E-301の写真
Accuphase E-301
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥198,000

アキュフェーズが1981年に発売したインテグレーテッドアンプ。インテグレーテッドアンプとしては高級機に属しますが,
アキュフェーズのアンプとしては当時,一番安いエントリーモデルでした。上級機のE-303の基本設計を引き継ぎ,か
つE-303発売から4年間経過して発売されただけに,そのぶんの新しさも盛り込んだ優れたアンプでした。

出力段は,E-303譲りのMOS FETのパラレルプッシュプルで構成され,110W/ch(8Ω)の強力な出力を得てい
ました。MOS FETは,電圧制御素子で広帯域素子である優れた素子で,アキュフェーズは早くからMOS FETに注
目し,搭載アンプを作っていました。電圧制御素子であるMOS FETは,高域の音質を左右するノッチング歪みがなく
前段からは電圧の変化のみが伝えられればよく,電力を供給する必要がないため前段の負荷が少なく,従ってドライブ
段に特性の優れた素子を選ぶことが容易になるという利点を持っていました。また,広帯域素子であるため,NFループ
内の広帯域化が可能で,動的歪みのTIM(過渡相互変調歪み)の発生を防止することができました。E-301では,上
級機E-303の基本設計を受け継ぎ,以上のようなMOS FETの優れた特長を生かす回路構成が行われていました。
出力段の回路構成は,FETバッファー入力の次がプッシュプルの差動増幅で,これにより全増幅段がプッシュプルとい
うアキュフェーズならではの優れた回路構成となっていました。また,DCサーボ方式により,入力コンデンサーを持たな
い直結アンプとしていました。

E-301のパワーユニット

プリアンプのハイレベル・アンプは,入力がデュアルFETによるバッファー,次段が高性能オペアンプによる差動増幅,終
段が広帯域コンプリメンタリー・プッシュプルという構成でした。FET入力により入力コンデンサーを排除し,DCサーボ方
式で出力のカップリングコンデンサーも取り除いて,入力から出力まで直結回路を構成していました。

イコライザーアンプでは,入力はFETバッファーで構成し,カップリングコンデンサーを排除していました。また,この入力段
には,E-301で新たに,アンプの周波数特性に影響を与えてカートリッジの音をゆがめるミラー効果を防止するためのミラ
ー効果打ち消し回路が搭載され,カートリッジ固有の音をゆがめない工夫がされていました。次段は,差動増幅を通りダー
リントンで増幅され,終段がコンプリメンタリー・プッシュプルという回路で構成されていました。回路全体には,E-303では
ハイレベルアンプ以降だけであったDCサーボがかけられ,出力コンデンサーも取り去られ,イコライザー入力(MM)からパ
ワーアンプの出力段まで完全直結のDCアンプとなっていました。また,MM入力に対しては,3段階に入力インピーダンス
が切り替えられるディスク・インピーダンス・スイッチが装備されていました。
MC入力に対しては,高性能なヘッドアンプを装備していました。E-301のヘッドアンプは,入力がコンデンサーを持たない
ICLの直結方式差動プッシュプル,出力段はコンプリメンタリー・プッシュプルという全段プッシュプルという回路構成になっ
ていました。

E-301の内部

電源部は,強力な大型のトロイダルトランスをベースに,ハイレベルアンプ,イコライザーアンプ,ヘッドアンプの各回路に専用
の独立定電圧電源を配置するマルチプル・パワー・サプライ方式とし,電源インピーダンスを広帯域にわたって低く保つように
していました。内部も整然と部品が配置され,しっかりしたフレーム構造により,高い構造強度を持ち振動にも強い作りになっ
ていたようです。

以上のように,E-301は,アキュフェーズが大げさでない形で,音楽を聴く道具として作り上げた優れたプリメインアンプでし
た。実は,私自身,初めて購入して使ったアキュフェーズ製品でした。当時,プリメインアンプのグレードアップを考え試聴を重
ねた末に購入したものでした。特に,音量を絞っても音のきめ細かさが失われず,音量を上げても決してバランスを崩さず高い
解像度と品位を持った音には当時,正直驚いたものでした。それまでアキュフェーズというブランド(会社名はケンソニックでし
た)をあまり知らなかった私も,いっぺんにアキュフェーズファンとなったという思い出深い1台でした。個人的には名機の1つ
だと思っています。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




