるんだ!」


ヘリは再び旋回して、シンジとレイに向かって来ていた。

「碇さん・・私の事はいいから逃げて!」

「何を言うんだ!レイ!」

だが、レイは手をゆるめようとしていた。

シンジはもう一方の手を伸ばして、レイの身体を支えた。

「碇さん・・」


「二度も・・目の前で大事な人を・・失いたく無いよ・・」

「碇さん・・」



レイはシンジにしがみついた。


「さぁもっと掴まれ!」

「ハイ!」

レイはシンジの背中に手を回して掴まっていた。

だが、ヘリの銃口は目前まで迫って来ていた。

シンジは身体を揺らせて、ずれかけていた滑車を元のようにワイヤーにかけた。


シューーーー

バーン

急に加速されたシンジとレイは寸前で機銃の銃弾から逃れる事が出来た。

「早く着け・・」シンジは祈っていた。

機銃弾の音に驚いた、加持が外に飛び出していた。

ヘリはシンジとレイを追ってはいたが、機銃を発射しなかった・・いや弾が切れたのだった。


シンジとレイはようやく、中継地点まで降りる事が出来た。

「さぁ・・!」

シンジは金具を外して、レイを立たせた。

「早く中に入れ!」ライフルを持った加持が、物陰からシンジに叫んだ。

シンジとレイは、中継地点の建物に走っていた。
ヘリは中継地点に腹を見せていた。

「危ない!」

レイは窓から覗く銃口に気づき、前を走っていた、シンジを突き飛ばした。

「何っ!」
シンジは突き飛ばされて、レイの方に振り向いた。

バーン

シンジの目には、まるでスローモーションのように、捕虜の持つシンジのデリンジャーから放たれた
銃弾がレイの胸に吸い込まれるのが見えた。

「レイ!」
シンジは倒れた綾波通信士を抱き起こした。

「よかった・・碇さんが無事で・・」

「レイ! 何故・・そんな」

「言ったじゃないですか・・碇さんには、私より永く生きて欲しいって・・
あなたにしなれたら・・けふっ」シンジの腕の中でレイは咳こんだ。

「碇さん・・・ごめんなさい・・」レイの瞳が力なく閉じられていった。


「あばよ」捕虜は窓から弾の無くなったデリンジャーを捨てて
谷底に落ちた通信機を探して、ヘリは飛び立って行った。

「レイぃ!」

「私は大丈夫・・早く追って・・でないと・・みんなの家族が・・危ないの・・」

ヘリが去ったのに、気付いた加持がシンジとレイの元に走って来た。

「レイが撃たれたんです! 早く!手当てを!」

「わかった!」加持が答えた。

「碇さん・・行って! 」加持に担がれたレイのか細い声がシンジの胸を打った。


「わかった・・」シンジはレイに背を向けた。
シンジはヘリポートに置いてあるヘリに向かって駆け出した。

シンジはヘリに乗り、キーを回した。

エンジン音が響いてきた。


バラバラバラバラ ヒュンヒュンヒュンヒュン

ブレードが風を切る音が耳を突いた。

「死ぬなよ・・レイ」


シンジはヘリを飛び立たせた。


最終話Bパート 終わり

Cパート に続く!


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