Accuphase E−303
INTEGRATED STEREO AMPLFIER ¥250,000
アキュフェーズは,トリオ(現ケンウッド)の創設者兄弟を中心に優れた技術者たちが,「真の高級品を作る」こと
を目指して起こしたメーカーだけあって,どれもすばらしい完成度の製品ばかりであることは,広く認知されている
ところだと思います。このプリメインアンプは,1978年にアキュフェーズが発表した,同社にとって2台目のプリメ
インアンプでした。そして,これが当時の同社のアンプの中では入門モデルでした。(とは言え,高級品であること
に違いはありませんが・・・・)そして,多くの音楽愛好家やプロとして音楽を仕事にする人たちにも広く支持された
アンプでした。「音楽をいい音で聴きたいが,大げさなシステムはいやだ。」という人たちにとって最適なモデルでし
た。このアンプの特徴の一つは,電力増幅素子として理想的と言われるMOS FETをパワー部に採用していたことで
した。このMOS FETを4個,パラレルプッシュプルで構成し,プリメインアンプとしては,当時としては驚異的な,
130W+130Wを実現していました。しかも,ハイパワーモデルにありがちな荒っぽい音ではなく,非常に繊細な
音でした。当時,試聴した記憶では,大音量では,他社のプリメインも迫力や分解能でE−303に近いものがあり
ましたが,家庭で聴く程度に音量を絞ったとき,ほとんどのアンプが音の繊細さを欠いて荒い音になっていました。
しかし,このアンプだけは,小音量でも,決してバランスを崩すことなく繊細な音で鳴り続けていたことが印象に残っ
ています。そして,この1台で私は,アキュフェーズファンになり,その後E−301,C−200L+P−800という同社
のアンプを所有することになってしまいました。2つ目の特徴は,音質を犠牲にすることなく多機能であることでしょう。トーンコントロール,3段階のラウドネス・コンペ
ンセーター,幅広くカートリッジに対応するイコライザーアンプとヘッドアンプなど,使いやすく多機能が配置され,操作
性も優れていました。このあたりの設計思想は,同社が一つの理想にしたというマッキントッシュ社に通じるものがある
ように思います。また,セパレートアンプを一体化したような設計だったのでプリアンプとパワーアンプを切り離すことが
でき,プリアンプあるいはパワーアンプ単体として使い,グレードアップをしていくことが容易でした。3つ目の特徴は,日本的で繊細な優美なデザインでしょう。先ほど述べたように,優れた機能とデザインがうまく一致し
たものでした。しかも,実物を見るとよく分かりますが,非常に作りが丁寧で,細部まで神経の行き届いた仕上げの良さ
には職人芸が感じられます。これは,同社の製品全体に通じることでしょう。
音の方は,非常に繊細で,ある意味日本的な美しさを感じる音でした。アコースティックな楽器の音など実に繊細に優美
にバランスよく聴かせてくれたことは,今でも印象に残っています。プリメインアンプを代表する名機の一つだと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎MOS FETパラレル・プッシュプル130W/chのパワーアンプ |
◎全増幅段完全対称型プッシュプル駆動 |
◎全ユニットアンプがDC構成,ハイレベル・アンプはDCサーボ方式 |
◎超ロー・ノイズ広ダイナミック・レンジのヘッド・アンプ |
◎高S/Nイコライザー・アンプ |
◎CIコアーによる高性能電源 |
◎ターンオーバー切替スイッチ付10ステップ式トーン・コントロール |
◎3段切替ラウドネス・コンペンセーター |
◎音質重視のサブソニック・フィルター |
◎出力直読ピーク指示パワー・メーター |
●E−303保証特性●
連続平均出力(新IHF) | 180W/ch 4Ω負荷
130W/ch 8Ω負荷 65W/ch 16Ω負荷 (両チャンネル同時動作,20〜20,000Hz間,ひずみ0.02%以下) |
全高調波ひずみ率(新IHF) | 0.02% 4Ω負荷
0.01% 8Ω負荷 0.01% 16Ω負荷 (両チャンネル同時動作,0.25W〜定格出力間,20〜20,000Hz間) |
IMひずみ率(新IHF) | 0.005% |
周波数特性(新IHF)
MAIN AMP INPUT HIGH LEVEL INPUT
|
20〜20,000Hz +0,−0.2dB(定格出力時) 1.5〜300,000Hz +0,−3.0dB(1W出力時) 20〜20,000Hz +0,−0.2dB(定格出力時) 20〜20,000Hz +0.2,−0.2dB(定格出力時) |
ダンピングファクター(新IHF) | 80(8Ω負荷,50Hz) |
定格入力・入力インピーダンス
DISC:MM時(HEAD AMP OFF) DISC:MC時(HEAD AMP ON)
|
2.5mV(定格出力時),0.22mV(新IHF:1W出力時) ・100,47k,82k,150kΩ 0.125mV(定格出力時),0.011mV(新IHF:1W出力時)・100Ω 160mV(定格出力時),13.9mV(新IHF:1W出力時)・47kΩ 1.3V(定格出力時),0.12V(新IHF:1W出力時)・47kΩ |
ディスク最大入力
HEAD AMP OFF HEAD AMP ON |
300mVrms 1kHz,ひずみ0.005% 15mVrms 1kHz,ひずみ0.005% |
定格出力・出力インピーダンス
PRE OUTPUT TAPE REC OUTPUT HEADPHONES |
1.3V 200Ω 160mV 200Ω(DISCの場合) 0.32V 適合インピーダンス4〜32Ω |
ゲイン | MAIN INPUT→OUTPUT:27.8dB
HIGH LEVEL INPUT→PRE OUTPUT:18.4dB DISC INPUT(HEAD AMP OFF)→TAPE REC OUTPUT:36dB DISC INPUT(HEAD AMP ON)→TAPE REC OUTPUT:62dB |
S/N・入力換算雑音
MAIN AMP INPUT HIGH LEVEL INPUT DISC(HEAD AMP OFF) DISC(HEAD AMP ON) |
120dB −118dBV(定格入力,入力ショート,A補正) 100dB(新IHF) 100dB −117dBV(定格入力,入力ショート,A補正) 82dB(新IHF) 84dB −137dBV(定格入力,入力ショート,A補正) 80dB(新IHF) 72dB −151dBV(定格入力,入力ショート,A補正) 77dB(新IHF) |
トーン・コントロール | 10ステップコントロール
ターンオーバー・ポイント 低音:200,500Hz 高音:2kHz,7kHz 低音 500Hz:±10dB(100Hz) 2dBステップ 200Hz:±10dB( 50Hz) 2dBステップ 高音 2kHz:±10dB(10kHz) 2dBステップ 7kHz:±10dB(50kHz) 2dBステップ |
ラウドネス・コンペンセーター | COMP 1:+6dB(50Hz)
COMP 2:+9dB(50Hz) COMP 3:+10dB(50Hz),+6dB(20kHz) (VOLUME コントロール−30dBにて) |
サブソニック・フィルター | 17Hz,−12dB/oct |
アッテネーター | −20dB |
パワー・メーター | 対数圧縮型ピーク・レベル指示
dB及び8Ω負荷時の出力直読 |
負荷インピーダンス | 4〜16Ω |
使用半導体 | 113Tr,21IC,18FET,39Di |
電源及び消費電力 | 100V,117V,220V,240V 50/60Hz
無入力時 100W,8Ω負荷定格出力時 490W |
寸法・重量 | 幅445mm×高さ160mm(脚含む)×奥行370mm 20kg |
※本ページに掲載したE−303の写 真,仕様表等は1982年10月のAccuphaseのカタログ
より抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真
等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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