「死ぬなよ・・レイ」
シンジはヘリを飛び立たせた。
雪山に消ゆる面影を求めて
最終話【死闘の果てに見ゆるもの】Cパート
数分後
シンジの操るヘリは、捕虜・傭兵部隊の指揮官の乗ったヘリを追いかけていた。
通信機の落ちた谷間を捕虜の乗るヘリが飛んでいた。
「見えた!」
シンジは機銃を操作し、照準を合わせて引き金を引いた。
ババババババババ
機銃の音で、斜面の雪の表面が揺れていた。
だが、最初、2発ほど当たっただけで、避けられてしまった。
シンジは執拗に追い回した。
「ここは・・」
この谷間の底には雪渓があり、その上を前はモノレールが走っていた場所の上空であった。
アスカが目の前で落ちて行った場所でもあった
二機は谷間の間を飛んでいた。
「この先は・・」
先行していた敵のヘリは狭い谷間をぬって飛んでいたが、目の前で急に左にカーブしていて、雪に包まれた山肌に突っ込みそうになっていた。
「くっ あぶねぇ」敵のヘリはゆっくり、左へと回っていた。
「いけっ!」
シンジはヘリを敵のヘリにぶつけるコースを取った。
旋回に気を取られて、気づかなかった、敵の指揮官の驚愕した顔が目の前に見えた。
次の瞬間 シンジは谷底にダイブしていた。
ドーーーン
二機のヘリが衝突し、谷底に落ちていった。
ドカーン
二機のヘリは谷底に落ちて爆発した。
シンジは谷底に落ちて行った。
シンジは落ちながら、赤木研究所長に教えられていた、左手首のボタンを押した。
ブワサッ
背中の少し盛り上がっていた機械のパーツが左右に弾け飛んで、中から、パラシュートが開いた。
次の瞬間 身体が重力に逆らい、上に引き戻されるような感触を受けた。
シンジの身体はゆっくりと谷底に降りていった。
「!?」
その時、谷の左右の雪が雪崩を起こし、谷底に向かって崩れ落ちていった。
雪はまるで、うねる川のように、谷を下へ下へと流れて行った。
元々谷は急斜面で、下に沿っていたのだ・・これほどの衝撃が無ければ、
雪渓ごと、流れて行く事などある筈も無かった。
シンジは斜面に突き出た岩につかまった。
「今降りたら雪と一緒に下まで流されるかもな」
2時間後 シンジは岩に捉まったまま、疲労のため、寝入っていた。
「ん?」シンジは目を覚ました。
眼前の谷底がキラキラ輝いていた。
「氷かな・・何かが反射してる・・」
シンジは岩から手を離して、山肌を蹴って ゆっくりと下に落ちていった。
ザッ シンジは谷底に降り立った。
「氷だ・・」
シンジの足元には、一面の氷が敷き詰められていた。
「万年雪が結晶化したのか・・それとも・・」
シンジは、氷に魅せられて、這いずって氷を見ていた。
「ん・・?アスカ!」シンジは絶叫した。
シンジの眼前には、2年前と同じ姿のアスカが氷の中で眠っているかのように、見えた
「アスカ・・こんな所にいたのか・・アスカぁ・・」シンジは鳴咽をもらした。
バラバラバラバラ シンジの背後から、数機のヘリの音が響いていた。
シンジは日本政府の救助隊に救出されていた。
そのヘリの中には、救助隊に掘り出された氷漬けのアスカも乗っていた。
今、アスカを掘り出さないと、雪で再び埋もれると発見が困難になるからであった。
シンジを乗せたヘリは研究所に向かっていた。
シンジの乗ったヘリが着陸するのと入れ違いに、一機のヘリがレイを乗せて、飛び立っていった。
だが、シンジはその事に気付いてはいなかった。
数刻後
シンジは氷漬けのアスカを地下の第二研究室に降ろしていた。
中には、赤木研究所長・葛城警備課長・そして碇所長もいた。
「全世紀に、ロシアで、雪渓の中から発見された人が蘇生した事あるんですよね・・」
