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VICTOR M−L10
STEREO POWER AMPLIFIER ¥350,000
1981年,ビクターがLaboratoryシリーズのセパレートアンプとしてプリアンプP-L10とともに発売した
パワーアンプです。回路方式的には,1979年に発売されたM-7050の後継機とも考えられます。プリ
アンプのP-L10同様,美しいウッドキャビネットが印象的で,落ち着いたデザインが示すとおり,音楽を
聴く道具としてメカニカルな感じを抑え,インテリアにもマッチするアンプでした。音の方も,聴感を重視し
たというだけあって,バランスのとれた大人の音という感じで,完成度の高いものでした。M-L10の最大の特徴は,「パワー・カスコード・スーパーA回路」にありました。これは,出力段トランジ
スターが一定電圧で動作し,電流のみ変化させ,スピーカー実装時と純抵抗負荷時と同じ性能を得る目
的でパワー段までカスコード回路を採用した全段カスコード回路を採用したものです。このため,出力段
は,トランジスターが数ボルトで動作するため発熱量が少なく,スピーカー実装時の瞬間発熱量は従来
方式の10分の1以下となり,サーマルディストーションの改善とアイドリング電流が安定し,裸特性の向
上がはかられるというものでした。アンプトータルとしての発熱量は,電流を供給する電源側のトランジス
ターが発熱するためにあまり変わりはありませんが,本来電流増幅素子であるトランジスター特性を生
かし,安定動作と低歪みをねらった意欲的な設計でした。「スーパーA」方式は,アメリカのスレッショルド社が開発した可変バイアスによる疑似A級回路のバリエ
ーションで,いわゆる「ノンスイッチングアンプ」です。このタイプは,日本では,ビクターの「スーパーA」方
式が1979年に,パワーアンプM−7050に搭載されたのが最初で,この方式の日本でのパイオニア的
存在でこれ以降各社から疑似A級アンプが多く発売されました。パーツは聴感をもとに厳選されたもので,プレーン箔電解コンデンサー,低雑音ツェナーダイオード,コア
の音質まで吟味されたトロイダル電源トランスなどが採用されていました。また,P-L10同様のローズ
調リアルウッドの鏡面平滑塗装のキャビネットはビクターの優れた木工技術の現れでもありました。
当時,このM-L10とP-L10の美しいデザインと微粒子感のあるバランスのとれた音は実に印象的でし
た。しかし,当時学生だった私にとっては,ペアで60万円では手が届かない高級品でした。密かに欲し
いなあと思っていたあこがれのアンプでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
真実の強さはさり気ないものだ,
心のポテンシャル。
◎負荷によって性能が変わらない
パワー・カスコード・スーパーA回路(PAT.PEND) ◎オーバーオールな高信頼・音質重視設計 ◎ローズ調リアルウッドの鏡面平滑塗装キャビネット |
●M-L10型仕様
回路方式 | 全段カスコード・スーパーA・完全DCパワーアンプ |
実効出力 | 160W+160W(20Hz〜20kHz,8Ω,THD0.002%) |
全高調波歪率 | 0.002%(実効出力時,20Hz〜20kHz,8Ω) |
混変調歪率 | 0.002%(60Hz:7kHz=4:1,実効出力時,8Ω) |
スイッチング歪 | 0 |
TIM歪 | 0(LPF fc=100kHz) |
出力帯域幅 | 5Hz〜100kHz(IHF,8Ω,THD0.02%) |
周波数特性 | DC〜300kHz+0,−3dB(DIRECT入力,8Ω) |
ダンピングファクター | 200(1kHz,8Ω) |
入力感度/入力インピーダンス | 1V/100kΩ |
SN比 | 120dB以上(IHF-A,ショート・サーキット) |
サブソニック・フィルター | 16Hz(−6dB/oct) |
電源電圧 | 100V 50/60Hz |
定格消費電力 | 350W(電気用品取締法基準) |
電源コンセント | 電源スイッチと非連動1個 |
寸法 | (W)460×(H)204×(D)418mm |
重量 | 28.0kg |
※本ページに掲載したM-L10の写真,仕様表等は1981年11月のビクターの
カタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権があります。したが
ってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられています
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