AX-2000Aの写真
YAMAHA AX-2000A
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥240,000

ヤマハが1990年に発売したプリメインアンプ。デザイン的に見てもよく似ていることから分かるように,A-2000
の血筋を引くアンプでした。A-2000がマイナーチェンジを受けて1985年にA-2000aとなり,さらに1987年,
モデルチェンジを受けて18ビットのD/Aコンバーターを内蔵し,チタンカラーになったAX-2000が登場しました。
本機は,AX-2000と外観はあまり変わりませんでしたが,D/Aコンバーターは内蔵されず,通常のアナログア
ンプとしてより中身の強化が図られたA-2000系列の最終モデルでした。

AX-2000Aの一つ目の大きな特徴は,実用SNを大きく向上させる「MEGA-SN回路」でした。これは,「Most
Effective Gain Arrangement fpr Signal to Noise Ratio」の略で,アンプ内のゲイン配分を見直して,
全入力ソースに対して実使用のSN比を22dB以上改善したものでした。通常のプリメインアンプのボリュームが
最大音量からゲインを下げるだけになっており,アンプの全ゲインをボリューム以降で得ているのに対し,「MEGA
-SN回路」では,リニアアンプと可変抵抗によるアクティブボリューム(最大ゲイン+22.5dB)を採用し,ボリュー
ムを絞った実使用状態でのボリューム以降での増幅量が抑えられることで,ボリュームを絞るとともに残留ノイズ
も直線的に低下する特性を実現し,20数dBのSN比の向上を得ていました。

MEGA-SN回路MEGA-ダイレクトイン回路

さらに,CD等のハイレベル入力に対しては,「MEGA-SN回路」をベースにさらにSN比の向上を図る「MEGA-
ダイレクトイン回路」を装備していました。これは,トーンアンプを解除する代わりに,入力端子直後に超ローノイズ
のダイレクトアンプを搭載してトータルゲインを確保しつつSN比をさらに向上させるものでした。このダイレクトアン
プには,ゲイン設定素子として原理的にノイズ発生源となるR(抵抗)を用いず,C(容量)を用いて容量分割型と
し,アンプ初段を超ローノイズデュアルFET構成としていました。ボリュームの後にはパワー段によるゲインのみ
となり,さらに10dB以上のSN比向上が図られ,トータルで通常の構成のアンプに比べ30dB以上のSN比改善
を実現していました。また,この「MEGA-ダイレクトイン」は,プロ機器用+4dBmとのレベル切換付きキャノン端
子を装備し,業務用のプロ仕様CDプレーヤーやDATも接続できるようになっていました。

AX-2000Aの2つ目の大きな特徴は,パワーアンプの「HCA回路」でした。これは,あの「10000シリーズ」の
パワーアンプMX-10000に搭載された方式で,A級動作をより広範囲(全負荷・全出力)で実現するものでした。
純A級動作においても,基本的には直線の合成のため,どこかでカットオフし(図5),出力電流がアイドリング電
流の2倍を超すとAB級に移行して歪みの発生に至るという弱点がありました。HCAは,ハイパーボリック・コンバ
ージョン(双曲線変換)A級動作の略で,トランジスタのI-VBE特性がもつ対数特性を利用して全出力帯域でカッ
トオフせず,しかも完全な合成特性を得るもので(図6),アイドリング電流に依存せず,デュアルトランジスタ2個
というシンプルな回路で全負荷,全出力で純A級動作を可能にしていました。

HCA動作

電源部は,420VAのシールドケース入りの大型の電源トランスと,27,000μF×2のオーディオ用大容量アル
ミ電解コンデンサを搭載した大型・重量級のものでした。そして,パワーアンプ部,プリアンプ部,コントロール表示
それぞれ独立した巻線の3系統独立電源となっていました。

AX-2000Aの内部

内部は各部の相互干渉や外乱の影響をを抑えるために配慮された左右対称・2BOX構造となっていました。パワー
アンプ部は電源トランスをはさんでL・R完全対称設計とし,回路基板はウッドパネルに接した最外側に配置されて
電源トランス等の磁気歪みの影響を抑え,プリ部,コントロール部は相互干渉を防ぐためにリアパネル近くに独立2
BOX構造として配置されていました。フレーム,シャーシには全面的に銅メッキが施されていました。

アナログレコードに対してのイコライザアンプ部は,MC/MMそれぞれ専用にイコライザアンプが搭載され,増幅後
に入力切換となる方式が採用され,SN比を初め,優れた特性を実現していました。
そのほか,極性表示付き極太OFC電源コード,金メッキピンジャック端子など音質に配慮した設計が各部に見られ
ました。また,ボリューム,入力セレクト,ミューティングの操作ができるリモコンが装備されていました。

以上のように,AX-2000Aは,A-2000系列の最終モデルとして内部構成の見直しや,高級セパレートアンプの
技術の投入が行われ,充実した内容をもっていました。そして,ヤマハの純オーディオのプリメインアンプとしては最
後の高級機となりました。クリアで堂々とした音を持った風格ある1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


ここには,オーディオを趣味とすることの
誇りと歓びがあります。
正統な手法と独創の構想から,
至純の成果を得た,純粋アナログアンプ。
◎デジタル技術の成果を最もよく花開かせる,
 極上の,純粋アナログアンプです。
◎全入力ソースについて実用SN比を22dB以上
 改善する,アクティブVol採用MEGA-SN回路
◎とりわけ低歪・高SN比なデジタルソースのために。
 至純のMEGA-ダイレクトイン回路装備
◎全負荷・全出力域ピュアA級動作。600W×2(1Ω)
 のダイナミックパワーを誇るHCAパワーアンプ
◎420VAもの巨大電源トランスなどで
 存分に良質電流供給する独立3電源方式。
◎細心の配慮に基づく左右対称構造・対称重量。
 銅メッキシャーシ。そして2BOXコンストラクション
◎MC/MM独立専用イコライザアンプ搭載。
◎ディスクリート構成FET電子SWセレクタなど
 マニアユースを貫いた高性能付属機能
 
 
●AX-2000A主な規格●

 
定格出力 150W+150W(6Ω,歪0.003%・20〜20,000Hz)
ダイナミックパワー 240W+240W(6Ω),500W+500W(2Ω),600W+600W(1Ω)
入力感度/インピーダンス MC:100μV/1kΩ 
MM:2.5mV/47kΩ
CD他:150mV/47kΩ 
アクセサリーIN:150mV/47kΩ
ダイレクトIN(アンバランス):150mV/47kΩ
ダイレクトIN(バランス・ノーマル):150mV/40kΩ
ダイレクトIN(バランス・プロコース):1.23V/40kΩ
最大許容入力 MC:6mV(1kHz・歪0.01%)
MM:140mV(1kHz・歪0.01%)
全高調波歪率 0.003%(MC,MM→REC OUT,20〜20,000Hz・3V)
周波数特性 ±0.2dB( 20Hz〜20,000Hz,全入力)
SN比(IHF-A) 83dB(MC 250μV) 
90dB(MM 2.5mV) 
残留ノイズ(IHF-A) 23μV(ノーマル・Vol−),7μV(ダイレクト・Vol−∞)
トーンコントロール BASS   ±10dB(20Hz/T.O.F.350Hz)
MID    ±10dB(1kHz/T.O.F1kHz)
TREBLE ±10dB(20kHz/T.O.F.3.5kHz)
サブソニックフィルタ 15Hz(−6dB/oct)
消費電力 300W
寸法 473W×170H×475Dmm
重量 28kg
※本ページに掲載したAX−2000Aの写真,仕様表等は,1991年5月
のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。                                         
 

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