シンジは手を震わせながら言った。
「そうよ・・シンジ君」
「なんとかなりませんか?リツコさん・・・アスカは・・アスカはまだ生きてるかも知れないんです・・」
「シンジ君・・」
「分かったわ・・・出来るだけの事はして見るわ・・」
「リツコ・・方法はあるの?」
「ええ・・」
赤木研究所長は、巨大な機械の中に、氷漬けのアスカを入れた。
「これで、うまくいけば、氷の分子だけ、取り除く事が出来るわ・・」
「シンジ君・・・このボタンは君が押しなさい」
「・・・アスカ・・」シンジはスイッチを入れた。
ヒュイーーーン
機械の上げる音が研究室内に響いた。
数分後・・
「開けるわよ・・・」
機械の中から、水浸しになったアスカを引っ張り出して、アスカをベッドに乗せた。
「やって見るわね・・・」赤木研究所長は両手に電気パッドを持っていた。
「シンジ君・・アスカの服を脱がせて・・胸のあたりを露出させるのよ・・」
シンジはアスカの分厚い上着を脱がせた、そして、服をめくって、胸を露出させた。
「やるわよ・・シンジ君・・押さえといて・・」
バシっ バシッ リツコは何度か電気ショックをあたえたが、アスカの身体は何の反応も無かった。
「リツコさん・・もういいです・・」シンジは電気パッドを持ったリツコに声をかけた。
「少し、一人にしてもらえませんか・・」
「・・・・」
「・・・・・」
シンジ以外の人間は研究室から出て行った。
「アスカ・・・アスカぁ・・目を覚ましてよ・・アスカ・・
アスカ・・君を・・助けられなくて・・アスカ・・」
シンジはアスカのもの言わぬ身体を抱きしめて泣いていた。
研究室の前の廊下・・
ゲンドウは所長室に向かって歩いて行った。
「アスカが見つかってよかったのか・・果たしてどうでしょうねぇ・・」
「それもそうね・・けど・・これでシンジ君は、アスカの死を心から認める事が出来るかもね」
ミサトとリツコは小声で話していた。
「ま、事後処理があるから、任せるわ・・」
リツコもハイヒールの音を響かせて、去っていった。
「ふぅ・・」ミサトはドアと反対側の壁に背中を預けて座り込んでいた。
その時・・・
「こら・・・どこからまぎれこんだのかしら・・」
シンジの耳に、部屋の外の、葛城警備課長の声が聞こえた。
シンジは何か予感を感じて、扉を開けた。
「あ、シンジ君・・クレインが、扉に体当たりしてたのよ・・」
「クレイン・・」シンジはクレインを抱いて、葛城警備課長に礼を言って、扉を閉めた。
クレインはシンジの腕の中でおとなしくしていた。
シンジが再び、もの言わぬアスカの前に立った時、クレインが飛び降りて、アスカの横に倒れ込んだ。
「おい・・クレイン・・クレイン・・どうしたんだ・・」
だが、クレインは目を閉じたまま、何の反応もしなかった。
シンジはクレインを手に取り、腕に抱いた。
「おい・・クレイン・・いや、アスカ・・アスカ!」
シンジは野ウサギのクレイン(アスカ)に声を掛け続けた。
「アスカ・・」
「シンジ・・」
シンジは背中にアスカの声を聞いたかのように思った。
「アスカぁ・・・おまえまで・・俺を残して死ぬのか・・嫌だよ・・」シンジは涙を流し続けた
「シンジ」
シンジは再び、背後から自分を呼ぶ声を聞いた。
「・・・・!?」シンジは涙で濡れた瞳で、振り向いた。
「アスカ・・」
アスカがベッドの上から蒼い瞳で、シンジを見つめていた。
「アスカ!」シンジはアスカの元に駆けつけた。
「アスカ!」
「聞こえてるわよ・・シンジ」
「シンジ・・」
「アスカぁ・・」
「ただいま・・」
「おかえり・・アスカ」
時に西暦2022年・・
二人の時計は今再び歴史(とき)を刻み始めた。