 
◎MOS FETパラレルPP・DCサーボ方式
 110W/chのパワーアンプ
◎DCサーボ直結方式ハイレベル・アンプ
◎DCサーボ方式・ミラー効果打ち消し回路付
 イコライザーアンプ
◎全段プッシュプル構成ICLヘッド・アンプ
◎強力な電源,マルチプル・パワー・サプライ
◎ターンオーバー切替付10ステップ・トーンコントロール
◎2段切替ラウドネス・コンペンセーター
◎サブソニック・フィルター
◎充実したテープファンクション
 
●E-301保証特性●


連続平均出力(新IHF) 140W/ch  4Ω負荷 
110W/ch  8Ω負荷 
 55W/ch 16Ω負荷 
(両チャンネル同時動作,20〜20,000Hz間,ひずみ0.02%以下)
全高調波ひずみ率(新IHF) 0.02%  4Ω負荷 
0.01%  8Ω負荷 
0.01% 16Ω負荷 
(両チャンネル同時動作,0.25W〜定格出力間,20〜20,000Hz間)
IMひずみ率(新IHF) 0.005%
周波数特性(新IHF) 
  MAIN AMP INPUT 

  HIGH LEVEL INPUT 
  LOW  LEVEL INPUT


20〜20,000Hz +0,−0.2dB(定格出力時) 
1.5〜300,000Hz +0,−3.0dB(1W出力時) 
20〜20,000Hz +0,−0.2dB(定格出力時) 
20〜20,000Hz +0.2,−0.2dB(定格出力時)
ダンピングファクター(新IHF) 80(8Ω負荷,50Hz)
定格入力・入力インピーダンス 
  DISC:MM時(HEAD AMP OFF) 

  DISC:MC時(HEAD AMP ON) 
  TUNER・AUX・TAPE PLAY 
  MAIN AMP INPUT


2.3mV(定格出力時),0.22mV(新IHF:1W出力時) 
・100,47k,82k,150kΩ 
0.12mV(定格出力時),0.011mV(新IHF:1W出力時)・100Ω 
145mV(定格出力時),13.9mV(新IHF:1W出力時)・47kΩ 
1.2V(定格出力時),0.12V(新IHF:1W出力時)・47kΩ
ディスク最大入力 
  HEAD AMP OFF 
  HEAD AMP ON
300mVrms 1kHz,ひずみ0.01% 
 15mVrms 1kHz,ひずみ0.01% 
定格出力・出力インピーダンス 
  PRE OUTPUT 
  TAPE REC OUTPUT 
  HEADPHONES 
1.2V    200Ω 
145mV  200Ω(DISCの場合) 
0.32V  適合インピーダンス4〜32Ω
ゲイン MAIN INPUT→OUTPUT:27.8dB 
HIGH LEVEL INPUT→PRE OUTPUT:18.4dB 
DISC INPUT(HEAD AMP OFF)→TAPE REC OUTPUT:36dB 
DISC INPUT(HEAD AMP ON)→TAPE REC OUTPUT:62dB
S/N・入力換算雑音 
  MAIN AMP INPUT 
  HIGH LEVEL INPUT 
  DISC(HEAD AMP OFF) 
  DISC(HEAD AMP ON)

120dB −118dBV(定格入力,入力ショート,A補正) 100dB(新IHF) 
100dB −117dBV(定格入力,入力ショート,A補正)  82dB(新IHF) 
 84dB −137dBV(定格入力,入力ショート,A補正)  80dB(新IHF) 
 72dB −151dBV(定格入力,入力ショート,A補正)  77dB(新IHF)
トーン・コントロール 10ステップコントロール 
ターンオーバー・ポイント 低音:200,500Hz 
                高音:2kHz,7kHz 
低音 500Hz:±10dB(100Hz) 2dBステップ 
    200Hz:±10dB( 50Hz) 2dBステップ 
高音  2kHz:±10dB(10kHz) 2dBステップ 
     7kHz:±10dB(50kHz) 2dBステップ
ラウドネス・コンペンセーター COMP 1:+6dB(50Hz) 
COMP 2:+10dB(50Hz),+6dB(20kHz) 
(VOLUME コントロール−30dBにて)
サブソニック・フィルター 17Hz,−12dB/oct
アッテネーター −20dB
パワー・メーター 対数圧縮型ピーク・レベル指示 
dB及び8Ω負荷時の出力直読
負荷インピーダンス 4〜16Ω
使用半導体 81Tr,13IC,20FET,83Di
電源及び消費電力 100V,117V,220V,240V 50/60Hz 
無入力時 60W,8Ω負荷定格出力時 400W
寸法・重量 幅445mm×高さ160mm(脚含む)×奥行370mm  17.2kg
※本ページに掲載したE−301の写真,仕様表等は1982年10月のAccuphaseのカタログ
 より抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真
 等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。     
    
 
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