OMS-70の写真
Nakamichi OMS−70
Compact Disc Player ¥268,000
ナカミチが1984年に発売したCDプレーヤー。ナカミチのCDプレーヤー第1号機でした。カセットデッキの分野で
定評のあるメカニズム技術と録音再生アンプの技術を生かしたらすばらしいCDプレーヤができるだろうと期待され
ていながら,2年間沈黙を守っていました。そしてついに発売されたのが,このOMS−70でした。当時,知り合い
の販売店で試聴させてもらい,その鮮明でしっかりした音には,デッキのナカミチらしさを感じたものでした。ナカミ
チは,このOMS−70の開発に先立ち,世界初の”ERASABLE DRAW及びDRAWタイプの光ディスク・ダイナ
ミック評価装置”OMS−1000 Optical Memory Systemを開発し,発表していました。ここで得られた基礎技
術を生かしてCDプレーヤーを完成させたということで,その音の良さも納得できるものでした。ナカミチは,現在で
も,CD-Rなどの光ディスク装置で優れた製品を供給していることは周知の事実ですね。

OMS−70は,当時としては先進的な4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを採用していまいした。まだ,
このころはデジタルフィルターが各メーカーに少しずつ採用され始めた頃で,アナログフィルターを使っている機種
も多かった頃ですから,2倍ではなく,4倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターは珍しかったものでした。こ
れにより,不要な折り返し雑音をカットするために急峻なアナログフィルターを使う必要がなく,何段ものフィルター
やオペアンプを通過させる必要もなくなりました。低次のシンプルなフィルターとわずか2段というシンプルなアン
プ構成が可能になり,音質の向上がもたらされたということでした。

D/Aコンバーターは,当然16ビットマルチビット型でした。(まだ1ビット型はなかった。)このD/Aコンバーターを
Lch,Rch独立で2個搭載した,デュアルD/Aコンバーターとして,Lch,Rch切り替えのスイッチングが不要と
なり,位相ずれのない優れた高域特性を実現していました。

D/Aコンバーター以降のアナログ回路も,デッキのアンプづくりで定評のあったナカミチらしさを感じさせました。
ナカミチはアナログ部を「ダイレクトカップルド・リニアフェイズ・アナログシグナルプロセッサー」と称して総合的に
性能を追求していました。アナログ部全体を他と独立させ,専用のアルミケースに納め,デジタルノイズを防ぐと
ともに,回路基板をケースにがっちり固定し,外部振動や音響的なフィードバックによる悪影響を防止していまし
た。さらに,アナログ回路全体を非磁性化して,磁気的な干渉も防いでいました。回路構成面にも,ナカミチ持ち
前のデッキのアンプ技術を投入したもので,完全DC構成,信号系路からの一切の接点の排除,L・R独立の2
電源方式,グランド系のL・R独立など徹底したものでした。アナログ部/デジタル部は電源及びグランド系が完
全独立で,デジタル系の干渉をシャットアウトしていました。パーツも完全無誘導型のコンデンサー,高純度無
酸素銅線など厳選されていました。

メカニズム系は自社開発の高精度なもので,レーザーピックアップにはバッファーアンプ直結でデジタル部への
外部ノイズの影響を抑え,サーボ系もデッキで培った技術を生かした高精度,高速なコントロールを実現してい
ました。ディスクドライブメカニズムは,亜鉛合金ダイキャストシャーシに直づけされ,メインベースシャーシ及び
ディスクローディング機構から独立してスプリングでフローティングされた構造でした。モーターも,ナカミチがデ
ッキで開発した,滑らかで安定した回転を誇るリニアトルクモーターを採用していました。メカニズム系には,随
所にデッキのナカミチらしさが出ていたように感じたものでした。

OMS-70のメカニズム系

ナカミチは,現在はオーディオ専門メーカーというより,AV機器,カーオーディオ,コンピューター周辺機器など
が主力となり,高級テープデッキ,ホームオーディオ専用CDプレーヤーなどからはほとんど撤退(?)してしま
ったようにも見え,残念なことですが(DRAGON-CD以降高級機が出ていないし,カセットデッキの方でもあま
り活躍は目立たないし・・。いっそCDレコーダーか,MDの高級機でも出してくれないかな・・・。などと個人的
に感じています。お粗末・・。)CDプレーヤーでも,派手ではないものの優れた製品を出していたように思いま
す。このOMS−70は,その1号機ということで,私にとっては印象的な1台でした。2年ほど後に,ソニーの
CDP−553ESD+DAS−703ESと比較試聴してもそれほど大きく聴き劣りしないことに驚いたことも印象
に残っています。私自身は,結局ソニー機を購入したわけですが,このOMS−70は気になる1台でした。 
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 




 
 

”デジタルサウンド”という名の     
 色づけを拒否し,            
 原音のもつ自然な”響き”を再現する
 初めてのCDプレーヤー。

       

◎アナログ回路のシンプル化をもたらした,
  4倍オーバーサンプリング方式デジタルフィルター
◎高精度のD/A変換を保証する
  デュアルD/Aコンバーター
◎信号をクリアーに伝送する,
  ダイレクトカップルド・リニアフェイズ・
  アナログシグナルプロセッサー
◎デジタル信号を正確に取りだす,
  ピックアップ&サーボ系
◎外乱に強いディスク駆動を実現した,
  ディスクドライブメカニズムの
  フローティング構造
                 

●OMS-70主な規格●


型式 デジタルオーディオシステム(コンパクトディスク方式)
読み取り方式 非接触光学式(半導体レーザー使用)
エラー訂正方式 CIRC方式
チャンネル数 2チャンネルステレオ
標本化周波数 44.1kHz
量子化数 16ビット直線
ディスク回転速度 約200〜500rpm(線速度一定)
ワウ・フラッター 測定限界以下
周波数特性 5〜20,000Hz±0.5dB
S/N比 92dB以上(IHF A-WTD)
全高調波歪率 0.003%(1kHz)
チャンネルセパレーション 92dB以上
出力 ライン:2V(1kHz,0dB)100Ω 
ヘッドホン:20mW(1kHz,0dBヘッドホンレベル最大)8Ω
電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 最大33W
大きさ 435(巾)×100(高さ)×308(奥行)mm
重さ 約7.5kg
※本ページに掲載したOMS−70の写真・仕様表等は1984年10月の
 Nakamichiのカタログより抜粋したもので,ナカミチ株式会社に著作権
 があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をするこ
 とは法律で禁じられていますので,ご注意ください。                                          
 

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